わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸52(大樋年朗2)

2012-02-21 22:06:54 | 現代陶芸と工芸家達
前回の続きです。

 ② 大樋年朗氏の陶芸

  ) 展覧会の出品作品。 

   a) 初期の作品には、置物や香炉などの陶彫風の作品が多く、やがて花器や壷、大皿などの作品を

     作る様に成ります。

   b) 茶道具などの大樋焼きは、手捻りによる楽焼きで製作しますが、展覧会等の出品作品は、

     轆轤挽きした物と手捻りによる物、楽焼と本焼きの両方で製作した物がある様に思われます。

   c) 作品の表面には文様が施されている場合が多いです。主に鳥類が多く、次いで魚や花を

     取り入れています。その表現方法も、象嵌や印刻、掻き落しや浮彫風の物、更に釉彩による

     方法が取られています。釉は伝統的な飴釉以外に、黒釉や銅を含む釉を酸化焼成して得られる

     緑釉(りょくゆう)を使っています。

   d) 主な作品は、「緑釉鶏文壷」1957年 日展特選と北斗賞を受賞作品で、黒に近い緑釉で、

     時を告げる一羽の鶏が数羽居るように表現され、浮き彫風(レリーフ)に、デザインされて

     います。二度目の特選と北斗賞を受賞した作品「釉彩・魚紋花器」(1961年)は、シンプルな

     丸味を帯びた方形の花生けで、数匹の魚が一方向に泳いでいる姿を浮彫風に表しています。

     径が44.5X高さ27cm の大きな作品ですが、これも手捻りによる作品です。

     「花と鳥象嵌文花器」(1976年)は、土に酸化鉄を加え素地を黒く発色させています。

     更に印花文による白象嵌を加え、窓には釘彫りによる鳥や花を描いています。

  e) 釉彩とは、上絵による色付けの事で、本焼き後に金彩や金粉を施す技法です。

    「花容(かよう)」(1972年)は、オブジェ的な作品で、「りんご」を半分に切断した様な形を

    しています。切断面はオレンジ色で、皮に当たる部分は漆黒に金粉が無数に浮いている感じの

    する作品です。

  ) 陶壁の作品

   a) 1968年 北陸放送会館ロビーに、陶壁の製作依頼が有ったのが、陶壁を作る切っ掛けに成ります。

    5m四方の大作で、30cm四方の陶板を基本構造にし、大小様々な陶板を抽象的な表現で配列

    しています。緑系と黄色系の色調で統一し、陶板の凹凸は光と影を生じ立体的な感覚を

    醸し出しています。

   b) 上記作品以降、 金沢市役所、石川県厚生年金会館、小松空港などの公共施設や、平成2年に

     開館された、大樋美術館の外壁にも彼の陶壁が使われています。

     最近の作品は、2011.12.14 に完成させた、石川トヨタ野々市店の陶壁です。

     その他多くの陶壁を手がけ、その数は100以上との事です。

   c) 陶壁の作り方は、大きな一枚の作品を作り、それを数枚に分割して焼成します。

     難しい処は、作品の肉厚が厚く数cm~十数cmと偏肉になり、乾燥や焼成の際に縮みに

     差が出易い事と、亀裂が入り易く、更に色彩を一定に保つ必要があります。

     隣同士の陶片の色などは、連続性が必要であるからです。     

  ) 大樋焼本家十代長左衛門窯 大樋美術館 : 金沢市橋場町2-17

     館内には、長左衛門歴代の作品を中心に、大樋焼330年の歳月と現在及び、新たなる伝統の

     姿を表す為、三つの展示室が用意されています。

     尚次代を担う、長男年雄氏の作品も展示しています。

    (年雄氏については、機会があれば取り上げる予定です。)

次回(加藤)に続きます。
    
コメント
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