少しだけ死を意識した

私は２０年近く胃潰瘍と仲良く暮らしている。何かの拍子に痛くなったり直ったりの繰り返しだ。タイへ移住する前は気になるので２年連続で人間ドックをやって胃カメラを飲んだが少し赤い程度で、痛くなる度に処方された薬を飲めば直っていた。タイへ来てからは生活上のトラブルは何度もあっても、日本の会社勤めのストレスと比べれば大した事が無かったのか胃の痛みとは縁が無かった。それが突然再発したのが１０月の下旬。最初はピリッと沁みるような痛みだったのがどんどん激しくなり、最後は横隔膜付近に何かが刺さったようにズン！と痛み始めた。薬局で胃酸の分泌を抑える薬を買って飲んだが大きな変化は無く、常に胃が痛むようになった。症状の進行の速さに恐れたし、こんなに胃が痛いのは初めてだった。病院へ行くかと思ったが、タイではちょっとした病気は日本より遥かに安く治療できるが、手術や入院となると治療費がポンと跳ね上がる。タイ国民なら３０バーツ医療制度もあるが、外国人の私には民間の医療保険へ加入してなければ経済的に助けてくれる制度は無いだろう。家業は背水の陣状態なのに私が手術・入院となったらどうしようと考える。我家の４件隣り（と言っても２００ｍ先）の御主人は癌が見つかったが、子供の大学の学費を気にして何も治療を受けず亡くなってしまわれた。私も同じ道を選ぶかなあと思った。
妻には病気を話しておこうと相談すると、度々胃が悪くなり通院する妻は、よく直る薬があると言う。皆さん笑われると思うが、胃が悪くて数週間薬を飲んでいる時に食中りをやってしまい、薬局で紹介された抗生物質を飲んだら胃の調子も良くなったと言う。そんな馬鹿なと私は言うが、何度も治ったと妻は言う。世の中には偽薬で病気が治る人が居る位だから、プラセボ効果でも良かろうと試しに飲んだら症状が軽くなった。まさかと思いながら１週間飲み続けたら治った。（笑）私は専門家でも何でもないので適用外の薬の名前は書かないが、そんな事もあるのだ。ピロリ菌でも殺菌してくれたのだろうか？元旦に酒を飲んでも、刺激物が入った料理を食べても平気なので完治したのだろう。今はホッとしているところだ。

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