まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『ピアノ・レッスン』少女時代を見ているようで

2019-09-09 20:10:59 | カナダの作家
PIANO LESSON 
1968年 アリス・マンロー

これまで何冊かマンローの短篇集を読みましたが、この一冊が一番
作者の思い出を反映しているような気がしました。
もちろん創作であることはわかっているんだけど
あちらこちらに作者の経験が盛り込まれてるみたいな気分で・・・なんだか
マンローの日記を読んでいるような気分でした。

本当に15編すべて、抜かりないというか見事なできで一気読みしましたけど
なんと!処女短篇集なんですって!!
デビュー早々すごい円熟ぶりです。

何を紹介すればよいやら・・・ とにかく好きだったものを書いてみます。

『輝く家々(The Shining Homes)』
メアリはミセス・フラートンの家に卵の代金を払いに行き、その後
デビーの誕生会に出席するため新しい住宅地にあるイーディスの家に向かった。
イーディスの家では、皆がミセス・フラートンを立ち退かせようと話していた。

一生懸命働いてやっと手に入れた新居がある新興住宅地の一郭に 
小汚くて荒れ放題の家があったらいやよねぇ・・・と思うキラキラの住宅の
住人たちの話です、傲慢ですね。
でも、どれだけ汚いのかによるけど・・・ 気持ちはわかる。

『仕事場(The Office)』
ある日仕事場が必要だと決心して、ショッピングセンターの2階にある部屋を見つけた。
引っ越した日に、家主のミスター・マリーは「部屋が殺風景すぎる」と言い
週末には植物を持ってやって来た。

最初はちょっと笑える話かと思っていたのですが、だんだん恐ろしくなります。
実話かな? だとしたらマンローはすごく不快で怖い思いをしたんだろうなぁ・・・
もう、自分がやられてるような臨場感でした。

『ユトレヒト講和条約(The Peace of Utrecht)』
実家に帰って3週間、マディーとわたしはうまくいっているとは言えない。
町の人たちはわたしに母の葬儀の様子を話してくれる。
わたしはマディーに、葬式には帰ってこないように言われていた。

お母様の件に関しては(病名はともかく)難しい病気で亡くなったそうで
この物語に反映されているのではないかと思われます。
看取った人が最大限に尊重されるべきだという考えには同感です。

本当はもう一つ『死んだとき(The Time of Death)』という
ありそうだけどなかなか人には言いにくいという話があって
ものすごく印象に残っているんだけど、うまく感想を書く自信がないです。
誤解を招きそうだし・・・なんて考えると書けないですね。
結局わたしは偽善者なんだなぁ・・・

少女が主人公のお話が多く、もちろん、ハッピーで明るい内容ではないのですが
いつもよりみずみずしい感じがしました。
欧米の小学校やハイスクールが舞台になっているドラマが脳裏に浮かび
場面が想像しやすかったです。

50年を経て出版された処女短篇集が、後年の作品にまったく見劣りしない
また、別の表情を見せてくれるというのは、まったく嬉しい驚きです。

日記のようでぐんぐんひきこまれる一冊
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね


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『侍女の物語』進歩? 後退? 女性の未来は?

2017-01-11 11:11:02 | カナダの作家
THE HANDMAID'S TALE 
1985年 マーガレット・アトウッド

なにジャンルの小説なんでしょうね?
政治的なものなのか、フェミニズムなのか、娯楽小説… ってことはないか?
『1984年』っぽい感じもするし、『愛の嵐』的な雰囲気もありそうだし…
ともあれ、いろいろな側面から読めるおもしろい小説でした。

あらすじは長〜くなりそうなので、やめときます。
どうしてこんなことになったか… っていうのだけ書いてみますね。

舞台は旧アメリカ合衆国です。
大統領が暗殺されたり、町に軍服の人間がやたら増えたりと不穏な空気が漂い始めていた
ある日突然、女性は銀行口座を凍結されて仕事も解雇されます。
つまり、完全に男性の所有物になることを強いられたわけ。
どうやら原因は、出産率の低下と人口の激減にあったようです。

さらに、新たに “ ギレアデ ” となった国家の主導者はキリスト教を盾に、というか
新解釈で、人々を厳しい戒律と制度のもとに支配し始めます。

文字は読んでも書いてもダメで、雑誌・新聞禁止はおろか標識・店の看板も絵のみ。
男性と女性が勝手に会ったり結婚したり、それどころか目を合わせてもダメ
軍での功績をたたえられた人とか特権階級の男性たちのみが
男性から隔離されて育った白い服の “ 花嫁 ” をあてがわれることになります。

では、結婚していた人たちは?
指導部や特権階級の人たちはそのまま結婚生活を送ります。
妻が着るのはブルーの服で、未亡人になると黒い服を着ます。

貧しい人たちの妻は “ 便利妻 ” と呼ばれ、赤青緑のストライプの服を着ています。

独身女性で、年配だけど働ける者は、緑の服の “ 女中 ” になります。
働けないと “ 不完全女性 ” となってコロニーに送られます。

さて、“ 侍女 ” なんですけど、彼女たちは若くて子供が生めそうな女性、あるいは
生んだ経験がある女性です。
主人公の “ わたし ” 通称オブフレッドは、夫と幼い娘とカナダに逃亡しようとして捕まり
家族と引き離され、赤いセンターに送られて教育を受け、侍女になりました。

侍女が何するか? っていうと(もうわかったと思いますが)子供を産むわけさ。
それも相手の軍上層部とか特権階級の人の家に部屋を与えられ、女中に世話をしてもらい
食事には良いものを食べさせてもらい… いい身分に思えますね。
侍女は、顔を隠す白いヴェール以外は、全身赤いものを身につけます。

好きなものを食べたり好きな所へ出かける自由は無く、ほとんど部屋で過ごします。
父親になる相手とは二人きりで会ってはならず、決められた日に、服は脱がず
(年配の)妻の上に仰向けになり…
まさに “ 種を入れさせ、腹の中で育てる ” というのが仕事なのね。
子供を生む時は、やはり妻の前に座って産み、子供はすぐに妻に渡されるという仕組み。

バーカーバーカーしぃー! でも規則でちゃんと決められてるわけさ。

この話しが恐ろしいのは、ほんの数年前まで、この国は “ あの ” アメリカだった…
というところではないでしょうか?
だから十代ぐらいの子まで、自由で男女平等なアメリカを覚えてるし
好きな雑誌を読み、好きなだけ情報を手に入れていたことを忘れていないわけですよね。

でも、ほんの数年でプロパガンダが功を成し、密告や公開処刑が行われる状況で
みんなすっかり(表向きは)従順で禁欲的で清貧になってしまってるのね。
こわいよぉぉぉ… 人間てけっこう弱い生き物なのね。

こんな世の中がいいわけない! と思ってる人はいっっっっぱいいるわけで
この物語、どうなっていくんでしょう? と思いながらワクワク読んでいましたが
残りのページ数が少なくなっていくとともに、読めない展開に不安と焦りが募りました。

で、ラストにいきついても、本当のところどうなったのかわかんないんだけど
勝手に想像するしかないので、わたしはハッピーな方に解釈します。

女性をこんなに差別的に扱うとは! と怒り心頭の方も多いかもしれませんね。
フィクションですってば! 作り話ですから、ね!
ただ、ぜったいあり得ない話って思えないのが不安だわ…
まあ、私は侍女になることはないのだが…

侍女といえば、愛妾コーナーで出てくる愛妾が、けっこう王妃とか王女の侍女をしてて
王様の愛人になってるのよね。
この小説の侍女は、まったくもって宮廷の侍女とは仕事が異なるわけですが
近からずとも遠からず… って感じでしょうか?

さらに付け加えとくと、世界から見てもおかしな状態の国に、日本人観光客が訪れ
侍女に「写真撮らせてくれる?」とか聞いちゃうあたり…
当時よっぽどイメージ悪かったのね〜

こんな世の中が来るのか来ないのか…
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ひとこと科学の進歩っておそろしいコーナー
うかうかとピースサインができないなんて… スマホで写真がきれいに撮れるからって喜んでばかりもいられないっすね
だからって裏ピースも国によってはタブーみたいだし… これからは小さい♥でいくしかないね!


   
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『ジュリエット』映画も気になりますが…

2016-12-02 20:27:42 | カナダの作家
RUNAWAY 
2004年 アリス・マンロー

最近、飛びつく本が多くて困っちゃうね…
『ジュリエット』だから飛びついたわけではないですよん(SHINeeネタ)

おもしろかった、というのとはちょっと違うのですけど、なんと言えばいいのか…
目が離せない? どっぷり浸かる? 興味深い? どれも当てはまらない。
でも、とにかく、空き時間には続きを読まずにはいられなかった一冊です。

表題の『ジュリエット』という話はありません。
『チャンス(Chance)』『すぐに(Soon)』『沈黙(Silence)』という
三部作があって、その主人公がジュリエットという名前です。

その三部作もすごく印象深いのですけれども
がっっっつり印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。

『家出(Runaway)』
雨の日が続き、乗馬の生徒が減って、カーラの夫クラークは機嫌が悪く
相変わらず他人とぶつかってばかりいる。
そんな中、隣人の未亡人シルヴィアがギリシャから帰って来た。
翌日、カーラはシルヴィアに呼ばれて掃除をしに隣家を訪れる。

『罪(Trespasses)』
ハリーとアイリーンの娘ローレンは、小さな町に越してから友人はいなかった。
ホテルで働くデルフィーンという女性と知り合ったローレンは
親に内緒で、多くの時間をホテルで過ごすようになった。
ある日、デルフィーンは、子供を養子に出した知人の話を始めた。

『トリック(Tricks)』
病弱の姉と暮らすロビンは、年に一度シェイクスピアを観るために日帰り旅行をした。
25歳の時、ロビンは芝居の後バッグを無くし途方に暮れていてダニエルに出会った。
彼は時計屋を営んでいる移民で、翌年また店で会おうと約束した。
しかし、1年後にロビンが訪ねて行くと、彼は無言で店のドアをぴしゃりと閉めた。

もう、どの話も、誰がどんな役割を担っていて、どんな展開になるのか見当がつかず
ハラハラドキドキが募る一方でした。

同じように、家族間の緊張感を描いていながら、今まで新潮クレストで読んだ
『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』『ディア・ライフ』『善き女の愛』
どれよりも、日常的でないスリルが感じられた気がします。
だからといってまるっきり絵空事ではなく、身近に転がっていそうな気もするという
不思議な不思議な雰囲気の一冊でした。

『ジュリエット』は、スペインのペドロ・アルモドバル監督映画『ジュリエッタ』から
邦題にしたそうです。

先ほど書いた三部作がテーマだと思うんですけど、どう撮るかなぁ?
『チャンス』の時のジュリエットは21歳、『すぐに』では25歳で、これはなんとかなるとして
『沈黙』は44歳から(たぶん)50代後半までを描いています。
20年ぐらいスポーンと飛んでるし、スパンは長いし、過剰な表現は似会わなそうだし
映画になり得るんだろうか?
見りゃいいんだけどね… たぶん見ないと思う。

普通に暮らしていればいるほど共感できると思います
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ひとこと「なんなんだよぉ〜!」コーナー
ビール酒税統一だとぉぉぉ!
酒造メーカーの皆さんの努力と庶民のささやかな幸せを踏みにじる気ね!!!
政務活動費とか、他に見直すところはいっぱいあるだろうよ! って言いたいわ
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『愛の深まり』家族の絆の幻想とほつれ

2016-03-14 22:05:42 | カナダの作家
THE PROGRESS OF LOVE 
1982年 アリス・マンロー

実は他の作家の本を買おうと思って、パラパラと後ろの方をめくっていたら
彩流社から出ている他の出版物の紹介ページがあって、そこで見つけました。
即ネットで購入しまして、届いた日から読み始めました。

やっぱり面白い!!

アリス・マンローの小説を読んでいると、当たり前のことなんですけど
父にも母にも、祖父にも祖母にも若い頃があったんだよなぁ…と思わされます。

日本人だと特にそうかもしれませんが、お父さんやお母さん、ましてや
じーじやばーばに、ロマンスとか男女のすったもんだがあったなんて思えないですよね。

この短篇集でも、マンローが描くのは家族のちょっとしたエピソード。
そして自分の過去やエピソードに、両親を祖父母を含む家族の過去やエピソードを絡め
少し肌寒くて緊張感がある、なんともいえないマンロー・ワールドを繰り広げています。

短篇集とはいえ、一話一話にぎっしりみっちりエピソードがつまっていて
時代・場面もくるくる変わり、家族みんなが主人公状態なので、あらすじは書けません。
なので、特に好きだったお話しのサワリだけ書きますね。
物語はそこからどんどん広がって、様々な時代や場所を彷徨うことができます。

『コケ』
デイヴィッドは、21年間の結婚生活の後、離婚して8年になる前妻ステラの父親の
誕生日を祝うため、例年通りステラが暮らすヒューロン湖のコテージを訪れた。
彼は恋人のキャサリンを連れて来ていたが、ステラと二人きりになると
今夢中になっている別の女のポラロイドをステラに見せつける。

『モンタナ州、マイルズ・シティ』
夫アンドリューが初めて新車を購入し、6歳と3歳の娘を連れて、バンクーバーから
お互いの故郷オンタリオを訪ねることにする。
5日間かけて、アメリカを通って帰る行程の3日目、あまりの暑さにマイルズ・シティで
無理を言って閉まっているプールで娘たちを遊ばせてもらうことにする。

『発作』
60歳代の隣人ウィープル夫妻が心中した。
見つけたのは頼まれた玉子を隣に届けに行った、ロバートの妻ペグだった。
二人を見つけたペグは、警察に行った後、ロバートが所有するアーケードに出勤した。
ロバートにも電話せず、同僚にも心中のことは言わなかった。

どこがどう特に好きなのか、自分でも説明がつかないのですが
『コケ』と『発作』は、ステラ、ペグという女性のパーソナリティーが好きみたい。
『モンタナ州~』は、いろいろあっても、この一冊の中で、この家族が一番幸せで
これからも幸せに暮らしていけそうな気がしたから… 先のことはわかりませんけどね…

以前どこかで書いたかもしれないのですが、世の中にはもめ事が多々ありますが
家族内のもめ事にくらべたら、他人とのもめ事なんてどうにでもなりそうな気がする。

クラスメート、仕事仲間、遊び仲間、隣近所の皆さんとのもめ事も一大事だし
親友や恋人とのもめ事も心が痛くて辛いかもしれない…
でも、いざとなったら、エイ!っと投げ捨ててしまう選択もできるわけですよね?
もちろん、それはそれでパワーがいることだけど、どうせ他人なんだし…と割り切ろう!

だけど家族はね、どんなに気が合わなくても、もめても、全く好きになれなくても
投げ捨てることを世間が許さないのよね。
特に結婚で結ばれた関係でなく、血が繋がっていると「家族だから」と
一緒にいること、集合することが当たり前のように考えられてますよね。

マンローの小説には、頻繁に集まったり訪ねあったりして仲が良さそうに見えるのに
家族という集合体が抱える危うさというか、薄氷を踏む感じの会話や表現が
たーくさんちりばめられていて、それが肌寒さを感じさせるのかも…

そして毎回思うんだけど、マンローの小説は、2回目、3回目と読む度に面白くなるのよね。
前回とはまったく違う印象を受けたり、再発見がたくさんあったりします。
『愛の深まり』も、しばらく寝かせてから読んだら、再び楽しめそうです。

家族の間に潜む目に見えないスリルとサスペンス!
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことグルメコーナー
地元の各書店で大打ち出し中の『TokyoWalker武蔵小杉・日吉・綱島ジモト飯』 しばらく悩んだあげく買ってみました
休日引きこもりのわたくし、知らないお店が多かったです。 でも、昨夜はよく行くお店でディナーしちゃいました。



まだ売ってるかもしれないけど… 「くぅぅ…買いそこねた!」という方は上の画像をクリックしてね
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『犬の人生』… だめだった…

2015-08-25 21:34:36 | カナダの作家
MR.AND MRS BABY AND OTHER STORIES 
1985年 マーク・ストランド

たぶん、村上春樹さんが訳してるのと、読み出しが好きな感じだったので買ったのね。
村上春樹さん訳の本は、私には難しすぎるものが多々あるので注意していたのにぃ…
やっぱりダメでした。

不条理ばかりが先に立ち、ユーモアは感じられなかった。
ユーモアではないのかな?
どうでもいいけど、さっぱり感情移入ができぬまま読み終えた感じです。
一話一話が短かったのがせめてもの救いでしょうか。

いくつか紹介しますと言っても…

『更なる人生を(More Life)』
何年か前、メインの友人を訪ねた時、売れない作家のまま死んだ父が蠅になって現れた。
父はその後も馬になって現れ、恋人の姿になって現れた。

一話目です。 せめてこの話しだけでも全文立ち読みすればよかった…
そしたら買わなかった気がする…

『小さな赤ん坊(The Tiny Baby)』
母親は生まれる前から赤ん坊のことを心配していた。
そして小さく小さく生まれた赤ん坊のことを心配し続けた。

小鳥ぐらいの大きさで、“ 紛失しないように ” ハンドバッグに入れてるっていうから…
ミニチュアの家具とか洋服作ってあげたいなぁ… なんて思っちゃって…

『大統領の辞任(The President's Resignation)』
在任中、あまりにも多くの予算を国立気象博物館に費やしてしまった大統領の辞任スピーチ。
大統領は気象に関してやり遂げたことを誇りに思っている。

いろんな役職の大臣がいて笑える…ってことだけが印象に残ってたのですが
笑いごとじゃない気がしてきた… 総理大臣とか大統領を選ぶのって難しいよね。

『犬の人生(Dog Life)』
グラヴァー・バートレットは、妻のトレイシーに、意を決して打ち明けることにする。
以前自分が犬だったことを…

私はこんなことを打ち明けられたら、とりあえず泣くね。
そして翌日には荷物をまとめるでしょう… トレイシーはエラいと思う。

作品紹介があまりにもぞんざいですみません。
完全に消化不良のまま書いています。
二度三度と読んでも理解できない気がするので、無責任にもアップしちゃうしだいです。

ひとこと時代劇コーナー
お盆に旦那さんと私の両方の実家に帰ったわけですが、両方の母が『銭形平次』を見ていたもんで、しばらく主題歌が
頭から離れなかった… お義母さんが見てた『製パン王キムタック』のキュヒョンの歌ならよかったのに…
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『木星の月』愛の難しさを知る一冊

2015-03-18 23:21:54 | カナダの作家
THE MOONS OF JUPITER 
アリス・マンロー

解説によると、この本がアリス・マンローの単行本としては日本初だそうで
去年のノーベル賞受賞を受けて再販されたようです。

実は『善き女の愛』を読む前にこちらを読んでいたのですが
その時はあまりピンときませんでした。

新潮クレストの『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』
けっして簡単な小説ではありませんでしたが、この『木星の月』はかなり難しかった。
最初にこれを読んでいたら、アリス・マンローにはハマらなかったかもしれないなぁ…なんて
思っていました。

でも『善き女の愛』読後に再度読んでみたら、著者が貫いてきた
人生や愛や死についての向き合い方が少し理解できた気がして面白く読めました。

12篇の物語がおさめられていますが、いずれからも愛の難しさを感じました。
ただそれは男女が恋に落ちた、別れた、っていう話しだけではなく…

家族の愛、祖先を思う愛、報われない愛、成就した愛、幼い愛、老いたる愛、
壊れそうな愛、忘れたい愛、忘れられない愛、他人の愛、遊びの愛…などなど
いくつかの愛をとりまぜて一編が書かれているのですが
どれも愛という言葉の虚しさがひゅーひゅー吹きまくって風邪ひきそうな話しばかりでした。

12篇すべてが、人として女性として、なにか教訓を与えてくれているのではないかと思えて
印象深かったのですが、それはおいといて、物語として楽しめたいくつかを書いてみますね。

『チャドリーとフレミング 一、繋がり』
私が少女だったある夏、母方の三人の未婚のおばがそろってわが家に泊まりにやって来た。
三人は世界で見てきたことを話し、自然を満喫し、パーティーを開き
チャドリー家の話しをする。
何年も後、そのうちのひとりアリスおばが、私たち夫婦を訪ねて来ることになった。

この話しはけっこう長くて、とてもあらすじが書けたものじゃないのですが
とにかく、幼い頃には都会的で素敵に思えたおばが、自分が成長して見直してみると
夫に会わせるのが恥ずかしい存在に変わっているという思いをとても正直に表現しています。
だけど、やはり血の繋がり、思い出は簡単に覆るものではないのですよね。

『アクシデント』
ハイスクールに音楽を教えに来ているフランシスは、理科の教師テッドと情事を重ねている。
ある日、二人が理科室にいると事務員がドアをたたいてテッドの息子が事故に遭ったと言う。
息子の葬式のために、テッドの妻グレタの一族がやって来る。

情事の最中に息子の事故の報せを受け、その後息子を失うという状況に
浮気をしていた男と浮気相手の心はどんな影響をうけるのでしょうね?
そしてやって来た妻の一族が、二人にどんな状況をっもたらしていくのか…
けっこう興味深い展開でした。

『ミセズ・クロスとミセズ・キッド』
幼稚園の時からの80年来の知り合い、ミセズ・クロスとミセズ・キッドは、お互い家庭を持ち
人生を送ってきた後、今は二人ともヒルトップ・ホームというケア施設で暮らしている。
二人は再び親交をあたためていたが、卒中で口がきけず半身不随になって入居して来た
ジャックという男性にミセズ・クロスが目をとめ、保護者として世話を焼くようになる。

二人だったところへ、一人加わり二人加わり…となるうちに、各々の関係性が変化します。
家族もそうだし友人もそう、どんな関係にも起こることですよね。
そういう人間関係の脆さを、少し残酷に描いている作品だと思います。
老いた二人に平安が訪れますように… と願うしかないラストでした。

本作にはあまり関係ないのですけれど、アリス・マンローを読んでいると
よくワイドショーとかで “ 妻が離婚を決めた瞬間!” みたいなのやってるじゃない?
ああいうふうに、ブチぎれる瞬間があった離婚というのは幸せな離婚に思えるよ。

キレる前にガラガラと崩れていくというか、ずぶずぶと沈んでいく結婚生活を
ただ眺めているしかないというような主人公が多い気がします。

例によって著者の生い立ちや半生などは読んでないのですが、よっぽど酷い目に遭った?と
聞いてみたくなっちゃいますね。
でも写真を見るとそんなこともなさそうなので、 やはり作家だけあって
想像力がものすごく豊かな人だという結論に至る…ってことにしたいと思います。

マンロー・アディクトの方におすすめしたい一冊
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー


SHINee WORLD 2014 -I'm Your Boy- Special Edition in TOKYO DOME
あぁぁぁ… とてもとても素敵な、夢のような二日間が終わってしまいました
脱力中でつべる以外はなーんにもする気が起きません
のべ10万人の燃えつき症候群中の皆さま、韓国カムバックも近いようですから
なんとか乗り越えましょうね! ファイティン!! 




感動のエンディングをむかえたSHINee WORLD 2014~I’m Your Boy~ Special Edition in TOKYO DOME [DVD]
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『善き女の愛』夏に読むべきだったか…?

2015-02-28 23:15:30 | カナダの作家
THE LOVE OF A GOOD WOMAN 
1998年 アリス・マンロー

前々から、アリス・マンローが書く小説は、普通の人たちが登場して
日常的なエピソードを描いていながら、なんだかスリリングだったり
鳥肌たつ感があるなぁ…と思っていましたが、この一冊でその感が深まりました。

別にホラー映画的に恐ろしい情景を描いているわけではなく
むしろ淡々と文章を綴っているのに、読み進むにつれてドキドキしていきます。

この作品集は短篇集となっていますが、そのうち二篇は四部構成になっていますし
それ以外の物語もけっこう長めで各々読み応えがありました。

だから、好きな何編かを選び出してあらすじを書くというのがかなり難しいので
何に、というか誰にどうドキドキさせられたか…というのを書きますね。

とりあえず表題から

『善き女の愛(The Love of a Good Woman)』
在宅看護婦のイーニドが看護している、かつての同級生ルパートの妻で
27歳の若さで徐々に死に近づきつつあるミセス・クイン。
彼女は死の直前に、ルパートの恐ろしい行動を話しだす。

最初は、病人とはいえ軌道を逸しているミセス・クインの言動にゾッとさせられたのですが
徐々に自らを危険に追いやるようなイーニドの考えの方が恐ろしく思えてきました。
いったい何がそうさせるのかと思ってね… 他の恨みをそこで晴らしてるみたいな…

あとは印象に残った話しをいくつか…

『コルテス島(Cortes Island)』
20歳の花嫁だったわたしは、夫のチェスとバンクーバーの地下室に住んでいた。
ある日、上の階に住む、部屋の持ち主の母親ミセス・ゴーリーから
病気のせいで体が動かないミスター・ゴーリーの世話をたのまれた。

誰が怖いって、主人公の部屋の階上に住むミセス・ゴーリーでしょ!!
ただのおせっかいやきかと思いきや、悪魔ですよ、こんな人が近所にいたら。
と、思いながら読んでおりましたら、ミスター・ゴーリーのいきなりの告白めいた行動に
ビックリしたね…ものすごく変な余韻が残る物語でした。

『腐るほど金持ち(Rich as Stink)』
カリンが父親の家から一年ぶりに母ローズマリーの家を訪ねると
ローズマリーはすでにデリクと別れていた。
カリンがデリクの妻アンを訪ねると、やはりデリクはアンのもとへ戻っていた。

父親と新しい母のもとで暮らしながら、母親とその愛人、そしてその妻の
微妙かつ奇妙な関係を、ものすごく冷静に受け止めてる10歳の娘ってどうよ?
けれどもやはり最後には受け止められなくなったのか、ひどい意地悪を思いつきます。
そしてそれが恐ろしい結末に… 大人が悪い! 大人が!!

『母の夢(My Mother's Dream)』
わたしが生まれる前に父ジョージが戦死し、音楽学校の学生だった母ジルは
ジョージの母と未婚の姉二人が暮らす家に連れて行かれ、身をよせることになった。
わたしは生まれ出るとジルを拒み、家の中で立場が弱かった伯母イオナだけになついた。
ある日、祖母と二人の伯母は、ジルとわたしだけを残して一泊の予定で出かけて行った。

さらっと書きましたが、父親の実家にはそれなりの事情が潜んでいて
中でもイオナが一家の一番の不安材料かと思われます。
そんな伯母にしか気を許すまいとした新生児 “ わたし ” の気骨に驚くね!
赤ちゃんがみんなこんなふうに何かを意識して行動しているんだとしたら恐ろしいわ。

こんなあらすじの書きっぷりからはけっっっして読み取れないでしょうが
一話一話、どこにでもいそうな人が、「無い!」とは言えなそうなことを繰り広げてるのに
なぜかゾッとする一瞬が潜んでいます。
読みながらじわじわと背中を這い上がる怯えみたいなものを感じていました。

それで、どうしてそんなふうに感じたのかとつらつら自己分析をしてみました。
どうやら「え! あの人が?」っていう人たちのエピソードだったからというのが
大きな要因のような気がします。 何言ってるのかよくわかんないですよね?
自分でも書いててよくわかんない…

そうですねぇ…
よく事件とかで犯人が捕まった後に、テレビで近所の人とか知り合いに話しを聞くでしょ?
そこで「やると思ってましたよ」なんて言われるタイプではなくて
「まさかあの方がねぇぇ」って言われるタイプの人たちがいるでしょ?
そういう人々に潜む暗部、犯罪だけにあてはまることではなくいろいろとね… そんなものを
あからさまにではなくて、遠回しに、じわじわと浮き彫りにしていってるみたいなところが
うすら寒かった原因なんじゃないかと… 例を挙げてもよくわかんないですね… すみません。

だからといって、ミステリーとかホラーのカテゴリーには入らない独特さ
まさにマンロー・ワールド! が堪能できた一冊でした。

マンロー・ワールドにどっぷりつかってみたい方はどうぞ
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
SHINeeの新曲『Your Number』のMVはとてもステキだけど、SMTOWN@coexartiumの宣伝よね? って
お友達と盛り上がりましたけど…そうよね? 
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『灰色の輝ける贈り物』極寒の冬を纏った一冊

2014-02-07 02:34:11 | カナダの作家
ISLAND
アリステア・マクラウド

どこでどうして買ったのか、まったく覚えてないのですけれど
あったから読んでみました。
さ、寒いよぉ… まさに灰色の世界観です。

私は、たまに浮かれ気分を鎮めてしっとりしたい時などに
日々の生活のちょっとした煩いに苦悩する主人公像を想像しながら、本を読むのが好きです。
ウィリアム・トレヴァーとかハーディなんかが、ほどよく暗くていいのですが
この作家の暗さは、ちょっとベクトルが違う気がする…

作家の経歴によるものか、漁や炭坑などを題材にしたものが多いようです。
もちろん、どちらも危険な仕事だとは思うのですが
ハンパじゃない “ 死との隣合せ ” 感が充ち満ちています。

カナダの作家で、アリス・マンローと同じぐらい寡作らしいのですが
多作じゃなくて逆に良かった気がする…書く方もつらいでしょうが、読む方もしんどいわ。

8作おさめられています。
気になったお話しをいくつかご紹介します。

『帰郷(The Return)/1971年』
10歳の撲は、初めてお父さんの故郷ケープ・ブレトンを訪ねる。
お父さんは列車の中でも待ちきれない様子で、お母さんはあきれている。
大きな家に着くと、おじいちゃんとおばあちゃんは、お父さんが遠くの町で結婚して
嫁の実家の言いなりになっていることを責める。

この少年のお父さんは、都会に出て金融界で成功し、裕福な生活を送っています。
本当なら両親や兄弟姉妹に大歓迎されてもいいと思うのですが
この島の人間としては間違った生き方をしているみたいです。
親のそばで慎ましく生きるべきか、離れていても親が誇れる成功者になるべきか…
難しいわね… 親次第ってとこもあるし。

『秋に(In The Fall)/1973年』
もうすぐ父が出稼ぎのために家を発つという、11月の第2土曜日
母が、炭坑時代から父のそばにいる老馬スコットを売ると宣言した。
父も子供たちも反対だったが、母の言い分は理解できた。
そこへ家畜商人マクレイがやってきて、スコットはミンクの餌になると言う。

ドナドナ状態… でももっと残酷。
馬を売る決心をしたお母さんを責められないってことはわかるの。
わかるんだけど、どうしても悪役をつくらずにおかない人の世の悲しさ…
子牛でなかっただけが救いかしら? いや、老馬の方が哀れか?

『失われた血の塩の贈り物(The Lost Salt Gift of Blood)/1974年』
4000キロの旅を終えて最後の道に立つと、魚釣りをしている4人の少年と出会った。
そのうちの一人、ジョンを迎えに来た老人に連れられ、彼の家に向かった。
レンジの前にいた老婦人は、一瞬敵意を見せたが、思い直したようだ。

この旅人は、たまたまそのカナダの果ての家を訪れたわけではなくて、訳があるの。
私には、どうしてそうなるのぉ? というラストに見えたんですけどね。
どちらが子供にとってよいのかしら? 大人のエゴに思えましたが… 哀愁はあったけど。

特に冬に限定された物語ばかりではなくて、たぶん、夏の物語もあるのですが
読んでいて頭に浮かぶのは、冬の波が白い泡をたてて押し寄せる黒い断崖絶壁の風景。
寂しく寒い冬の情景なんですよね。

それ以外で印象に残ったのは、じれったさでしょうか?
そのじれったさは、登場人物の行動にイライラさせられるというのではなくて
どちらが、誰が、正解なのかがわからない、というもどかしさです。

もちろん、人生に完全な正解と不正解はないと思うのですが
小説に関しては、読者なりに正解をだせばいいものだと思っていました。
だけどこの一冊に関しては、どちらを選んでも、幸福かもしれないし不幸かもしれない、
どっちを選べばいい? ということが、想像の世界の中であれ決められなかったんですよね。
もっと人生を噛み締めた後で読んだら、もう少し理解できるのかもしれませんが…

アリステア・マクラウドは、新潮クレストから『冬の犬』という短篇集も出ているのですが
今のところ手に取る気になれないでいます。
暗いのはけっして嫌いじゃないんだけど、もう少しユーモアがほしいのね… わがままですか?

ひとことK-POPコーナー
録画してたTVKのPOP-PARADEを見たらCNBLUE特集だったんですけど
彼らはもはやアイドルではない気がする…ヴィジュアル抜きで十分カッコいいバンドに見えますね
 
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『ディア・ライフ』引退するなんて言わないでね ・・・

2014-01-30 01:30:18 | カナダの作家
DEAR LIFE 
2012年 アリス・マンロー

日本人ですから、ノーベル賞の時期はつい村上春樹さんに注目してて
アリス・マンローがノミネートされていることも知らなかったのですが
受賞したと知って嬉しかった反面、不思議な気もしました。

あまり世界を揺さぶりそうな内容でもないし、前衛的でも政治的でもなく
テーマも文章も、極めてシンプルな作家だと思うのですが…
それが面白いから不思議なのよねぇ! 文才とはそういうものなのね。

発売を待ちに待っていた一冊でしたので、すぐ買って読んでみました。
14篇おさめれていて、最後の4篇は連作です。
全てが印象深いお話しでしたが、特に面白く読めたものをいくつかあげてみますね。

『安息の場所(Home)』
13歳の時、両親がアフリカに赴任中の1年間、叔父の家で暮らしました。
叔父は限られた人としか付き合わず、ぜったいに家に客を招きませんでした。
ピアニストである自分の姉の話もタブーでした。
叔父にぜったい服従の叔母が、ある日隣人と叔父の姉を招く決心をしました。

叔父さんが若干横暴な気がしないでもないですが
家庭内の小さなもめごとがテーマ、というお話しなんですよ、本当は。
なのに、この、ハラハラどきどきはどうしたことでしょう?
後半ものすごく怖くて鳥肌たっちゃったよ。

『プライド(Pride)』
オナイダ、通称アイダは、あまりにも金持ち過ぎて町の人々と交流がありませんでした。
銀行家の父親が金銭上の問題で失脚して亡くなった後
アイダが家を売りたいと相談してきました。
その後アイダはたびたび訪ねてくるようになり、夕食を共にする晩が増えました。

語り手は男性ですが、二人の間に恋愛沙汰のようなことはおこりません。
そのまま長い長ーい月日が流れていく物語なのですが、究極の恋愛小説に思える!
尽くして尽くされてというわけでも、いつも気づかっているわけでもない二人なのに
もう、ぜったい、結ばれなくちゃいけない! と思わせるお話しでした。

『列車(Train)』
戦争から帰還中のジャクソンは、列車から飛び降り、家とは反対の方向へ歩いていて
荒れ果てた農場の持ち主ベルと出会い、そのまま農場で暮らすようになりました。
長い時がたち、ベルに腫瘍が見つかりました。

恋愛小説だと思った方、違うんですよぉ。
ジャクソンは自由人で、考え方によっては、ものすごい薄情者です。
なんだけど、寡黙な働き者ジャクソンが、だんだん素敵に思えてくるんです。
そして最後はいい話に思えてしまうという… 不思議だ。

小説も売れたり話題になれば、映画化っていう流れになりそうですが
アリス・マンローの物語を映像にするのは、かなり難しい気がします。
ドラマになっているものもあるようですけど、見たことないからね。

なぜかというと、感情を表す場面があまりないんだよね。
違うな… はっきり「これ!」とわかる感情表現が、あまり多くない、という感じかしら?
嬉しかった、哀しかった、悔しかった、ムカついた、という大前提がなくて
俳優さんがどのように感情を表現すればいいというのでしょうか?

物語を読んで、自分なりに感じながら読み進めていくという読書独特のテンポが
とっても適している作家のような気がします。

それから、物語のスパンが、何年から何十年まで長いものが多いですね。
人間には、いくつになっても何かが起こり得るという希望を与えてくれます。
作者自身の年齢がそうさせている作風だとしたら、引退するなんて言わないで
まだまだ書いてほしい… と思うのは、読者のわがままでしょうか?

とりあえず、新潮クレストから出ている
『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』は全部読んだから、他のを探そう。
ノーベル賞効果で、まだ翻訳されていないものも日本で発売されると嬉しいですね。

独特のマンロー・ワールドが楽しめます
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
えー! KARAにつづきNine Musesも? 二人いなくなっちゃうの?
好きだったんだけどなぁ… 9人じゃなくなるけどどうするんでしょう?
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『ナターシャ』異国で肩を寄せ合う難しさ

2012-10-08 07:23:41 | カナダの作家
NATASHA AND OTHER STORIES 
2004年 デヴィッド・ベズモーズギス

この本は表紙の雰囲気が好きで… 所謂ジャケ買いってやつですね。
しかしながら、表紙と内容があまりリンクしていない一冊でした。

作者はカナダ在住だそうですが、子供の頃移住してきたロシア系ユダヤ難民だそうです。
自叙伝なのかな?
一人の男性の子供時代から青年期までのエピソードが断片的に語られています。

文章や雰囲気はざっくり見ると好きなタイプの作風なんですが
ロシア問題とユダヤ問題が随所に書かれていて、両方にほとんど馴染みも知識もない私は
入り込んで読んで共感する…というところまではいけませんでした。

気になったお話しをいくつかご紹介します。

『タプカ(Tapca)』
同じアパートに住む子供がいないナスモフスキー夫婦がロシアから連れて来て
生活が苦しい中、我が子同様の愛情を注いでいる犬のタプカの散歩係に
従姉のヤナと二人指名されました。
ある日散歩中にヤナと大喧嘩をしてしまい、タプカが車に轢かれてしまいました。

何年も一緒に暮らし、国を出るという長く侘しいルートを一緒に旅して来た、
いわば “ 我が子 ” ですよね。
異国の同胞として家族のように接して来た隣人の不注意で死に瀕してしまうとは…
なかなか想像がつきませんが、かなりつらかろう… ラストはちょっと寒気がしました。

『世界で二番目に強い男(The Seond Strongest Man)』
1984年、カナダで重量挙げの選手権が開かれ父が審査員を務めることになりました。
ソ連選手団のコーチは父の元パートナージスキン、花形選手は父が見出したセリョージャ、
ホテルに二人を訪ねて行くと、KGB職員は父の顔見知りでした。
父と母はセリョージャを食事に誘うことにしました。

セリョージャはソ連ではスターで、少年が普段着れないような高い服を買ってくれるのね。
ですが自由はないの、KGBが常に彼の行方を把握しております。
どちらの暮らしが羨ましいかというのは聞くまでもないですが
自由と知る権利を奪われた国が存在した(する)という事実はあるんですよね。
異なる主義を掲げる二つの世界を知る人たちの複雑な心境が語られているような気がします。

『ミニヤン(Miniyan)』
祖母の死後、人脈を駆使し苦労の末祖父が入居したユダヤ人国際結社が保有する住宅には
男二人で暮らすハーシェルとイツィクがいました。
二人にはある噂があり、入居者たちは二人を追い出して自分の知人を入居させようと
ガバイ(ユダヤ教指導者)のザルマンに詰め寄ります。

連れ合いの死後同性二人が暮らすというのは、女性同士だとけっこう涙あり笑いあり的な
物語になりやすいイメージなんですが、男性同士だと陰鬱になりそうですわね…
独りになって寂しくなった者同士、集まって暮らしてもいいじゃないか! 優しく見守ろう。
イヤ~な話のまま終わるかと終わったら、最後の最後にザルマンがっ…見直しましたよ。

そうねぇ…アーウィン・ショーとかマラマッドを読んだ時にも
同じような印象を受けたような気がしますが、もう少し個人的なテーマだったんですよね。

この一冊からは異国における同胞たちの強い繋がりが滲み出ている気がします。
ロシア系ユダヤ人コミュティというのがかなり強固なものだ、というのはわかりました。
それが国民性によるものか、移住の事情によるものか…それはよくわかりませんが
移住者のほとんどが嫌々国を出て来たということも感じられました。

しかし、追放された同胞だからというだけで寄り集まった人々…
故国ではまったく接点がないような身分・職業・地域の人たちの寄せ集めです。
仲間のようでいて見え隠れする優越感や劣等感、意識の違いなど
おつきあいは簡単ではなさそうです。

ソ連が崩壊した後、作者一家や移住を嘆いていたコミュニティの人々が
ロシアに里帰りができていたらよいですね。
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『小説のように』小説で良かった…というお話しの数々

2012-01-23 02:02:39 | カナダの作家
TOO MUCH HAPPINESS 
2009年 アリス・マンロー

『イラクサ』『林檎の樹の下で』に続くアリス・マンローの短篇集です。

前の2冊同様、なんとなく作者の過去とリンクしているような気がしないでもないですが
わざわざ『小説のように』と題しているだけあって、少し物語性が強い気はします。
あえていうなら陰鬱感とミステリアス感が微増してました。
まぁどっちでもいいですけどね… 読んでて楽しかったんですもの。

10篇の中から印象的だったお話しをあげてみます。

『小説のように(Fiction)』
ジョイスは、夫のジョンを大工見習いに来ていた子持ちのエディーにとられました。
数十年後、ジョイスと夫マットのホームパーティーに作家デビューしたという女性が来ます。
何気なく彼女の本を買ったジョイスは、彼女がエディーの娘だということに気づきました。

本題とあんまり関係ないけど、ジョイスもジョンもエディーもマットも
結婚・離婚の紆余曲折がすごくてビックリするわ。
とにかく、ジョンと別れた時のショックから立ち直れたジョイスに拍手。
できたら忘れた過去とは対面したくはないですね。

『遊離基(Free Radicals)』
夫のリッチが亡くなりニータ独りになった家に、ヒューズ点検の男がやってきます。
しかし家に入れると男が豹変し、朝食やワインを出せと言います。
食べ終わってお茶を飲むと、男は自分が犯して来た殺人の話を始めました。
そこでニータも自分の話を披露することにします。

何気なくドアを開けたことから味わう恐怖…怖いですね。
ニータの話は機転なんだろうか? それとも封印された事実なんだろうか?
読後ヒヤッとする話です。
なんとなく『リスタデール卿の謎』の中の『ナイチンゲール荘』を思い出してしまいました。

『女たち(Some Womans)』
13歳の夏休みに末期の患者の世話をする仕事をしました。
患者の妻の留守中、患者の母親のマッサージ師である女性が仲間入りするようになりました。
妻が仕事を辞める日、患者からあることを言いつけられ部屋の鍵を渡されました。

細かいことは書かないでおきますけど “ あること ” っていうのがね…
13歳の女の子には酷だと思ったしだいです。
きっと戸惑うでしょうし、逆に察しがいいのも困ったものですし…
大人の事情に子供を巻き込むなって言いたいわ。

小説ですから当然のことなんですけど、この短篇集の登場人物たちも
それぞれに事を起こしたり何ごとかに巻き込まれたりしています。
ただ、これといった動機や目的のようなものがはっきりしないまま物語が進んで
そのまま終了します。

でも日常で起きることなんて、けっこうそんなものよね?
他人はおろか、「なぜこんなことをしてしまったんでしょう?」と
自分でも訳がわからないまま行動してしまう時があります。

上手く言えないけど「私はどうして?」と思いつつ衝動に駆られる…みたいなところを
女性特有の洞察力と冷徹さで、絶妙に書き表しているような感じの一冊でした。

アリス・マンローは “ チェーホフの後継者 ” と言われているらしいです。
私には、ふたりの作品のどこらへんに共通点があるのか見出せていません。
もっと物語の本質的な部分が読めるようにならねば… なんちゃって
実はどうでもいいんですけどね 二人とも好きな作家なので…

普通に暮らしていればいるほど共感できると思います
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『林檎の木の下で』主観と客観の黄金比率小説

2011-04-06 02:08:02 | カナダの作家
THE VIEW FROM CASTLE ROCK 
2006年 アリス・マンロー

作家本人の言葉を借りれば、この一冊に収められている作品は
祖先が残した記録をもとに創作した短篇小説ということになります。

物語を書く事を生業としている人の先祖が揃いも揃って記録を残す事が義務であると
感じていたとは、そして想像力をかき立てる内容の記録が残されているとは…
なんて幸せなことかしらね。
おかげで読者は素敵な一冊に巡り会うことができました。

この短篇集は三部構成になっています。

一部には17世紀まで遡る先祖のスコットランドでの逸話をはじめ
カナダに渡って来た先祖、ほとんど開拓者のいなかった土地を耕した先祖、
そして両親の物語が5篇描かれています。

二部では作者自身の子供時代、思春期、結婚前、離婚後、再婚後の六つのエピソードを
思い出深い人々を交えながら紹介しています。

三部には先祖の墓石を前にして、甦る懐かしい人の面影や幼い頃に暮らした家に
思いを寄せる『メッセンジャー(Messenger)』という作品が紹介されています。

いくつかのテーマから一篇の物語が書かれているのであらすじを紹介するのは難しいのですが
好きだったエピソードをざっと紹介します。

一部では『キャッスル・ロックからの眺め(The View From Castle Rock)』と
『モリス郡の原野(The Wilds of Morris Township)』の二篇が好きでした。

『キャッスル~』は、ずっとアメリカのことを唱え続けていた老いた父が
息子二人、娘一人、息子の嫁と孫息子を率いてアメリカ大陸を目指す船旅の間の記録です。
『モリス郡~』はカナダに渡ってから二代後の息子たちが家を出て
開拓地で生活を営むようになるまでの記録です。
どちらもフロンティア精神モリモリの熱血な話しではありませんが
アメリカ(カナダ)を目指し、根付いて、国を作って行く淡々とした日々が印象的でした。

二部からは『チケット(The Ticket)』と『家(Home)』の二篇です。

『チケット』は祖母と大叔母チャーリーおばさんの恋愛と結婚生活が描かれています。
広大な大地に、ぽつんぽつんと町や村があった時代の事情によるものか
祖母の結婚相手はもと恋人の従兄弟でした…というところから後日談に繋がってったり
チャーリーおばさん夫妻の “ 伝説の愛 ” が描かれていてロマンチックな一章です。

『家』は離婚後しばしば実家に帰るようになってからの、父親と新しい母イルマの逸話です。
長引く重苦しい病の末亡くなった母親の後にやってきたイルマの、屈託がなさそうに見えて
端々が意地悪な言葉に、読んでいる方がドキドキしてきてしまいます。
父親が倒れてしまった後の継母と継子の行動もなんだか裏腹な気がする一作です。

作家が前書きでわざわざ短篇小説だと力説しているあたり
もしかして壮大な創作なのかもしれないと考えましたが
やはり自分のルーツと過去を描いているようです。

ただ、その描き方はとてもフェアであるように思えます。
自分に降り掛かった不幸や理不尽な思いを表現する時も、他人の不埒な行いを記す時も
登場人物の一人が見つめる視線をキープしつつ書いているみたい。

自分の祖先を誇りたい気持ち、自分の主張を書きたい欲求などを満たすために
自伝や私小説などのジャンルが存在するものだと思っていましたが
そのような印象はまったく無くて、上出来な物語を読んだという感想しかありません。

本当に素敵な本だと思います。

名も無き人たちの歴史を訪ね歩く楽しみをどうぞ
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね


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『イラクサ』ダークカラーの回想録

2011-02-23 02:11:41 | カナダの作家
HATESHIP,FRIENDSHIP,COURTSHIP,LOVESHIP,MARRIAGE 
2001年 アリス・マンロー

前々から気になっていたんだけど読んだことがなかったアリス・マンローにトライ。
さすがに短篇の名手と名高いだけあって、とても面白く読ませていただきました。

「あれから何年も経ちました」的な男女の物語が多かったのですが
胸に秘めた一夜の出来事をじっとりねっとり描いてはいなくて
「そういえば…」と思い出のひとつとして取り出したみたいな
素っ気ない感じが好きでした。

特に好きだった物語を書き出してみます。

『ポスト・アンド・ビーム(Post and Beam)』
ローナの家には、以前夫の教え子だったライオネルがよく訪ねて来ます。
ふたりだけの会話ははずむし、ライオネルは毎週ローナに詩を送ってきます。
ある夏、故郷で親類たちと同居している従姉のポリーが来ることになりました。
金銭的・精神的苦労を訴えるポリーにローナは怒りを覚えます。

ある時、ローナとポリーの立場が入れ替わってしまったようになるのですが
それは夏の日の一瞬の出来事かもしれないという余韻を残しつつ物語は終わります。
苦労が絶えない人の切々とした訴えは、幸せな人の身にはうざったいものでしょうね?
でもそれだけで気が晴れるんだから聞いていただきたいのよ。

『クィーニー(Queenie)』
ある夏、隣の家のヴォギラ先生と駆け落ちした姉のクィーニーを訪ねることにします。
その少し前にクィーニーは父親に金の無心の手紙を送ってきていました。
クィーニーは神経質で嫉妬深いヴォギラの機嫌を損ねないように必死です。
しかし、密かにアンドリューという男からの手紙を待っていました。

うーん…駆け落ちするほど愛を掻き立てられる男性には思えないんだけどなぁ…
と思っていたら、物語はどんでん返し的な結末へ向かっていきます。
クィーニー、その後いったいどんな人生を歩んだんでしょ? という
好奇心がむくむく頭をもたげたラストでした。

『クマが山を越えてきた(The Bear Came Over the Mountain)』
フィオーナの病状が悪化してきたので、話し合って施設に入ることになりました。
医者から面会を止められていた1ヶ月が過ぎてグラントが会いに行くと
彼女はオーブリーという男性と親しげに座っていました。
グラントと陽気に接するフィオーナでしたが、彼が夫だと理解しているのかわかりません。

夫や妻・親・子供が、見知らぬ人のように自分を見つめた時、どうしたらいいだろう?
という戸惑いがとてもよく表れている物語です。
夫の前で、他の男のために泣いて、ふさぎこんで、食事を摂らなくなる妻の姿…
いつかは私たち夫婦にも訪れるかもしれない…という状況にリアルにぞっとしました。

解説を読むと、物語のいたるところに作者の過去がリンクしているようです。
長い月日を過ごし、たくさんの経験をし、人々と出会って別れ、世の中の多くを観察して
そして、自分と正直に向き合える作家だから描ける世界なのかもしれません。

『林檎の木の下で』も購入したので近々読む予定です。 楽しみ!

始めてマンローを知りました。ありがとう!新潮クレスト
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね


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『もつれた蜘蛛の巣』メモのご用意を・・・

2009-12-11 01:30:11 | カナダの作家
A TANGLED WEB 
1931年 ルーシー・モード・モンゴメリ

私はプリンス・エドワード島の人口規模がどれくらいのものだかよく知りませんが
(Wikipediaによると2001年で13万9000人)
その中のひとつの町に、こんなにも親戚ばかりが住んでいるっていうのはどうよ? と
思わずにはいられません。

主な登場人物はダーク家とペンハロウ家というふたつの家系の人たちで
ほとんどの人たちが代々もう一方の家の人と結婚しているのね。
なにしろ何十人ものダークさんとペンハロウさんが登場する上に
もとペンハロウのダークさん、もとダークのペンハロウさん入り乱れて
さっぱりわけが分からなくなるかもしれないので、メモがいるかもしれません。

意地悪さではピカイチのベッキー・ダークおばが持っている家宝の水差しは
いったい誰に遺されるのか? を巡って一族の人たちが右往左往する物語です。
物語の中にはいくつかのラブストーリーがちりばめられています。

一族きっての美女ゲイ・ペンハロウから婚約者ノエルを奪おうとする
小悪魔ナン・ペンハロウのお話と、
ゲイを一途に愛するロジャー・ダークの愛の行方でしょ。

憎み合っていたはずのドナ・ダークとピーター・ペンハロウが
急に燃え上がっちゃうところまでは良かったが…というエピソードでしょ。

10年前の結婚式の日に夫のもとを逃げ出したジョスリン・ペンハロウの謎と
まだジョスリンを愛しているヒュー・ダークのこれからでしょ。

マーガレット・ペンハロウとペニウィック・ダークのロマンスなしの婚約のこと。
のんだくれのクリストファー・ダークの妻ソーラを愛してしまって
ひたすら夫の死を待ち続けるミュレイ・ダークのこと。
戦争のショックで妻を忘れたローソン・ダークと献身的な妻ナオミのこと。

ふうぅ… まだまだダークさんとペンハロウさんは登場しますが
ここらへんでやめておきましょうね

チクリと刺すユーモアや、女性特有の皮肉っぽさが随所にあって
モンゴメリのいたずら心が垣間見えるような気がしました。

甘くて淡い恋心や熱烈で情熱的な愛が冷める場面なんか
「フッ、恋なんてそんなもんなのよ 」というような
アダルトな悟りが描かれているように思えたんですけど…
やっぱりラストはモンゴメリらしくハッピーエンドでございます。

しかしこれだけの(結局数えきれなかった…)登場人物に
余すところ無くパーソナリティと出番を与えるというのはすごいっすね!!
ふつうは10人ぐらいで力尽きてしまいそうなものじゃないですか?
それだけでも一読に値すると思います。

さてさて、すべての発端となった水差しは誰の手に渡ったのでしょうね?
この結末には「えーーーーーーっ 」と思わないでもないですけど
丸くおさまったってことで許す(わたしは何様なのか?

もつれた蜘蛛の巣 下 篠崎書林


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角川文庫は1冊でしたが、こちらは上下刊に分かれているみたいです
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『青い城』痛快! 生まれ変わった女の強さ

2009-09-18 01:04:29 | カナダの作家
THE BLUE CASTLE 
1926年 ルーシー・モード・モンゴメリ

あまりにも出来すぎた話とはいえ、少女マンガ気分で楽しめて
とっても面白かったですよ。

“ 青い城 ” というのは主人公のヴァランシーが思い浮かべるもうひとつの家。
そこではヴァランシーは美しいドレスを着て素敵なナイトに求婚されたりするのだが…

本当のヴァランシーはというと、威圧的な母や口うるさい従姉と息苦しい家で暮らし
専横で体裁ばかりのスターリング一族に取り囲まれて何一つ自由にできないうちに
29歳の誕生日を迎えてしまいました。
恋人いない、友達いない、好きな服も着れず勝手に出かけられず
許されているのはジョン・フォスターの本を読むことだけです。

ある日、胸の痛みに耐えかねてこっそり医者の診断を受けたヴァランシーは
心臓病でもう長くないと告げられます。

死を前にしたヴァランシーは、もう何も怖くないと心機一転!
口答えはするし親族をバカにするしで皆を呆れさせた上に
飲んだくれの大工の家の可哀想な娘を世話するため女中になって住み込みます。
さらに、前科者でならず者と評判のバーニィ・スネイスと結婚まで
どうなっちゃうの? ヴァランシー …

モンゴメリらしく、空想好きな女性の夢溢れる物語です。
しかも皮肉がたっぷりで笑えます。
途中から物語の展開は読めてしまいますが、セリフや人物描写が愉快で飽きませんでした。

モンゴメリはかなり多い登場人物のパーソナリティーを
数少ないセンテンスで存分に表現しています。
セリフひとつでその人柄がありありと浮かんでしまうほど… 感嘆です。

しかし『赤毛のアン』 のリンド夫人や『アボンリーへの道』のヘティ・キングといい
『青い城』のアメリア・スターリング(母親)といい、絶対にモデルがいると見たね!
モンゴメリがうんざりするほどのやかまし屋がいたはずよ。
作家になってからこんなに役に立って良かったですね

ヴァランシーはあまりにも抑圧されていたゆえに、空想の城に逃げ込んでいます。
現実逃避も度を超えると、ちょっとアブナイことになっちゃうかもしれないけど
できたらそんな満ち足りた場所を心の中に持っておきたいですね。

完全に “ 白馬の王子を待っていたらやって来た ” タイプの物語で
男性には面白くないかもしれませんが、字面を追っているだけでウキウキする
こんな本もたまにはいいんじゃないでしょうか?

ひとつクレームをつけるとするならば…
ヴァランシーが親族に、やけにオールド・ミスよばわりされることかしら?
29歳なんてまだまだ若いじゃないのっ! って言いたいわ。

青い城 篠崎書林


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私のは角川文庫です。こちらはモンゴメリ・シリーズがあるらしい。
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