福田の雑記帖

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本:長野丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの戦い 福田ますみ著 新潮文庫 2019年(1)

2019年03月09日 10時21分03秒 | 書評
 学校におけるいじめ事件は後をたたない。未だに多数の事例が報道されている。
 私は、いじめ事件、虐待事件等に関心を持っており、事件の新聞記事や雑誌等の記事を収集してきた。しかし、一般的に手に入る情報は充分でない。しかも、報道は最初から「学校側に問題」、「隠ぺい体質」などの前提のもとで報道されている様に思われることから、その解釈は慎重を要すると思われる。

 最近は、優れたドキュメンタリー作家達が埋もれた事件、奇異であった事件、冤罪事件等を追いかけて著作として発表している。私はこれらをできるだけ読んで各々の事件を考えなおしている。読む前と後ではかなり印象が異なってくる。 

 丸子実業高校バレーボール部員自殺事件は、部員間のいじめ行動、というのもおこがましいような冗談とも取れる程度の軽微な行動から端を発しているが、性格異常の母親、マスコミ報道、弁護士、評論家、県会議員、ネット上の書き込みとかによって異常なほど増幅され、母親vs 学校で互いに訴訟し合う特異な経過をたどったケースである。

 丸子実業高校バレーボール部員自殺事件は、当時1年生の男子部員が2005年に自宅で自殺した事件。
 生徒の母親は自殺の原因がバレーボール部でのいじめにあったとして校長ほかバレーボール部員等を長期にわたって責め続けたのち告訴、バレーボール部員等もこの母親の異常行動によって精神的苦痛を受けたとして逆提訴した。2009年長野地裁判決では、母親の主張は退けられ、逆に母親がバレーボール部員等に損害賠償を支払うように命じた判決が確定した。

 生徒は2005年に丸子実業高校に入学し、バレーボール部に入部。上級生が生徒の声真似をしたり、クリーニング店からついてくるビニール製ハンガーで頭を叩いたりした、と言う。生徒と母親との関係の方が問題で、それが主たる原因と思われる原因でその後不登校気味になり、またクリニックでうつ病と診断された。診断書は学校を責める有用な手段となった。
 生徒の出席日数不足を理由に出席を勧める文書が届いた直後、生徒は自殺した。この事から母親は好調を殺人事件として提訴した。それを支えたのは人権派と言われる弁護士であった。

 一方、家庭内の問題として、母親の生徒に対する虐待、ネグレクトが疑われ、生徒を幼少期より半ば育児放棄し「死ね」と罵倒し続けていた。自動相談所も母子分離を考えていた矢先であった。

 この事件は全国ネットのTVニュースやワイドショーでも報じられた。
作家の福田ますみ氏は詳細な聞き取り、資料の分析、裁判傍聴の結果から、本事件をまとめ、これらは「異常な母親」、「配慮欠くマスメディア」、「弁護士」、「県会議員や評論家・・・など」によるミスリードで事実がねじ曲げられた
とし、この経過を書籍として上梓した。

(モンスターマザー 長野丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの戦いの表紙)
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