まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『最後の物たちの国で』生きることだけが願いの国とは…

2013-11-11 23:14:22 | アメリカの作家
IN THE COUNTRY OF LAST THINGS 
1987年 ポール・オースター

9月から異動した職場のそばに、困ったことに紀伊国屋書店がありまして
時間があるとついのぞいてしまいます。
そして、のぞいてしまうとつい買ってしまいます。
K-POPビンボーに加え紀伊国屋貧乏… 本当に困るわ

オースターは、名前はもちろん知っていたのですが読んだ覚えは無いんですよね。
紀伊国屋書店で見つけ、題名に惹かれて買った一冊です。

こういってしまうと語弊があるのかもしれませんが、すごく面白かったです。

ものすごく暗く冷たく残酷な物語なのですが、目が離せない状態で
通勤中もうとうとすることなく読み、ちょっとでも暇があれば開いて読んでました。

内容を説明するのが難しいのですが、頑張って書きますね。
よく判らなくても許してほしい…

アンナ・ブルームという女性が、ある男性に向けて書いている手紙がベースなのですが
これは彼女が、行方不明になった兄を捜しにある国を訪ねてから現在まで
どうやって生き延びてきたのか、という記録を綴ったようなものです。

その国を覆っている惨状から始まり、はびこる強奪、暴力、破壊、
襲いかかってくる空腹や寒さや、限りない物資の欠乏にどのように耐え
人々がどのように死んでいくのかが記されています。

アンナはその国に到着すると同時に荒廃しきった町を目にして呆然とします。
その時点でアメリカに引き返していればよかったのに! と思うのですが
彼女は兄を捜すために残ります。

どうやらアンナはアメリカでは裕福な家庭の娘だったようなのですが
その国では生き延びるために “ ごみ拾い業 ” の職につきます。
これはれっきとした仕事で、許可証無しにおこなうと重い刑を科せられます。
なぜかというと、その国ではゴミも死体も貴重なエネルギーだから。
勝手に拾ったり埋葬したりしてはいけないのね。

この国はかなりの無政府状態に見えるのですが、警察権力はあるし
無茶苦茶な政策や法律も生み出されているところをみると、一応国なのですね?
ただ、国民が知らないうちに政府はコロコロ変わっているようです。

アンナは19歳でその国に渡っているのですが
数年間で一生分の苦痛や恐怖を味わったような印象です。
細かくは書かないけど…

たしかにラッキーとしか思えないような展開のところもありますが
ぬくぬくと育った少女が、そこまでたくましくなれるのか… と感心するばかり。

アンナは、他人を信じられないその国で、何人かの善き人たちと親しくなりますが
皆将来を考えるより今日を生き抜くのに必死なのは変わりません。

誰と出会ってどんな事がおこったかっていうことは書きませんよ。
読んでほしいぃぃ! 引き込まれていくと思いますよ。

アメリカ、フランス、ロシアなど外国の名は出てきますが
舞台になっている国がどこを指すのかは不明です。
登場人物の名前もいろいろな国のものがあるし、人種も特定しにくい…
地域も不明だし、この国に侵攻しようとしている国もはっきりしません。

こういった小説だと『1984年』から連想される旧ソ連やヒトラー政権下のドイツ、
『メトロポリス』から思い浮かぶ産業革命下のイギリスやドイツなど
モデルになっていそうな国がありそうなものですが
いくらなんでもこんなにメチャクチャな国は無いでしょうよ! と考えたいですね。

けれども、まったく地上に存在しない架空の国の、完全なフィクションかというと
そうも思えないところが、恐ろしさを感じさせます。

心温まる話しではないですし、期待が高まる展開でもありません。
中には汚い描写や残酷なシーンもあります。
ラストでは祈るだけ… という感じでしたが、不思議と清々しく読み終えることができました。
こういう気分が味わえるから、読書ってやめられないんですよねぇ。

ひとことK-POPコーナー
実は私、ハングル文字が読めるんです(覚えちゃうと簡単なんです) 発音はおいといて…
だからバラードだと歌詞カード見ながら歌えるのですが、意味がわからないという… 今さら単語は覚えられないと思ふの
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『逃げ道』人生の分かれ道はたーくさんあるみたい

2013-11-02 00:34:37 | フランスの作家
LES FAUX-FUYANTS 
1991年 フランソワーズ・サガン

ひさびさにサガンを読んでみましたが、やっぱり面白いですね!!

『逃げ道』は、サガンお得意の恋愛模様や恋人たちの心理より
究極の状況下におかれた人たちの人生観と言うのかしら?
価値観と言った方がいいのかしら? そんなものがテーマになっている作品に思えます。

1940年、パリ陥落から1週間後のフランス南部の農村が舞台です。

パリの上流社会に長い間君臨してきたプライドが高いディアンヌ・レッシング
富豪の若妻で、優しく利己心の無いリュース・アデール
破産した元良家の息子で、リュースのジゴロになっているブリュノー・ドロール
外務省で30年間働いてきた社交界好きのロイ・レルミット
この四人が、パリを脱出する人々の大渋滞に巻き込まれている国道に
ドイツ空軍の轟音が鳴り響きます。

空爆で四人は運転手と高級リムジンを失います。
翌日までに、リュースの夫がアメリカ行きの船を手配している
リスボンに行かなければならない四人は途方に暮れます。

そこへ荷車に乗った逞しい農夫モーリス・アンリが通りかかり、助けを申し出ます。
他に選択肢が無いと悟ったロイは、他の三人を説得してアンリの農場に向かいます。

農場には、威圧的だけれど筋が通ったアンリの母親アルレットと
寝たきりでしゃべれないモーリスの祖父がいました。

なにせパリという最先端の大都会で、しかも上流社会でしか暮らしたことがない四人。
「こんなところにいられるか!」と考えるのも無理がありませんよね。

けれども行く所は無い、出て行く手段も無い、食べ物も飲み物も無い、ということで
しぶしぶアンリ農場にお世話になることにします。

寝泊まりするだけでも不本意なのに、アルレットは、働かざるもの食うべからず!
という主義で、四人に金ではなく労働を要求します。

ここから先、あらすじは書きませんね。

イヤイヤながら農場の仕事に手をつけたセレブの皆さんですが
一人を除いて、だんだん農場の暮らしに愛着がわいてきます。

雄大な自然と美しい夕暮れを見ているうちに今までの人生を振り返ったり
恋に落ちて、初めて本当の愛の喜びを知ったり
田舎の人々の素朴さになんとなく惹かれたり… 理由はいろいろです。

そうこうしているうちに、刈り入れが終わりました。
フランスはドイツに降伏し、兵士になっていたモーリスの父親と兄が帰ってきます。

アルレットはボロ車を手配し、四人に遠回しに出発を促します。

明らかに後ろ髪を引かれている二人、バカンス気分でもう少しいたいと思う一人、
すぐにでも出て行きたい一人… そして、出て行ってほしくない一人、さぁ、どうする?

もちろん、出て行くか残るかの選択が人生最大級の分かれ道と言えますが
実は小さな選択肢はいろいろなところにあって… 例えば
あぁ、もっと早くパリを出ていれば!というのもありますし
モーリスについて行かなければ違っていたかもしれないし
あと一泊、せめて夕食を食べてからの出発にしていれば… とか
そんなことで大きく人生が変わっていたかもしれません。

人は、自分でも気づかないうちに大小様々な分かれ道を通って来ているのかもしれませんね。

うちの旦那さんがよく「なんで東京に出て来たんだよ」とか
「なんで転職してきたんだよ」とか言います。
そしたら出会わずにすんだのになぁぁ… ってことらしい 失礼な!

それにしても、このラストは~! 驚いた!!
サガンはそれが一番幸せだと思って書いたのかしら? いや、そうじゃないと信じるね。
最大級の皮肉を込めたラストに見えます。
意地が悪~い! サガンたら。
ただ、一番ドラマティックではあると思いますけどね。

ひとことK-POPコーナー
今うちの夫婦はAilee に夢中! ってわけで、韓ラブ音楽祭に行くべきかどうか悩み中です
『Heaven』の日本語バージョン聞きましたけど… いいんだけど、韓国語の方が聞き慣れているせいか好きかな?
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『結婚しよう』誰がハッキリさせるのか?

2013-11-01 02:45:50 | アメリカの作家
MARRY ME 
1971年 ジョン・アップダイク

実際にそういう状況に陥ってみないとわからないものかもしれませんが
じれったいのよー という物語。

ちょっとあらすじを書いてみますね。

ジェリー・コウナントとサリー・マサイアスはW不倫関係にあります。
お互い自由になって一緒になりたいという希望を持っていますが
サリーは、ジェリーが自分ほどそれを望んでいるのか不安になります。

ジェリーが2日間の出張に出かけた時、サリーはいてもたってもいられず
ぐずる子どもたちや呆れるシッターを残してジェリーを追いかけます。
しかし、そこでもジェリーのちょっとしたひと言に不安を覚えます。

そんな二人をさらに不安にさせる航空会社のストライキ。
さすがですね! 何時間も空港で待たされる、人々が増え続け座る場所も無くなる、
同じ言葉を繰り返すだけの空港職員…
二人の焦りが濃くなるにつれて悲観的になっていくサリーをうまーく重ね合わせてます。

この出張の件は何ごともなくおさまったのですが
結局、二人の関係はジェリーの妻ルースにばれてしまいます。

実はルースはサリーの夫リチャードと関係を持っていました。
それは1年足らずの関係で、すでに終わっていました。

ルースは、夫婦がこれからどうするか決定するまで連絡を取らないようにと
ジェリーとサリーに約束させますが、盛り上がってる二人が聞くもんか!
約束破る → ルース怒る、の繰り返しです。

面白いのは、女二人がお互い相手のことを自分に都合のいいように脚色して伝えるとこ。
悪口じゃないのよ、悪口言うと嫌われちゃうからね。
彼女のことは好きだ…などと言いながら脚色して良くない感じの女に仕立てちゃう。
こういうの、覚えておかないと!
ま、後々悪口を言い合うんですけどね。

とうとうリチャードも気づきまして、「四人で話し合おう」と提案します。
えー! 会っちゃう?
『メイプル夫妻の物語』でも夫の浮気相手の夫婦に会いに行く妻の話があったけど…
作者の実体験?

ここで面白いのは、女がお互い自分を被害者に見せようという努力。
「あなたのせいで私がつらいかったから子どもたちもかわいそうだった…」
「私をダシにして泣くんじゃない!」

リチャードは、今後のことはジェリーの決断にまかせると言います。

ここまでも長かったのですが、物語はまだ続きます。
あまり書くとネタバレになるのでやめときますけどね。
2組の夫婦はどうなるんでしょうね?

もうさ~、近所の人たちにもばれちゃって興味津々の目で見られ
相手のことを悪く言えばかばうなんて仕打ちを何度もうけて
どうして「戻って来て」なんて言えるのかしら?

皆クールに見えてなんだか逃げ腰なのよ。
誰かが決めてくれたら従うけどさ、という迷路で右往左往してるだけ。
外でいろいろ言われちゃう子どもたちが可哀想ですよね!

誰がこの関係を終わらせようと断固とした態度に出るのだ? と
途中からイライラしっぱなしよ!!

実は私、ラストもよく理解できない状況なんですよね。
どうしてそうなって、さらにそうなって、そういう結論になるのか?
離婚に至る道のりは険しい、ということを言いたいのでしょうか?

確かに、カードの名義の書き換えとか、名字が変わることをいちいち説明したりとか
考えると面倒くさそうだけど… そういうことじゃなくてメンタルなことか?

ひとことK-POPコーナー
オニュ首大丈夫? EVERYBODYのカムバックだけじゃなくて
SMTOWNでも去年バージョンで激しく首振ってたものね… 痛かったろう  早くよくなりますように
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