焼き物は、一部の芸術作品などを除き、一般に使用する物は、消耗品として考えた方が無難です。
焼き物は腐敗する物ではなく、数百年又は数千年でも、余り変化せずに、現在の形や色を保持し続け
ます。大事に使えば、半永久的に使える代物です。ペルシャ陶器などは、焼成温度が低く釉にも
不純物が多い為、数十~数百年後には、表面のガラス質が風化し濁り、透明度が落ちると言われて
いますが、現代の陶磁器ではその恐れは少ないです。
但し、実際には何らかの理由で、使用中に破損するのが大部分です。
勿論、大切な焼き物は修繕する事も可能ですが、ほとんどは廃棄処分の運命にあります。
1) 焼き物、特に器類は基本的には使われる事を前提に作られています。
それ故、陶芸作家と呼ばれる人は、箱に仕舞われるのではなく、日常で使ってくれる事を願って
いる人がほとんどです。使われる事で、焼き物の存在価値があるとも言えます。
それ故、日常的に使用する物は、破損するのは当然かも知れません。
2) 上手に器を扱う方法。
焼き物を良い状態で長持ちさせるには、それなりの方法があります。
① 新品の焼き物を使い始める前に。
) 無釉の焼締の陶器や、粉引、萩焼など軟陶と呼ばれる器は、吸水性がありますので、その
まま使うと料理の汁や油気などが器に滲み込み、汚れて取れ難くなります。
その為、新品の焼き物は、米の研ぎ汁(とぎじる)で煮沸すると良いと言われています。
土同士の粒子間や釉の貫入などの隙間に、粘りのある研ぎ汁が入り込み、乾燥で固まる事で
隙間を埋める為、染みや汚れから守ります。
尚、基本的に磁器はほとんど水を透しませんし、貫入も出来ませんのでので、新品であっても、
特に上記の処置を取る必要はありません。
) 土鍋の場合には、最初に「おかゆ」を焚く事です。「おかゆ」が土や釉の隙間に入り、乾燥後に
固まって糊状になり、目止めの役割を果たしますので、出し汁や醤油などの調味料の染み
込みを予防します。 更に、機械的、熱的にも強度を増す働きがあります。
・ 土鍋の底に着いた水滴は、火に掛ける前に拭いて置く事です。
② 日常使用する土物(陶器)は、使う前に水を含ませると、汚れの予防になり、更に一段と
「みずみずしさ」が出て、器の艶(光沢)が増します。
) 水又はぬるま湯に漬けて、十分水を含ませて軽く水分を取ってから、料理を盛ります。
) 無釉の備前焼などは、さっと水に潜らせるか、霧吹きで霧を吹いて濡らします。
尚、汚れの目立つ色と比較的目立たない色があります。白色は良く目立ち、黒、茶、緑色は目立た
ない色です。
③ 使用後は速やかに洗い、十分乾燥させます。
) 吸水性のある陶器は、湿気を十分取らずに食器戸棚などに収納すると、黒黴(カビ)が発生
する恐れがあります。特に重ね合わせた場合で、高台の内側や高台脇に発生し易いです。
) 洗った後に、熱湯を掛けると乾燥が早まりますが、火傷に注意する事です。
④ 上絵付けされた作品の表面は、強く擦ってはいけません。絵の具が低い温度で表面に焼付け
られた状態ですので、ゴシゴシ洗わない事です。特に金彩や銀彩は絵が剥がれ落ちます。
又、金銀彩の色絵の食器は、電子レンジは厳禁です。
⑤ 汚れや茶渋などの付いた湯呑みなどは、台所用の漂白剤に漬け置きする事で、取る事が出来
ます。但し、金銀彩の物は色落ちする場合がありますので、避けた方が良いでしょう。
頑固な汚れやカビのある器は、素焼きの際一緒に焼成する事により、新品同様になります。
この場合、釉の色が変わる事はありません。
以下次回に続きます。
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