福田の雑記帖

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菅義偉氏(9) 菅首相(5) 本 松田賢弥著 「したたか総理大臣菅義偉の野望と人生」

2020年10月06日 18時08分55秒 | 書評
 私は約50年秋田に住んでいる。しかし、官房長官菅義偉氏について秋田県湯沢出身の方とはほとんど知らなかった。選挙に関しては決して無関心ではないが、氏が秋田出身であることを知ったのは数年前、閣僚名簿を見ていてたまたま知った。
 氏の選挙地盤は神奈川県である。通常は秋田県にとってそれほど重要な人間ではなく、特別に扱われていない。

 今回自民党総裁選に出て以降、秋田県出身の首相誕生と秋田県知事、秋田さきがけ新聞、郷里の湯沢地域で一気にフィーバーした。しかし、秋田出身の総理とは登録されない。

 私は菅義偉氏について知りたいと思った。9月16日首相指名選挙を経て第99代内閣総理大臣となったが、折良く9月28日に緊急出版として、松田賢弥著「したたか総理大臣 菅義偉の野望と人生」が出版されたのを知り早速書店で入手した。


 しかし、私はすっかり騙された。
 「したたか」という題名も当を得ていると考えてたが、「したたか」であったのは菅氏ではなく出版社の方であった。
 本書は、2016年に刊行された講談社+α文庫「影の権力者 内閣官房長官菅義偉」を改題、新装刊したもの。そんな記述は表紙にも帯にも一切記載なし。
 書の最後のページに、3行だけこのことが記載されている。菅氏について新たな事実が明らかになるのは「編集部による6Pの前書き」だけでそれ以外は、2016年の本と内容は全く同じ。

 菅氏の総理大臣就任への便乗刊行としか思えない。一種の詐欺行為である。私は騙された。

 第99代内閣総理大臣菅義偉の、2016年までの足跡を知る一冊と割り切ればそれなりに価値はある。菅本人へのインタビューや永田町関係者らの徹底取材をもとに描いた評伝である。
 内容は以下のごとく。
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はじめに 菅総理、誕生す(この部分の6Pみが新記述)
第一章  血涙の歴史の落とし子
第二章  集団就職の世代
第三章  小沢一郎と菅義偉
第四章  権力闘争の渦中で
第五章  安倍政権の中枢で
第六章  権力を体現する政治家
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 人物評伝としては、良く出来ている。菅官房長官の経歴を分かりやすく、興味深く解説した好著である。

 法政大学法学部に入学。学費を稼ぐために皿洗い、ガードマン、新聞社の雑用係、カレー店の盛り付けなどのアルバイト生活を続けた。
 官房長官として地道な仕事ぶりをしてきたが、新元号「令和」の発表で国民の人気が高まった。これは平成の小渕官房長官もそうであったが政治というのはそんなものである。「ミー・ハー」的人気が政治家としての在りようを変えていく。

 コロナ対応等、政府の代弁者として常に菅官房長官の姿が全面にクローズアップされていた。安倍前首相の意向も在り、二階幹事長の働きで各派閥の調整が図られ、岸田・石破両氏はなすすべはなかった。

 本書で過去の政治家との対話を知ることができた。過去の出版物を改題しただけなので内容は古いがそれでも白日の下に出てくる歴史は意味がある。

 騙されて購入したが、記述内容には満足した。

 最近の新聞広告によると10万部近く売れているという。この本が、2016年出版の古い本の装丁を変えて前書きだけを加筆して緊急出版したものであることを気付いている方はほとんどいないだろう。本の表紙を見直しても、新聞広告を見てもそんなことはわからない。「騙す方も悪いが、騙される方はもっと悪い・・・」、本書はこんな記述で始まるが、この本にふさわしい、当を得た記述である。
コメント
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