4年前の頃は蘭の発芽に興味を持って実験を繰り返していたが、惚れやすの飽きやすな私の興味は娘の中学受験へ移ってしまい、蘭の発芽は放ったらかし。
メモ程度の実験の記録は残しているが、既に読んでも思い出さなかったりなので、ネットへ記録しておこうと思い始めた。
既に「蘭の種を発芽させてみようじゃないか!」「蘭の種を発芽させてみようじゃないか!(その2)」と2回記事にしたが、過去の記事へ書かなかったポイントも加え、総まとめとしたい。今回は無菌増殖編だ。
先ずは蘭の交配。YOUTUBEへ沖縄県教育委員会が作られたビデオがあるので貼っておく。
交配が上手くいくと実が出来て、数ヶ月(カトレアだと半年近くw)待つと実が太ってパンパンになる。
実を取るのが早過ぎると種が熟してなく、実が割れてしまうとバイ菌が入ってコンタミ(カビだらけになる)の可能性が高くなる。
きちんとした設備と資材でやれば問題が無くても、家庭で簡易的にやるとちょっとした事が失敗の原因になる。
上の写真は蘭(カトレア)の実を割った物で、白いのが種。蘭の種は細かい粉状で、この種を大量にバラ撒いて条件が適した環境へ種が行き着くと成長出来る。木の上にも着生するのは種が風にのって飛ばされたからだ。種を小さく軽くする為にも蘭の種は未成熟な胚のみで、貯蔵養分をほとんど持っていない。では成長のための栄養をどうするかと言うと、蘭菌と呼ばれる菌類と共生してそこから栄養を得るのだ。一般的な植物と比べると発芽の条件は厳しく、蘭の種を鉢へ蒔いても発芽させるのは難しい。
商業的には容器の中へ栄養分を溶かした培地を入れて、そこへ種を蒔いている。上の写真の瓶の下側に見える黒っぽいゼリー状の物が培地だ。培地には栄養分があるので、普通に作ると培地に雑菌が繁殖しカビだらけになってしまう。そうなると当然蘭も生きていけない。
それを防ぐために、培地の入った容器を高温殺菌し、上の写真の様な無菌操作が出来るクリーンベンチの中で殺菌した種を容器内へ蒔いている。写真のような大げさな設備がなくても、衣装ケースを利用した簡易なクリーンベンチでも出来るそうだが、培地の入った容器の高温殺菌も家庭の圧力鍋では数をこなせない。
以前世界最先端の蘭農園のビデオを紹介したが、その映像の中で蘭の苗が植えてある容器がプラスティックなのに気がついた。
耐熱容器はあるかも知れないが、加熱殺菌しない別の方法があるぞ!と思ったのだ。
そこでネットを検索していて見つけたのが、梁川 正 農学博士が書かれた「家庭用漂白剤を用いたランの簡便な無菌増殖」。特許も取得してあるが、既に出願から20年経っている。
クリーンベンチも使わずに漂白剤(ハイターw)で殺菌して蘭を培地に植える方法。これは面白い!これなら私の趣味の多肉植物の増殖も出来るかもと喜んで、試しに妻から貰った蘭の種を蒔いたのだが・・
これがやってもやってもピクリともしない。いやマジでカビも生えない。www
そこからネットを検索し、紹介されている方法で使われているのが地面に生える地生蘭で、着生蘭では栄養が足りないのに気が付いた。ウィキペディアの無菌播種(むきんはしゅ)のページへは『着生ランの多くは、ビタミンB群やニコチン酸(ナイアシン)、その他の有機物が培地に含まれていないと生育が不良になる。』と書いてあり、ニコチン酸(ナイアシン)とはビタミンB3なので、それらが入ったビタミン剤や栄養ドリンクを培地へ混ぜる事で発芽する。添加する有機物はネットを検索するとじゃがいも、バナナ、りんごジュース等色々と書いてあるが、私が試すとカビが生え易くなるだけw。殺菌方法等を工夫すれば使えるし、苗の成長も良いのだろうが、残念ながら私はそこまで手が回らなかった。
それでは培地の作り方。
正しい作り方はYOUTUBEのビデオでご紹介。こちらも沖縄県教育委員会制作。
私が使ったのは、ハイポネックス培地。簡単に手順を書いておく。ハイターを使うので、換気が良い場所で作業して欲しい。
①最初に蘭の種を播種する容器の準備。私はビニール袋の底を四角く折ってセロテープで止めて使った。1Lで6~8つ準備。
②ハンドスプレーへ水を400mLとハイター0.4mLを入れて混ぜ、消毒液を作る。ハイターの計量は使い捨ての細長い注射器が便利。(タイなら薬局で売っている)
③水1リットルを火にかけて微粉ハイポネックス3g・砂糖20g・ビタミンB3配合薬1錠or1~2mL・寒天8gを溶かす。(支那製の小さくて安いデジタルスケールが便利)
④寒天がしっかり溶けたら火から下ろし、培地の溶液が65度以下に冷めるのを待つ。
⑤65度以下になったらハイターを1mLを加えてかき混ぜる。寒天は約40度で固まるので、ここから少し手早く。
⑥事前に準備した蘭を播種する容器の中へまんべんなく消毒液をスプレーし、培地の溶液を適量(100g程度)入れる。
⑦素早く袋の口を数回折ってセロテープで止める。⑥と⑦はまとめてやらず、1袋ずつやる。
⑧寒天が冷えて固まれば完成。埃が付かない様に袋へでも入れて保管。
⑨1週間ほど待って培地がカビないのを確認すれば播種出来る。
ハイターについて。ハイターの製造時は次亜塩素酸ナトリウムの濃度が6%あるが、時と共に劣化し、3年も置けば濃度は3%くらいになるらしい。購入は出来るだけ新しいのを。ハイターには水酸化ナトリウムも入っており、強アルカリ性なので気を付けて作業して欲しい。
アルカリ性のハイターではなく、中性から弱酸性で扱い易い次亜塩素酸水を使った無菌播種も可能。次亜塩素酸水は塩水の電気分解で作れる。
それでは種蒔きへ入ろう。
①最初に消毒液の準備。ハンドスプレーへ水を400mLとハイター0.4mLを入れて振れば完成。
②パンパンに膨らんで、今にもはち切れそうな蘭の種を準備し、紙の上でカッターナイフを使って皮を切る。
③事前に作った培地の袋を開封して種蒔き。
④播種した袋の中へまんべんなく消毒液をスプレーし、袋の口を数回折ってセロテープで止める。③と④はまとめてやらず、1袋ずつやる。
⑤袋へ蘭の品種名や播種日をサインペンでメモしておく。(日系メーカーのサインペンが消え難い。)
⑥明るい日陰(デンファレなら3000~5000Luxくらい?)へ置く。(照度計は支那の通販サイトなら千円くらいからある)
種を蒔いて2~3週間経った頃から少し緑っぽくなれば成功。\(^o^)/
最初はプロトコームと呼ぶ球形の種のような状態になって、それから葉が出る。
写真の左側が、種を蒔いて3週間。右側が2ヶ月。
蘭の苗を生産する業者は、発芽してから別の培地へ植え替えて成長を促すが、無菌操作しない私の場合はコンタミ(カビ)との戦いを避けて培地から出し、プロである妻へ頼んでココナツ殻やピートモスへ植えて管理して貰った。緑色になってある程度の大きさまで育っていれば、培地から出して育てる事が出来る。
肥料が多すぎたり、日光が強すぎると、ドロドロの苔が生えたりして、蘭の成長が悪くなったりする。朝夕に様子を見て水をやったりしなければならなく面倒w。箱を利用して簡易なクリーンベンチを自作して植え替えた方が簡単かも?
植え替えから半年くらいで・・・
こんな苗になった。
それを一株一株鉢へ植えて育てると・・・
可愛い花が咲いた。種蒔きから初花の開花まで1年半から2年くらい(だったと思うw)。
植物が好きな方はチャレンジされてはいかがだろう?
次回は有菌増殖編を予定。
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メモ程度の実験の記録は残しているが、既に読んでも思い出さなかったりなので、ネットへ記録しておこうと思い始めた。
既に「蘭の種を発芽させてみようじゃないか!」「蘭の種を発芽させてみようじゃないか!(その2)」と2回記事にしたが、過去の記事へ書かなかったポイントも加え、総まとめとしたい。今回は無菌増殖編だ。
先ずは蘭の交配。YOUTUBEへ沖縄県教育委員会が作られたビデオがあるので貼っておく。
交配が上手くいくと実が出来て、数ヶ月(カトレアだと半年近くw)待つと実が太ってパンパンになる。
実を取るのが早過ぎると種が熟してなく、実が割れてしまうとバイ菌が入ってコンタミ(カビだらけになる)の可能性が高くなる。
きちんとした設備と資材でやれば問題が無くても、家庭で簡易的にやるとちょっとした事が失敗の原因になる。
上の写真は蘭(カトレア)の実を割った物で、白いのが種。蘭の種は細かい粉状で、この種を大量にバラ撒いて条件が適した環境へ種が行き着くと成長出来る。木の上にも着生するのは種が風にのって飛ばされたからだ。種を小さく軽くする為にも蘭の種は未成熟な胚のみで、貯蔵養分をほとんど持っていない。では成長のための栄養をどうするかと言うと、蘭菌と呼ばれる菌類と共生してそこから栄養を得るのだ。一般的な植物と比べると発芽の条件は厳しく、蘭の種を鉢へ蒔いても発芽させるのは難しい。
商業的には容器の中へ栄養分を溶かした培地を入れて、そこへ種を蒔いている。上の写真の瓶の下側に見える黒っぽいゼリー状の物が培地だ。培地には栄養分があるので、普通に作ると培地に雑菌が繁殖しカビだらけになってしまう。そうなると当然蘭も生きていけない。
それを防ぐために、培地の入った容器を高温殺菌し、上の写真の様な無菌操作が出来るクリーンベンチの中で殺菌した種を容器内へ蒔いている。写真のような大げさな設備がなくても、衣装ケースを利用した簡易なクリーンベンチでも出来るそうだが、培地の入った容器の高温殺菌も家庭の圧力鍋では数をこなせない。
以前世界最先端の蘭農園のビデオを紹介したが、その映像の中で蘭の苗が植えてある容器がプラスティックなのに気がついた。
耐熱容器はあるかも知れないが、加熱殺菌しない別の方法があるぞ!と思ったのだ。
そこでネットを検索していて見つけたのが、梁川 正 農学博士が書かれた「家庭用漂白剤を用いたランの簡便な無菌増殖」。特許も取得してあるが、既に出願から20年経っている。
クリーンベンチも使わずに漂白剤(ハイターw)で殺菌して蘭を培地に植える方法。これは面白い!これなら私の趣味の多肉植物の増殖も出来るかもと喜んで、試しに妻から貰った蘭の種を蒔いたのだが・・
これがやってもやってもピクリともしない。いやマジでカビも生えない。www
そこからネットを検索し、紹介されている方法で使われているのが地面に生える地生蘭で、着生蘭では栄養が足りないのに気が付いた。ウィキペディアの無菌播種(むきんはしゅ)のページへは『着生ランの多くは、ビタミンB群やニコチン酸(ナイアシン)、その他の有機物が培地に含まれていないと生育が不良になる。』と書いてあり、ニコチン酸(ナイアシン)とはビタミンB3なので、それらが入ったビタミン剤や栄養ドリンクを培地へ混ぜる事で発芽する。添加する有機物はネットを検索するとじゃがいも、バナナ、りんごジュース等色々と書いてあるが、私が試すとカビが生え易くなるだけw。殺菌方法等を工夫すれば使えるし、苗の成長も良いのだろうが、残念ながら私はそこまで手が回らなかった。
それでは培地の作り方。
正しい作り方はYOUTUBEのビデオでご紹介。こちらも沖縄県教育委員会制作。
私が使ったのは、ハイポネックス培地。簡単に手順を書いておく。ハイターを使うので、換気が良い場所で作業して欲しい。
①最初に蘭の種を播種する容器の準備。私はビニール袋の底を四角く折ってセロテープで止めて使った。1Lで6~8つ準備。
②ハンドスプレーへ水を400mLとハイター0.4mLを入れて混ぜ、消毒液を作る。ハイターの計量は使い捨ての細長い注射器が便利。(タイなら薬局で売っている)
③水1リットルを火にかけて微粉ハイポネックス3g・砂糖20g・ビタミンB3配合薬1錠or1~2mL・寒天8gを溶かす。(支那製の小さくて安いデジタルスケールが便利)
④寒天がしっかり溶けたら火から下ろし、培地の溶液が65度以下に冷めるのを待つ。
⑤65度以下になったらハイターを1mLを加えてかき混ぜる。寒天は約40度で固まるので、ここから少し手早く。
⑥事前に準備した蘭を播種する容器の中へまんべんなく消毒液をスプレーし、培地の溶液を適量(100g程度)入れる。
⑦素早く袋の口を数回折ってセロテープで止める。⑥と⑦はまとめてやらず、1袋ずつやる。
⑧寒天が冷えて固まれば完成。埃が付かない様に袋へでも入れて保管。
⑨1週間ほど待って培地がカビないのを確認すれば播種出来る。
ハイターについて。ハイターの製造時は次亜塩素酸ナトリウムの濃度が6%あるが、時と共に劣化し、3年も置けば濃度は3%くらいになるらしい。購入は出来るだけ新しいのを。ハイターには水酸化ナトリウムも入っており、強アルカリ性なので気を付けて作業して欲しい。
アルカリ性のハイターではなく、中性から弱酸性で扱い易い次亜塩素酸水を使った無菌播種も可能。次亜塩素酸水は塩水の電気分解で作れる。
それでは種蒔きへ入ろう。
①最初に消毒液の準備。ハンドスプレーへ水を400mLとハイター0.4mLを入れて振れば完成。
②パンパンに膨らんで、今にもはち切れそうな蘭の種を準備し、紙の上でカッターナイフを使って皮を切る。
③事前に作った培地の袋を開封して種蒔き。
④播種した袋の中へまんべんなく消毒液をスプレーし、袋の口を数回折ってセロテープで止める。③と④はまとめてやらず、1袋ずつやる。
⑤袋へ蘭の品種名や播種日をサインペンでメモしておく。(日系メーカーのサインペンが消え難い。)
⑥明るい日陰(デンファレなら3000~5000Luxくらい?)へ置く。(照度計は支那の通販サイトなら千円くらいからある)
種を蒔いて2~3週間経った頃から少し緑っぽくなれば成功。\(^o^)/
最初はプロトコームと呼ぶ球形の種のような状態になって、それから葉が出る。
写真の左側が、種を蒔いて3週間。右側が2ヶ月。
蘭の苗を生産する業者は、発芽してから別の培地へ植え替えて成長を促すが、無菌操作しない私の場合はコンタミ(カビ)との戦いを避けて培地から出し、プロである妻へ頼んでココナツ殻やピートモスへ植えて管理して貰った。緑色になってある程度の大きさまで育っていれば、培地から出して育てる事が出来る。
肥料が多すぎたり、日光が強すぎると、ドロドロの苔が生えたりして、蘭の成長が悪くなったりする。朝夕に様子を見て水をやったりしなければならなく面倒w。箱を利用して簡易なクリーンベンチを自作して植え替えた方が簡単かも?
植え替えから半年くらいで・・・
こんな苗になった。
それを一株一株鉢へ植えて育てると・・・
可愛い花が咲いた。種蒔きから初花の開花まで1年半から2年くらい(だったと思うw)。
植物が好きな方はチャレンジされてはいかがだろう?
次回は有菌増殖編を予定。
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