まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

インドの会社の新株発行・株式譲渡

2014-10-12 15:17:48 | M&A
○ 今回は、インドの非公開会社の株式譲渡についてです。先進国では、株式譲渡は当事者間だけで行い、会社に対抗するためには、株主名簿の名義書換を求めれば良いですが、新興国では、所定の譲渡証書等を用いて会社登記局等に譲渡内容を届出しなければならないケースが多いです。そのとき殆どStamp Dutyを払わないといけません。ということで、一例としてインドでの非公開会社(Private Limited)の新株発行・株式譲渡についてみて見ましょう。

○ インドの非公開会社の新株発行・株式譲渡の注意点は以下ぐらいです。
  1) 設立時の株主(=発起人&株式引受・払込人)以外の第三者に新株発行(例えばシンガポール在の子会社)を行うには、インド証券取引委員会(SERI)登録のカテゴリーIマーチャントバンカー又はChartered Accountant(勅許会計士)が算定する公正価格で発行する必要がある。
  2) 発行済株式を譲渡して譲渡益を得たときは、インドの課税権が及び譲渡益課税が発生する(中国などと一緒ですね)ので、納税しなければなりません。
  以下具体的に見てみましょう。

 ○ 株式の発行・譲渡価格
  非上場株式の譲渡価格については、ご承知の通り悪名高い非居住者差別条項がありますね。①居住者から非居住者に対して内国会社の既存株式を譲渡する場合、内国会社が非居住者に新株を発行する場合、②非居住者が居住者に既存株式を譲渡する場合、インド証券取引委員会(SERI)登録のカテゴリーIマーチャントバンカー又はChartered Accountant(勅許会計士)が、DCFという数字遊び手法で算定する公正な価値(何が公正なのか不明)を基準価格として、①の場合は基準価格以上の不公正価格で株式譲渡・発行、②に場合は基準価格以下の価格で株式譲渡とされていますね。
 ・譲渡して譲渡益が発生した場合は、譲渡人は当然譲渡人所在国での課税に服しますが、インドの会社の株式譲渡の場合は、上述の通りインドでも課税されます。では、インドの会社の株式を保有するケイマン等の会社の株式を譲渡した場合はどうでしょうか?これについては、有名なVodafone事件があります。高等裁判所まで課税権が及ぶとしましたが、最高裁では、課税権は及ばないとしました。でもその後、そういった場合でも、過去に遡って課税権は及ぶという法律ができているようです。

 ○ 株式譲渡
  株式譲渡について、こんどの新会社法(The Companies Act, 2013)では56条に規定されています。FormNo.SH-4のSecurities Transfer Formで行うわけですね。これを譲渡人・譲受人は、譲渡実行後60日以内に株券を添えて対象会社に提出し、対象会社は、このSH-4を会社登記局(ROC: Registrar of Companies)に提出して、確認を受けます。SH-4の記入欄を見ると、Father’s/ Mother’s / Spouse name等と記載があります。個人間の株式譲渡のケースを想定しているのでしょうね。Visaの申請等でもそうですが、父の名前等の記入を求められます。おもしろいですね。会社の場合はありませんので、「N/A=not available」と記載すればいいのですね。いずれにせよ、これに譲渡人・譲受人は署名行い、かつCorporate (Common) Sealを押捺しなければなりません。
 ・英法系の会社は、通常業務以外の株式取得などは、取締役会の決議で授権が必要ですね。従い、取締役会決議を証明する書類(又は授権者が権限を有する旨のCertificate等)を出すことになります。
 ・しかし、日本の場合は、大企業は権限規定で、取締役会決議の要る重要取引、代表取締役の権限で出来る場合等を規定していますので、多額でない場合は、取締役会決議をせずに株式取得する場合も多いですね。また代表取締役は、一切の業務を行う事ができますので(法349条)、代表取締役の署名だけでOKですね。インドの弁護士に聞くと、日本の制度を知りませんので取締役会決議が必要といいますね。
 ・取締役会決議を証する書面はROCには提出しませんので、別に対象会社のSecretaryがOKする書類、即ち「代表取締役には本件取引を承認する権限を有する旨」のCertificate等を適当に作ればいいのですね。
 ・SH-4には、Corporate Sealの押捺が必要ですが日本ではCorporate Sealはありませんので代表取締役印で良いですね。会社名も書いてありますので。
 ・新興国の場合、よくありますが、インドでも譲渡証書にstampを貼って、stamp dutyを納めます。

○ その他の必要書類
  対象会社からは、上記の通り、SH-4の署名者が署名権限を有する旨の書類提出を求められますが、その他に譲受人がきちんとした会社であることを証明するために定款・登記簿を求められます(譲渡人は既に提出済)。日本の会社の場合は、定款・登記簿を英訳して、アポスティーユを取得して(インド大使館での領事認証は不要)提出することになりますね。

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