まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『二人の女の物語』苦労のわりには(`ε´)

2008-08-31 23:53:36 | イギリス・アイルランドの作家
THE OLD WIVE'S TALE 
1908年 アーノルド・ベネット

モームだったと思うんだけど、“ファイブタウンズ” のことが書いてあって
ものすごく読みたくなってしまったわけです。

それですごく探したの。神保町にも行ったし、ブックオフ行脚もしたけど見つからず
ネットで見つけて結構高値で購入しました。
後日談 渋谷東急プラザの紀伊国屋に行ったら
   三巻揃ってたっていうじゃんか!! ちっくしょぅぅ)

田舎街の二人姉妹の生き様が描かれているという、私の大好物な物語でして
面白くない訳じゃないんだが、苦労して買った割には・・・って感じ。

ファイブタウンズの中心地バーズリーで
羽振りの良い一家に生まれたコンスタンスとソファイアの姉妹。

姉コンスタンスは店の使用人と結婚をして、変わりゆく街の中で家と店を守ります。
一方、ソファイアは駆け落ちをし、パリに出て男に失望して別れ
戦争が起こっても一人で力強く生きていきます。
“いつみても波瀾万丈” が作れるぐらいです。

何十年も経って、パリでホテルを成功させていたソファイアは
夫も亡くし息子も家を出て一人になったコンスタンスからの手紙に応えて
バーズリーへ帰ることを思い立ちパリを後にします。
その後はいたわり合ったり衝突したりしながら、姉妹で余生を送ります。

前半は二人とも若いので、恋あり冒険ありのストーリーですが
後半は老いてますんでね、病気とか、あそこが痛いここが痛いって話しが多くなります。
人って歳をとるものよねぇ・・・

二人の人生とともに、発展したり合併したりと変わりゆく町の様子も
物語の主要なテーマとなっています。
時の移り変わりって、嬉しい反面わびしいものです

しかしさ、ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』 はこの物語より20年前の話しですよ。
田舎とはいえ、あの劇的な変化に比べたら、なんてゆったりした時の流れなんでしょう?

嫌いじゃない。好きな話しです。
でも定価で買いたかったなぁ・・・っていう内容でした。
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『永遠の夫』そのココロは?

2008-08-31 23:16:40 | ロシアの作家
ВЕЧНЫЙ МУЖ 
1869年 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

地位と財産が無かったら、女性から相手にされないだろうなぁ、と思われる男性は
世界中に少なからず存在しますね

この物語の主人公の一人、トルソーツキーはそんな人です。
妻は社交界の花形で、機智に富んだ会話をし尊敬も集め、男性関係もちらほらあります。
トルソーツキーは、その女性の夫ということだけが人々の印象に残っている男性でした。

かたや、もう一方の主人公ヴェリチャーニノフは経験も豊富な
上流階級で人気と実績を積んできた男性。
彼はトルソーツキーの妻ナターリアと一時関係が有り
他の男性の登場で彼女のもとを去った過去があります。

物語は、ペテルブルグでトルソーツキーがヴェリチャーニノフを
つけまわすところから始まります。
ナターリアは既に亡くなっていました。

その後、ヴェリチャニーニフの娘と思われるリーザが登場したと思ったら
亡くなったり、トルソーツキーが名家の15歳の少女に求婚したりといろいろあるわけですが…

もう、トルソーツキーって人、すごくイライラしちゃう
持って回った言い方や、卑屈になったり開き直ったり、帰れって言うのに居座ったり
求婚した少女たちに思いっきりバカにされたりでいいところひとつもなし!!

ヴァエリチャ-ニノフは、嫌悪しながらも憎めないってぇことを言ってますが
私はごめんこうむるね

訳者(千種堅さん)がロシア語で “永遠” 以外に “万年” という意味がある、と
解説に書いておられましたが、ニュアンスとしてはそっちが近いみたい。
夫以外に役割が無い男性。 美しく人気者の妻の側にいるだけで満足なの。

でも、情けないけど旦那さんとしてはいいんじゃない?
お金はあるし、好きにさせてくれるし、浮気も黙認。
お互いが妥協づくの結婚なら、相手がこういう人の方が楽かもね
UNOんちみたいな感じでしょうか?

“ドストエフスキーでも読んでみようかしら?”と思って
最初に手にしたのが『永遠の夫』でした。理由は短かったから。
そしたら面白かったもんで、次に『白痴』を・・・ 失敗したわ。
そんなわけで他の作品に手が出せずにおります。

永遠の夫 新潮社


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『眺めのいい部屋』ゆく末が心配です(‐”‐ )

2008-08-31 00:55:47 | イギリス・アイルランドの作家
A ROOM WITH A VIEW 
1907年 エドワード・モーガン・フォスター

自分に正直に生きる男性は魅力的ですか?
確かに素敵かもしれません。
でも、一緒に暮らすのって大変かもね~

フィレンツェに出かけたルーシーは、眺めのいい部屋を巡って
同宿のエマースン親子と知り合います。
親子はそろって自分に正直に生きる男性でした。
そのため、世間からは厄介者と見なされ、阻害されがちです。

息子のジョージ・エマースンに好意を抱かれ困惑したルーシーは
ローマで落ち合ったセシル・ヴァイズと婚約しますが
英国に帰国後、近所にエマースン親子が越して来ます。

エマースン親子、今で言うK・Yです。
突然大声は出すわ、衝動的に行動するわ、一緒にいたら疲れちゃう。
もっとも、自分も奔放で無邪気だったらいいけど、その場合けんかが耐えないかもね

セシルって人は、いやな人っぽく書かれてるけど
一般的に考えれば、一緒にいて安心な人かもしれません。
もちろん、平凡な人よりも刺激的な人が好き、っていうならそれでいいんですけどね。

結果的にハッピーエンドで、ルーシーとジョージは結ばれるわけですが
のっけから家族に見放されてしまいます。
たぶん、もたないと思うなぁ。
情熱が冷めた時、幻滅がドバッとやってくるんじゃないかと推測しましたが
さてさてどうなることやら・・・

眺めのいい部屋 筑摩書房


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『愛の妖精』作者の伝記は無いのかな?

2008-08-31 00:15:45 | フランスの作家
LE PETITE FEDETTE 
1848年 ジョルジュ・サンド(オーロール・デュパン)

“田園小説三部作” の一作。
私はジョルジュ・サンドってこれしか読んでないので、これだけで判断しますが
物語よりは作者自身の生き方の方が面白そう

物語は、豪農バルボー家に生まれた双子の男の子の成長記です。

まったく同じように育てられたランドリーとシルヴィアンですが
弟のシルヴィアンは独立心旺盛な子に育ち
兄のランドリーは何事も弟と一緒でなければ気が済まない虚弱な子に育ちます。

自立したシルヴィアンが恋したのは、怪しい叔母に育てられている
貧しくて汚いファンジョンでした。
ランドリーは自分を置いていく弟に癇癪をおこします。

ファンジョンはシルヴィアンにふさわしい女になろうと街へ奉公に出て
美しくなって帰って来ます。

ファンジョン、変わり過ぎだってば
性格とか身なりはおいといて、顔まで綺麗になっちゃうなんて
今なら “夏休みを利用したお直し” って言われちゃうよ。
“韓国旅行に行ったら、ふたえになってる” みたいなね。

しかも、田舎育ちの純粋な少女かと思ってたら(途中で垣間見える場面もありますが)
最後の最後に計算高さをみせちゃったりして。

少しおとぎ話のような部分も取り入れ、“田園小説”っぽく仕上がっていますが
なんか “できすぎ” って感じ

彼女がミュッセやショパン、リストの愛人だったことは有名な話。
それ以外にも沢山の恋人を持っていたってことで、
そういうのを赤裸々にまとめてくれていたら結構な読み物になったかもね
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『カシタンカ・ねむい』カシタンカって何なの?

2008-08-30 04:10:47 | ロシアの作家

アントン・パーブロヴィチ・チェーホフ

新潮社版短篇集が晩年だとしたら、岩波文庫版は前期になりますかね。
若くして亡くなっているので。

しかし、若い頃から落ち着いていらっしゃる。
ちょっとしたペーソスを織り交ぜた、小市民的な9篇のエピソード。

『嫁入り支度(Прпданое)/1883年』
初めて訪れた時も、7年後に訪れた時も、母と娘はひたすら嫁入り支度で
ドレスを縫ったり刺繍をしたりしていました。
そして最後に訪れた時には娘の姿が見えなくなっていました。

なんら教訓的なことの無い物語ですが、哀れな親子が印象的です。

『富くじ(Выитрышный билет)/1887年』
妻が買った富くじが、あと一文字で当たりになります。
大金のことを考えた夫婦は、いきなりお互いが憎らしくなります。

ジャンボが当たったらどうします? 分け合いますか?奪い合いますか?
うちは分け合います。今はそのつもりです。

『カシタンカ(Каштанка)/1887年』
ご主人様とはぐれた犬のカシタンカは、親切な男の人に拾われます。
そこで猫、ガチョウ、豚たちとともに芸を仕込まれたカシタンカは
晴れて初舞台にあがりますが・・・

猫、ガチョウが可愛らしくてねぇ。
チェーホフは動物好きでしょう、って思うわ。
ガチョウが死んだところは泣けました。

チェーホフはお医者さんだったんですって。
そういえばよくお医者さんが出てきますね。
しかし36歳で亡くなるとは・・・医者の不養生ってやつでしょうか?

『桜の園』や『かもめ』は、もちろん読んでみたいんだけど
私、戯曲ってどうも苦手なんです あのト書きの部分が気に食わなくって。
そのうち読んでみるつもりですが・・・。

カシタンカ・ねむい 他七篇 岩波書店


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『かわいい女・犬を連れた奥さん』ヨーロッパ的ロシア

2008-08-30 04:10:33 | ロシアの作家

1896-1904年 アントン・パーブロヴィチ・チェーホフ

チェーホフの短篇集。
これが良かったもんで、『チェーホフ・ユモレスカ』2巻買っちゃって大失敗さ

私がロシアの作家で初めて読んだのは、たぶんこれだと思います。
あるいはツルゲーネフの『初恋』か、いずれにしても一昔前です。

私は時々、ロシアの作家の物語は(作品の善し悪しは別にして)
“う~るさい”と思っていますが、それは物語の中に主義・主張を盛り込んで
延々と論じる場面が多いから。
話しと関係なくない? とイライラさせられることも多々あります。

チェーホフにもそういうところはちょっとありますが、
この短篇集の中の7篇については落ち着いて読むことができました。

『かわいい女』
気だてがよく愛情深いオーレンカは、夫が変わるたびに自分も変わっていきます。
そんな彼女を、まわりの人は “かわいい女” と呼ぶのです。
彼女が最後に愛情をかけた相手とは・・・

こういう話しはよくあります。あなた色に染まる女っていうんですか?
ベイツなんざそのものズバリ『かわいい女』という短篇書いてます。
(チェーホフへのオマージュでしょうか?)
男性はやっぱりこういう女性がいいのかしらね?

『イオーヌイチ』
青年医師イオーヌイチは、赴任した街で一番愉快だと名高いトゥルキン家に
出入りするようになり、娘のエカチェリーナに求婚しますが断られます。
4年後、成功した彼の前にエカチェリーナが姿を現します。
それも未練たっぷりなかんじで・・・

エカチェリーナのフリ方はちょっと良くなかったかしらね?
後でかわいい顔しても上手くいかなくなっちゃう。

『谷間』
羽振りの良い食料品屋を営むペトロフ一家の、愛無き日常。
主人のグレゴリーは長男の嫁に、隣村から白痴同然のリーパを迎えますが
それが一家の悲劇の始まりでした。

正義は無いのか? と声高に言う気はありませんけど
次男の嫁アクシーニャは、リーパの赤ちゃん殺して捕まらないの?
しかも店の実権握って繁盛させるっていう・・・
これは、悪がはびこる政府や高官への暗喩でしょうか?

晩年(といっても若いです)の作品を集めた短篇集らしいです。
だからしっとりした雰囲気なのかしら?
他の4篇もユーモアと哀愁の入り交じった物語です。
名前のことを考えなければヨーロッパ的な感じかもね。

かわいい女・犬を連れた奥さん 新潮社


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最新版は表紙が素敵よね
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『ゴリオ爺さん』名前は強そうなのに (>_<;)

2008-08-29 23:10:29 | フランスの作家
LE PERE GORIOT 
1835年 オノレ・ド・バルザック

ゴリ→ゴリ男→ゴリオ、なんか強そうな名前なのに
この爺さんときたら 弱々しい・・・

物語の舞台は、パリの三流下宿ヴォケェ館。
二人の娘のためだけに生き、そのために身の回りの物全てを売りつくして
赤貧へと落ちていくゴリオ爺さんと、
上流社会へ入るためにゴリオ爺さんの二人の娘に近づこうとする
青年ウージェーヌ・ラスティニャックの交流を描いた物語です。

もともと裕福だったゴリオ爺さんの娘は、二人とも伯爵や男爵に嫁していて
本来ならお金持ちのはずなのです。
それが不倫相手に貢いだり、亭主が投機に失敗したりで父ゴリオ爺さんに泣きつくわけ。

ほとんど物の無い部屋でやせ衰えていく老人に
豪邸から馬車でやって来て金をせびるっていう神経も分からんが
言われるままに金を作ってやる爺さんもどうでしょう?
少し甘やかし過ぎでは? 6億円横領した母親並に親バカです。

その挙げ句待っていたのは冷たい仕打ちです。
一番安い葬式しかあげられないなんて・・・切ないねえ 、爺さん。
でも、僭越ながらお説教させていただくとやっぱり身から出た錆ですよねぇ。
愛することと贅沢させることを混同して育ててしまった結果ですもの。

バルザックの “人間喜劇(91話)” の一話なので
他の作品にも登場する顔ぶれが随所に顔を出します。
しかし、誰がどの話しでどんなことしてたかとか、
はっきり言って覚えてないのよね たくさんいすぎて。

ウージェーヌはこの物語の最後で、上流社会に挑戦状をたたきつけますが
その後彼が上流社会で成功したことが別の物語から伺い知れます。

バルザック全集(46話)買ったけど、半分ぐらい読んで今挫折中です。
ゾラの “ルーゴン・マッカール叢書” 読破と、どっちがきついかなぁ

ゴリオ爺さん 新潮社


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こちらは1冊になっているみたい
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『アー・キン』植民地は楽園なのか?

2008-08-29 02:06:04 | イギリス・アイルランドの作家
THE AH KING 
1933年 サマセット・モーム

はっきり言って、収載されている六篇、全て結末がよめてしまうお話しです。
しかし、それを最後まで引っ張って行くモームの筆力が凄い

全て大英帝国の植民地が舞台です。
植民地の中の白人社会はとても狭い世界、そんな井戸の中の蛙状態の人々のエピソードを
モームらしく淡々と物語に仕上げています。

果たして植民地は白人にとって楽園だったのでしょうか?

見渡す限り英国人は自分だけという辺鄙な場所で布教活動をし、裁判官になり、
ゴム園を造り、と彼等なりの使命感に燃えていた人々。
でも現地の人たちがそれを望んでいたのかどうかは疑問です。

六篇全てが秀作ですが、その中でもスペシャルな三篇を・・・

『怒りの器(The Vessel of Wrath)』
厳格な伝道師兄妹と、ならず者の白人ジンジャー・テッドの攻防。
テッドは二人に屈してしまうのでしょうか?

笑える一篇です。牧師ジョーンズと妹マーサは最高
すごく幸せな(おめでたい)人たちです。

『書物袋(The Book-Bag)』
ホストの男性が語る、若き日に恋した女のエピソード。
弟と暮らすオリーブは何故自ら命を絶ったのでしょうか?

『この世の果て(The Back of Beyond)』
退官して帰国するジョージ・ムーンを訪れた農場主トムは
彼の妻が隣人ノビィの死に泣き叫んだと打ち明けます。
問いつめるトムに妻ヴァイオレットが語ったこととは?

『書物袋』は近親相姦、『この世の果て』は不倫がテーマです。
モームはこれらのテーマを、嫌悪ではなく憐憫でとらえているような気がします。
どちらもドロドロとした話しにはならずしっとりとしたストーリーになっています。

モームはどの物語の中でも、何が悪で何が善か決して決めつけようとはしません。
それは、きっと彼が人間の弱さを知っていたからだと思いますが、いかがでしょうか?

アー・キン 筑摩書房


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『ジェイン・エア』姉の面目躍如

2008-08-29 01:06:17 | イギリス・アイルランドの作家
JANE EYRE 
1846年 シャーロット・ブロンテ

妹であるエミリーの『嵐が丘』と比較されがちでしょうが
当時はサッカレーの『虚栄の市』と売り上げを争ったらしいです。
どっちが面白いかなぁ? 私はこちらの方が好きです。

しかし3週間で書き上げたっていうのが凄くないですか?
ワープロもパソコンもないのに。
牧師館の自室で一心不乱にペンを動かす姿を想像すると、ちと怖いものを感じます。
事実はどうだか知りませんけど。

両親を亡くしたジェイン・エアは裕福な伯母に引き取られますが
その一家からは蔑まれ冷たい扱いを受けて育ちます。
しかし厄介払いのために入れられた寄宿学校で心優しい人々に出会い
正直な女性に成長して教師になります。

家庭教師として訪れたソーンフィールド荘の主ロチェスター氏の愛を得て
結婚することになったジェインでしたが、ロチェスター氏には秘密がありました。
それは、屋敷の屋根裏部屋に閉じ込められていた妻の存在…
ジェインは打ちのめされ、屋敷を飛び出します。

行く宛もなく彷徨い力尽きたジェインは一件の家の前で倒れてしまいます。
そして、その家に住む宣教師セント・ジョンとその妹たちと暮らすようになります。

ジェインの中に知性と強さを見いだしたセント・ジョンは、自分と結婚して
インドへの布教活動についてくるよう、執拗にせまります。
とうとう根負けしてインドに行く決心をしたジェインでしたが
ひとつだけ心残りがありました。

ジェインはイギリスを発つ前にロチェスター氏に会いに行き衝撃を受けます。
彼女は自分の進むべき道はどこなのか心を決めます、という物語です。

いったい、ロチェスター氏の妻はなぜ閉じ込められていたんでしょうね?
そしてロチェスター氏はどうなってしまっていたのでしょうね?
それは読んでいただかないと…すごくエキサイティングな場面です。

映画にもなったこの物語、当時は「両家の子女に読ませるべからず」と
言われていたらしいけど、どうしてでしょう?
とくにイヤらしい場面も無く、浮気者やならず者が登場するわけではありません。
なにくそ根性のある強い子の物語で、ためになると思いますけど…

『ジェイン・エア』は『嵐が丘』同様、愛をテーマにした激しい物語ですが
ぐっと現実味があり、どちらかというと男性ぽい内容のように思えます。
哀しい生い立ちと愛が壊れる青春時代が描かれた女性のドラマですが
ただのお涙頂戴ストーリーではありません。

厳格な宗教観がもたらすエゴや狂気など、確かに社会に波紋を呼びそうなテーマも
含まれていますね…そういえば。

エミリー・ブロンテにしても彼女にしても、もっとたくさんの作品を読みたいですよね。
二人して独創的な物語を生み出してくれそうだったのに。
本当に残念なことです。

ジェイン・エア(上) 光文社


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光文社版にもおおいに興味があります。こちらは上巻
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『テレーズ・ラカン』罪の代償とは?

2008-08-28 02:29:45 | フランスの作家
THERESE RAQUIN 
1867年 エミール・ゾラ

ゾラ作品の中では、かなりマイルドめな作品と言えましょう。

叔母の言いなりになって従兄と結婚してしまったテレーズ・ラカン。
不倫相手ローランが、テレーズの夫カミーユを殺してしまったことから
二人が味わう地獄を書いた物語です。

人を殺してしまうと、こんなにも死者に苦しめられるものでしょうか?
二人はカミーユの姿に悩まされ、眠ることさえままなりません。
ある意味良心的な人たちだったのかも?

前半はストーリーが動いて、ある意味ドラマティックなんだけど
後半はほとんどテレーズとローランの心理戦という感じです。

殺人を犯したピクニックに出かける以外、ほぼ全編が狭い家の中で繰り広げられます。
それがさらに、二人の息詰まる感じを煽っているようです。

その家は、テレーズが一生を縛り付けられた舞台でもあったわけです。
たしかに哀れです。

ただ、テレーズはね、一応自分のお店を持ってるわけ。
小さな婦人用品店だけど、今でいう雑貨屋とかセレクトショップとか、そんな感じです。

店を綺麗にするとか、売れるようにディスプレイするとか
情熱を注げば良かったと思うんだけども、彼女はとにかくボーッと座ってるだけなのよね。
だから沈んじゃったんではないかしら?

まあ、人を殺したら幽霊に苦しめられるってことを肝に銘じて
間違いを犯さないよう気をつけたいものですね

初期名作集 ゾラ・セレクション (1) 藤原書店


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ゾラ・セレクション、すごく欲しい・・・

ちょっと一言
この物語、上下巻に別れてるんですけど、二冊とも
薄っぺら~いのよね。 一巻にできなかったのでしょうか?
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『信仰の現場』今じゃスタンダード

2008-08-27 23:15:17 | 日本の作家

1994年 ナンシー関

副題は『すっとこどっこいにヨロシク』となってまして
買った当時はけっこうマニアックな気がしてたんですけど、今見るとそうでもないですね。

取り上げられてるものの中には、「矢沢永吉コンサート」とか「クレヨンハウス」
「二光&日本文化センターショールーム」とかあるんだけど
永ちゃんは言わずもがな、絵本専門の本屋や通販マニアはすっかりスタンダードですものね。

でもやはり、彼女自身の潜入ルポってところがおおいにウケて、私はこの本大好きです。
惜しまれるなぁ・・・誰も代わりがいないもの

気を取り直して
何かを信じきって無防備になっている人たちを見てみようと
ナンシー関がその現場をレポートするというのが主旨。

4月4日4時44分(朝よ)に、ゾロ目マニアを捜しに四谷駅へ行ったり
ウルトラクイズの予選に行って悲喜こもごもを味わってみたりと
合計24カ所を訪ねて彼女独特の視点で体験レポートしています。

私が好きだったのは「毒蝮三太夫の公開放送」
営業でまわってた頃聞いてたなぁ。
確かに “じじい” “ばばあ” って言ってたなぁ。もちろん愛を込めて。
まだやってるのかしら?

私が行ったことがあったのは、青山のクレヨンハウスと皇太子様の御成婚パレード。
だって母が行きたいってせがむんですもの・・・
でも日の丸振ってたらそれなりに感激しましたが。

生きていれば、ぜひ続けて頂きたかったんですが、かえすがえすも残念です。

信仰の現場 角川書店


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こちら文庫版です。
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『獣人』間違いなくR指定

2008-08-27 22:45:17 | フランスの作家
BETE HUMAINE 
1890年 エミール・ゾラ

題名からしてインパクト大のこの物語、登場人物どしどし死んでます。
それも悲惨な死に方で。

人は欲のためなら獣になれるのですね。
愛欲のため、嫉妬のため、金のため、変態的な性癖のため
何人もの人間が無情に殺されます。

また、これが微細にとまでは言わないけど、詳しく描写されててさぁ
想像するとちょっと気持ち悪いのよね

それでも手は次から次へとページを繰っていきました。
ハラハラというより、ドッキンドッキンていう感じでしょうか?
それからそれから?と次のページが待ちきれなかったですよ。

あらすじは・・・長くなるので省きますが
舞台はパリと、ル・アーブルの駅 及び 駅舎で
登場人物のほとんどが機関車の仕事に携わっています。

一見普通の、あるいは立派な人たちですが、心の奥にはそれぞれ闇を抱えていて
ふとした瞬間に獣へと変わるのです。
しかも殺人者たちは、ほとんど後悔を感じていません。
怖いね・・・

主要な会話は、主にベッドの中か暴力の中で語られてまして
忠実に映画化したら、こりゃ子供には観せられませんとも

しかし、私もこの物語にトキメキを感じるとは・・・心が荒んでいるのかしら

獣人 ゾラセレクション(6) 藤原書店


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憧れのゾラ・セレクションです

プチ情報
この物語、蒸気機関車の運転風景や駅での発車準備などに
かなりページを割いています。
てっちゃんじゃない私が読んでもけっこうエキサイティングでした。
蒸気機関車がお好きな方も楽しめるかも・・・
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『テス』清いことは善なのか?

2008-08-26 01:02:38 | イギリス・アイルランドの作家
TESS OF THE D'URBERVILLES 
1891年 トマス・ハーディ

私は、“この世の者とは思えない美しさ” とか “誰もが見つめずにいられない” という
世にも美しい女主人公には手厳しいよ
それだけで七割がた物語になっちゃうからね。

でも『テス』はあまりに可哀想で、美しいのも大変ね、と
同情を感じないではいられません。

映画は観ましたが、まったく内容を思い出せないっす
覚えているのは公開当時CFで流れていた、ナスターシャ・キンスキーの紅い唇のみ
綺麗だったなあ、今は何してるんでしょう?

父親が由所ある家系の出だと聞いてきたことから、テスの悲劇は始まります。
両親の期待を一身に受けて、ダーバヴィルの家名を持つ裕福な家に奉公に出されたテスは
その家の息子アレクによって不幸な人生の一歩を踏み出すことになります。

アレクの元を離れたテスは、農場でエンジェルと言う青年と相思相愛になり結婚しますが
初めての夜にテスが過去を語ったことから、清廉なエンジェルの怒りをかってしまいます。

ひとりブラジルへ発ったエンジェルを待ちながら、貧困生活を余儀なくされたテスの前に
アレクが再び姿を現します。
テスはなおエンジェルを待ち続けますが・・・

私はね、エンジェルっていう男が一番いけないと思うわ。
時代背景があるにしても、テスは心から愛した人じゃないですか?
自分だって女性がらみの問題があったくせに、ちょっとひどくないですか?

アレクは悪の権化のように書かれていますが、ちゃんと責任もとって
家族の面倒までみてくれてるじゃないですか。
ハンサムっていうことだし、どこがいけなかったのかしら?

モームがある席でハーディに会って “面白みの無い小男だった” みたいなことを書いてますが
作品も、もちろん『テス』もちょっと面白みに欠けるかな?

『マンスフィールド・パーク』 ( J・オースティン)もそうだったけど、
清廉潔白で真面目な人が主人公の物語って、あ~んまり面白くないよね
もっとハメを外してほしいし、欲望でボロボロになってほしい。

“いい人だとは思うけど・・・だから?” っていう感じでしょうかね。

好きだったのはテスの3人のお友達、マリアン、イズ、レティ。
エンジェルに恋をしながらテスを裏切れないという、切ない人たち。 泣けるわ

テス 上 筑摩書房


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女性らしい表紙のちくま版、上巻です
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『風車小屋だより』“すべドー運動”実施中

2008-08-25 00:24:57 | フランスの作家
LETTERS DE MON MOULIN 
1869年 アルフォンス・ドーデー

ドーデーがよく訪れていたプロヴァンス州アルル近郊の
風車小屋を舞台に書かれた物語を中心に、田舎色豊かな小品が収められた短篇集です。

序文の後の『居を構える』という章が可愛くって素敵です。
長年の空き家にいきなり人間が表れた!!
驚くウサギやフクロウの様子がキュートです。

わたくし “すべての教科書にドーデーを!” 運動実施中です。
別に街頭演説とかビラ配りはしませんが

『母親(『月曜物語』)』とならんでお薦めしたいのが
この本の中にもあります。

『老人』
パリの友人からの手紙を携えて、その年老いた両親を訪ねます。
息子の便りを持って来てくれた人を前にはしゃぎ、根掘り葉掘り息子のことを訪ねる二人の
おかしくも哀しいお話です。

里帰りしてないなぁ・・・と反省させられます。
“親の心子知らず”なんだなぁ、私も。

ちょっと現実離れした感じの物語が多いと思います。
それも風車小屋ののどかさがなせるわざなのかしら?
あくせくした日常をつかの間忘れられますよ。

風車小屋だより 岩波書店


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『月曜物語』小さな悲劇が語ること

2008-08-25 00:24:43 | フランスの作家
CONTES DU LUNDI 
1871-1873年 アルフォンス・ドーデー

『最後の授業』は学校で習って知っている人も多いと思いますが
その一篇が収められている短篇集です。

軽妙に書かれているけど、フランスの愛国心と自戒、
そして反ドイツ感情がおおいに反映されています。
小品を集めたものですが、戦争で疲弊した市井の人びとの悲しみや苦労がしのばれます。

この本の中で、機会があったら読んでほしい
もうこれだけでいいという作品があります。

『母親』
入隊している息子に会おうと八方手を尽くし
息子と食べようと貧しい中できるだけの食料を持って夜明け前に田舎を出て来たというのに…
数語の言葉しか交わせないなんて。

この話しこそ教科書に入れるべきではないかと思います。
時代や豊かさの違いはあっても、お母さんの思いって
こういうものだと知ってほしくないですか?
って子供のいない私が言うのも変ですが。

『最後の授業』や『母親』以外にも、
歩兵が前線で死んでいるのに玉突きをやめない上官の話しとか
田舎をドイツにおわれてパリのせまいアパートを借りなくてはいけなくなった
子だくさんの農家の受難とか、戦争のせいで痛い目に遭う庶民の生活が語られています。

ユーモラスなものもありますが“人の哀れ”ってこういうものなのかな? と
うっすら考えさせられる作品がちりばめられた一冊です。

すごく短い作品ばかりなので、気軽に読んでみて下さい。

月曜物語 岩波書店


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