まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

買収の法務DDレポートの価値

2014-11-01 11:19:27 | M&A
○ 今回は、外国企業の買収の際に法律事務所に作成を依頼する法務DDレポートの価値について書いてみたいと思います。二つのパターンに分けて考えて見ましょう。
① 欧米先進国で、買収対象企業が例えばNASDAQ等の上場企業の場合。
② 新興国の未公開企業の場合。
 上記の2つの場合は典型的な場合ですので、新興国の上場企業、先進国の未上場企業は、この両者の中間に位置すると考えれば良いわけですね。また、顧客の視点から見た望ましい法務DDなどの視点も記載してみたいと思います。

①の場合の法務DDレポートは、かなりのケース殆ど読む価値はありませんし、役に立ちません。法務DDは、パートナー弁護士の指揮(実際はあまりきちんとした指示は出さないのが多い)のもと、若手の弁護士が、契約書、法令順守状況、議事録(手に入らない場合も多い)等を読んでレポートを作成します。大抵のケース、調べたことをすべて網羅して、しかも平板単調でポイントがハッキリしません。ちょっとしたことでも、買収契約書(DA=Definitive Agreement)のRep.& Warrantyに反映したほうが良い等と記載していても、その通り契約書を直すわけでもないです。買収案件推進中の多忙のときに、ぐだぐだした何十ページの法務DDレポートなど出されても、誰も読みません。また読む価値もありません。しかし、しっかりお金だけは取っていきます。

事前に、弁護士に、法務DDの範囲とレポートのイメージを伝えておくことが大切です。弁護士に取引契約等読んでもらっても時間と金の無駄です。業界取引に従事している人でないと、取引のことはわかりませんし、その契約の意味も分かりません。取引契約は、買収企業の事業部が精読すべきものですね。従い、Change in Control条項があるか等の部分を除いて、弁護士がチェックしてもらうのは時間と金の無駄遣いです。Change in Control条項があるか否かは、中身を読まなくてもTitle/Headingを見ればわかります。数十ページの契約でも5分もあればわかります。
また、Executive サマリーを作って、最初の数ページにまとめてもらいましょう。法令違反状況などがあればその個所に明記すれば、該当部分の本文詳細は読みます。私のやったケースで、法務DDの範囲を限定したのに、頼んでもいない部分まで調査して、しかもサマリーをつけてと言っているのに、米国の提携事務所の作成したものをそのまま出してきた法律事務所がありました。こんなところは、もう二度と起用しません。

○ 顧客が欲する法務DDレポートは、会社のすべての視点に配慮したものです。即ち、財務・税務・労務(年金・社会保険)・環境・紛争等のことも記載したものです。勿論、財務・税務・環境・労務等については、それぞれ別の専門家を起用して、それぞれの視点からのレポートをもらいますが、税務・労務・社会保険・環境等もすべて法律です。ですから、法務の視点からのDDレポートが欲しいですね。しかし、こいうった分野は、自分の領域では無いと、すぐに他社にリスクヘッジする弁護士もいます。自称M&A専門の弁護士にもかかわらずですね。M&A専門弁護士なら、財務・税務・労務・環境のことについても概要でよいですから正確な知識を持つべきですね。

・ M&A専門弁護士は、最近は日本の弁護士資格のみならずNew York州弁護士の資格を持つ頭の良い人が増えています。勉強はよくできるんでしょうね。しかし、契約書に税務の事が記載されていても、まったく理解していない。特に、地方税の事や、州の法規制等は、現地弁護士事務所にきちんと聞くこともなく、誤解したままで話を進める人もいます。迷惑な話です。それでもお金はしっかりとります。
M&A専門弁護士と自称していますので、一応の知識もありますし、通り一遍のことはやってくれますが、顧客のために何が良いかを真剣に考え、そういった対応をしてくれません。従い、重要なことは、弁護士をあまり頼りにしてはいけないということです。

○ ②のケースは大変です。財務DDも、まず財務諸表の数字自体が、公正妥当な現地会計処理基準に合致しているか?数字自体が本当かなどから調査が必要です。法務DDも、環境規制・労働法等の法令違反はないか(あった場合には契約書に明記して、closingまでに治癒してもらはないといけません)、厳重チェックが必要です。新興国の場合は、労働者(の権利保障・地位保証・解雇制限や手続き)にやさしい労働法が多いですし、これをきちんと守っているか(厳密には守っていないとかいろいろあるようです)等のチェックが必要ですね。それと、税務には要注意です。税務時効も6年などもありますし、税務署なども忘れたことにやってきて、過去をほじくる等もあります。きちんと調査するだけでなく、契約書のIndemnificationに反映するとか、代金支払いをEscrowに一部抑えておくとか、あるいは分割延払いであるEarn Out条項を認めてもらうとかの手当てが必要です。こういった視点から現地法制や企業実態に詳しい、弁護士の起用が必要です。大手法律事務所のM&A専門弁護士というだけでは、全く役立ちません。また法務DDの結果とそれをDAに適切に反映することが大切ですね。

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