まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社分割と事業譲渡の選択

2009-07-11 11:43:37 | M&A

       事業譲渡では、事業に属する個々の財産(資産・負債)について、個別に移転の手続が必要ですね。第三者対抗要件の具備も必要です。特に債務については免責的債務引受の場合は債権者の承諾が必要です。一方、会社分割では、包括承継かどうかという議論はさておき、事業に関する権利義務の全部・一部を一括して設立会社(新設分割)又は承継会社(吸収分割)に移転するとしていますので、個別の移転手続は必要ないと考えられています。もっとも対抗要件は権利毎に満たさないといけませんが。

○ ということで、事業譲渡は、手続的負担が大きいと言われています。しかし、案件の内容によっては、会社分割よりも都合がよく、それ程手続も要らない場合もありますので、今回は、会社分割と事業譲渡について、案件特性も踏まえて、どちらがやりやすいか考えてみましょう。

       流動資産・負債(流動・固定)を譲渡する場合、分割では個別手続不要、事業譲渡では必要となりますが、実際上は分割でも必要です。法律上の話では無く、取引をきちんと継続するという視点で言えば、売掛金の相手先に対しては、挨拶もきちんとして、また分割・事業譲渡日を伝えて支払い口座に誤り無く振り込んでもらうため、取引の支障の無い継続のためにですね。(伝えても分割・譲渡日以降の誤りはよくありますけどね)。買掛金の先、即ち債権者に対しては、事業譲渡の場合は保護手続不要ですが、個別に債権者の承諾が必要です。これは少し手間ですね。銀行などの債権者は、分割・事業譲渡のいずれのケースでもいろいろ手間がかかりますし、首を縦に振らないことも多いようですね。これを機会にロールオーバーを止めようと考える銀行の場合は、事業譲渡の代金が入ったら貸しはがしをしようなどと考えるかもしれません。

○ 固定資産を譲渡する場合、事業譲渡であろうが分割であろうが、実際の手間は殆ど変わりません。譲渡する固定資産を特定して、時価といっても実際は簿価が多いですが、それで譲渡・移転すれば良いだけです。リース資産・負債は、いずれにしてもきちんと移転手続が必要です。土地等の不動産の移転のときは、事業譲渡と分割では、登録免許税等が違いますので注意が必要ですね。

       分割であろうが、事業譲渡であろうが、分割日・譲渡日以後、承継会社・譲受会社では、資産・負債について受入記帳をしないといけません。手間は変わりません。まあ、最近は分割会社・譲渡会社の経理データをデータでもらって、合わせれば良いですけれども、それでもかなり手間ですね。また受入記帳した内容と、現物が一致しているかの確認作業もありますね。帳簿と現物はよく不一致を起こしますね。まじめにするとこの作業が大変です。簡単に現物と突合などできないですね。

       人の場合は、事業譲渡の場合は、個別に承諾を取らないといけません。転籍ですからね。退職給付債務がどうなるかも関心事ですね。算定基準を引き継がないといけませんが、これは会社分割でも同じですね。ただ、分割の場合は、移籍従業員の個別承諾は要りませんがね。(労働契約承継法)

まあ、最近の不況を考えれば事業譲渡で転籍と言われても、殆どの従業員はOKしますね。かなりの不利益変更をしない限りですね。うまく承諾を得られないときや、待遇に差があるときは、よく譲渡会社から譲受会社への出向ということにしますね。

分割でも事業譲渡でも、もっとも気を使うことが、人の処遇・問題ですね。誠意をもって丁寧にあたらないといけません。

       許認可は、分割の場合も取り直しの場合が多いですね。分割だから自動的に移転するだろうと考えるのは誤りです。一方公正取引委員会への届出は、要件に該当する規模の場合はいずれの場合も必要ですね。

○ ぐじゃぐじゃ書きましたが、流動資産と負債を承継しない場合で、不動産の無い場合は、債権者保護手続が不要・変更登記も不要な事業譲渡の方が簡便なときが多いということです。取引先・従業員に対しては、法律上の手続だけすれば良いというものではありません。きちんと説明・挨拶をして理解を得なければなりません。分割と事業譲渡での手間が変わるわけではありません。

法律上の手続ではなく、全ての手間を考えれば、分割の方が手間がかからないと一律に考えるのは誤りということですね。


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