まりっぺのお気楽読書

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『パリ・ロンドン放浪記』“揺かごから墓場まで”の本音

2008-08-05 00:24:04 | イギリス・アイルランドの作家
DOWN AND OUT IN PARIS AND LONDON 
1933年 ジョージ・オーウェル

J・オーウェルが貧困時代を過ごしたパリとロンドンの回顧録です。

以前ご紹介した、J・ロンドンの『どん底の人びと』に触発された、という説もありますが
こちらは彼が実際に体験した貧困生活で、『どん底・・・』よりは
イキイキとした貧しさが伝わってきます。

あくまでも、オーウェルの場合ですが
同じ貧しさでも、ロンドンよりはパリの方が、“働かせる”姿勢がありますね。
貧しくて苦しくても、労働する場所はある、っていう感じ。

パリでオーウェルが得たのは一流ホテルの厨房の仕事です。
一週間に6日間、早朝から夜中まで
一流とは思えない環境の暑くて臭い仕事場でこきつかわれます。
それでも、パンやミルク、ワインまで自分の報酬で手に入れることができて
わずかでも、自ら手に入れる達成感が味わえます。

一方、イギリスは『どん底・・・』当時と相も変わらず
“ 浮浪者は歩かせろ、そして眠らせろ ” 的な対応が見て取れます。
無料で食事も寝る場所も与えるけど、仕事の機会は与えない
“ 慈善 ”の名のもと、人を無能力者にしていくような恐ろしさがあります。

J・ロンドンのいうように、イギリスは彼らに仕事をさせる気など
全くないように見受けられます。 
まるで、福祉の範囲内で先細りしていってくれと言っているようです。

私達が子供の頃、“ 揺かごから墓場まで ” はイギリスが福祉国家として
いかに優れているかを言い表す言葉として習いましたが、果たしてそうなのかしら?
“与えるんだから文句は無いだろう”というのは福祉なのかな?

この本に書かれていることが本当だとしたら
“ 福祉 ” の意味は全く違うものなってしまうような気がします。

パリ・ロンドン放浪記 岩波書店


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