1956年 谷崎 潤一郎
フランス、ロシアと続いた“子供時代”の物語。
日本勢にも登場していただこうと思いまして、この本を選んでみました。
そういえば、新潮文庫の谷崎潤一郎、一時期ジャケ買いしたなぁ
これがトルストイの『幼年時代』に触発されたのかどうかは分からないけど
類似点は割と多いのよね
まず父親。かたや賭け事で家計に穴をあける(トルストイ)、
かたや商才の無さと病身で没落の一途をたどる(谷崎)。
いずれにしても妻の財産を食いつぶすところは同じです。
それから献身的な、年老いたばあやがいます。
いつでも空想話を聞いてくれたナターリア(トルストイ)、
学校にもついて来てくれたおみよ(谷崎)。
どちらも死ぬまで一家のために尽くしてくれます。
その他、友達のことや続編があることなど諸々・・・
描かれている人物は、親戚や学校の先生と友達のことばかりで
舞台も神田の下町界隈という狭い世界ですが
出てくる人たちが個性的で飽きることがありません。
ふがいない父親や、妻と妾を一緒に住まわした“ふしだらな”本家の叔父、
“尼将軍”と呼ばれたヒステリックな伯母でさえも
いい人ではないけれど、いい味だしてます
モデルとしては好都合な人たちに囲まれてたんだな、って思える一冊。
この人たちがいなければ、日本屈指の作家は誕生しなかったかも・・・
小さいながらに、叔父さんの妾や友達の家の女中、汽車の中の少女などに
そこはかとない“色気”や“艶っぽさ”を見つけるあたり、
後の谷崎潤一郎作品を彷彿とさせますね。
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