わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸90(會田雄亮)

2012-04-09 21:44:11 | 現代陶芸と工芸家達
陶壁の作品で知られる異色の陶芸家、會田雄亮氏は、各地の公共施設や企業の建物の内壁や外壁、

庭園などに多くの作品(環境造形品)を設置しています。

近年では、色土を組み合わせて模様を作る練込技法による、食器類も製作しています。

1) 會田雄亮(あいだ ゆうすけ) : 1931年(昭和6) ~

 ① 経歴

  ) 1931年、東京都に生まれる。

     1956年、千葉大学都市計画学科を卒業し、宮之原謙氏に師事し陶芸を志ます。

     宮之原謙氏に技術的な事は勿論、陶芸の厳しさや芸術を創造する事の基本的な心得も学びます。

     1961年 渡米後、ボストン美術館附属美術学校講師になります。その間 ベニントン・ポーター

     (株)のチーフデザイナーとして勤務し、生活用品のデザインを研究します。

   ) 帰国後の1965年、日本デザイナークラフトマン協会(現 日本クラフトデザイン協会)理事

     及び日本ニュークラフト展(現日本クラフト展)の審査員になり、同年 茨城県立県民文化

     センターに陶壁を製作設置します。これ以降、各地に陶壁を作り続けます。

     1967年 杉並区立杉並会館 ロビーに、1968年 殖産相互銀行本店 「陶による造形」の陶壁を

     製作しています。その後も大阪伊那製陶ビル(1970)、 京王プラザホテル(1971、縦3x横8.4m)

     名古屋観光ホテルに「 陶による造形、陶壁、石庭」(1972)、海運ビル (1973)、
  
     新宿三井ビルディング (1974)、オークラホテル新潟 (1975)、 茅ヶ崎の家 (1975)

     大生相互銀行本店 (1978)、海事センタービル (1978)、 興亜火災海上保険本社 (1979)

     豊中ポケットパーク(1980)、 大阪工業大学図書館 (1980)、 日本銀行大阪支店 食堂(1980)

    など多くの公共的建築物などに、毎年複数の陶壁を作り続けています。

  ②  會田雄亮氏の陶芸

   ) 現代の建築物は鉄とコンクリートとガラスにより構成された、機能的な空間です。

      そこには冷たく人間的な情緒を感じさせる要素は希薄です。特に壁は単調な大きな平面を

      有する為、人を拒絶するかの様に感じられます。この壁に陶土による造詣物(焼物)を

      取り付け、建物との融合を図り、見る人に安らぎを与えるのが陶壁です。

   ) 陶壁は原理的に「ユニット」の繰り返しによって、構成されています。

      それは単に、焼成する為に「ユニット」化した物ではなく、「ユニット」は創作に深い美を

      持ち、緻密に計算された設計を元に、個(ユニット)と個を組み合わせた集合体によって

      表現されます。表現する物は、具体的な物から抽象的、幻想的あるいはドラマチックな構図

     まで、多種多様で知的空間を演出しています。

   ) モニメントの製作

     室内や外壁に設置する陶壁の他に、その作品が自立し屋外に置かれる作品(モニメント)も

     手掛けています。これらは平面構成ではなく立体構成に成っています。作品も巨大で、

     新宿三井ビル広場の「モニメント」(1975)は高7x横10mもあります。

     神戸ポートアイランド市民広場 の「モニメント」(1981)は高19x横56mの大きさです。

   ) 都市の現代建築に伴う庭園にも興味を示し、京王プラザホテルのラウンジ庭園の

     「陶と水の庭園」や 新宿三井ビルの「広場の庭」、 第一勧業銀行本店の「陶と水の流れ」

     などの庭園(長31x幅2.5m)も、石を嫌い陶器使って作っています。

     都市の喧騒の中に、水の流れと音を取り入れ、庭の静寂さを演出しています。

   ・ いずれの場合も、大量の粘土を焼く事になります。しかも破損などの失敗は許されません。

     焼上の調子も一様でなければ成りません。この様な事を考えると、途方も無い作業と努力が

     必要で、強靭な精神性を有していなければ成功しません。

   ) 練上の器: 2~3色の異なる色土を、轆轤挽きやタタラ(板)造、型起しなどで成形

     する方法を練上と呼びます。色土のユニットをいかに選ぶか、どの様に組み合わせるかが

     重要に成ってきます。練上は絵付けでは表現が困難な場合が多く、土の色を生かす為、

     透明系の釉を使う事に成ります。

     作品としては、「練上コーヒーセット」(1978)、「練上馬上杯」(1979)、「練上放射大皿」

    (1980)、「練上富士山文組皿」(1981)、「練上放射状四方鉢」(1982)、「練上矢羽文鉢」(1982)

    「練上十二角鉢」(1982)などがあります。


次回(瀬戸 浩氏)に続きます。
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