わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 90 同じ釉なのに色が異なる理由

2015-03-08 22:21:13 | 素朴な疑問
同じ釉の名前であっても、メーカーが異なれば発色の違いがあるのは、当たり前かも知れません。

各々のメーカーでは、釉の調合の細かい点は秘密ですので、違いが出ます。

更に、窯の種類や燃料の差、窯の構造の違いによって、釉の発色具合は異なるのは、良く知られて

いる事柄です。

今回問題にするのは、同一メーカーの同一釉を使い、同一の窯で同時に焼成した場合にも、違いが

発生する事です。その理由、原因などを考えたいと思います。

1) どの様な変化が現れるか?

 ① 酸化と還元方法による違い。

  窯内の雰囲気はどの場所でも同じではありません。還元が強くなる場所、中性炎の処、酸化が

  強く出易い場所などがあり、更にそれらも刻々変化する事もあります。この様な状態では、

  釉の色の違いが発生します。

  ) 釉には酸化と還元では大きく異なる種類のものがあります。

    代表的なのが、銅を添加した釉で、織部釉、青銅釉等です。酸化では緑色になり、還元では

    赤、小豆色、ピンク色などを呈します。その他、石灰透明釉が上げられます。

    透明釉ですから、素地の色がそのまま出るはずです。しかし酸化では明るい色になり、

    還元ではグレー掛かった発色に成ります。特に素地に赤土などが混入している場合は、

    顕著にグレーが現れます。同様な事は、志野釉の様に白い釉でも起こります。

  ) 釉の種類によっては、酸化炎で焼成すべき物や還元で焼成すべき物、両方とも可能な物が

    あります。市販されている釉では、必ず焼成温度範囲と共に表示されています。

    それ故、酸化にすべき処を還元になってしまった時や、逆に還元の処が酸化炎になった

    場合には、所定の色には成りません。

  ) 前回お話した様に、炎の先端部は酸化に、炎の根元や途中では還元炎に成り易いです。

    それ故、酸化炎は、煙道に近い窯の底の周辺が良く出、還元は天井近くに出易いですので、

    窯詰めの際、考慮する必要があります。

 ② 窯の温度による違い。

  ) 基本的には、窯内の最高温度は一定にすべき物で、その為「寝らし」作業を行います。

    しかし、実際には5~10℃前後の高低があるのが普通です。窯の容積や作品の数等に

    よって温度差も異なります。必要な温度より高くなってしまった場合、マット釉でもいくら

    か光沢が出る場合があります。逆に光沢釉でも温度が低いと、熔け不足によるマット状に

    なる事もあります。

  ) 結晶釉の場合、熔け過ぎると、棚板まで流れ落ちて仕舞う事もありますし、熔け不足の

    場合には、結晶が出ない事に成ります。尚、結晶の出具合の差は良く解かっていません。

 ③ 施釉の濃淡による違い。

   釉には、厚掛け用と薄掛け用、普通の厚みに掛ける釉があります。厚く掛ける代表的な釉薬が

   青磁釉で、薄掛けの代表的なのが、焼き〆釉や緋色釉などです。その他の釉では適度の厚みに

   施釉しますが、どんな釉でも薄く掛けると、茶~焦げ茶になります。

 ④ 窯の冷える速度による、釉の発色の違い。

  ) 釉の良い黒色を出すには、急冷が良いと言われています。特に鉄釉の黒天目では、徐冷に

   すると柿釉の様に、明るい茶色に発色し易いです。その為、黒色を出すには窯の下部に窯

   詰めすると良い結果が得られます。即ち、窯は下部から徐々に冷えるからです。上部に

   窯詰めすると、茶色になります。

  ) 黒天目の場合、一つの作品の片側が黒で、反対側が茶色に発色する事があります。

   これは冷却速度のみによる物ではなく、釉の濃淡とも関係しています。即ち濃く掛けた部分は

   黒くなり、やや薄めの部分では茶色に成り易いです。

以下次回に続きます。
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