わ! かった陶芸 (明窓窯)

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素朴な疑問 127 長石と灰で釉を作る1

2015-05-03 22:50:08 | 素朴な疑問
前回までは、市販の石灰系透明釉三号に他の材料を添加して、別の釉を作る方法を述べてきましたが

今回からは、長石と各種の灰や他の原料の組み合わせで、別の釉を作る方法に付いて述べます。

長石はガラスの素となる原料ですが、融点が高い為、そのままでは熔けず釉に成りません。

熔け易くする為に熔媒として、灰を使う場合があます。灰を用いた釉は灰釉(かいゆ、又はいゆ)と

呼ばれています。主に民藝調の作品に使われる事が多く、灰釉を好んで使う陶芸作家も多いです。

当然、長石の種類も多く、産地によってその性質も異なり、釉の調子も違いますので、ここでは

比較的容易に入手可能な福島長石を使う事にします。同様に灰の種類も多く、その性質も異なります

ので、ここでは比較的安価である「合成土灰」や「合成藁灰」と、やや高価ですが入手し易い

「天然松灰」や「天然栗皮灰」等との組み合わせに付いてお話します。

更に釉と素地の相性を良くする為に「カオリン」を添加します。「カオリン」は入手が容易な

「朝鮮カオリン」を使います。

 ・ 注: 合成灰は天然灰に含まれる成分を、人工的な薬品(原料)に置き換えた物で、天然物に

   多い、産地、季節、部位(幹、根っ子、枝など)によるバラツキの差をなくし、品質を安定的

   な物にしたものです。逆に、雑味に乏しく(不純物が少ない)味気ないと思う方もいます。

  ・ 注: 以下に調合例を記載しますが、割合は乾燥時(粉末状態)の重量比です。

1) 福島長石に合成土灰を添加した釉。

  福島長石は長石の中でも代表的な物で「正長石(カリ長石」です。シリカ(SiO2)が主成分

  で、単味ではかなり高温でしか熔けません(1533℃)。高温で熔けても透明感はありません。

  更に熔けたとしても縮れや貫入が入ります。

 ① 灰系透明釉。貫入も少なく、ほぼ透明な状態に仕上がります。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:カオリン = 65:25:10

 ② 長石釉。 志野釉が代表的な釉です。透明感のあるやや白濁した釉です。

   白濁の原因は、長石特有の大小の貫入がある為で、光の乱反射で白く見えます。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:カオリン = 80:10:10

 ③ 白マット釉。 マグネサイトの結晶作用により白いマット釉になります。天草陶石は失透感が

  増す働きをします。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:カオリン:天草陶石 = 60:15:15:10

 ④ 黒マット釉: 上記白マット釉に10%の弁柄を添加する。

 ⑤ 緑マット釉: 上記白マット釉に7%の酸化銅を添加する。

 ⑥ 藁(わら)白釉 : 藁灰に多量に含まれる珪酸分が釉中に白い粒子として残る為、白濁し

  ます。 藁灰は釉に流動性をもたらし、流れて筋を付ける場合もあります。

  調合例 : 福島長石:合成土灰:合成藁灰 = 30:30:40

 ⑦ 織部釉: 福島長石:合成土灰:酸化銅 = 70:30:7

 ⑧ 瑠璃釉: 福島長石:合成土灰:酸化コバルト = 70:30:0.3

以下次回に続きます。

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