まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

英米と日本の会社法の違い

2021-11-08 21:31:53 | 商事法務
今回は、日本と海外の会社制度の違い等の指摘をしましょう。①、多分海外の人には理解の難しい日本の会社の組織形態(機関)の複雑性、②取締役と業務執行者がきちんと分離されている海外と代表取締役社長等といわれて、これが曖昧な日本、それと③発行可能株式総数を発行済株式数の4倍(非公開会社は適用無)と、発行株式の払込額を1/4以上とする制度などですね。

〇 日本の会社組織形態(機関)の硬直性・つぎはぎ結果の複雑性:
日本の会社法は、都度会社法の改正を行い複雑怪奇になりましたね。もっとシンプルにならないものかと思います。こんな複雑な会社の組織形態を定めた会社法は日本だけではないでしょうか。
・日本の基本的な制度は取締役、取締役会、代表取締役、監査役、監査役会、会計監査人でした。これに、特別取締役や会計参与も加わりました。
・米国の影響を受けやすい学者先生などのいる法制審議会会社法部会では、一貫した考え方などなしに、米国では基本的に当事者自治に任せられている委員会を、会社法制に組み込み、取締役の任期も1年に短縮できるようにしました。H14年改正で設置された「委員会等設置会社」がH18に委員会設置会社になり、H26改正によりつぎはぎの「指名委員会等設置会社」と「監査等委員会設置会社」が設けられ、普通の取締役とは異なり監査等委員となる取締役の選任の制度が設けられました。
委員会等設置会社では、社外取締役が過半数の指名・監査・報酬委員会という硬直的な制度を作り、この硬直性をつぎはぎするために、「指名委員会等設置会社」と「監査等委員会設置会社」を設けました。こんなことまで、会社法に規定する必要などないですね。当事者の定款自治に任せておけばいいのです。余計なことまで規定する会社法部会の学者先生の石頭のせいですね。以下の、米国のような規定を、会社法に設ければよかっただけなのにね。

米国の模範事業会社法§ 8.25. COMMITTEESでは以下のように規定しています。
(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

○経営方針の決定、執行と監督:
米国やドイツでは経営の執行と監督は分離されていますね。ドイツでは監査役会が機能しています。米国では、取締役会が監督機能を担っています。取締役会は、重要な経営事項は自ら決定しなければなりませんが、かなりの経営事項は委員会に権限を委譲しています。委員会は、通常複数の取締役から構成される、監査委員会、指名委員会、報酬委員会、財務委員会、執行委員会等がありますね。これら委員会は、日本(404条等)と異なり会社法で組成を義務づけられている訳ではないですが、慣行的に出来たわけですね(上記模範事業会社法§ 8.25参照)。業務の執行は、DirectorではなくOfficerが行います。取締役を兼任する場合もありますが(1人は兼任多いですが)、OfficerのトップがCEO(Chief Executive Officer)であり、COO (Chief Operating Officer)等で他にはSecretaryやTreasurer などがいますね。英米では、日常業務はCEO/COOが行いますが、これらOfficeを決めていなければ、Directorが行いますね。英国法を引き継いでいる香港などでは、「Director」が行います。

日本では、代表取締役社長という言い方が一般的ですね。Representative Directorですね。しかし、私は海外でRepresentative Directorという言葉は見たことないですね。オランダ系の会社法を引き継いでいるインドネシアでは、President Directorというのがありますけどね。日本的な感覚で言えば、これが代表取締役社長でしょうか。社長という名称は別に法定されているわけではなく、業務執行者という意味でしょうか。定款で定まれば良いですね。ですから代表取締役社長でなくても、代表取締役隊長でも組長でも良いかもしれません。株式会社山口組なら、山口組組長ですね。
上記の、組織の複雑化に共ない、執行役とか代表執行役等も生まれました。もういい加減にしてほしいですね。

法349条4項には、「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」とありますが、この規定は日本独特でしょうね。代表取締役は、勿論取締役会の下部機関ですが、取締役会があまり機能していない場合や細かいことまで決める訳でもないですから、(一応法362-2-1には、取締役会は、業務執行の決定をしなければならないという規定があり、4項に取締役会の権限等として重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財等の規定はありますが)、実際かなりの業務執行の決定を行いますね。通常業務以外は、取締役会の決議が一般的で、それなりの慣行も確立している英米と違いますね。
代表取締役は、「業務に関する一切の行為をする権限を有する。」という規定も曖昧ですね。法定されている取締役会の権限以外の決定もできますね。

取締役の上に、代表取締役という制度を作った矛盾でしょうか?世界の会社の組織形態としては、1)英米型の取締役・取締役会と取締役会の委任を受けた米国の委員会制度、2)取締役会と監査役会が同レベルの国、3)ドイツのような取締役会の上部組織としての監査役会制度を持つ国(ドイツ・インドネシア等)の3つでしょうね。ただ、インドネシア会社法のBoard of Commissioners(=コミサリス(Komisaris)会)がどの程度機能しているか、あまり知りません。

〇授権株式制度と株金の払込:
日本では、授権株式制度が採用されていますね。法113条「発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない(非公開会社はこの制約なし)」ですね。会社が将来発行する予定の株式数を定款で定めておき、その範囲内で取締役会等の決議により適宜発行を認める制度ですね。
これと異なり、株式を発行し、株金の払込は全額ではなく、25%以上でもよいという制度もありますね。そういった制度の国の人と話していたら、発行株式の全額払込をするという意識が無く、会社設立のときに、資本金(日本でも半分まで資本準備昆可能)の半分ぐらいしかお金を用意していなかった例もあります。また、残り3/4は取締役会がCapital Callするんですね。この場合も、英文では、「the increase of issued and paid up capital to be at least 25% (twenty five percent) of the authorized capital shall be conducted within a period no later than 6 (six) months」という風に、授権資本= authorized capitalという言い方をしますので、同じ言葉を使っていても、相手とこちらの認識が違うということもおこりますね。

また、海外では、Capital Callしたものは、全て資本金になるのでしょうか。ここがよくわかりません。日本では、法445条2項「前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる」として、資本準備金として計上しますね。
こういったCapital Reserveも、海外と日本の認識の差がでる部分ではないでしょうか。


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