わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉薬とガラス 3(釉の三要素)

2011-10-21 22:24:22 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
3) 釉の三要素(一酸化物、二酸化物、三酸化物)

   一酸化物とは、酸素が一個付いた物質です。具体的には、一般に「アルカリ元素」と呼ばれる物質で、

   Na2O、K2O、CaO、MgO、BaOなどです。

   同様に二酸化物とは、酸素が二個付いた物質で、代表が二酸化珪素(珪酸、シリカ、SiO2)で、

   「酸化元素」と呼ばれています。

   三酸化物は、三個の酸素が付いた物質で、主に酸化アルミナ(Al2O3)で、「中性元素」又は

   「アルミナ成分」と言います。

   以上の事は、以前よりお話ししている事で、一(二又は三)酸化物という言葉に置き換えただけです。

 ① 釉のガラスの本体は、二酸化珪素(珪酸、シリカ)です。

   シリカのみでガラスが出来ます。但し、シリカ単体で熔ける温度は、1685℃と高温です。

   一度熔けて固化したガラスは、規則正しかった珪酸の結晶構造が、不規則な構造(アモルファス)に

   成っています。即ち、再結晶化を防ぐ様に働き、より透明度のあるガラスに成ります。

 ② 一酸化物質の「アルカリ元素」と、「アルカリ土類」(Ca、Mg、Zn、Sr、Ba、Pbなど)は、

   二酸化珪素の融点を下げる、媒熔剤として働きます。即ち二酸化珪素の結晶構造に作用して、

   その構造を壊す働きをし、構造が弱くなった結果、熔ける温度が下がり、物理的、化学的にも、

   弱く成り、流れ易くなります。

   アルカリ成分が多くなれば、熔ける温度(融点)は下がります。但し或る限度以上になると、

   釉は熔けなく成り、ガラスに成りません。即ち、珪素と酸素のバランスが崩れ、酸素が多く成った

   結果です。限界は珪素:酸素 = 1:15~20程度と言われています。

 ③ 三酸化物(中性酸化物、主にアルミナ成分)

   アルミナは状況に応じて、媒熔剤として働いたり、逆に二酸化珪素の結晶構造を修復する

   働きをします。釉として使用する場合は、後者の場合が多く、粘性を増して流れ難くし耐火度を

   高くします。

4) 三要素の原料

  珪石はほとんどが二酸化物のSiO2で構成されています、石灰石もほとんどがCaOです。

  カオリンは、50%程度のSiO2と、40%程度のAl2O3から成っています。

  長石は、三要素を全部含んでいます。それ故、釉を調合する際には、どの材料を使うかによって、

  釉の性質も変わってきます。

  特に、SiO2とAl2O3は、原料の種類が或る程度限定されますが、一酸化物には種類が多く、

  その種類によって、釉に違う効果をもたらします。

 ① 一酸化物の種類と効果

以下次回に続きます。

   
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釉薬とガラス 2(釉とガラスは液体です)

2011-10-20 22:28:38 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
引き続き、「釉とガラス」の話を続けます。

 ③ 釉には粘性が必要です。

   釉薬の役目としては、施釉した部分は、ガラス質で表面を覆う必要があります。

   前回お話した様に、ガラスでは流動性が大きく、表面より流れ落ちるか、薄くしか残りません。

   (但し、流れ出ない様にして、使用する場合は、この限りではありません。)

   釉薬はある程度の厚みを保ったまま、表面に留まっていなければ成りません。その為には、粘性が

   必要になります。その粘性を与える物質が、酸化アルミナ(Al2O3)です。

   特に、陶器の釉には、大量に入っています。この粘性のお陰で、表面から流れ落ちずに、留まる事が

   出来ます。釉の厚く溜まった処では、空気が抜けきらずに、微小な気泡が残っている場合もあります。

2) ガラスと釉薬は液体である。

   一般に「どろどろ」した状態を、液体と言い、硬く固まった状態を固体と呼びます。

   それ故、ガラスも固体と認識されていると思います。

   しかし、化学的な定義では、固体とは、その物質特有の規則正しい結晶構造を持った物質を固体と

   呼びます。この固体が、温度上昇と共に、結晶構造が壊れバラバラに成った状態を液体とよびます。

   この壊れる温度を、融点といいます。 この液体状態でも、温度低下に従い再び、規則正しい

   結晶構造を持ちように成ると、固体に変化します。しかしながら、ガラスと釉は、高温の液体状態から、

   温度が低下しても、規則正しい結晶構造を持つ様には成りません。(この状態を「アモルフアス」

   非晶質と言います。) それ故、ガラスや釉は液体と位置付けられています。

 ) 低い温度でも、規則正しい結晶構造が出来ない理由。

   ガラスには、アルカリ類が入っています。釉には、アルカリ類とアルミナ成分が入っています。

   アルカリ類は、媒熔剤として働きます、即ちガラスの主成分の珪酸(シリカ)を熔かし易くする

   働きがありますが、これは珪酸の結晶構造を壊すと共に、再結晶化を阻害する働きがあります。

   アルミナ類(二酸化珪素、三酸化ホウ素、五酸化リンなど)は熔けた時に粘性のある液体と成り、

   これを冷却すると再結晶が妨げられ、「規則正しい結晶に戻らず、アモルファス状態で固化」

   します。

  ・ 釉は常温では硬い状態ですが、化学的には、非常に粘性のある液体と見なされています。

3) 釉の三要素(一酸化物、二酸化物、三酸化物)


以下次回に続きます。
   
   

   
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釉薬とガラス 1

2011-10-19 21:10:37 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
釉薬は、よくガラス質といわれます。しかし「ガラス」だとは言いません。

この両者は似ている様ですが、まったく同じと言う訳ではありません。

1) 原料としてはほぼ同じ様な成分が入っています。即ち主成分は、珪酸(シリカ、二酸化珪素、SiO2)で

   熔融剤(媒熔剤)としてアルカリ類(酸化、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等)

   が含まれます。大きな違いは、釉薬にはアルミナ成分(酸化アルミニウム、Al2O3)が多く

  含まれている事です。この成分の違は以下の現象となって現れます。

 ① アルミナ成分は粘性を与えます。

   板ガラスやガラス瓶などのガラスは、アルミナ成分が少なく、熔けた状態では、粘度が小さく、

   非常に流れ易くなっています。その為、熔けたガラスより空気や気泡などのガスが、抜け易く、

   気泡の無い透明なガラスに成ります。尚、美術的価値を持たせる為、わざと気泡を残すガラス製品が

   存在しますが、この場合には、アルミナ成分が加えてあると思われます。

 ② 既存のガラス瓶などを使う。

   以前よりある透明、緑、茶色の他に、近年は青(淡い、濃い)、紫、褐色、黒など綺麗な色の付いた

   ガラス瓶などが多く見受けられます。これらの瓶を砕き、色ガラスを使って見たいと思っている人、

   又は、すでにお使いの方も多い事と思います。気を付ける事は、これらのガラスは流れ易い為、

   例えば、粉末化したガラスを、糊(のり)類と伴に器などに振り掛ける事が出来ても、縦方向には

   流れ落ちてしまいます。ガラスを有効に使うには、外に流れ出ない作品の内側に使う事です。

   代表的な例として、タバコの灰皿があります。この場合、粉末にする必要はなく、大きな塊でも

   問題ありません。大きな塊であっても、熔けて水平に成ります。

  ) ガラスは釉よりも膨張係数(収縮率)が大きいです。

    器の内側に入れたガラスは、窯の中で熔けて体積が増えますが、次いで、窯が冷えるに従い、

    大きく収縮します。その結果、ガラス部分に貫入(亀裂)が入ります。(亀裂の大きさは、

    ガラスの層の厚さによって左右されます。(厚いほど大きくなります。)

    ガラス層が厚くなると縮む力が強くなり、器本体を破壊する事があります。

    破壊部分は、ガラス部分の最上部です。この部分は円周上に色が白くなっています。

    この色が白い部分は、ガラスが一度膨張した時の高さで、冷えて固まり収縮した状態との間です。

    それ故、釉の上にガラスを置く場合、この白さが目立たぬ様に、釉の色を白っぽくする事を

    薦めます。

 ) 皿などの、平らな作品に使う時には、ガラスを置く場所に注意する必要が有ります。

    一般には、釉を掛けた上に置きます。例え釉の下に置いても、ガラスの方が軽い為、釉の上に

    乗っかる形になります。流れ易いガラスは、平坦で水平に広がります。

    幾つかの色ガラスをモザイク状に並べ、文様にする事可能ですが、色同士の境界をしっかり

    出す事は出来ません。

   ・ 釉とガラスは見た目が明らかに違います。釉の上のガラスは取って付けた様な感じに成ります。

     それ故、私には、わざとらしく、なんとなく品が良くない感じがします。  

 ③ 釉には粘性が必要です。

以下次回に続きます。
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土を作る8 (廃物利用)

2011-10-16 22:02:42 | 粘土について
4) 廃物の土の利用。

 ① 轆轤作業では、削りの工程がありますので、必ず削りカスが出ます。

  これもれっきとした粘土ですので、再生して使う事が出来ます。

  但し、常に一種類の土を使っていれば、問題ありませんが、数種類の土を使用すると、どうしても

  混じり合ってしまいます。(勿論、削りカスを別々な容器に入れる様にすれば、問題は起こらない

  のですが・・)赤土や、顔料を入れた色の付いた土も、混入してしまいます。

  白っぽい作品には、仕上げられませんし、下絵付けをする作品や、透明釉を掛ける作品等には、

  向きません、しかし、他の釉を掛ける場合には、ほとんど問題ありません。

 ② 陶芸では、粘土類や釉の付いた手や轆轤、用具類を掃除して洗う必要があります。

  ) 釉の原料には、多くの金属物質等が含まれており、金属類の中には、有害な物も有りますので、

    直接下水道に流す訳にはいきません。少しずつ粘土類が流れ出しても、下水を詰まらせる恐れも

    あります。その為、途中に沈殿槽を設け下水(廃液)を貯めて、重い金属や粘土類を沈殿させ、

    上澄み液を下水に流す様にします。

 ③ この沈殿槽は定期的に掃除をする必要があります。ここから取り出したヘドロ状の物質は、

   なんらかの処理をする必要があります。

  ) 乾燥後燃えないゴミとして出す事もできます。

  ) 乾燥後、不要な容器入れ、本焼きの際に窯で焼き固めてから、燃えないゴミとして出す。

  ) ヘドロ状の物を、バケツに取り3~6ヶ月放置して置く。

     ヘドロの成分は、主に粘土類で、少量の釉が混ざり、その他、石鹸等の有機物質が含まれて

     います。数ヶ月放置して置くと、有機物は分解し、臭いもほとんど無くなります。

  ) 普通の粘土の様に使う。

     十分乾燥させたヘドロ状の中に入っている、異物を、土を砕きながら、取り除きます。

     髪の毛や小石の他、使用して流してしまった、皮や小物の用具が入っている事も多いです。

     これらを取り除いた後、水を少量加えて練ります。

     場合によってはこの状態で、寝かせれば更に、使い易くなります。

  ) 釉の混ざった土は使えるのか? ご心配無用で十分使えます。

     私の知人は、わざと粘土に釉を混ぜて、作品を作っている方もいます。

     粘土の中にガラス質のものが出来、強度が増すとも言われていますが、真偽のほどは不明です。

   ・ 粘土も釉も基本的には、ほとんど同じ成分です。釉は熔け易い様に、アルカリ成分が入って

     いて、熔ける温度が、粘土より100~150℃程度低くなる様にしてあるだけです。

   ・ この土には不純物などが多く、土の表面に斑点などが出る場合がありますが、割合趣ある質感に

     成る事もあります。(当教室にも、この土で作って見たいという人もいます。)

     但し、毎回同じに成る訳ではありませんが、釉も普通に掛ける事が出来ます。

   ゴミとして廃棄処分するよりも、活用する事を勧めます。

以上にて、「土を作る」の話を終わります。

次回は違ったテーマでお話します。

  
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土を作る7 (異物を混入2、泥漿)

2011-10-15 21:36:50 | 粘土について
3) 土に異物を混入する。

 ③ 燃える物質を土に練り込み、表面に塗る。

   作品の表面を凸凹させたり、火山の溶岩の表面の様に、大小の穴をが開ている様な表現を作る。
   
   ) 植物の種や、小さく丸めた紙、プラスチックなど、素焼き程度の温度で燃え尽きるものが
   
     理想ですが、使い方によっては、本焼き程度で燃え尽きる物質でも、使用できます。

   ) 表面を凸凹させるには、一般に外部から尖った物や「ぎざぎざの石」を押し当てたりします。

     しかしこれでは、閉じ込められた細かい空間を、作る事は出来ません。

     「ドベ」などに上記、種などを混ぜ込み作品の表面に塗れば、焼成後に不規則な蜂の巣状の

      穴を多数作る事が出来ます。(但し、余り大きい閉じた隙間が出来ると、爆発などの危険が

      出る恐れがあります。)

   ) 施釉せずに凸凹の状態でも良いし、釉を掛けても面白です。

      釉を掛けると、閉じ込められた空間から気泡が発生します。粘性のある釉では、噴火口の様な

      文様が出る事もあります。又、表面まで抜けきらずに、気泡が釉の中に留まる場合もあります。

    色々試してみると、思わぬ表情が見られます。
   
 ④ 泥漿鋳込み(でいしょういこみ): 石膏型に液体の粘土(泥漿)を流し込んで、作品を作る

   方法です。鋳込みの方法には、以下の二つの方法があります。

   (流動性を持たせる為に入れる解膠剤(かいこうざい)も、粘土にとっては、異物なものです。)

  ) 排泥鋳込み(はいでいいこみ): 中空の型に粘土を流し込み、一定時間後に中の粘土を流し

    出して、型の内側に残った粘土が作品になります。時間の差によって、肉厚が変化します。

  ) 圧力鋳込み: 型に作品の肉厚に相当する隙間を設け、そこに泥漿 流し込みますが、

    ある程度の圧力をかける必要があります。

   いずれの方法でも、粘土を液体状にし、流動性を持たせる為、「解膠剤( かいこうざい)」を

   加えます。解膠剤を添加する事により、少量の水で流動性をもたらす為、石膏型を余り濡らす事は

   有りませんので、繰り返し型を使う事が出来ます。

  ) 解膠剤には以下の物質があります。
  
   a) 水ガラス(珪酸ソーダ): 解膠剤の中で一番多く使われています。

   b) 炭酸ソーダ : 粉末のものを水に溶かして使います。

   c) ヘクサメタリン酸ソーダ: 上記の物質より一般的ではありませんが、効果が強いです。

   d) アクリル酸ソーダ: 射込んだ作品は直ぐに強度を持ちますが、可塑性に欠けます。

  尚、鋳込み成型については、後日、詳細をお話する機会が有ると思います。

4) 廃物の土の利用。

以下次回に続きます。
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土を作る6 (異物を混入1)

2011-10-14 21:45:08 | 粘土について
3) 土に異物を混入する。

  粘土に他の粘土や、顔料を混ぜる話をしてきましたが、それ以外の異物を加える事もあります。

 ① 一般的には、シャモットを入れる事です。

   シャモットは焼粉と言われ、粘土を一度焼成した粉末です。それ故完全な異物とは言えませんが、

   ここでは、異物類に入れておきます。

  ) シャモットは、土の収縮率を抑える働きがあります。

    即ち、肌理の細かい土は収縮率が大きく、大きな作品では特に大きく縮みます。その為、

    作品に「ひび」や「割れ」が入り易く成ります。この様な傷を作らない様にする為に混入します。

    又、入れる事により、若干重さも軽くなります。

  ) 但し、シャモットを入れると、可塑性が無くなり、ぱさぱさした感じに成りますので、

     多くは入れられません。

 ② 砂や「はぜ石」を入れる

  ) 縄文や弥生式土器などには、大量の砂が混入されています。(20~30%も稀ではありません)

   これも上記のシャモットと同じ働きをさせる為に、混入したものです。

   当時は、窯も無く野焼きの方法で焼成された為、火力も一様ではなく、部分的に焼き過ぎや、

   焼き不足が起こる事が多く、かなりの作品が失敗であった事が、推測されます。

   手近にある砂を混入させ、焼き縮みや偏熱による失敗を防いだと考えられます。

  ) 現在でも、装飾の意味で表面に、砂を擦り(なすり)付ける事が有ります。

   但し、表面が乾燥するに従い、ポロポロと剥がれ落ちてしまいますので、何らかの処置をしなければ

   成りません。釉などを掛けて焼成すれば良いのでしょうが、砂の質感が失われます。

   当然、砂は焼成温度程度では熔けませんので、そのまま変化せずに残ります。

   但し、海砂などを使うと、塩分を含んでいる為、若干、素地が赤く色付く事もあります。

  ) 砂と同様に「はぜ石」を表面に載せて装飾する方法もあります。

   砂との違いは、「はぜ石」は本焼程度の温度で熔け、半透明になる物質ですが、粒々はハッキリ

   残ります。

   信楽産の粘土で、古信楽(石はぜ土)と言う白い粘土があります。この中に含まれている

   白っぽい粒子は長石です。

   (胎土の中にあった小石が、焼成中にはじけ表面に露出した状態を「石はぜ」と言います。)

   (尚、古信楽には、「ハゼ石」の粒子の細かさによって、微、細、粗目があります。)

   粗目の土は、力強く荒々しく野生的な作品に仕上がります。

   「はぜ石」のみも販売されていますので、好みの荒さの「はぜ石」が購入されます。

    一般には、粘土の中全体に混ぜるのですが、装飾として、表面のみに埋め込む方法もあります。

 ③ 燃える物質を土に練りこみ、表面に塗る

以下次回に続きます。
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土を作る5 (練り込み3)

2011-10-13 22:14:31 | 粘土について
2) 土に顔料を練り込む。

  ② 練り込んだ土の使い方にも、工夫する事により、色々な用途があります。

   ) 化粧土として使う。

     一般に、化粧土としては、白化粧土が多く使われますが、顔料を入れて化粧土を作る事も

     出来ます。白化粧土と同じように使用出来ます。

   ・ 注意点は、化粧土に使う土は、本体と同じ土を使う事が、基本に成ります。

     土が違うと、収縮率の差によって、化粧土が本体から剥がれる場合があるからです。

     基本的には、生(半乾燥)の状態で使用します。素焼き後に使う場合には、調合を変える

     必要があります。

     尚、陶芸材料店では、各種の色の化粧掛用色土が販売されています。自分で調合するよりも、

     作るのが容易かもしれません。但し、市販されているものは、次に述べる、白化粧土に

     顔料を練り込んだ物と思われます。

  ) 市販の顔料を使わずに、ご自分で化粧土を作る事が出来ます。その調合例をあげると(重量比)、

   a) 白化粧土: カオリン 36、可塑性粘土(木節、蛙目粘土など)40、珪石40、カリ長石 15

    (合計 131と成りますが、理解しやすい値に外割りにした為です。)

   b) 黒化粧土: 白化粧土 100、炭酸カルシウム 5、弁柄 12、二酸化マンガン 2、酸化コバルト 6

   c) 明るい茶色: 白化粧土 100、三酸化クロム 1、弁柄 1

     濃い茶色:  白化粧土 100、三酸化クロム 2.5、弁柄 2.5 (いずれも酸化焼成)

   d) 緑化粧土:  白化粧土 100、三酸化クロム 3(酸化で緑、還元で灰色)

   e) 明るい青色: 白化粧土 100、酸化コバルト 0.3

     濃い青色:  白化粧土 100、酸化コバルト 3

   以上は透明釉を掛けて焼成すると、発色する配合例です。

   以下は透明釉を掛けると、色が変化しますので、素地のまま焼成する場合の調合例です。

   f) 緑系黒化粧土: 白化粧土 100、酸化ニッケル 1.5、五酸化バナジウム 10.5

     (酸化で暗い鶯色、還元で緑茶系黒。自然に色むらがでる。)

   g) 灰色系緑:   白化粧土 100、三酸化クロム 5、五酸化バナジウム 5

   h) 黄緑化粧土:  白化粧土 100、弁柄 1、五酸化バナジウム 9

   i) 明るい茶色:  白化粧土 100、弁柄 5、五酸化バナジウム 5

   j) ピンク系薄茶: 白化粧土 100、ルチル 9、酸化ニッケル 1

   k) ベージュ系:  白化粧土 100、弁柄 1.5、二酸化チタン 10.0

    (以上、参考資料: 焼き物実践ガイド 樋口わかな著 誠文堂新光社)


3) 土に異物を混入する。

 以下次回に続きます。

 

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土を作る4 (練り込み2)

2011-10-12 22:15:42 | 粘土について
2) 土に顔料を練り込む。

   顔料の練り込み方法: 練り込み用の顔料は、粉末で市販されているのが、ほとんどです。

   陶芸材料店では、100g、400~500gの単位で売られています。

   ・ 粘土はなるたけ色の白い土を使います。その方が発色が良く、綺麗な色が出るからです。

   ・ 粘土に入れる割合: 顔料には色が出易い色と、出難い色があります。黄色やピンクなどは、

     出難い色と思われます。それ故、練り込む量を、若干多くする必要があります。

     例えば、3%、5%、7%、10%程度が一般的で、当然量が増えれば濃さは強く出ます。

   ・ 必要な量を秤で測り容器に取り、水を少量加えて良く練ります。

     水分が多過ぎると、練り込んだ後の土が軟らかく成り過ぎ、直ぐに使用出来ませんから注意。

     (粉の状態で直接土に振り掛け、練り込む方法もありますが、顔料の粒々が出て綺麗に

      成りませんので、お勧めできません。)

   ・ 土は細かく切り分け、容器内の顔料を土で掬(すく)い取り、指先で練って混ぜます。

     指先で練った程度では、まだらな状態ですが、全ての土を混ぜ合わせてから、全体を菊練します。

     糸で切った切り口に、模様が出ていなければOKです。

   ・ 注意点は、複数の色を使って、練り込んだ土の色がいまいちハッキリしない事です。

     濃い色の場合は判別が可能ですが、薄い色の場合には、見分けが付かなく成る事です。

     その為に、色の名前を書いた紙の上等に置き、混同しない様にしておかなければなりません。

 前置きが長くなりましたが、前回の続きをお話します。

  ② 練り込んだ土の使い方にも、工夫する事により、色々な用途があります。

   ) 練り込んだ土を、練り上げの技法を使って、作品に仕上げます。

     手捻りの紐作りの要領で、色土を希望の文様に組み込んで行きます。

     又、色土で花文様や幾何学文様を作り、これらを数個繋ぎ合わせて、作品を作り上げる事も

     出来ます。例えば、色土を海苔巻きの太巻きの様に(又は、金太郎飴の様に)並べ、筒状に

     作ったものを、輪切りにし同じ図柄を多数つくります。

     複雑な文様も、基本の形を作り、上手に組み合わせて繋ぎ合わせる事によって、容易に作る

     事ができます。(代表的なものに、市松文様があります。)

    a) 手捻りの場合: 文様が続く様にする事です。意図的に切断する場合も有りますが、

      なるべく文様を繋げた方が、自然な文様に成ります。土同士の境目から「割れ」や「ひび」が

      入りやすいので、しっかり押さえて接着します。

      (「どべ」で接着する事もありますが、どの色の「どべ」を使うかも、十分考えてから

       使用する事です。)色の配分も重要ですし、地と色土のバランスも考える必要があります。

      又、板状に土を延ばす(タタラ)場合には、延ばす方向によって、模様が変化しますので、

      どの方向に延ばすべきかを、考えてから作業する事です。

    ・ この文様をどの様な作品に仕上げるのも、腕の見せ所です。

      例えば、文様を器の表面に貼り付け、浮き彫り風にするのも、一つの方法です。

    b) 練り上げでは、轆轤は削り作業で、形を円形に削り出すのには使いますが、轆轤挽きする事は

      有りません。文様が崩れてしまうからです。

    c) 色土の発色は、本焼きで焼成しないと、ハッキリ出ない色もあります。

      生の状態や、素焼きの段階では、模様が出ているのが確認できない場合が有ります。

      しかし、本焼きすれば、しっかり発色しますので、心配は要りません。

   ) 化粧土として使う。

以下次回に続きます。

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土を作る3 (練り込み1)

2011-10-11 22:00:03 | 粘土について
2) 土に顔料を練り込む。

  天然の土では、赤土(又はテラコッタ)などを除けば、色の付いた土の種類は少ないです。

  勿論、釉には豊富な色がありますので、釉を使って好みの色を出す事は可能ですが、釉と土の色では、

  多くの違いが有ります。釉は作品の表面を覆うガラス質で、表面がなだらかで、土の感触とは違います。

  ① 土に色を付けるには、各種の鉄や、酸化銅などの金属を混ぜる方法もありますが、一般には

    練り込み用と書かれた顔料が市販されています。青、緑、黄色、黒、ピンク、紫、白等があります。

   これらを単独で土に混入させますが、場合によっては、複数個の土を入れて好みの色にする事も

   可能です。但し、色数が増える程、鮮やかさ(彩度)は鈍くなりますので、注意する事です。

   尚、陶芸用の顔料には、上記の練り込み用以外に、絵付け用(上又は下絵)の絵の具や、色釉を

   作る為の顔料(酸化金属類)があります。これらは土に混入し無いのが原則です。

   (私は試した事がありませんが、場合によっては、使えるかも知れません。)

  ② 練り込んだ土の使い方にも、工夫する事により、色々な用途があります。

   ) 均一に土に練り込み、作品の本体(ボディー)に使う。

     土全体に均等に練り込み、普通の土の様に、手捻りや電動轆轤などを使い、作品を作ります。

     土の色を活かすのであれば、無釉の焼き締めにするか、透明系の釉を使う必要があります。

   ) 均一に練り込まず、マーブル文様に成る様に作品を作る。

      必要な色を決め、各々完全に混ざった土を作ります。地になる土にその土を混ぜ合わせ

      ますが、その割合で文様の色具合が変化します。基本的には菊練によってマーブル文様を

      作りますが、文様の粗さは、練る回数(5~8回程度)により、粗くなったり細かくなったりします。

      練り上げた後、真ん中から二分すると、外側は粗く、内側は細かくなっているはずです。

      どの面を表にして作品を作るかによって、模様も大きく変化します。

      切り口を変えれば、当然模様が替わりますので、工夫次第で面白い(又は奇抜な)文様が

      作る事が出来ます。

    a) 手捻りの場合: 文様が続く様にする事です。意図的に切断する場合も有りますが、

      なるべく文様を繋げた方が、自然な文様に成ります。

      又、板状に土を延ばす(タタラ)場合には、延ばす方向によって、模様が変化しますので、

      どの方向に延ばすべきかを、考えてから作業する事です。

      この文様をどの様な作品に仕上げるのかも、腕の見せ所です。

    b) 轆轤作業では、反回転方向上方に螺旋状の文様に成ります。

      轆轤に据える際、マーブル状態を確認します。表面は当然作品の外側に成ります。

      袋物(徳利や花瓶、壷など)の場合は、目に見える部分は、外側ですが、皿や鉢の様な

      作品は、内側が主に目に見える部分と成ります。それ故よく見える部分のマーブル状態

      (粗い、細かい、色の良し悪し)を確認しておく必要があります。

     ・ 轆轤作業中には、どんな模様になっているかは、解かりません。表面に泥(どべ)が付いて

       いるからです。竹へら等で、表面の泥を取り除けば、ある程度文様は出ますが、

       模様をしっかり出すには、乾燥後に表面を一皮削り取る必要があります。

       袋物の様に内部が見えないものでは、外から見える部分(口周辺)のみを削りますが、

       皿や鉢などは、内外全体を一皮削り取ります。その為、若干肉厚に作る場合も有ります。 

     ・ 削り作業によって文様が浮かび上がってきますが、削る量によって模様はどんどん変化

       します。一度削り取った文様を、復活させる事は出来ません。

       それ故、削り作業を、いつ止めるかの判断が難しいです。 

   ) 練り込んだ土を、「練り上げの技法」を使って作品に仕上げます。

以下次回に続きます。

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土を作る2 (ブレンドする2)

2011-10-10 22:01:13 | 粘土について
1) 土同士をブレンドする。

   土をブレンドする場合、少量(1~2Kg程度)ならば手で練る事が可能です。

   硬さが似通った数種類の土を、必要な割合の量に分け、重さを秤で測ります。各々の土を、

   糸で3~5分割します、分割する数は揃えます。

   これらの土を順番に積み上げ、中央を糸で切り二分します。各々を重ね合わせて、更に二分します。

   この行為を十回ほど繰り返すと、「千(正確には1024)倍X分割数X粘土の種類」の層になります。

   即ち三分割なら二種類で六千層余りとなります。これを菊練をする事により、完全に練り込めます。

   練り上がったら、中央に糸を入れ、その切り口を確認します。練が不十分ですと、マーブル模様に

   成りますので、再度練ってください。この様にすると、容易に土を均一にブレンドする事が出来まし、

   直ぐに使う事が出来ます。 尚、大量にブレンドする場合は、土練機を使う事も考えられます。

   大きな塊を闇雲に、練っても中々均一には成りません。

  前置きが長くなりましたが、前回の続きを述べます。

 ③ ご自分で土同士をブレンドする場合

  ) 土の色を変化させる為にブレンドする場合

    土に顔料を混ぜて色を変える話は、次回にお話しますが、ここでは土同士のブレンドの話とします。

    赤土は焼成すると黒っぽく成ります。その色の濃さは、含まれている鉄の量などに依存します。

    色が濃過ぎる場合など、薄める意味で他の土をブレンドする事もあります。

    又、釉の色も土の色を反映しますので、好みの土であっても、釉の関係で他の土と、ブレンドする

    事も有ります。

    注意: 生の状態の土の色と、焼成後の色は、一致しません。黒い土が黒く焼き上がる土もあれば、

      白く焼き上がる土もありますので、焼成後の土の色を確認しておく必要があります。

      大抵の陶芸材料店で販売されている土は、焼成後の色見本が置いてあるはずです。

      それを参考にして下さい。尚、酸化と還元焼成でも、土の色が若干変わるのが普通です。

  ) 土同士のブレンドは、好みの土にするのが目的です。

    しかし、ブレンドすればすれば、必ず目的通りの土が出来るとは限りません。

    又、土をブレンドする事は、その土の持っている、特徴(個性)を薄めたり、無くす働きを

    しますので、必ずしも、推奨できるものではありません。

    例えば、白い志野の土を、赤土などに混ぜて使うのは、なんとなく「もったいない」感じがします。

    本来白い事が特徴の土は、その白さを活かして、作品を作るべきだと考えるからです。

  ) 作品や作り方によって、土を変えている事と思います。

     (但し、信楽の土の様に、どんな作品にも向く万能な土もありますが)

    土の種類に拠って、作品の表情も大きく変化しますので、ご自分に合った土を見つけブレンド

    する事なく使う事を、勧めます。

2) 土に顔料を練り込む。

以下次回に続きます。
 
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