わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 308 陶芸の手順とは25(本焼きの手順5)

2017-10-01 13:29:18 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

 ① 設備の点検作業。 

 ② 窯に点火(又はスイッチON)。

  ⅰ) 窯を焚く天候と時間。

  ⅱ) 電気窯の点火方法。

  ⅲ) ガス窯の点火方法。(以上が前回の話です。)

  ⅳ) 灯油窯の点火方法。

   以前は陶芸の窯と言えば、燃料の安さから灯油窯が多かったのですが、近頃は電気やガス窯を

   使う人が増えています。燃料が値上がりした事と、操作の難しさ及び騒音や黒煙、匂いなど

   近隣への悪い影響も出易く、住宅地などでは敬遠される様に成って来たのが原因と思われます。

   又、灯油用のバーナーは、電気で作動するブロアー(送風機)と一体に成っていますので、

   窯の横方向のスペースが他の窯より若干広くとる必要があります。更に灯油缶(タンク)等

   の設置も必要になります。但し、ガス漏れによる爆発が無い為、危険性は少ないです。

   a) 灯油窯もガス窯と同様に倒炎式が多いです。

    窯の両側面より噴出した炎は側壁を這って天井まで上り、その後下降に転じ窯底の煙道から

    煙突に抜ける構造に成っています。その為、比較的窯内の温度は一定になる利点があります。

   b) ダンパー(バカ穴)とドラフト、及び色見穴に付いて。

    ブロアーによる強制吸気ですので、煙突の途中に設けられているドラフトは、煙突の引きの

    影響が弱くなり易いです。それ故、外気を取り入れる煙突の底近くに設けられたダンパーの

    効果は大きいですので、ダンパーによる調整で煙突の引きの強さを調整する事に成ります。

    点火の際には、ドラフトは開け、ダンパーは閉じておきます。(窯を焚く人によって違いが

    あります。)バーナーの真上にある色見穴は、二次空気穴を兼ねていますので、開けておく

    のが一般的です。

   c) 点火の手順は以下の通りです。(操作手順は人によって変わる事も多いです。)

    イ) 灯油タンクの元栓を開く。

    ロ) バーナーの電源を入れる。

    ハ) 点火スッチの電源を入れ(ON)、点火ボタンを押す。

    ニ) 点火を確認したら点火スイッチをOFFにする。

    ホ) ブロアーから空気を送る。

   d) 灯油窯は油量の少ない低温時には、焔が不安定に成り易いです。

    その為、安定する迄の間は扉を開けて、焔の状態を確認する必要があります。

    灯油は電磁ポンプによってバーナーに送られます。それ故、タンクが高い位置に有る方が

    灯油の流れは良くなります。当然ですが油量が少なく成ると、圧力も弱くなります。

    焔を見ながら油量と空気量を調整します。両方とも目盛りがありますが、参考程度に利用し

    ます。バーナーは一個口と二個口(ヅインバーナー)があります。各々にブロアーが一個付

    いています。左右ある二個口のバーナーは二個とも同じ様な焔の状態に成る様に調整します。

    調整は空気量調整板を少しづつ開き、焔が明るくなり更に黒煙が出ない様にします。

  e) 全てのバーナーを同時に点火する事は少なく、順次個別に行います。但しツインバーナーは

   同時に点火します。

5) 窯の温度を上げる。 

  電気窯の場合には、電力(電流量)をあげるに従い、温度は上昇しますが、ガスや灯油の場合には

  一概に燃料を増量すれば、温度が上がる訳ではありません。空気量との関係で、むしろ温度が

  低下する事も稀では有りません。


  以下次回に続きます。


 参考文献:「陶芸窯焚きマスターブック」(株)誠文堂新光社:2016年発行
  
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素朴な疑問 307 陶芸の手順とは24(本焼きの手順4)

2017-09-26 11:31:23 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項があります。

 ① 設備の点検作業。 

 ② 窯に点火(又はスイッチON)。

  ⅰ) 窯を焚く天候と時間。

  ⅱ) 電気窯の点火方法。(以上が前回の話です。)

  ⅲ) ガス窯の点火方法。

   家庭等で使うプロパンガスは低圧ですが、窯に使う場合は、中圧の場合が多いですので、

   小型な窯以外は、家庭用と共同に使う場合は少ない様です。

   ガスがメーター売りの場合、元栓を開く前に、ガスメータの数値を確認し、ノートや紙に記載

   し、窯焚き後にメーターを読み、どの位使用したかを計算(確認)すると良いでしょう。

   a) 元栓からバーナーまでの全ての栓 が閉じている事を確認する。

    不用意にガス栓を開くと、生ガスが漏れ出します。それ故、ガス漏れを防ぐ為にも、全ての

    栓が閉じている事の確認が必要です。元栓からバーナーコック迄の配管には、幾つかの栓が

    有るはずです。その他に、ボンベを利用するプロパンガスの場合、ボンベの上にあるコック

    と、左右のボンベへの切換レバー、ガス圧を調整する摘み等があります。尚、切換えレバー

    は一方のボンベが空に成ると、赤い表示が出ますので、レバーを反対側に倒します。

    切換えは自動ですので、必ずしも操作の必要はありませんが、レバーをそのまま使い続けると

    ガス圧が若干弱く成ります。

   b) 元栓からガス栓を順次開く。

    バーナーコック直前までの栓を開けたら、次はバーナー毎の点火になります。

    点火棒のある窯は、点火網に着火しバーナーコックを少しずつ開け着火します。

    点火棒の無い窯では、「着火マン」等のライターやマッチ等で点火します。

    後で述べますが、窯焚き終了後の栓の閉じる順序によっては、ガスがバーナー口に届くまで

    時間が掛り、直ぐに点火出来ない場合があります。

   c) ガスの空気量の調整。

    バーナーの手元にあるネジ式の回転板を移動させて、一次空気量を調整し青い炎が出る様に

    します。赤い炎は酸素不足ですので、回転板を移動して青い炎にします。

    尚、空気量は還元焼成に差し掛った場合にも、調整する事があります。

   d) 複数のバーナーがある場合、点火方法も個人差があります。

    一度に数本のバーナーに点火する方法と、一本のみを数時間又は数十分使用した後、次の

    一本に点火し、時間を置いて更に次のバーナーへと順次バーナーの本数を増やす方法もあり

    ます。水蒸気を排出させる為(あぶり)、点火初期はなるべく温度上昇を抑えながら焼成します

    ので、一気に本数を増やさない方が良いと思われます。

    同様の理由で、バーナーコックも時間を置いて徐々開く方が良いかも知れません。

    尚、窯焚きも個人の好みや癖がありますので、これが正解と言う事はありません。

   e) ガス圧の調整。

    ガス圧の調整は、元栓に近い場所と、配管途中の中間コックの二箇所にある事が多いです。

    前者は、逆ネジに成っており、押し込むと開き、手前に捻ると閉じる様に成っています。

    ガス圧のメーターが近くに有り、調整力の効果が大きいですので、余り操作しない事が多い

    です。中間での調整では、やや緩やかに利いてきます。主にここで調整する事が多いです。

    尚、点火するバーナーの数が多くなるに従い、ガス圧は低下してきます。

   f) 煙突の引きの調整。ドラフトとダンパー。

    ドラフト(バカ穴)は煙突の根元又は途中にある穴で、外から煙突に送り込む量を調整する

    装置です。複数のレンガ片等で穴の隙間を調整します。隙間が狭くなると引きは強くなり

    ます。ダンパーは耐火性の板状の物で、煙道に差込み広さを調節する物です。

    差し込むと煙突から逃げ出排気ガスが少なくなり、還元が掛かり易くなります。又、窯内の

    対流も変化し、窯変が起こる事もあります。

    点火の際には、ドラフトは全閉、ダンパーは開けておきます。

    但し、人によってやり方は異なり、独自の操作方法を取る場合が多いです。

   g) 強制燃焼のガス窯。

    高圧のガスと、ブロアー(送風機)による短時間で焼成できる窯です。燃料も少なくなる

    利点もあります。焼き上がりの違いやブロアーの騒音、操作部分が多くなる等、自然燃焼式

    とは、幾分異なります。灯油窯と似る部分がありますので、次回の灯油窯を参考にして

    下さい。

  ⅳ) 灯油窯の点火方法。
  

    以下次回に続きます。


 参考文献:「陶芸窯焚きマスターブック」(株)誠文堂新光社:2016年発行
  
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素朴な疑問 306 陶芸の手順とは23(本焼きの手順3)

2017-09-14 19:06:51 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項があります。

 ① 設備の点検作業。 (以上が前回の話です。)

 ② 窯に点火(又はスイッチON)。

  設備の点検が終われば、いよいよ窯焚きを始めます。窯焚き前には、窯の周囲の片付けや掃除は

  済ましておきます。

  ⅰ) 窯を焚く天候と時間。

   a) 薪窯の場合を除き、現在では、窯焚きが天候に左右される事は少なくなりましたが、

    火を使う窯の場合には、ある程度天候に留意する必要があります。特に台風等の様に大雨や

    大風が予想される場合は、例え屋内の窯であっても、日延べを検討した方が良いと思われ

    ます。展示会や出展などどうしても、日にちが限られている場合でも天候の様子を見てから

    決行する事です。

   b) 窯焚き(本焼き)に長い時間を要する場合、なるべく早朝から取り掛かり、日にちを跨

    がずに当日中に終わる事を心掛ける事です。特に冬場は日中時間が短いですから、寒くても

    早目早目の行動する方が無難です。尚、窯焚きに要する時間は、窯の容量や燃料の差と、

    どの様な焼き方を考えているかによって千差万別です。小さな電気窯では5~6時間で済み

    ますが、多くの場合8~16時間程度掛ます。

  ⅱ) 電気窯の点火方法。

   a) 電気窯の場合で、「マイコン焼成装置」がある時には、プログラム選定をします。

    「マイコン焼成装置」には、メーカー設定の基本プログラムの他、自分好みのオリジナル

    設定が可能です。ブレーカーをONにします。ブレーカーの無い機種ではコンセントに

    差込ます。「スタートボタン」を押せば後は自動焼成になります。

    但し、蒸気抜きの孔の閉鎖や、還元焼成の場合には、還元操作は自分で行う事になります。

    尚、タイマー機能を利用して、還元入りの時間を設定する事も出来ます。

   b) 「レバー式焼成装置」に付いて。

    大きな電気窯では、弱から強へ運転を切り替えながら、温度を上げて行く方法があります。

    多くは、三相交流を用いる事が多いです。強弱のみのタイプと、窯の上中下段を分けて手動

    でコントロールする方法があります。三本のレバーの組み合わせで昇温します。

   c) 「サイリスタ式焼成装置」に付いて。

    「サイリスタ」と呼ばれる電子素子を使い、無段階で交流電力を制御する方法です。

    窯中の温度を測定しながら、手動でボリューム(抵抗器)を回転させ、電力を調整します。

    上中下段を個別に制御する窯もあります。

   d) 「半自動焼成」とは。

    多くのプロ作家が使用している方法です。「プログラム焼成」と「手動焼成」を組み合わせ

    た方法で、一定時間温度を保持する「あぶり」や「ねらし」や、結晶釉の結晶化などの場合

    に大変役に立ちます。保持時間を設定するタイマー装置があります。

   e) 「スタートボタン」等の主電源をONにしても、通電できない場合(温度計が働かない)

    は、何らかの故障です。電熱線の断線、ヒューズ切れ、熱電対の故障や配線の緩み等が考え

    られますが、ブレーカーのON忘れの場合もあります。原因を見付けて対処する事です。

    出来れば、窯焚き直前のトラブルを無くす為に、早めに確認して置く事が大切です。

  ⅲ) ガス窯、灯油窯の点火方法。

以下次回に続きます。


 参考文献:「陶芸窯焚きマスターブック」(株)誠文堂新光社:2016年発行
  
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素朴な疑問 305 陶芸の手順とは22(本焼きの手順2)

2017-09-12 17:09:57 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項があります。

 ① 設備の点検作業。

  窯本体は勿論、それに付随する諸々の設備や用具の点検です。(以上までが前回の話です。)

  ⅳ) 燃料の残量の点検。

   プロパンガスや灯油等の燃料を使う場合には、次の窯焚きに使う燃料の量以上の十分の量が

    確保されている事を確認する事です。窯焚きを何度か行えば、一回の本焼きでどの程度の

    燃料が必要が、自然と判ってきますが、何らかの理由で、窯の温度が上昇せず、いつも以上

    時間や燃料を使う事も稀ではありません。それ故、十分な量を確保する必要があります。

    タンク等に貯蔵されている灯油などの場合には、残量を示すゲージが付いていますので、

    判別できますが、ボンベに詰められたプロパンガスの場合、直接確かめる方法は中々難しい

    くなります。ガス会社で自動的に点検し補充を行ってくれれば問題ありませんが(メーター

    売りの時)、自分で補充依頼する場合には、常に残量を把握しておく必要があります。

    (主にボンベ売りの場合)前回の交換から何回窯焚きをしたか記帳しておくと便利です。

    尚、一般には複数のボンベを並列で使用し交互に使う事が多いですので、一方が空に成って

    から、注文しても遅くは有りません。

  ⅴ) プロパンガスは、夏場と冬場では気化する条件が変わります。

   液化のプロパンは、周囲から熱を奪い気化します。その為、夏場であれば容易に気化する

   場合でも、冬場や残量の少なくなったボンベでは、ボンベ自体に白い霜が付く事があります。

   こうなると、気化の量が少なくなりガス圧も落ち、温度上昇にも悪い影響を与えます。

   又、夏場であっても、雷雨があるとボンベノの表面に霜が付く事があります。

   尚、プロパンや都市ガスの窯には、自然吸気と強制吸気があります。ブロアー(送風機)で

   空気を強制的に送り込み燃焼させる方法です。強制の方が火力も強く燃焼時間も少なくて済み

   経済的となりますが、焼き上がった作品の表情も多少違いが有ると言われています。即ち、

   一般に自然吸気で軟らかく、強制では硬くなると言われていますが、その差に気がつくのは、

   一部の人かも知れません。

  ⅵ) 温度計の点検。

   以前ですと、炎の色やゼーゲルコーンを用いて温度を見極めていましたが、現在では熱電対

   温度計を使う事が一般的です。窯の中の熱を感知する熱電対部分と、デジタル表示する機器に

   分かれています。前者の故障として保護管の破損があります。多くの場合、作品などや棚板と

   の衝突による衝撃が原因の事が多いです。割れた保護管は交換するのが理想ですが、道具土等

   を詰め込み補修する事が出来ます。保護管の目的は、熱電対を衝撃から守る事と、窯の中の

   炎や有害なガスから守る為です。温度計に通電すると、現在の室温を表示します。但し、

   室内に置かれて一般的な温度計(水銀、アルコール)と若干違いが出る事が多いです。

   熱電対温度計は高温を計る事が多く、低い温度では誤差が生じ易いです。

   通電し温度が安定しない場合には、温度計は故障です。但し、低い温度で温度表示が安定し

   なくても、窯の温度上昇に従い安定化してきます。これは低温部と高温部(又は中温部)と

   測定回路が切り替わる為と思われます。温度計は温度上昇の速度を知る事と、最高温度を知る

   事ですので、低温部が不安定であっても、高温部が正常ならばそのまま使う事ができます。

   温度表示部は、窯の表面に組み込まれている場合と、外付けの場合があります。

   尚、温度計は測定している位置の温度を表示するものですので、容積の多い窯中では温度に

   バラツキが出易いです。一般に窯の上部で高くなります。理想的には複数の温度計で測定したい

   ですが、高価の為単一の場合が多いです。それ故、釉の熔け具合から温度差を予測する必要が

   あります。

以下次回に続きます。

   
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素朴な疑問 304 陶芸の手順とは21(本焼きの手順1)

2017-09-04 11:43:38 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。(前回からの続きです)

4) 本焼きの準備と手順

  作品の窯詰めが無事完了したら、次は本焼きとなります。但し、直ぐに窯焚きに取り掛かる前に

  行うべき確認事項が幾つかがあります。

 ① 設備の点検作業。

  窯本体は勿論、それに付随する諸々の設備や用具の点検です。

  ⅰ) 窯が傷んでいないかを確認します。

   窯は使う程老朽化するのは、仕方ない事ですが、窯焚き中にトラブルが有っては成りません。

   特に屋外に設置された窯では、雨を防ぐ屋根が付いているのが普通ですが、極端な場合には、

   台風や雷雨や強風等が窯本体に吹き付ける事も起こり得ます。その際窯の内部まで雨水が入り

   込む事は少ないですが、何らかの理由で水分が残ってしまった場合には、乾燥するまで窯焚き

   は出来ません。強行すると、多量の水蒸気が発生し施釉した作品の釉に、悪影響を与えます。

   又、塩釉を使うと、窯は傷むと言われ、窯の寿命も極端に短く成ります。

   塩釉によって窯内部全体に釉が拡散し、壁や窯道具にこびり付き、次回の窯焚きまでに綺麗に

   しておく必要があるからです。又、窯の内部のレンガが「ひび割れ」する事もあります。

   大抵の場合、窯の温度の上昇に伴い、レンガが膨張し、その「ひび割れ」も塞がる傾向になり

   ますので、特別補修する必要もありません。但し、レンガの表面が何らかの理由で剥がれる

   場合があります。窯の外の場合が多いのですが、内側の事もあります。少々表面が剥がれたと

   しても、レンガの厚みに対しては本の僅かですので、心配する必要はありません。頻繁に剥が

   れる様でしたら、原因を究明し対処しる必要があります。問題は本焼き途中で剥がれる事です

   剥がれるた破片が作品に降り掛かると、問題ですので、剥がれそうな箇所は予め剥がしておく

   事です。当然ですが、剥がれた破片は綺麗に掃除しておく必要があります。

  ⅱ) 扉のある窯では、扉がしっかり閉まる事を確認します。

   扉には、窯と扉の隙間を無くす為、耐熱性のパッキンが付いているはずです。

   このパッキンも使用するに従い、柔軟性に欠けてきます。場合によっては端から千切れてくる

   事もあります。予備のパッキンがあれば交換する事も考える必要があります。

   パッキン以外にも扉の角や周辺が、窯の内側の壁に接触する場合もあります。扉の蝶番のネジ

   が緩んでいる場合もありますので、扉の開閉時に窯と接触する場合には、ここも確認し、時々

   注油する事です。更に、扉がしっかりロック出来る事も確認します。多くの場合焚き始めでは

   扉を少し開け、施釉時の水分を逃がします。水蒸気が出ない様になる温度以上になると、

   しっかりロックする必要があります。扉の周囲から熱風が吹き出ている状態では、十分ロック

   されている訳ではありません。窯焚き途中で修正する事は不可能ですので、道具土などを使い

   出口付近を塞ぎます。窯出し後に本格的な補修をする事になります。

  ⅲ) バーナーの点検(ガスや灯油窯の場合)

   イ) バーナー口の確認。

    炎が出るバーナー口に、棚板の支柱等が落ちていないかを確認します。出来れば窯詰め前に

    確認すべき事項ですが、窯詰め時に良く起こる事故です。バーナー口が何かで塞がれている

    場合には、十分燃焼する事はできません。取り除くのもかなり苦労します。場合によっては

    一度窯詰めした作品を外に出す必要が出る事も珍しくありません。

   ロ) 燃料漏れに注意。

    ガスの場合には、要所要所にガスを遮断するバルブが存在するはずです。各バルブが正常に

    作用しなければ、ガス漏れを起こす恐れがあります。それ故ガスを使用しない時にガスメーター

    が動いていないかを、確認します。但し都市ガスとの併用である場合や、家事との共用の場合

    には確認が難しくなります。ガス漏れの際には、ガスの匂いがしますので、気が付く事も

    多いです。プロパンガスは空気より重い為、上空に逃げる事はありません。即ち下や物陰に

    溜まる性質があります。団扇で扇ぎ出したり、箒で吐き出しりして逃がす事になります。

    灯油の場合には、油が少量漏れてもさほど危険はありませんが、常に気を付ける事が大切

    で、漏れ防止の処置をします。

  ⅳ) 燃料の残量の点検。

以下次回に続きます。
   
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素朴な疑問 303 陶芸の手順とは20(窯入れの手順4)。

2017-08-25 19:56:54 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

3) 本焼きの為の窯入れの手順と準備作業。

 ⑤ 窯詰めの実際。(前回の続きです)

  ⅰ) 焼き物は「焼き」が大切と述べましたが、良く焼く為には、窯詰めも大切になります。

  ⅱ) 棚板の大きさによって棚板に載せられる作品量に限界があります。

  ⅲ) 棚板の7~8割程度一杯に成ったら、支柱を立てその上に新たな棚板を乗せます。

  ⅳ) 横方向に複数枚の棚板を使う場合、一箇所づつ縦に積み上げる方法と、横方向も同時に

   積み上げる方法があります。(以上が前回の話です)

  ⅴ) 横扉型の窯では、上部に行く程作業がやり難くなります。

   窯の天井部との隙間が段々狭くなる為で、作品の置く位置も前方方向から見える程度で、次第

   に不明瞭に成り易いです。注意する事は常に周囲の作品との間隔で、隣と接触しない隙間が

   必要です。天井部との隙間も多めに取ります。出来れば10cm程度空けると良いでしょう。

   隙間が狭すぎる場合、天井に当った炎が反転し下に向かう隙間が不足し、窯全体に熱が伝わり

   難くなります。この状態では温度上昇も「はかばかしく」ありません。

   尚、作品を手に持つ場合、釉によっては釉が薄く成ったり、剥がれてしまう場合があります。

   それ故、作品の何処を持つかも重要になる場合もあります。勿論触れる場所が狭い程良いの

   ですが・・・。

  ⅵ) 棚板を支える各支柱は下から上まで、一本の線状に成る様にします。

   これは、作品の重量や揺れを安定的に支える為です。支柱が「アチコチばらばら」では、

   十分支える事は出来ません。   

  ⅶ) 窯積めで注意する事は、不安定な作品は出来るだけ、据わりを良くする処置をとる必要が

   あります。下面(底)が狭い作品は重心も高く、不安定になります。作業途中で隣同士が接触

   し、釉剥がれの原因にもなります。窯積め時には安定していても、窯の中での不測な爆発事故

   や、窯焚き中の地震などで、不安定な作品が倒れる恐れも起こります。底が不安定の場合には

   楔(くさび)状の粘土片を差込み安定させる事もできます。隣の作品に倒れ掛かった作品は、

   「ひっつき」と呼ばれ珍重される事も稀にはありますが、多くの場合、一方の作品を破壊し、

   他の一方を救う事が多いです。

  ⅷ) 織部釉の様に、銅を使った釉では銅が揮発する現象が見られます。揮発した銅が隣の作品に

   転写する事があります。その為、直ぐ隣の作品の表面が汚れます。酸化銅を広い面に釉として

   使用する場合には、いつもより距離を多くとるか、同じ釉の作品を並べる必要があります。

   尚、釉の揮発現象は、おおむね酸化銅を使った釉に限られます。

  ⅸ) 割れた棚板も使い方によっては重宝します。

   棚板が割れる主な原因は、立て掛けて保管した棚板が何らかの原因で倒れる事です。

   割れ方も千差万別ですが、おおむね棚板に刻まれた線に沿う事が多いです。即ち二分されるか

   三分割される事になります。但し割れた端面はギザキザに成っていますので、砥石やダイヤ

   モンドやすり等で、滑らかにします。大小異なる作品を同じ棚板に載せる必要が出る場合も

   珍しくありません。その際、施の低い作品の上に割れた棚板を載せ、その上に他の背の低い

   作品を載せ背の高い作品とバランスを取る事ができます。同時に無駄なスペースを無くす事に

   なります。

 ◎ 最後に窯詰め忘れに注意の事。

  何らかの理由で窯に入れるべき作品を、入れ忘れる事があります。忘れる理由は色々あると思い

  ますが、窯焚きが始まってから気が付く事もあり、窯出し終了後に気が付く事もあります。

  いづれにしても、次の窯焚きまで約1ヶ月以上待たねば成らなくなります。急いでいる作品では

  間に合いません。それ故、窯詰めが終了した段階で、作品置き場などを再度点検し忘れ物が無い

  事を確認する事が大切です。多くの場合他の物の陰に隠れているか、忘れない様に特別な場所に

  保管して、うっかり忘れる場合さえもあります。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 302 陶芸の手順とは19(窯入れの手順3)。

2017-08-18 19:30:41 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

3) 本焼きの為の窯入れの手順と準備作業。

 ① 陶芸は窯が命です。

 ② 窯詰めを始める前に、同じ釉同士と、作品の大きさを揃える事です。

 ③ 窯の構造(主に扉の取り付け位置)によって、窯詰めに工夫が必要な場合もあります。

 ④ 窯詰めは下部奥から始める。(以上が前回の話です)

 ⑤ 窯詰めの実際。

  施釉した作品が窯の傍にあれば良いのですが、窯から離れている場合には、窯の近くまで持って

  来る必要があります。小物であればまとめて運びますが、大きな作品では一個一個運ぶ事になり

  ます。窯が屋外にある場合、屋根続きでなければ雨天の日では、窯詰めできません。施釉した

  作品に、雨水が当たると剥がれたり、斑(まだら)模様に成ってしまいますので、雨水が当たら

  ない様にしなければなりません。出来れば雨天での窯詰めは避けた方が無難です。

  ⅰ) 焼き物は「焼き」が大切と述べましたが、良く焼く為には、窯詰めも大切になります。

   窯詰めの仕方一つで、焼きの良し悪しが左右されるからです。温度の上昇や酸化還元など色彩

   にも関与しますので、窯詰め作業は疎(おろそか)にできません。更に、商業的な窯焚きでは

   別ですが、一般は常に同じ様な作品や同一釉のみを使う事は、むしろ稀な事で一回一回異なり、

   色々の形の作品や釉を使うのが普通です。その為、毎回窯詰めも異なります。前回良く焼けた

   からと言って、次回も同じ様に焼成出来るとは限りません。そこが窯詰めの難しさかもしれま

   せん。但し長く同じ窯で焼成し続けていれば、どの様に窯詰めすれば良いかが、自然に会得で

   きる様になります。

  ⅱ) 棚板の大きさによって棚板に載せられる作品量に限界があります。

   それ故、どの作品をどの位置の棚板に載せるかは、ある程度予測して置く必要があります。

   和食器の様に、三客又は五客が一揃えと成っている作品では、出来るだけ同じ棚板に載せて焼

   くと色合いが似てきます。但し、棚板の端と中央部分では異なる事も多いです。それは作品の

   陰に入って炎や熱線の通り道が、端の作品とは異なる為です。特に大物の後ろ側に影響が出易

   いです。

  ⅲ) 棚板の7~8割程度一杯に成ったら、支柱を立てその上に新たな棚板を乗せます。

   一般には同じ大きさの棚板を載せますが、最上部などでは、大きさの異なる棚板を載せる事も

   あります。出来るだけ沢山窯詰めしたいのですが、詰め過ぎると温度上昇も弱く「焼き不足」

   になる危険性があります。逆に作品の量が少な過ぎる場合にも、温度上昇は悪くなります。

   即ち、熱が作品間を素通りし、熱が作品や窯に蓄積されない為です。その場合には、支柱など

   ダミーの物を入れ、容積を増やすと良い結果になります。

   又、作品の最上部と新たな棚板の隙間も重要になります。素焼きした作品は本焼きすれば、

   高さも収縮し自然と隙間も大きくなるので、上の棚板がぶつからないギリギリの高さでも良い

   訳ですが、出来れば指一本程度の隙間を残す事で、熱の流れも良くなります。

  ⅳ) 横方向に複数枚の棚板を使う場合、一箇所づつ縦に積み上げる方法と、横方向も同時に

   積み上げる方法があります。又窯の前後で複数枚の棚板を使う場合には、奥側の棚板を先に

   積み上げ、その後に前側の棚板に詰める事で、作業がやり易くなります。特に頭部を窯の中に

   差し込む格好での作業ですと、手前側の作品が邪魔に成りますので、窯詰めの順序を考える

   必要があります。更に利き手側には常にスペース的に余裕を持つと、作業もはかどりなす。

   支柱は三本で行うのが基本ですが、四本で行う事もあります。三本だと上部の棚板が安定する

   事と、棚板上に多くの作品を載せる事が可能になります。但し、棚板に「ひび」が入っている

   場合には、四本立てる場合もあります。尚、棚板の「ひび」は棚板の幅の1/3程度ならば安全

   と言われています。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 301 陶芸の手順とは18(窯入れの手順2)。

2017-08-15 09:47:22 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

3) 本焼きの為の窯入れの手順と準備作業。

 ① 陶芸は窯が命です。

 ② 窯詰めを始める前に、同じ釉同士と、作品の大きさを揃える事です。(以上が前回の話です)

 ③ 窯の構造(主に扉の取り付け位置)によって、窯詰めに工夫が必要な場合もあります。

  ⅰ) 窯の扉には多くの種類があります。但し、薪窯の様に扉と呼ばれる物が無い窯もあります。

   ここでは、薪窯に付いての説明は除外します。

   一般には、横方向に開閉する方式が多いのですが、上扉型もあります。又シャトル式と呼ばれる

   方法は、窯詰めする部分を台車に載せて手前に引き出し、台車の周囲から窯詰めする事が可能

   で、窯詰め作業も容易になりすが、窯が大きくなり高価ですので、余り一般的ではありません。

  ⅱ) 窯の容積は限られていますので、狭い空間で行う事になります。

   その為、手際良く窯詰めしないと、途中でやり直す事も多いです。容積の大きい窯では、複数

   の棚板を使います。一枚の棚板には同じ高さの作品を並べるのが一般的ですが、天井部が

   アーチ型に成っている窯では、アーチに沿わせて作品の大きさを変える事になります。

   尚、特に高さが高い作品は、支柱を必要としない最上部に窯詰めします。

   多いトラブルは作品が予定の位置に入らなく事です。窯にはスペースが十分に有るのですが、

   どうしても特定の作品が入らない場合があります。作品に一寸した出っ張りがある為や1~2mm

   程度高さが高い為など、最初には余り予想もしなかった自体に遭遇する事も多いです。その為

   一度窯詰めした作品を外に出し、入れ替え戦をする事も多いです。入れ替えを行うと、周囲の

   作品に接触したり、手で持つ為施釉の一部が剥がれる事もありますので、なるべく入れ替えは

   しない方が良いです。

  ⅲ) 窯内の温度変化は一様ではありません。この事を上手に利用する。

   窯の上部は温度上昇が早く、下部は温度上昇は遅いです。容積の大きい窯程この傾向は強い

   です。逆に窯が冷える際には、下部が速く上部は遅くなります。その為、釉の種類によって

   窯詰めの位置を変えます。即ち、黒天目等の急冷向きの釉は下部に、結晶釉は徐冷向きです

   ので、なるべく上部に窯詰めする事が多いです。釉の中には1180℃、1200℃、1230℃、1250℃

   など、所定の温度で焼成する様に推奨された釉もあります。一つの窯で複数の釉を使う場合には

   この温度差を考慮して、適した位置に窯詰めする必要があります。

  ④ 窯詰めは下部奥から始める。

   ⅰ) 最下部の棚板は、サイコロと呼ばれる直方体の支柱で窯底より浮き上がって敷き詰めし、

    棚板の下は熱風や熱線が通りに抜け様にします。複数の棚板を使う場合、高さは揃えます。

    但し、棚板同士には、指一本程度隙間を空けます。

   ⅱ) 窯詰めをする際、作品の高さに応じて、上部を密に(背の低い作品を並べる)し、

    下部に従い段々と疎に(背の高い作品を並べる)にする方法と、上部を疎にし下部を密に

    する方法があります。疎の方が炎や熱線が自由に移動できます。その為作品に熱が均等に

    伝わり、更には、隣や下の棚板の作品にも熱が移動できます。逆に密であれば、熱がこもり

    易くなり局部的に温度も上昇し易くなります。技術書を読むと、窯詰め方法で疎密に関する

    事項が記されている記事はほとんど見当たりません。多くの場合、各自工夫を凝らし、窯の

    温度が均一に成る様にていると思われます。即ち、決まりが無いのではと思われます。

    尚、棚板上に同じ程度の高さの作品を並べ、効率を重視する事が基本ですが、あえて高さの

    異なる作品を並べ、炎や熱線を通り易くする方法を取る方もいます。

     注: 背の高い作品を並べると多くの場合、作品上部に隙間が出来き、即ち疎(隙間が

     大きい)になります。

  ⅲ) 作品は両手で持ち、所定の近傍に置いたら少しずつ移動させます。

   作品同士の間隔は指一本程度空けます。鶴首の様に上が細い作品では、細い部分を片手で吊る

   す様に持てば問題有りませんが、寸胴形の作品では、持った手が邪魔になり、隙間が広くなり

   易くなります。そこで徐々に移動させ所定の位置に移動します。但し、棚板上では引っ掛かり

   があり、滑らせる事も容易ではありませんので、底を少し浮かせながら移動します。

   尚、高さに隙間がある場合は、口縁周辺の内外を両手(又は片手)で持ち上げる様にして移動

   する方法もあります。狭い空間ですので各自の方法で慎重に作業する事です。

以下次回に続きます。

 
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素朴な疑問 300 陶芸の手順とは17(窯入れの手順1)。

2017-08-11 17:30:14 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。(前回の続きです)

3) 本焼きの為の窯入れの手順と準備作業。

  窯焚きには、素焼きと本焼きがあります。施釉する前に行うのが素焼きで、比較的低い温度で

  焼成します。施釉した後に行うのが本焼きで、一般に1200~1300℃の高温で焼成します。

  但し、無釉の「焼き締」陶でも高い温度で焼成します、一般には素焼きは行いません。

 ① 陶芸は窯が命です。

  作品の良し悪しは、必ずしも形ではありません。むしろ焼きの良し悪しが焼き物の命と言っても

  過言では有りません。その為、陶芸では窯が一番大切な設備です。

  ⅰ) 焼きの良し悪しは、良く焼けている事と意図した釉の艶(マットも含む)や色、又は予想

   した以上の窯変に仕上がる事が含まれます。

  ⅱ) 良く焼けているとは。

    素地となる粘土や磁土には、各々焼きしまる温度範囲があります。その温度以下であれば

    例え気に入った色になっても、焼き物としては不完全とも言えます。

    即ち、焼き締り不足の結果、強度不足や水漏れなどの問題が起こり、実用に耐えない焼き物

    と成ってしまうからです。 当然飾り物として使用する分には、何ら問題になりませんが・・

    尚、焼き過ぎと言う事は、ほとんど問題になりません。その素地が持ち応えられる温度範囲

    内であれば、時間を長くすればするほど良いとも言われています。

  ⅲ) 色の良し悪しは、最高焼成温度も関係しますが、多くは窯が冷える過程で起きると言われ

    ています。その為、冷やす方法(主に冷却スピード)に工夫が必要になります。

  ⅳ) 窯詰めする場所によって、焼きと発色が左右されます。

    容積の小さな窯であれば、窯内の温度分布に大きな差は出難いですが、容積が大きくなる

    に従い、温度分布に差が出易いです。勿論、焼成の仕方によって温度分布に差が出ない様に

    するのですが、必ずしも解消される訳ではありません。更に、炎の出る窯(薪、ガス、灯油、

    重油など)では、炎の当たり具合によって、発色に変化がでます。(窯変が起こり易くなり

    ます。)

  ⅴ) 窯には各々癖(個性)がある。

    望む焼き物を作るには、窯の癖を理解する事だ大切です。その癖に合わせて窯詰めをしたり、

    焼き具合を変化させます。具体的には、窯の中で他の場所より温度が上昇し易い場所

    (火力が強く反映される場所)、逆に冷却スピードが早い場所があります。

    又、酸化焼成に成り易い場所や還元焼成に向いた場所などもあります。更に結晶釉の様に、

    特別な発色を希望する場合には、ここでしか発色しないと言う場所もあります。

    その為、発色に拘る人では、しばしば窯を改造したり、新たに窯を築く事も珍しくありま

    せん。勿論癖を発見するには、数回~数十回の窯焚きが必要に成るかも知れません。数多く

    窯を焚く事で、その窯の個性が浮かび上がってきます。

  ② 窯詰めを始める前に、同じ釉同士と、作品の大きさを揃える事です。

   尚、同じ釉のみの作品を焼成する場合は、大きさのみを揃えます。

   勿論、窯道具や窯の掃除などがすでに終わっている事が前提になります。更に、不要な釉は

   取り除いていなければ成りません。即ち、棚板に接する部分に残った釉は、ブラシ等で取り

   除き、濡れたスポンジで拭き取ります。蓋物の場合も同様に蓋と本体の合わせ目の釉は取り除

   必要があります。又、焼き付き防止の為、水で溶いた「水酸化アルミナ」等を塗ります。

   ⅰ) 同じ釉はなるべく近い場所に置くと、お互い発色が似てくる。

    現実には隣同士であっても、発色が大きく異なる場合もありますが、大抵の場合似てくるのが

    普通です。特に組作品の場合には、近くに配置します。

   ⅱ) 同じ大きさの作品を揃えておくと、窯を有効に使う事が出来ます。

    現在では棚板を使う事が多いですので、同じ棚には同じ高さの作品を窯詰めする事で、窯の

    隙間(上下)の無駄を出来るだけ少なくし、有効に使う事が出来ます。

  ③ 窯の構造(主に扉の取り付け位置)によって、窯詰めに工夫が必要な場合もあります。

以下次回に続きます。
    
  
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素朴な疑問 299 陶芸の手順とは16(施釉作業の手順7)。

2017-08-04 20:40:55 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

2) 施釉の手順。

 ⑦ 施釉を行う。

  ⅵ) 施釉の実際。 以下は当方のやり方ですので、皆様とは異なるかも知れません。

   a) 漬け(浸し)掛けの場合、施釉時間は最短で3秒、最長でも5秒で終わらせます。

   b) 袋物と呼ばれる壷や徳利の様な場合、先に内側を塗り、その後外側を施釉します。

   c) 漬け掛けの一種に「ガバ漬け」があります。

   d) 一般的な漬け掛けによる方法。

   e) 小さな手板を用いると、濡れた作品を触らずにテーブルに置く事ができます。

    (以上までが前回の話です。)

   f) 流し(柄杓)掛けの方法。

    イ) 大皿や壷などの大きな作品や、部分的に重ね掛けする時に行う施釉の一方法です。

     又、比較的口縁が大きく掌で蓋が出来ない、袋物と呼ばれる作品の内側に施釉する際にも

     利用されます。

    ロ)  用具は注ぎ口のある、釉が入りる容器であれば、何でも良いのですが、持ち手が

     付いた物の方が使い易いです。当然流れ出した釉を受け止める容器も必要です。

    ハ) 流し掛けの場合、内外を同時に施釉するのが難しいので、内側(又は外側)を塗って

     から外側(又は内側)を塗る事になります。手で蓋の出来ない口径の大きな袋物は、内側

     に流し込んだ釉を、作品を抱え回転させながら、内側全体に施釉する様に、外に流れ出し

     ます。滴は完全に切ってから、口を上に向けます。特に滴が外側に垂れない事が大切です。

    ニ) 柄杓に入れる釉の量によって、塗れる範囲と形状が変化します。

     即ち、たっぷり釉を取れば、広い範囲を一度で塗れますが、少量取れば細い線状に釉を

     流し掛ける事になります。

    ホ) 大皿などを施釉する際には、二人掛りで行う事が多いです。即ち一人が作品を両手で

     持ち、他の一人が釉を皿の内側(又は外側)に流し掛けします。持ち手の人も只持つだけ

     でなく、皿を回転させながら、全体に均一に施釉する様にします。

    ヘ) 重量のある壷などや大皿の外側を施釉する場合には、作品を手回し轆轤上に置き、

     ゆっくり回転させながら施釉します。急いで回転させると、塗り残しが出ますので、

     注意が必要です。作品を直接轆轤上に据えるのではなく、高台が載る程度の台があると、

     裾周りを不必要に施釉する事も少なくなります。尚、大皿などを伏せて施釉する際、

     高台内もしっかり塗ってください。又、作品と柄杓の距離が遠くなると、釉の掛かる位置

     がずれます。即ち予定していた位置より、下側から施釉する事になりますので、できるだけ

     注ぎ口は作品の近く、又は接した位置から流す事です。他の釉を部分的に二重掛けする際

     にも利用できます。但し釉は垂直方向に流れ落ちますので、斜め方向に施釉する際には、

     何らかの工夫が必要です。

  ⅶ) 施釉出来ない(してはいけない)部分の処置。

   釉は一種のガラスですので、窯の中で熔けた後、固まります。その為、棚板に接する部分や

   器本体と蓋が接する部分には、一般には釉を塗る事は出来ません。この処置の方法には、

   施釉前に釉が掛からない様にする方法と、施釉後に塗れた部分を剥ぎ取る方法があります。

   a) 施釉前の方法として、撥水剤や熔けた蝋を使います。但し、現在では手間隙の掛かる蝋

    を使う方法は少なくなっています。撥水剤は陶芸材料店で容易に入手できます。使い方は、

    筆や刷毛で塗ります。注意する事は、撥水剤は強力ですので、一度素地に浸み込むと素焼き

    する以外に取り除く事はできません。それ故必要な部分(面)より、少なめに塗り余分に

    掛かった部分はブラシ等で綺麗に取り除きます。又、蝋抜きと同じ技法の代用品として使う

    事もあります。特に脚の無い板皿は、広い裏面全体に釉は掛けない様にします。その為、

    撥水剤が有利になります。撥水剤で使った筆類は、使用後石鹸水で洗う事うと、何度でも

    使えます。

   b) 施釉後に取り除く。

    釉は単に作品の表面に載っているだけですので、ブラシ等で容易に取り除く事ができます。

    取り除く位置は、主に高台の下面と高台脇です。特に流れ易い釉薬を使う場合には、底面より

    5mm程度施釉しない場合もあります。取り除いた後は、濡れたスポンジ等で拭き取ります。

    蓋と器の合わせ目も施釉出来ない場所です。但し、器と蓋を一体で焼くのではなく、別々に

    焼成する場合には、器側は施釉できます。

3) 本焼きの為の窯入れの手順と準備作業

以下次回に続きます。
     
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