わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸91(瀬戸 浩)

2012-04-10 21:58:43 | 現代陶芸と工芸家達
ストライプ(縞模様)文様の陶板食器や陶壁、面取りした壺などを作り、国内外で活躍していたのが

栃木県益子に在住する陶芸家の瀬戸 浩氏です。

1) 瀬戸 浩 (せと ひろし): 1941年(昭和16) ~ 1994年(平成6)

 ① 経歴

  ) 四国徳島市元町で土木技師の瀬戸豊氏の長男として生まれ、鳥取市で育ちます。

    1964年 京都市立美術大学工芸科の陶磁器専攻を卒業します。この間富本憲吉氏や、近藤悠三、

    藤本能道氏などの教えを受けます。

    在学中に、新匠会展で受賞し、日本伝統工芸展で入選を果たします。

    1965年 伝統工芸新作展に初入選し以後連続入選を果たします。同年栃木県益子町に移ります。

    移転の理由は、美大の先輩である、益子在住の加守田章二氏の誘いがあった為との事です。

  ) 1971年 日本陶芸展で「灰釉刷毛目鉢」が入選し、同年 第十八回日本伝統工芸展で

    「無釉刷毛目大鉢」が入選します。翌年、東京青山で個展を開催します。

    (以後数回個展を開いています。)

    1980年 東北新幹線宇都宮駅に、陶壁「栃の木賛歌」を製作します。

   翌年には、栃木県の自治医科大学に陶壁を、その翌年には、宇都宮市の小学校にも陶壁を

   製作しています。

  ② 瀬戸 浩氏の陶芸

   富本憲吉氏の「赤絵金銀彩羊歯文大壺」を見たのを切っ掛けに、陶芸家の志を持つ様になります。

   富本氏が主任教授の京都美術大学に入学し、憧れの富本氏の指導を受ける事になります。

  ) 富本氏の下では、伝統的な物や、民芸、オブジェ、量産の為の食器のデザイン等の基礎的

     事項を学びます。

  ) ストライプの板皿は、瀬戸氏の重要なテーマに成っています。

   a) 特に1980年 日本陶芸展で受賞した「黒釉銀彩ストライプの板皿」は、黒釉を施した四角の

     板皿に、銀彩で縞模様(平行文)を描いており、デザインの良さと、技術的良さによって

     評価された作品です。又「用のデザイン」を重視し、重ね合わせて仕舞える様な形状にしたり、

     裏面も丁寧にデザインが施され、テーブルを傷つけない様に滑らかに仕上げています。

     作品としては「ストライプの波皿」(1976)、「ストライプの板皿」(1982=十二角形の板皿)

     「ストライプの板皿」(1983=正方形の板皿)などがあります。

   b) 「ねじれた輪」の作品

     米国からの帰国後、作品はオブジェ風になってゆきます。赤、黒、黄、緑等の洋風の上絵の具や

     金、銀を使い鮮明なストライプに発展させます。その代表的な作品が「陶彩・捩れた輪」(1979)の

     作品です(高14X径43.5cm)。この作品は、鑑賞を目的とした作品で、平行した溝は大工用の

     鑿(のみ)で彫られた立体造形です。

  ) 面取りの壺:サカーボールの様に大胆にカットされた面を持ち、青釉やストライプ文を

     施しています。作品として「釉裏青釉面取壺」(1982)、「橙緑彩金条文壺」(1979)等があります。

    ・ 橙緑彩とは本焼きした作品に、橙(だいだい)色と緑色の上絵の具で彩色した物で、

      熔ける温度を調整するのに、硼砂を入れ熔け易くしたり、土を入れて熔けに難くしています。

      又、色釉同士が混ざり合わない様に、素地に鑿を使って溝を設ける等の工夫をしています。

  ) 釉裏青釉の作品

     陶土の作品を素焼後、酸化コバルトを含む磁土の泥漿(でいしょう)で、化粧掛けしもう一度

     素焼きします。更に、糠(ぬか)白釉を掛け、塩窯で1300℃程度で焼成した作品です。

    作品としては「板皿作品二十・月」(1982)、「板皿作品十九・星雲」(1982)等があります。

  ) 陶壁の作品

    a)  東北新幹線宇都宮駅に設置された、「陶壁・栃の木賛歌」(1981)は四角い陶板を縦横に

     規則的に並べた作品で、陶板には、ストライプ文様の物と、栃の木の葉が表現された物とが

     ランダムに並んでいます。(縦3.11 X 横11.7m) 


次回は(前衛陶芸、オブジェ)に続きます。
 
コメント
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