彼女(かのじょ)は引(ひ)っ込(こ)み思案(じあん)の性格(せいかく)で、何(なに)かを頼(たの)まれると断(ことわ)ることができなかった。それもあってか、彼女(かのじょ)の部屋(へや)には居候(いそうろう)が絶(た)えることがなかった。そこで知(し)り合(あ)った男女(だんじょ)が付(つ)き合(あ)うことになっても、彼女(かのじょ)は何(なに)も言(い)えない。でも、部屋(へや)の中(なか)でいちゃついていたときは、さすがに止(や)めてよって言(い)いたかったのだが…。
夜(よる)になって祖母(そぼ)の法事(ほうじ)から帰(かえ)ってくると、彼女(かのじょ)は疲(つか)れが出(で)たのかすぐに眠(ねむ)ってしまった。翌朝(よくあさ)、彼女(かのじょ)が目覚(めざ)めると、枕元(まくらもと)にそのいちゃつきカップルがいた。彼女(かのじょ)は驚(おどろ)いて飛(と)び起(お)きた。二人(ふたり)は彼女(かのじょ)に言(い)った。「夜中(よなか)にじいさんに叩(たた)き起(お)こされて説教(せっきょう)されたんだ」と…。
じいさんって…、だれ? 私(わたし)がいない間(あいだ)に、誰(だれ)かが来(き)たの? 彼女(かのじょ)はため息(いき)をつく。
「あたしたち、出(で)ていくことにしたから。今(いま)までありがとね」
そう言(い)うと、二人(ふたり)は荷物(にもつ)をかかえて出(で)て行(い)った。がらんとした部屋(へや)。この部屋(へや)でひとりだけになるのは久(ひさ)しぶりだ。何(なん)だが急(きゅう)に淋(さび)しくなった。でも、しばらくしたらそれも消(き)えてしまった。
いつもなら入(い)れ替(か)わるように誰(だれ)かが転(ころ)がり込(こ)んでくるはずなのに、今(いま)のところ彼女(かのじょ)を訪(たず)ねてくる人(ひと)はいなかった。でも、どういうわけか、彼女(かのじょ)が部屋(へや)にいるとき誰(だれ)かの視線(しせん)を感(かん)じるようになった。彼女(かのじょ)は、ひとりになったせいだと思(おも)っているようだ。
でも、ひとつ気(き)になることがある。二人(ふたり)が話(はな)していた“じいさん”って、いったい…。
<つぶやき>まさか、まさかですが、霊的(れいてき)なものが居着(いつ)いちゃったのかもしれないですよ。
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