釉の粘性(粘度)が大き過ぎると、「ガス」が閉じ込めらえ、微細な「ガス」が釉中に無数に
残り光沢を減らします。
又、「ガス」が逃げ去っても、その痕が「ピンホール」や「ブク」となって現れます。
逆に粘性が小さい場合には、焼成温度と焼成時間を上手に管理しないと、釉が流れ落ちます。
即ち、焼成範囲が狭くなります。更に、素地が多孔質の場合、釉が素地に吸い込まれ、
光沢を失う場合もあります。以上が、前回までにお話した事です。
2) 粘性の調整には以下の方法があります。
① 粘性を大きくする方法(流れ難くする:流動性を小さくする)。
a) 釉の粘性を大きくする材料には以下の物質があります。
酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO2)、 酸化クロム(C2rO3)、
酸化錫(SnO2)、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)などです。
b) 上記材料を添加する事により、粘性を大きくする事が可能になります。
流れ過ぎる釉の場合に応用します。
② 粘性を小さくする方法(流動性を大きくする)
a) 釉の粘性を小さくする材料には、以下の物質があります。
酸化第二鉄(弁柄、Fe2O3)、カルシウム(CaO)、マグネシウム(MgO)、
バリウム(BaO)、マンガン(MnO)、ニッケル(NiO)、チタン(TiO)
などです。 主にアルカリ類です。
・ 特に、粘性を小さくする物質には、カリウム(K2O)、ナトリウム(NaO)、
リチウム(Li2O) があります。
・ カルシウムは少量の場合には粘性を下げ、量が増えるに従い、粘性を大きくします。
・ 硼(ほう)酸は低火度では、粘性を大きくし。高火度釉では逆に粘性を小さくします。
・ アルカリ成分を増す事は、釉の融点を下げる事でもあります。
3) 流動性のある釉を利用する。
① 流動性を持たせる事は、結晶釉として必須条件です。
一度釉に熔けたガラス中に、冷却と共に結晶が目で見える程の大きさに発達したのが
結晶釉です。
a) 酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化チタン、酸化マンガン、酸化鉄などで結晶を作りだしますが
その際、結晶の種(つぶつぶ、粒子)を付けると、良い結晶が発達します。
b) 更に、銅やコバルト、ニッケル等を添加すると、色の付いた結晶と成ります。
c) 冷却するに従い、釉中の金属が飽和状態になり、種を中心に析出し発達します。
その際、流動性のある釉中では、金属がある程度移動する必要があります。
② 流紋釉(海鼠釉=なまこゆ)は流動性のある釉です。
a) 釉の流れる性質を利用して、大理石文様(マーブル)や、筋状に流したり、
複数の釉をぼかし文様にしたりして、色による装飾 を目指す釉を流紋釉といいます。
b) 海鼠釉は、明治の初め頃から、信楽焼きの火鉢の釉として利用されています。
土灰釉に銅、コバルト、マンガン、鉄を添加し、青、黒青、乳白の流れ紋を作っています
以下次回に続きます。
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