まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

新設分割は役立たない制度?

2009-07-19 21:45:05 | 商事法務

     会社分割には、新設分割と吸収分割がありますね。今回は、この分割について、新設分割は、事業の中断・支障の無い継続という点では問題の多い、従い、多分あまり利用されていない・されないということを述べてみたいと思います。新設合併と同じですね。新設合併等という制度は米国(例えば模範事業会社法)にはありませんね。新設分割というのもないでしょうね(模範事業会社法を調べた訳ではないので、ご存じの人が居たら教えて下さい)

○ 分割については、法229号・30号に定義されています。

29号 吸収分割=「株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。」

30号 新設分割=「一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。」

なぜ、吸収分割の定義では「一又は二以上の」と書かないのでしょうね。別に、「一又は二以上の」株式会社が、契約を締結して共同で同じ事業分野を他の会社に承継させることもよく行われていますけどね。

     分割の効力発生ですが、新設分割の場合は、764条により、「新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。」と記載されています。一方、吸収分割の場合は、承継会社は、効力発生日に吸収分割契約の定めに従い、分割会社の権利義務を承継しますね(759 I)

成立の日とは「登記の日」ですね。924条では、会社が新設分割をする場合において、新設分割により設立する会社が株式会社であるときは、本店所在地において新設分割をする会社については変更の登記をし、新設分割により設立する会社については設立の登記をしなければならない」ということで、具体的には法務局に、変更登記申請書&設立登記申請書を提出した日となりますね。

● 登記申請して完了するまでどれくらいでしょうか。1-2週間ですね。その後登記簿謄本(記載事項証明書)をいっぱい取寄せて、税務署(&都道府県税事務所)に法人設立届、労働基準監督署に就業規則届その他の届、社会保険、労働保険の手配、銀行口座開設、分割され承継される権利・義務、資産・負債の受入記帳、不動産・リース契約等の契約上の地位の承継手続き等、いろいろ大変です。

○ 新設分割・吸収分割でも共通ですが、承継した資産については実査・突合が必要ですよね。まあ、帳簿と現物が一致するというのは、実際上あまり無いわけですからね。どの辺で折り合いつけるかですね。お勧めできませんが、帳簿上だけそのままという手抜きの方法もありますけどね。メーカの場合は、棚卸資産等も実地棚卸して確かめないといけない場合もありますよね。まあ、ある工場だけ分割されれば比較的簡単ですけどね。

     上記●の手続き、即ち新設分割特有の手続きには、その前から準備をしても約一ヶ月かかります。登記簿謄本が無ければ銀行口座も開設出来ません。口座が無ければ大変です

分割会社の従来の口座を暫く使わせてもらうとかいろいろ余計な手配をしないといけません。下手したら事業が止まる可能性もあります。承継資産には、「現預金」が無いと、運転資金がありません。しかし、その金を入れる口座も成立の日から2週間ぐらいありません。現実的に、多くの不都合を発生させかねないのが新設分割です。

○ ということで、新しい器で事業をするときは、上記●の手続き事前に行えるように受け皿会社を先に作っておいて行うのが一般的ですね。即ち、受け皿新会社を設立してその会社と吸収分割を行うわけですね。まあ、実務家から見れば新設分割など、全く役に立たない余計な制度ですね。


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