福田の雑記帖

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「映画:日本の黒い夏〜冤罪」(1) 監督 熊井啓 日活 2000年作

2016年07月24日 03時00分26秒 | 映画評
 

映画『日本の黒い夏─冤罪』は松本サリン事件を題材とし、2000年に制作された。事件の概要と自らも被害を受けた第一通報者への長野県警の取り調べの推移を中心に据えている。第11回日本映画批評家大賞受賞作。監督の熊井氏は2001/3月「日本の黒い夏―冤罪・松本サリン事件」も上梓している。

 「松本サリン事件」とは1994年6月27日深夜、松本市の住宅街でオウム真理教の信徒が猛毒ガスのサリンのをまき、8人が死亡、約600人が重軽症を負った。実行犯7人のうち4人の死刑判決を受けた。教団の土地取得にからむ訴訟が原因で裁判官官舎を狙ったとされる。

 この映画の制作のきっかけとなったのは、この事件の報道を高校生の目で見て納得できないとして自ら制作した長野県某高等学校放送部制作のドキュメンタリービデオ『テレビは何を伝えたか』であったとされる。この作品は第43回NHK全国高校放送コンテスト・ラジオ番組自由部門で優勝した。

 この映画は松本サリン事件の第一通報者であるK氏に対する「警察の強引な任意同行と熾烈な自白強要」と、「報道機関機関の過熱取材と誤報」の実態を描いた作品である。

 本作品は4月下旬にTV放送されたもので、我が家の録画ハードディスクに収容されていた。折しも私は最近、「謝罪とは何か・・・」について考えていて、警察の誤認逮捕、マスコミの誤認報道についても、何故謝罪がないのか疑問に思っているので、考える上で参考になった。

 松本サリン事件は、その実行には極めて専門的な知識が必要であって、第一通報者であるK氏のごとく「素人」では不可能であったが、最初からK氏に焦点を絞り、確証を欠いたまま自白に追い込む警察の捜査手法が明らかになった。極めて社会性が濃厚な訴えを持つ高レベルの作品に仕上がっている。

 1995年長野県松本市の某高校放送部生は松本サリン事件報道の検証ドキュメンタリーを制作していた。NHK長野放送局をはじめとするテレビ局が取材を拒否する中で、ローカルテレビ局「テレビ信濃」は取材に応じた。高校生の目でテレビ局の報道の実態が観察された。

 被疑者不詳の殺人事件として捜査していた長野県警松本警察署は事件の第一通報者であるK氏の自宅を家宅捜索して何種かの薬品を押収する。その中に青酸カリがあったことで、マスコミは「青酸カリから毒ガスを発生させた」とK氏を犯人と断定するような報道を行った。その後、毒ガスが「サリン」と断定された。

 物的証拠がないまま、警察はK氏の逮捕を企図していたが、1995年3月東京の地下鉄サリン事件が生じ、犯人から松本の事件も自分たちが起こしたと自白があり、事件は一気に解決した。
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