まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『王妃に別れをつげて』たった二日で世界は変わる

2018-01-20 19:52:17 | フランスの作家
LES ADUEUX A LA REINE 
2002年 シャンタル・トマ

ヴェルサイユを描いたもの、マリー・アントワネットの生涯を描いたもの、
フランス革命を描いたものは山のようにあって、到底全部は読みきれないですね?

わたしもハナから読破は諦めて、ぼんやり知ってるし… てな感じでやり過ごしてるのですが
この小説は、王妃の朗読係から見た革命前の二日間、という背景が面白そうだったので
読んでみることにしました。

感想なんですけど…
フランス革命がなかったら、ヨーロッパに独裁国家という概念は生まれなかったのかなぁ…
などと思ったりしています。
歴史とか思想とか、よく解んないまま書いてますけどね

たとえばね、1789年、7月15日の夜中に何者かがルイ16世を起こすという
前代未聞の出来事があり、バスティーユがパリ市民たちによって攻撃され陥落した、と
伝えられたというウワサがヴェルサイユ宮殿内に広がります。
貴族たちはもちろん「そんなバカな!」と思うんだけど
それはバスティーユが陥ちたということより、市民たちがなぜそんな事を考えるのか…
ということが理解できないようなのね。

神から選ばれて代々続いている王や貴族たちがいるのに、自分たちで指導者を選ぼうなんて
考えるわけないじゃないか、ということだったみたいです。

けれどもバスティーユ陥落は本当らしいということになり、宮殿内がざわつきはじめます。
そして驚いたことに、まず「宮殿の門は閉めるべきじゃない?」という意見が交わされます。

つまりね、戦争も反乱も予想してなかった王や貴族たちが暮らすヴェルサイユ宮殿は
門を開けっ放しにしていて、町人も、行商人も、物乞いも出入り自由だったんだって!

自分たちは権力で下々の民たちを押さえつけているという意識はないし
まさかそんなことで恨まれるなんて… と思っていたんでしょうね。

その後、君主を引きずり降ろす事ができるんだと知ってしまった各国の民たちは
チャンスを狙い始め、王制を倒して指導者になる人が現れます。
だけど、王や貴族と違って「当たり前」と思ってないから、その座を手放さないように
必死で守りに入りますよね、秘密警察作ったり、密告させたりして。

だから、絶対王政と独裁とは、ちょっと違うもんだったんじゃないのかな?
何言ってるかわからなくなってきたので、これ以上考えるのはやめときますけど…

さて、物語では、ヴェルサイユでは前日まで儀式に乗っ取った日常が送られていて
ルイ16世たちは豪勢で何時間も続く晩餐を食べて、選ばれし貴族たちが侍っていたのに
7月16日には様相が一変します。

ルイ16世は市民たちの前に徒歩で現れ、熱狂で迎えられたことに気を良くして
マリー・アントワネットや弟のアルトワ伯(後のシャルル10世)が
宮殿を発とうと説得しても、ヴェルサイユに残る決心をします。
それどころか、宮殿を警護していた海外の兵士たちも国に帰してしまいました。

王の就寝前の謁見は閑散としたものになり、フランス人の衛兵たちは横柄になります。
召使いたちは呼んでも来ないし、宮殿内で配られたビラには(貴族の)処刑者リストが
書かれていて、その筆頭は、マリー・アントワネットとアルトワ伯でした。

マリー・アントワネットは、お気に入りだった友人たちの部屋を訪ねますが
みな宮殿を発った後でした。
そして、誰よりも愛していたガブリエル・ド・ポリニャックも逃亡を決めました。

主人公のアガート・ラボルトという朗読係補佐の女性は、二日間の宮殿内の人々と
王妃の変化、そして自分自身の変化を驚きを持って見つめていましたが
最終的には王妃の命令で宮殿を後にします。
その命令の内容はふせときますが、一番泣けるシーンかもしれないです。

ストーリー自体は、そんなに驚くべきものでもなんでもないんだけど
窮地に陥った貴族の右往左往ぶりと無力さ、薄情さが興味深い物語でした。

でも自分もそうするなぁ、きっと。
「王妃は自分の意志で残るんだから…」と言い聞かせ、さっさと荷造りをするよね。
だから、逃げ出したガブリエルなども責められませんでした。

ちなみに、王妃に忠誠を示したために惨殺されたとされるランバル公妃は
この物語の中では、お気に入りだったようには描かれていませんでした。

フィクションなのでね…
でも、物語に登場する王妃の小間使い頭のカンパン夫人が後に回想録を出版してます。
荷造りシーンや食事シーンなどはそれを下敷きにしているかもしれないですね。
だとすると、マリー・アントワネットのパーソナリティが
少しは垣間見える貴重な一冊かもしれないです。

以前映画化されたみたいですね?
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね




ひとことK-POPコーナー
BIGBANG うたんぷ を手に入れ、さっそくみんなに送りつけたわけなんだが、かなり歌ってくださるので
ビックリしちゃいました  電車の中などでお年寄りやあかちゃんがドッキリしないように気をつけなければ…


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『脂肪の塊/ロンドリ姉妹 モーパッサン傑作選』巻末で驚いた!

2016-11-08 19:41:49 | フランスの作家
BOULE DE SUIF / LES SOEURS RONDOLI 
ギィ・ド・モーパッサン

10篇中8篇は『モーパッサン全集2』で読んでたらしいんだが
『脂肪の塊』以外は覚えてなかったという…

『脂肪の塊』は、何度読んでも良い!! 本当に名作ですね。
フローベールが「後世に残る」と絶賛したと巻末に書いてありました。
さすが、モーパッサンが師と仰いだ方だけあります。

なんだけど、読み返してみて『脂肪の塊』以外はあんまりピンとこず…
もっといい作品もたくさんあると思うんですけど… 傑作選でしょおぉぉ?

印象に残ったお話しをいくつかあげてみます。

『ローズ(Rose)/1884年』
二人の若い婦人のうち「恋愛抜きの人生など考えられない」と言った婦人が語る。
四年前、英国で十年働いていたローズという娘を雇い入れた。
彼女は裁縫も髪結いもドレスの着付けも完璧で、まさに掘り出し物だった。

ちょーっとタネあかしすると、ある事からローズが男だったってことがバレるのね。
今と違っていろいろな技術が発達していない19世紀に、隠し通せるものかしら?
これがどうして恋愛と関係あるかっていうのはヒミツ…

『ロンドリ姉妹(Les Soeurs Rondori)/1884年』
1874年6月、どうしてもイタリア各地を旅行したくなり、友人を誘って出かけた。
しかし、列車の中で出会ったフランチェスカという女性から離れられなくなり
結局3週間ジェノヴァにとどまった。

こういっちゃなんだが、もう少し奥深い話しかと思って読んでたんだけどな。
最初はモームの『クリスマスの休暇』をちょっと思い出したんだけど
かなりベクトルが違ってました。 これ、笑い話なんでしょうね?

『持参金(La Dot)/1884年』
町をあげての結婚式を挙げたシモン・ルブリュマンとジャンヌ・コルディエ。
ジャンヌには約3億円の持参金があった。
甘い1週間を過ごした後、二人はパリへ小旅行に出かけた。

読み始めて早々に、物語の展開は2パターンのうちのどちらかだな… とわかりますよ。
で、すぐにどちらかに絞り込めます。
でも、わかりきっているのに、最後まで面白く読めます。

巻末に年表がついてるんですよね。
書かれた年代とか、ゾラやフローベールとの関わりが知りたくてざっと読んでみた、ら
びっくりしたぁ! 42歳で亡くなってるんですよ、モーパッサン。
こんなに作品があるのに… ものすごい書きっぷりですよね。

自殺未遂をおこして、精神病院に入れられ、そこで亡くなっています。
作品からは、そういうタイプには思えなかったんですけど。
これまでモーパッサンを、勝手に、パリ郊外のこじんまりした屋敷で執筆してるような
長閑な作家だとばかり思って読んできたわけですが、大間違いみたいです。
詳しくは調べないけどね。

『脂肪の塊』だけでも一読の価値あり!
読んでみたいな! という方は下の画像をクリックしてね





ひとことK-POPコーナー



すごくすごく楽しかったけど、1曲目から泣いちゃったでしょー!! MY HEAVENとは…
きっと5人で、再び東京ドームの舞台に立つって言ってくれて、またまた涙 きっと行くからね! 足腰鍛えとく!!
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『水車小屋攻撃 他七篇』ゾラ再発見!

2016-03-04 22:57:27 | フランスの作家
L'ATTAQUE DU MOULIN 
エミール・ゾラ

ルーゴン・マッカール叢書のせいか、私の中でゾラは完全に長篇作家というイメージが
でき上がっていて、ゾラの短篇集? と、すごく不思議な気持ちで読み始めました。

短篇集とはいっても、8篇のうち4篇が70ページ前後あって、短めの中篇って感じ?
ゾラは手を抜かずに風景や背景を細かく描写してまして、内容もぎっしり書き込まれ
読み応え十分でした。

反戦を訴えていると思われる『水車小屋攻撃』、妻の浮気がテーマの『シャーブル氏の貝』
『パリの胃袋』『ナナ』を彷彿させる、やっぱりゾラだ~!の『ジャック・ダムール』
私には理解できない男心と恐ろしい少女の駆け引きを描いた『一夜の愛のために』が中篇。

『小さな村』はエッセイなのかな? こちらも戦争への抗議を込めています。

それ以外の、まさに短篇という3篇をご紹介しますね。

『周遊旅行(Voyage circulaire)/1877年』
1週間前に結婚したばかりのリュシアンとオルタンスは
オルタンスの母親が目を光らせていて、一時もふたりきりになれない。
リュシアンの父親ベラールおやじの助け舟で
二人はノルマンディーへ一ヶ月の新婚旅行に出かけることになった。

せっかく二人きりで旅行に出られたのに、ハネムーン離婚? なんてハラハラしてたら
いい感じで終わりを迎える物語です。
若い二人には今後、姑さんの意地悪に負けずに頑張っていただきたいですね。

『ある農夫の死(La Mort d'un paysan)/1876年』
70歳のジャン=ルイ・ラクールは、頑健な農夫だったが、ある日倒れ
翌日畑でも腕に力が入らなくなると、その次の日からはベットから起き上がらなかった。
医者を呼ぶのも拒み、子供たちや孫を畑に行かせた。

フィリップの『質撲な人の死』と『老人の死』を思い出しちゃいましたね。
人の死はこうありたい… 言うは易し…
他にも、貴族・ブルジョワ・プロレタリア・小市民の死の四篇があるらしいです。 読みたい…

『アンジェリーヌ(Angeline)/1899年)
2年ほど前ポワシー近郊を自転車で通りかかり、あまりにも酷く朽ち果てた館を見つけた。
心を打たれ近所の宿の老女に話しを聞くと、40年ほど前に嫉妬に狂った継母に殺された
12歳の美しい少女の幽霊が出ると言う。

女二人のドーロドーロした過去が暴かれていくのでしょうか? ってワクワクしてたら
こちらもいい感じの話しに終わってしまった。
館の Before - After がすごくて、ちょっと笑えました。

ゾラは、短篇はハッピーに終えたかったんですかね?
長篇は、ゾラの物語は好きなんだけど、ここまで残酷に終わらせなくても… と
心が重くなるものが多い気がしますが、せめて短篇では読者の心を軽くしようなんて考えた?
そんな気は使っていただかなくてもよかったんですけど、おかげで楽しく読めました。

いずれにしても、なぜ今まで、ゾラに短篇があるってことを思いつかなかったんだろう!
ぜひ他の短篇も読んでみたいでしょう!!

ゾラの長篇になかなか手が出せないという方も短編なら安心ですね
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことクラフトコーナー
知人に教えてもらったんですけど “ 羊毛フェルト 失敗 ” でググると、すごーく笑えます。 ご存知かもしれませんが…
辛い時や悲しい時、これからはこれだな!って思いました




失敗作も和めますが…
こんなのが作ってみたい!という方は上の画像をクリックしてね


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『アウトサイド』エッセイを軽くみちゃいけなかったわ

2015-05-08 23:34:40 | フランスの作家
OUTSIDE 
1981年 マルグリット・デュラス

以前古本市で買ったんだと思うんだけど、すっかり忘れていた一冊。

私は、デュラスってたぶん2冊ぐらいしか読んだことないと思います。
『モデラート・カンタービレ』と『ラマン』かな?
どちらも感銘を受けた覚えはないのですが、独特の世界がある人だなぁ、と思っています。

で、どれどれ… とページを開いて、読み終えて、けっこう疲れました。

デュラスが新聞や雑誌のために書いたエッセイや、インタビュアーを務めた記事を
まとめたものですが、なんていうのでしょうね… 一筋縄ではいかない、という印象です。

前書きで、金欠でお金がほしかったから… と新聞や雑誌の仕事をうけた経緯を語ってますが
書いていた媒体はかなり幅広かったようです。
各々のポリシーによって書き分けていたのでしょうね… さすが。

27の章が六つのブロックにわかれています。
簡単に説明しますね。

第一ブロック『ある日、パリで』と第二ブロック『ストリート・ファイル』は
パリのおしゃれな風景やデュラスならではの視点で書かれる、パリらしい街角の出来事が
描かれていると思いきや…
8.二つの家庭を持つ男 と、9.カルメル会修道女が街に帰る日 を除いて
主に裁判所と司法への非難と思われます。

各章のネーミングからは想像がつかなかったんだが…
最初から、心して読まねばならんね! と身が引き締まりましたよ。

第三ブロック『ポートレート』は、16.マリア・カラス を除いてインタビュー記事。
ジャンヌ・モロー、メリナ・マルクーリ、バルドー、マーゴ・フォンテイン etc…
デュラスが厳選したって感じのそうそうたるメンバーに、単にインタビューするだけでなく
かなり主観の入り交じった人物像も書いています。どっちかっていうと褒め上げてますが…
このブロックはVOGUEに書いてたようで、他ブロックよりやわらかい印象です。

第四ブロック『サルトル、バタイユ…』は、サルトルとバタイユと画家フランシス・ベーコン
そして、ある編集者にインタビューした記事です。
ここは哲学のぶつかり合いっていうか、禅問答みたいで、さっぱり面白くなかったですけど…

第五ブロック『小さな人たち』は子供に関するインタビュー。
彼女が子供に批判的なのか好意的なのか、いま一つつかめませんでした。
子供だからってあまくみないところがフェアなのか?
小さくても一人前の人間として接するという教育方針によるものか…

第六ブロック『記憶』は、最もエッセイらしい部分でした。
24.ポロネギスープ考 を除き、デュラス自身の暗い過去が書かれていますが
37.強制収容所からもどった夫 は、ものすごく壮絶でした。
私は、このブロックで打ちのめされたような気がしています。

よく書いたな… とも思いましたが、同じ体験をした人へのエールかもしれないし
書くことで訣別したかったのかもしれませんね。
そんなに簡単に訣別できることではないと思いますが…

デュラスの、どちらかというと社会派な面が際立っている一冊ですね。
もう少し女性作家目線のエッセイ集があったら、ぜひ読んでみたい気がしています。

『ラマン』が自伝的な内容だと聞いたことがあるような気がするし
今回のエッセイからも、波瀾に充ちた人生だっただろうと想像できます。
私は作者の人生を深追いするタイプではないので、彼女のことをこれ以上知りたいとは
思いませんが、興味があったら伝記やWikipediaなどで調べられてはいかがでしょう?

『記憶』の章だけでも一読に値する、奥が深いエッセイ集でした
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことゲームコーナー
とうとうほしの島にゃんこにあきて “ 島のにゃんこがさびしがってるニャ ” のメールも無視している今日この頃…
今は ねこあつめ に夢中!! かわいいなぁ
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『海に住む少女』ターゲットは不明

2014-12-21 00:31:27 | フランスの作家
LENFANTE DE LA HAUTE MER 
ジュール・シュペルヴィエル

以前、シュペルヴィエルの『ひとさらい』を読んだ時、衝撃的な題名とテーマのわりに
悪の匂いを感じなかったわけですが、この本を読んで作品の傾向が
ほんの、ほんの少しだけわかった気がする。

この一冊には、童話とも寓話とも言える、また、ファンタジーとも呼べそうな
空想いっぱいの短篇が10篇おさめられています。
文章は簡単で、優しく語りかけるように書かれています。
内容もそんなに込み入った感情が描かれているわけでなく、単純にも見えます。

では子供が読む本か? と問われればそうではないんですよね。
じゃあ大人が読んで楽しいか? というとそうでもない… 誰が読むといいかしらね?

いくつか紹介してみます。

『海に住む少女(Lanfante de la Haute Mer)』
他に住人のいない、海に浮かぶ道の街にたったひとりで暮らす12歳ぐらいの少女。
船が近づくと道は少女もろとも海の中へ沈んで消える。
少女は、朝がくれば街中の店を全て開け、夜になれば閉めてまわる。
ある日少女は、初めて人間が鳴らしているサイレンの音を耳にする。

なんとなく、吹き出しが少なく白場が多い空想的な少女漫画みたいなのを
思い浮かべながら読んでいたら、最後はがっつり悲しい結末に辿りついちゃった。
子供が読んだら怖くてひきつけをおこすかもしれないわ。

『ノアの箱船(L'Arche de Noe)』
いよいよ洪水に見舞われた時、ノアの箱船に乗れるのは、全ての動物の雄と雌の
各一頭(匹)だけで、ノアの家族以外の人間はどんなにすがっても乗船できなかった。
甲板ではありがたがる動物たちがお互いをいたわり合い、美しい光景が見られたが
長いこと海上を彷徨ううち、皆が空腹とイライラを募らせていく。

すみません、聖書を読んでいないので、この話しが言い伝えとどれぐらい違うのか
わからないのですが、おこりんぼノア、ノアにダメだしする妻などなど
聖人台無し感がハンパじゃありません。 いいのかね?

『牛乳のお椀(Le Bol de Lait)』
青年は、街外れに住む母親に届けるため、毎朝牛乳が入った一杯のお椀をかかえ
パリの街を横切っていた。 牛乳をこぼさないよう、急がず、ゆっくり…
母が亡くなってずいぶんたつが、それでも青年は牛乳を運び続けている。

親孝行の話しかしらね? と思って読んでいたら、唐突に哲学的な問いかけをされて
びっくりしちゃうわね! というラストでした。
教訓は特に含まれていないように思うけど… 継続は力なりってこと? 違うね。

ここに共感できたとか考えさせられたという場面はほぼ無かったと言えましょう。
清い印象は受ける、無垢な印象もある、でも子供にふさわしいとは思えない。

現実的な話しが好きな人は受けつけないでしょうし
ファンタジーやミステリーが好きな人に受け容れられるかどうかも疑問です。

どちらかというと詩的なのね。
私は詩が苦手だからなぁ… だから馴染めないのかもしれない。
ミルトンとかワーズワースとかが好きな人にはいいのかもしれないね。
って、私はどちらも苦手なので良さがわかりませんけどね。 失礼しました。

ロマンティックといえなくもない… 不思議な読後感の一冊
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
5日間行くはずだった代々木のSHINeeはわけあって前半2日しかいけず… その悲しみをソウル版のCDで癒してます
早くDVDがでないかなぁ。 日本公演のDVDはドームの後ですよね? きっと
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『編集室』憧れの業界も一皮むけば…

2014-11-14 21:09:32 | フランスの作家
LA SALLE DE REDACTION 
1977年 ロジェ・グルニエ

仕事と名のつく物全てに業界がありますが、中でも憧れる人の多さでは
マスコミ業界も五本の指に入るのでしょうね?

実は私は以前広告業界の一郭(すみーっこ)に身をおいておりましたので
少しは出版業界のことを知っていたりするのですが
やはり内部で働いていた方が知る実情は厳しいものがありますね。

作者はジャーナリスト、新聞記者、テレビ放送関係に従事していた人です。
この本の中に書かれているエピソードはもちろんフィクションなのでしょうが
作者が経験したことが、多かれ少なかれベースになっていると思われます。

10篇の登場人物は、新聞記者・報道カメラマン・ラジオ制作者など様々ですが
どれも大手の花形…というわけではありません。

出版社がみな小学館とか講談社みたいに大きいわけじゃないものね。
マンションの一室で編集されている雑誌や新聞はけっこうあります。

印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。

『死者よさらば』
ヘミングウェイの自殺から5日後、パンプローナの闘牛祭りに取材に行くと
なんとヘミングウェイがカフェにいて、人々に囲まれていた。
彼はヴァンダーフォードというアメリカ人で、ヘミングウェイに間違われた日から
ヘミングウェイになりきって生きてきたという。

マイケル、ベッカム、ウィリアム王子などなど、有名人にそっくりだからって
なりきって人生を送っていらっしゃる方もたくさんいれば、ありがたがる人もおり…
でも、同じ顔でもオーラとSPが背後に見えないのがそっくりさんのつらいとこ。
これ実話? オーソン・ウェルズが激怒したって書いてあるんだけどね。調べないけどね。

『もうひとつの人生へ』
早朝パリを出た車には、マルト・R…夫人、記者のティスール、カメラマンのマラン
運転手ピエールが乗っていて、東部のプザンソンを目指していた。
10年間刑務所にいて、出所してから1年半しかたっていないマルト夫人が
最後に “その “ 門をくぐっていく姿を写真におさめるためだった。

芸能人が人生切り売り的に、実生活をテレビで晒したりするのは仕方ないとして
素人さんの人生を見せられてもね… というわけで、もう大家族モノやめません?
しかし、主人公女性のように、もうこれしか売る物が無いとなると
人は万人の前に自分を晒すのかもしれないですね… なるべくそうはなりたくないけどね…

『すこし色あせたブロンド女』
ピエールが初めてイラストレーターのミシェルと会った時
彼女はNYに出て来たばかりのみすぼらしい娘だったが好感が持てた。
しかし、ある日髪を切ってきたミシェルを見て堕落の始まりを感じた。
数年後に二人が再会した時、ミシェルは三人の男を手玉にとっていた。

いつも書いていますように、私は容姿を武器にする女性は嫌いじゃないですよ。
それは彼女なりの才能だし生き方だし、潔く “ The 女 ” をやっていただければよいのでは?
ただ、そんなのいつまでも続かないよ~だ! という願い通りの、その後が見てみたいという
意地悪な気持が少しは… ウソです、ものすごーくあります。 だからこの話しが好きさ。

記者、イラストレーター、評論家、作家、ライターとかって、誰でも名乗れますよね。
名刺に書いちゃえばいいし、自分で言いふらしてもいいんだしさ。
「なれる気がする…」って思ってるだけで名刺刷っちゃう人も多い気がしますが
まず誰かに認めてもらうのが至難の業だし、その座に居続けるのも大変ね。
そんな業界人の浮き沈みや四苦八苦、右往左往に東奔西走がもりだくさんです。

物語の書き出しが、わりとカタめで、回想録とかルポなんじゃないかと思いましたが
読み進めるとじわじわストーリーが楽しめる話しばかりでした。
文章に遊びが無い分ストレートに頭に入ってきて読みやすい一冊でした。
読後に哀愁が感じられる大人っぽい物語が多かった気がします。

ところで、すごーく邪道な本の読み方かもしれないけど…
いくつかの物語には主人公がいて、いくつかは語り手が自身を語るというパターンなのですが
主人公、あるいは語り手が作家自身を反映しているとしたら、私はこの作家がすごく好きね!
書き手としてでなく男性としてなんだけど…
落ち着いてるし、客観的だし、寡黙だし、冷静だし、情け深いし…まだまだあるけど
本当に大人の男って感じよ。

それぐらいこの本の物語の登場人物の男性たちは魅力的でした。
目の前にこんな人がいたら、物陰からじーっと見つめちゃうかもしれないわ 
きっと顔立ちも整っていて声も素敵な、魅力的なお方のはず… ただいま妄想中

こんな男性たちにまた会えるなら、この作家の本をもっと読んでみようかしら?
…実物とのギャップが怖いので写真は見ないことにします。

ステキな男性と出会える一冊。 妄想だけど…
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
BEASTの『TIME』を聞き続けている今日この頃ですけど、『12:30』よすぎる! また聞いちゃお
あんなにしっとりした曲なのにけっこう激しめなダンスがあるってのがまた…素敵すぎ



めっきり大人っぽくなったBEASTに出会える1枚
聴いてみたいな!という方は上の画像をクリックしてね
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『ぼくのともだち』ガンバレ! 私はムリなタイプだけど・・・

2014-10-17 01:08:05 | フランスの作家
MES AMIS 
1924年 エマニュエル・ボーヴ

歯ぎしりするほどじれったい… という小説を久しぶりに読みましたよ。

表紙の雰囲気からも連想されるでしょうが、ちょっと情けない青年を
ユーモアを交えて描いている物語です。
ですが、読んでる私は面白いなんて思えず「あ!また」「だめ~!」って感じで
ハラハラ、イライラする保護者にされてしまった気分。

裏表紙から引用すると “ とびきり切なくとびきり笑える(中略)ダメ男小説の金字塔 ”
ということなのですが、とんでもないぞ。

主人公は帰還兵の青年ヴィクトール・バトンです。
戦争で腕を負傷したため年金をもらって暮らしています。
3ヶ月に一度もらう年金での生活はギリギリで、アパートの部屋は狭くて陰気くさく
着る物もくたびれはて、いつも金持ちになることを夢みています。

ヴィクトールは、自分はハンサムの部類に入ると思っているみたいで
女性と知り合うことでお金持ちになれるんじゃないかといろいろ妄想してるのね。

モーパッサンの『ベラミ』の主人公と似通っている部分がありますが
二人の決定的な違いは行動力ですね。

なにしろヴィクトールはものすごい小心者で、気ばかり使って裏目に出るという性格。
そんなわけで友だちがひとりもません。
なんとか心が許せる友だちがほしいというのが、ヴィクトールのもうひとつの夢です。

この物語は、そんなヴィクトールが友だちにしよう(なろう)とした人々との
エピソードを各章で書いています

各章の登場人物を紹介します。

『リュシー・デュノワ』
ヴィクトールがよく行くカフェの女主人で、ビール太りしている未亡人です。

『アンリ・ピヤール』
薬局のトラブルを取り巻く人ごみの中、ヴィクトールの隣に立っていた小男です。
身なりはよく、ヴィクトールに酒をごちそうしてくれました。

『船乗りのヌヴー』
人々の同情を引こうと、セーヌ川岸で自殺志願者を装っているところへ現れた自殺志願者。
ヴィクトールを「一緒に死のう」と誘います。

『ムッシュー・ラカーズ』
リヨン駅でヴィクトールをポーターと間違えた実業家。
ヴィクトールを気に入り、職を世話してくれようとします。

『ブランシェ』
ゲーテ通りで出会った、カフェで歌っている歌手。

これらの人々に、ヴィクトールは「友だちになれるかも…」と涙ぐましい努力をしたり
そりゃダメでしょ! ということをしでかしたりします。
上手くやれば友だちになれそうな人もいたんだけど、結局誰とも友だちにはなれません。

ヴィクトールは、どうやらお人好しすぎるみたいね。
私なら絶対に断ることも、友だちになりたいばかりに聞き入れてしまうんだもの。
それも会ったばっかりの人に… おばかさん?
そんなに友だちってほしい? 私は友だちはものすごく少ないが毎日楽しいけどね。

たしかに話し相手がほしいというのはわかります。
でも、話し相手=友だちというのは、ちょいと違うのでは?と思いますけどね。

友だちを作るのが上手な人っていますよね。
ヴァイタリティがあるとかユーモアがあるとか、理由はいろいろでしょうが
たぶん自分のさらけ出し方が上手なんだと思う。
それから話し上手なだけでなくて聞き上手であること、あとデリカシー、これは必須ね。

そして、愛してくれる人がいる反面、敵もいるということがわかっている人だと思います。
全ての人に愛されるなんて、絶対無いとは言わないが、かなり難しいことよね。

ヴィクトールはさ、嫌われることを恐れてなかなか発言できないの。
それから、自分のことを聞いてくれる人ばかりを求めているのね。

最後にヴィクトールは、自分はなにも悪いことしてないのになんでこんな…という
目に遭ってしまいます。
これまでの友だち作りを反省して改善し、なんとか人付き合いがよくなって
思い通りのお友達が見つかるといいですね…て、私は本気で言ってないですけどね。
だって私は彼とはゼッタイ友だちになりたくないもの。

実はこのところ、どーんよりする本ばかり読んでいたので、少し笑いたかったのですが
ドンヨリの上塗りをしてしまった…
ただ不思議なことに、この作家の他の本が読みたくてたまらなくなっています。

ダメ男なんて思いこみ! 果敢にいきましょう!!
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
なんだかKポ界がいろいろ大変なことになってますけど… イジュン、チョンドゥン、やめないでぇぇぇ
MBLAQの歌が好きで、さらに完成されてきたなぁって次も楽しみにしてたのよ。いい報せが聞けますように…
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『シルヴェストル・ボナールの罪』古くさいんですのじゃ

2014-08-29 23:01:03 | フランスの作家
LE CRIME DE SYLVESTRE BONARD MEMBRE DE L'INSTITUT 
1881年 アナトール・フランス

まぁ、1800年代に書かれている物語に新しさを求めるのは無理ってものですが
あまりにも古い、古すぎる! 風情はありますけどね。

最初は難しい本の話しばかりが書かれていて、つまらない話し!と
イライラしながら読んでいましたが、後半にいくにつれて盛り上がりました。
すごーくゆるやかにですけど…

主人公はシルヴェストル・ボナールという年老いた学士院会員で
この、学士院会員というのはけっこう高い地位のひとみたい…調べてないけど。

彼はセーヌ河畔のアパルトマンの一室で本に埋もれて暮らしています。
一緒に暮らしているのは、長年勤めているお手伝いの口やかましい老女テレーズと
ボナール家で一番偉そうにしている猫のハミルカルです。

お話しは二部構成で、第一部は『薪』
うーんと… 説明するのが難しいんですが頑張ってみます。
アパルトマンの上の屋根部屋にお情けでおいてもらっている本のセールスマンのココズと
その妻子の存在に、ボナール氏が気づいたのが発端です。
その後何年もの時がたち、ボナール氏が探し求めていた本の目録を探しにシチリアに旅して
悔しい思いをし、フランスに戻ってきて… という流れになっています。

すごーくザックリ言うと『鶴の恩返し』的物語。 『笠地蔵』でもいいや。

第二部は『ジャンヌ・アレクサンドル』で、物語としてはこちらが断然面白かったです。

ポール・ド・ガブリー氏が受け継いだ蔵書の目録を作成するために
リュザンヌに滞在することになったボナール氏は、ひとりの少女に出会います。
それがなんと! 忘れられぬ初恋の人の孫娘ジャンヌ・アレクサンドル。
今は不遇の身のジャンヌの世話をしたいと思うボナール氏でしたが、そこには数々の障害が…

ガチガチのコチコチの出不精で、クレマンチーヌとの叶わぬ初恋以降は
わが家と本だけを愛してきたボナール氏が俄然アクティブになりますよ。

この物語は、本の虫だった作者が自嘲をこめて書いたらしいのですが
今で言うオタクっぽさは、キライじゃないですよ、私は。
いいじゃない? 本の虫… それで暮らしていけるならぜひそうなりたいよ。

本筋とはまったく関係ないけれど、テレーズみたいな境遇もいいですね。
趣味に没頭してて家の事は一切構わないご主人様の下で好き勝手! 生涯勤めたいね。
アイドルの合宿所のおばさんっていうのもいいか… あらやだ… 妄想が…

復刻版だからか、文体もセリフももってまわった感じがしてめんどくさいのよね。
冒頭から四分の一ぐらいまではグッタリすると思います。
内容はけっしてつまらなくないので、現代風に書き直していただくと読者が増えるかもよ。
できたら古い本の説明は省いていただきたい。
ただ、アナトール・フランスらしさが台無し!ってことになりかねないですけど…

ひきこもりのじいさまの活躍が楽しめる物語
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことグルメコーナー
『孤独のグルメ』見てます? わが家は最近になって見はじめて、かなりハマっています。
次の日同じようなメニューが食べたいんだけど、なかなか見つからないところがつらいですよね



まだ見た事がないという食いしん坊の方にはぜひ見ていただきたい! きっとハマります
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『ひとさらい』続編に期待

2014-03-11 21:47:28 | フランスの作家
LE VOLEUR D'ENFANTS 
1926年 ジュール・シュペルヴィエル

私はシュペルヴィエルという作家は知らなかったのですが
背表紙のあらすじを見たらおもしろそうだったので読んでみました。

うーんとね… もう少しセンセーショナルな内容かと思っていたのですけど
そうでもなかったです。

さくさくっと書いてみますね。

舞台はパリ、7歳か8歳のアントワーヌという裕福な男の子が、女中とはぐれ
ずっと後をつけてきた紳士に声をかけられるところから物語が始まります。

アントワーヌが紳士の高級なマンションについて行くと、すでに子供たちがいて
年長のジョゼフという少年はパリの貧民街から、幼い双子はロンドンから
それぞれ「さらわれて来た」と言います。

紳士はフィレモン・ビグアという南米大陸にある国(たぶんウルグアイ)の大佐で
大統領に敵視されて、美しく従順な妻デスポソリアとパリへ渡ってきたようです。

生活もきちんとしていて、兵士としてもひとかどの人物だったらしい紳士が
なぜに “ ひとさらい ” を?

大佐は故国からの便りで、自分が帰国する日も近いと感じ
「どうせなら女の子もひとり連れて行きたいなぁ…」と考えるようになります。 おいおい…
そしてある晩、美しい少女マルセルを家へ連れて帰ります。

大佐はその日から気もそぞろ、マルセルのことしか考えられなくなります。
さぁ、ここで『ロリータ』とか『痴人の愛』を思い浮かべた皆さん、
近いんだけど違うんですよ。
本当に立派な人なのよ、大佐。
マルセルを父親として愛そうと苦悩するあまり、黒髪が白髪に変わるなんて!

しかし、年ごろの少年もいる家の中で、何事かが起こるのは必至、ですよね。
そんなわけで平和だったビグア家にもある事件があり、大佐はパリを発つ決心をします。

南米大陸に向かう船の中で安堵しかけた大佐ですが、あ~!なんてことでしょう!!
うふふ …内容はこれぐらいにしときます。

原題と邦題が同じなのかどうかわかりませんが、厳密にいうと大佐の行動は
“ ひとさらい ” というのとは、ちょっと違う気がします。
連れて来た子たちは(特にアントワーヌ以外は)さらって来たのではなくて
そうしないとどうなってたか… という状況にいたと、私には思えるわ。

貧しくて酷い目に遭っていると思われる子を探して連れ帰り
あたたかい家庭を与えようと気を配っている大佐、
いつも連れて来た子たちに対して、本当に良かったのかという自問自答を繰り返す大佐、
自分でミシンを踏んで服まで作っちゃうんですよ! すごいでしょ?

でも、いくら優しさから出た善行だとしても、やはり非合法なわけですよね。
ちゃんと手続きを踏んでいたら、こんなに悩まなくてもよかっただろうに…

なんだか読んでいてすごく可哀想に思える反面、イライラしたりしました。
妻のデスポソリアも哀れに思える… しかもあのラスト! 妻は大打撃を受けるはず。

なんなのよ? この最後は と怒りさえ感じた私に朗報が!
解説をパラパラ見ていたら、なんと、続編があるらしいですよ、やったね!!
あのラストからどうやって続編が生まれるのか、まったくわけがわかりません。
ものすごく読みたい気分になっているのですが、邦訳は出てないみたい。
どなたか訳して! お願いします。

ひとことK-POPコーナー
Toheart (WooHyun & Key) のMV、二人ともグループで歌っている時とは違う魅力で、曲も楽しいですね
発売明日だっけ? 早く到着しないかなぁ…
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『逃げ道』人生の分かれ道はたーくさんあるみたい

2013-11-02 00:34:37 | フランスの作家
LES FAUX-FUYANTS 
1991年 フランソワーズ・サガン

ひさびさにサガンを読んでみましたが、やっぱり面白いですね!!

『逃げ道』は、サガンお得意の恋愛模様や恋人たちの心理より
究極の状況下におかれた人たちの人生観と言うのかしら?
価値観と言った方がいいのかしら? そんなものがテーマになっている作品に思えます。

1940年、パリ陥落から1週間後のフランス南部の農村が舞台です。

パリの上流社会に長い間君臨してきたプライドが高いディアンヌ・レッシング
富豪の若妻で、優しく利己心の無いリュース・アデール
破産した元良家の息子で、リュースのジゴロになっているブリュノー・ドロール
外務省で30年間働いてきた社交界好きのロイ・レルミット
この四人が、パリを脱出する人々の大渋滞に巻き込まれている国道に
ドイツ空軍の轟音が鳴り響きます。

空爆で四人は運転手と高級リムジンを失います。
翌日までに、リュースの夫がアメリカ行きの船を手配している
リスボンに行かなければならない四人は途方に暮れます。

そこへ荷車に乗った逞しい農夫モーリス・アンリが通りかかり、助けを申し出ます。
他に選択肢が無いと悟ったロイは、他の三人を説得してアンリの農場に向かいます。

農場には、威圧的だけれど筋が通ったアンリの母親アルレットと
寝たきりでしゃべれないモーリスの祖父がいました。

なにせパリという最先端の大都会で、しかも上流社会でしか暮らしたことがない四人。
「こんなところにいられるか!」と考えるのも無理がありませんよね。

けれども行く所は無い、出て行く手段も無い、食べ物も飲み物も無い、ということで
しぶしぶアンリ農場にお世話になることにします。

寝泊まりするだけでも不本意なのに、アルレットは、働かざるもの食うべからず!
という主義で、四人に金ではなく労働を要求します。

ここから先、あらすじは書きませんね。

イヤイヤながら農場の仕事に手をつけたセレブの皆さんですが
一人を除いて、だんだん農場の暮らしに愛着がわいてきます。

雄大な自然と美しい夕暮れを見ているうちに今までの人生を振り返ったり
恋に落ちて、初めて本当の愛の喜びを知ったり
田舎の人々の素朴さになんとなく惹かれたり… 理由はいろいろです。

そうこうしているうちに、刈り入れが終わりました。
フランスはドイツに降伏し、兵士になっていたモーリスの父親と兄が帰ってきます。

アルレットはボロ車を手配し、四人に遠回しに出発を促します。

明らかに後ろ髪を引かれている二人、バカンス気分でもう少しいたいと思う一人、
すぐにでも出て行きたい一人… そして、出て行ってほしくない一人、さぁ、どうする?

もちろん、出て行くか残るかの選択が人生最大級の分かれ道と言えますが
実は小さな選択肢はいろいろなところにあって… 例えば
あぁ、もっと早くパリを出ていれば!というのもありますし
モーリスについて行かなければ違っていたかもしれないし
あと一泊、せめて夕食を食べてからの出発にしていれば… とか
そんなことで大きく人生が変わっていたかもしれません。

人は、自分でも気づかないうちに大小様々な分かれ道を通って来ているのかもしれませんね。

うちの旦那さんがよく「なんで東京に出て来たんだよ」とか
「なんで転職してきたんだよ」とか言います。
そしたら出会わずにすんだのになぁぁ… ってことらしい 失礼な!

それにしても、このラストは~! 驚いた!!
サガンはそれが一番幸せだと思って書いたのかしら? いや、そうじゃないと信じるね。
最大級の皮肉を込めたラストに見えます。
意地が悪~い! サガンたら。
ただ、一番ドラマティックではあると思いますけどね。

ひとことK-POPコーナー
今うちの夫婦はAilee に夢中! ってわけで、韓ラブ音楽祭に行くべきかどうか悩み中です
『Heaven』の日本語バージョン聞きましたけど… いいんだけど、韓国語の方が聞き慣れているせいか好きかな?
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『ベラミ』いつか痛い目にあってほしい

2013-07-09 22:47:55 | フランスの作家
BEL-AMI 
1885年 ギィ・ド・モーパッサン

モーパッサンの『ベラミ』はいつか買おうと思いつつやりすごしていたら
本屋さんで発見したので、大嫌いな映画化記念表紙だったのですけど買ってしまいました。

なんだか短篇と長編のモーパッサンは別人みたい…と思いつつ読んでましたが
策略とか愛憎と言ってるわりには、バルザックとかゾラみたいに
ドロドロ、グチャグチャ、おおげさ!という感じはせず、すらーと終わってしまいました。
素朴ささえ感じられます。
人の好さがそうさせたのでしょうか? っていい人かどうかは知らないんだが…

“ ベラミ ” というのは “ 麗しのきみ ” という意味だってことで
主人公はハンサムな士官あがりの青年ジョルジュ・デュロワです。

デュロワは退役後鉄道会社で働いているのですが、給料が少なくて困窮しています。
ある日街で士官時代の同僚シャルル・フォレスチエにばったり会い
誘われるままフォレスチエが働く新聞社に入ります。

と、いきなりあらすじに入ってしまったけどこのまま続けるね。

デュロワは新聞社で地位を得て羽振りがよく、しかも美しくて知的な妻マドレーヌを持つ
フォレスチエが羨ましくもあり妬ましくもあり… というわけで
自分もひたすら出世して金を持つ身分になりたいと願うようになります。

のし上がるための武器は美貌…ってことになるのでしょうね?
次々と女性を手に入れて、地位をあげていきます。

手に入れられちゃった女性は以下の通りです。
どういうふうに手に入れてどうなったかは、映画になってるから伏せとくね。

まずはフィレスチエの妻マドレーヌの友人クロチルド・ド・マレル夫人。
鉄道会社の視察官を夫に持つコケティッシュな女性ですけど出世にはあまり関係なさそう。
ただ、素敵なアパルトマンの一室は手にすることができました。

次にフォレスチエの妻マドレーヌの再婚相手になります。
お互いに計算づくの結婚で、夫婦というより同志みたいな感じです。
マドレーヌは記事の内容や書き方をアドバイスし、広い人脈、政治的裏情報を与えました。
デュロワは新聞社で地位を固めていきます。
しかし、この関係は長くは続かず…

そして自分を気に入っているらしい新聞社の経営者の妻ヴァルテール夫人。
信心深く夫に忠実な夫人をどうしても手に入れたくて、デュロワはいつになく苦労します。
そのかいがあって、夫人のみならず夫のヴァルテール氏の信頼まで得られたようです。
でもねぇ、夫人が真剣になりすぎて…デュロワは困り果てます。

しまった! 夫人よりヴァルテールには娘がいたじゃんか!! ということで
マドレーヌと手際よく別れたデュロワは次女シュザンヌにプロポーズします。
でもヴァルテールと夫人が許してくれるわけありませんね。
そこでデュロワはある作戦を実行して、まんまとヴァルテールの許可を得てしまいました。
夫人は断固反対するんだけど聞き入れられませんでした。

同じ男を愛してしまった母と娘でしょお… デュロワには本命が他にいるでしょお…
今後のこの一家が気にかかるわ~
デュロワの成功で終わっちゃって消化不良です。

デュロワは容姿だけで成り上がったわけではなさそうです。
文才も、大胆なところも勇気もありそうだし、世間の風も読めるみたいです。
ただ物語の中では “ 女を落とす!!” にフォーカスが当たっているもんでさ。

男だって女だって美貌を武器にできる人は存分に使っていただいて結構ですけど
いつか通用しなくなる時がくればいいのにぃ… なんて思うのは
武器にできないもののひがみです
美貌も才能もあれば言うことないですね… それはそれでひがむけど…

ひとことK-POPコーナー
テソンの『I LOVE YOU』を聴きました。
私は今までこの名曲と言われる歌を全篇通して聴いたことが無かったのですがいい歌なのね… 泣けてきた
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『生きている過去』“ 延命させてる過去 ” って感じ

2013-06-03 21:04:44 | フランスの作家
LE PASSE VIVANT 
1905年 アンリ・ド・レニエ

正直に言ってしまうと、つまらなかったの…

メロドラマの王道みたいな話しで、面白いと言えば面白いのかもしれないが
私はちょっと共感できませんでした。

さくさくっと書いてみますね。
3組の男女の愛を中心に展開していると言えばいいのかしら?

ジャン・ド・フラノワという青年がいます。
伯爵の息子で、何をするでもなく倦怠と虚無の中に毎日を送ってるって感じ。

シャルル・ロオヴローという青年は王制を懐かしむジャコバイトの息子。
骨董品好きで女好き、恋愛に真剣になることはありませんでした。
そんなシャルルが数日間一緒に過ごして別れた後忘れられなくなったのが
女優志望のジャニーヌです。

パリ在住のイタリア貴族チェスキーニ伯爵はカサノヴァの生き方を讃美していますが
25年間人妻であるド・ロオモン夫人一人に愛を捧げ続けています。

ジャンの父親ド・フラノワ伯は、美しい地所であるヴェルナンセの館と庭園を
維持することに必死ですが、もはやその財力はありません。
そこで未亡人で遺産を持っている妹フェリシーを呼び寄せ支配していました。

フェリシーの息子、つまりジャンの従兄モーリスは精力的に仕事をする金融家で
成功をおさめつつあり、落ちぶれた貴族の美しい娘アントワネット・ド・サフリーを
妻に迎えることにしました。

で、ジャニーヌを忘れられないシャルルはジャンを連れてイタリアに旅に出るのですが
そこでジャンは自分と同じ名前の人物の墓を見つけるんですね。
どうやらイタリアで戦死した親戚のようです。
ヴェルナンセに帰ってからもジャンの頭からはそのことが離れません。

そこへモーリスが療養のために滞在するためアントワネットを連れて到着。
徐々に親しくなっていくジャンとアントワネット…
そこへシャルルがとんでもないものを持ち込みます。

シャルルが手に入れた古い文机から見つかった手紙なんですが
なんと! アントワネットの祖母で、同名のアントワネットが
ジャンがイタリアで見た同名のジャン・ド・フラノワに宛てたラブレターでした。

もぉー! メロドラマでしょお
運命の二人、どんな障害も乗り越えていただきたい!!

アントワネットもやはり「運命のお導き!」と浮き足立つわけなんですが
ジャンの思いはちょっと違ったようで、物語は意外な方へ…
意外というのは、あくまでも私の感想なんですけどね。

でも、ジャンは生きる術を知らない貴族の息子なんですよ。
額に汗したこともないばかりか、その日何をしたらよいかもわからない人なのね。
王制は甦らず、貴族の名で食べていけるなんて日々は過去になりつつあります。
この先のことを考えると妥当なラストだったのかもしれません。
アントワネットには可哀想な気もしますが…

フランスってまだ貴族はいるの?
フランスで王政復古を望む声ってあまり聞こえない気がするんですけど
爵位を持ってることに意味はあるのだろうか?

この物語が書かれたのは王制が倒れて約60年後、帝政が終わってから35年後だから
まだまだ王制・帝政復古の望みを持っていた貴族がたくさんいたのでしょうね?
作者のレニエについては何も知りませんが、やはり王制を懐かしむ人だったのかしら?

ゾラなどは1880年代にはもうほとんど王制のことなんか書いてないような気がしますが
この物語内ではまだまだ貴族が主役をはってるっていうのがね…
なんだか「昔は良かった」感が滲み出てて哀愁がハンパじゃない気がしております。

ひとことK-POPコーナー
1日のSGC(ソウル・ガールズ・コレクション)、 旦那様の同僚の方のおかげで、なんと人生初のVIP席!
間近でINFINITEのダンスを見て感動したさ!! RAINBOWはとても可愛かったです
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『少年少女』ただただ微笑ましい

2012-04-02 23:28:36 | フランスの作家
NOS ENFANTS 
1886年 アナトール・フランス

お子供たちのことを書いた小説は大きく二分されると思います。

ひとつは子供の目から見た素朴で純粋な微笑ましいお話し、
もうひとつは子供の中に潜む「まさか」な悪意を書いた肌寒いお話し。
ふたつがブレンドされていることもありますが
大まかにいうとそんなテーマが多いんじゃないかしら?

この『少年少女』は徹頭徹尾 “ 愛くるしい ” 子供たちのお話しでした。
裕福な家の坊ちゃまやお嬢ちゃま、豊かな自然に囲まれた農家の兄弟姉妹、
厳しい環境の中で育つ海の子、などなど、様々な子供たちが登場しますが
皆可愛らしくて抱きしめたくなるような姿が垣間見えるお話しでした。

特に好きだったお話しをいくつかご紹介します。

『カトリーヌのお客日』
5時になったのでカトリーヌはお人形を集めました。
カトリーヌは綺麗なお人形ばかりに話しかけます。
おやおや、お客様をもてなす女主人として、それではいけませんね。

教訓的なお話しが無い中では唯一お嬢様教育的な一文がありましたが
「これこれ」と優しくお爺さまが諭すような感じでした。
この本を読んで自然にマナーを身につけて欲しいという心遣いでしょうか?

『回復期』
病気にかかって寝込んでいたジェルメーヌの側には一緒に病気になったお人形がいて
アルフレッドがお医者様よろしく脈をとってくれます。
病気の間、リュシィはずっとジェルメーヌの部屋で勉強や縫い物をしてくれました。

心細い病の最中は、人々の優しさが身にしみますよね。
普段は喧嘩ばかりの兄弟姉妹の温かさにホロリときます。

『落ち葉』
秋になりました。
ピエールとバベとジャノは山羊や牛のために落ち葉を拾いに行きます。
大人たちに混じって、幼い子供たちも真面目に働きます。
誰一人口をきく者はいません。

子供たちが大人と同じように働くことに誇らしさを感じている様子が
ありありと浮かびます。
親の仕事にプライドを持ち、成長して、逞しく継いでいくのでしょうね。

『シュザンヌ』
シュザンヌは父に連れられてルーブルを訪れました。
古代の彫刻を前にしたシュザンヌは「大人たちも人形を壊すのね」と思います。

子供にこんなもの見せてもさぁ…なんて思うことがありますが、いかんいかん…
作品の意味はわからなくても感じさせることを大切にしなさい、という教訓か?

私が2~3行でさらっと書くと、なんてことないすっとこどっこいな内容になっちゃいますが
さすがのアナトール・フランスが書くと濃密な可愛さ溢れる物語になってますのでね…
安心して読んでほしい…

全ての子供たちに頬ずりしたくなりますよ。
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『女生徒 他八篇』題名買いして良かったです

2012-01-22 22:03:53 | フランスの作家
L'ECOLIERE 
1905年 レオン・フラピエ

この作家は知らなかったのですが、太宰治の短篇集と同じ題名だったってことだけで
古本市で購入しました。

珍しく解説が無い本で、作家の背景はわかりませんけど
モーパッサンを読んで育ったでしょ? って感じでしょうか?
素朴な話のなかに笑いあり涙あり美しさあり… ちょっとしたドラマが潜んでします。
好きなラインですね~

9篇の物語は、どれもが短いながらも程よく印象に残る話だったのですが
中でも特に気になったものをあげてみます。

『嫁選び』
遺産を受け継いだゴントランは結婚しようと考えます。
娘持ちのシャルルヴァン氏の邸宅に滞在し、美しい妹娘ジェルメーヌとの結婚を決めました。
しかし、次第に心優しい姉娘ルイーズに惹かれていきます。

心美しい姉(妹)と容姿端麗な妹(姉)との間で揺れ動いちゃう男性の話って
昔からけっこうあります(たいがいは心美しい方が身を引くんですよね)
そうじゃないと韓流的ドロドロになってしまふ… キライじゃないけど…
この物語も最初はそんな感じで展開するんですが、ラストで急展開! この後が知りたい!!

『女房』
中年のデュプールは役所で、女房の尻に敷かれていると有名で“坊や”と呼ばれていました。
同僚たちはそんなデュプールにハメを外させようと画策します。
まんまと酔ったデュプールを送っていったルフローは、意外な事実を知って心打たれました。

どんな奥さまが待っていたと思いますぅ?
ルフローならずとも、こんな女性が相手では言うことを聞かざるを得まいと納得です。
デュプール一家にさらなる幸あれ… なんて思えたラストでした。

『最後の光』
老いた夫婦がいます。
お爺さんはボケてしまい、お情けで工場で仕事をさせてもらっています。
夫婦の部屋からは次々と家財道具が持ち出されていきます。
とうとう夫婦の宝物だった鏡まで持ち出されることになり、お婆さんは涙に暮れます。

人生を終えようとする時に貧しさに喘いでいるという悲劇に加えて
お婆さんは長年連れ添ったお爺さんの悲しい現実を目の当りにしてしまうのね…
若い方にはわからないでしょうが、この年になるとけっこう身につまされる話なのです。
貯蓄・利回り・資産運用… なんて言葉がつい頭をよぎるわ… 元手が無いけど…

もちろん物語なので、素朴なばっかりでなく脚色や演出がされているのですけれど
良いさじ加減で容易く感情移入できます。
時代は違うけど、今でも充分共感できるお話しです。

大作は読んでいてとっても楽しいんだけど、やはり時代とか背景が大仰だから
「わかる、わかる!」とはいかないじゃないですか?

小品の楽しみとはこういうところにあるのかな? と再確認できる一冊でした。

とりあえず、太宰治の『女生徒』とはまったく違う話でした、とおことわりしておきます。
(当たり前です )
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『生きる歓び』天使のような心が仇となる

2011-11-24 22:03:35 | フランスの作家
LA JOIE DE VIVRE 
1884年 エミール・ゾラ

ゾラが描くルーゴン・マッカール叢書の登場人物の壮絶な人生は
ハラハラさせられ、心苦しくなりながらも嫌いになれないのですが
この物語のポリーヌの生き様はどうも納得いかないですねぇ。
(とはいえ、まだ読んでない物語も多いのですけどね… )

物語をかいつまんでご紹介しますと…

主人公ポリーヌは『パリの胃袋』でフロランがお世話になった
弟クニュと妻リザの娘です。

『パリの胃袋』では勝利を得たクニュ夫妻は、ほどなくして亡くなってしまったようで
ポリーヌは10歳でこの世に遺されてしまいました。

そこで北フランスの海沿いの村に住む父のいとこシャントーに引き取られます。
シャントーは商売から引退し、痛風に苦しみながら毎日を送っています。
シャントー夫人は目減りする年金を嘆き、息子ラザールに期待をかけています。
ラザールはというと、好人物なんだけど夢見がちで飽きっぽい青年でした。

お互いに本当の兄妹のような愛情を抱いていたポリーヌとラザールでしたが
何年も一緒にいるうちに、ポリーヌにはだんだん別の感情が芽生えます。

ラザールは音楽家になると言ったり、医者を目指したりするんですが結局ものにならず
知人と事業を興そうと考えます。

そこで初めてポリーヌの遺産に手が付けられます。
その後はなし崩し… シャントー夫人は家計のたしに、ラザールは事業の追加資金に…
どんどん膨らむ借金にシャントー夫人はラザールとポリーヌを結婚させようと考えます。

でも、自分たちがどんどん借りるわけだからポリーヌの遺産は減るじゃない?
そこへ登場するのが銀行家の娘ルイズで、彼女の持参金はすごいもんだと聞かされます。

シャントー夫人には別の野望が浮かび、ポリーヌを恨むようになります。
結局すったもんだの末ラザールはルイズと結婚します。
それも、もう遺産でラザールを助けられなくなったからというポリーヌの説得で…

長年シャントーのかかりつけで、幼い頃からポリーヌを知っている医者カズノーヴは
言われるままに遺産を出し、学校にも行けず女中や看護婦のように働かされた挙げ句
他の女性にラザールを譲ったポリーヌが不憫で、何度か出て行くチャンスを与えました。
あぁ それなのに~、その度に事件が起こってしまって…

とにかく、ポリーヌの10歳からの人生は、まるで人のための人生のようです。

痛風がひどくなるとあたるくせに、出て行かないでくれと泣くシャントーでしょ
家事をさせといて文句たらたらで、最後は毒を入れたなんて疑うシャントー夫人でしょ
まったく生活力が無いくせに夢ばかりみてポリーヌを巻き込むラザールでしょ
家事が一切できず、ポリーヌに任せきりのルイズでしょ… 書いててうんざりしちゃう。

そればかりか、貧しい村の若者たちまで働かずにポリーヌがくれる施しに頼り切ってます。

ラストでは、代々シャントー一家に尽くしていくんじゃなかろうか? とも思えて
カズノーヴならずとも止めたくなるところ… 自分の人生を生きて欲しい。

憐れみと慈愛の心のみで人と接すること、優しさと愛情だけを美徳として生きることが
果たして正解なのかちょっとわからなくなってきます。
シャントー一家も村の若者たちも、つい楽な方を選んじゃった… ていう気がします。
世の中自分に厳しい人ばかりじゃないものね。

ゾラは見事に我が身を顧みない女性を描き切ったわけですけれども、共感はできない…
私の辞書には “ 献身 ” とか “ 身を捧げる ” っていう言葉が無いのでね

ちなみに、ポリーヌは『ナナ』の同い年の従姉妹だそうです。
たぶん会ったことはないんじゃないかと思うけど
血が繋がっていながら、こうも両極端の女性がいるとはね。
あ! 物語だったんだ
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