一人暮(ぐ)らしの叔母(おば)のアパートに高校生の姪(めい)が訪(たず)ねてきた。年齢(とし)が十(とう)も離(はな)れていないので、ほとんど友だち感覚(かんかく)でちょくちょく遊(あそ)びに来ているのだ。姪はやって来るなり嬉(うれ)しそうに叔母に話しかけた。
「ねえ、あたし、運命(うんめい)の人に出会(であ)ったみたい。何か、ビビッと来ちゃって…。あたし、この人と結(むす)ばれるんだって感じちゃったの。これって、すごいよねぇ」
叔母の顔つきが急変(きゅうへん)した。姪の手を取り座(すわ)らせると、いつになく真剣(しんけん)な表情(ひょうじょう)で言った。
「いい、よく聞きなさい。人生(じんせい)の先輩(せんぱい)としてあなたに言うんだけど…。私も、あなたくらいの頃(ころ)、ある人にね、ビビッと来ちゃったことあったの。私、勇気(ゆうき)を出してその人に告白(こくはく)して、付き合うことになったんだけど…。しばらくしてね、その人には他に本命(ほんめい)の娘(こ)がいることが分かったの。私は、彼がその本命の娘に近づくための――」
叔母は声をつまらせた。姪は、まさかここで叔母の失恋(しつれん)話を聞かされることになるとは思わなくて、それもかなりヘビーな感じなのに戸惑(とまど)いを隠(かく)せなかった。さらに叔母は、
「ごめんなさい。…それ以来(いらい)ね、好きな人が出来ても、相手(あいて)のこと信じ切れなくて…。だから、いまだに一人なんだけど…。つまり、私が言いたいのはね…」
「分かった。分かったわ」姪は思わず言った。「あたしも、よく考えてみるね。だから、心配(しんぱい)しないで。叔母さんも、まだ若(わか)いんだから、がんばってよ」
恋愛経験(れんあいけいけん)の少ない姪には、それ以上かける言葉(ことば)が見つからなかった――。
<つぶやき>恋愛って難(むずか)しいものなのかなぁ? これって、一人ではできないんだよね。
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