![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
特にイギリス文学とアイルランド文学を分けて考えたことなど無かったわたくし。
一冊にまとめていただくと、たしかに何か確立したものを感じました。
何かしら?
まず、妖精や伝説の存在や、強固なカトリック信仰があり
搾取されてきた過去と独立運動の存在なんかが、決定的に違うところでしょうか。
特に好きだったものをあげてみます。
『ミスター・シング(Mr Sing My Heart's Delight)/ブライアン・フリール』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/gp01.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/gp01.gif)
人里離れた岬の突端に暮らす祖母の家を訪ねて来たインドの行商人。
がらくたのような売り物に、少女のようにはしゃぐ祖母は
彼に一夜の宿とたっぷりの夕食を提供します。
翌朝、無口な行商人は美しい赤い石の指輪を置いて去っていきます。
このおばあさんがいいのよ!!
素朴な人柄を存分に見せてくれます。涙がでちゃうくらい。
『国外移住(Going into Exile)/1924年 リアム・オフラハティ』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/gp28.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/gp28.gif)
貧しい祖国を出てアメリカに向かう長男と長女を送る、前夜の祝宴風景。
あわただしさがふと途切れた時、晴れ着を着た子供たちを見送る両親の
やりきれない切なさが涙を誘います。
当時、どれぐらいの人たちがこういう思いをしてアイルランドを後にしたのかしら?
『アンジェラの灰』とか『タイタニック』とかもありましたね。
今や屈指の高GDPを誇る国からは想像できないですけれども。
『ロマンスのダンスホール(The Ballroom of Romance)/W・トレヴァー』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/gp28.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/gp28.gif)
片足を失った父親と山の農場で暮らす、ハイ・ミスのフライディーが
週に一度通う、辺鄙な泥炭地にあるダンスホール。
場末の娯楽場で哀しい恋が生まれては消えていきます。
境遇に逆らえない人びとが哀れです。
せっかく遊びにいっても、いつも同じ顔ぶれ、同じ出来事。
それでも出かけずにはいられないの。
これ以外の短篇もひとつひとつが特徴的なものでした。
こう言ってはなんだけど、小さな国とはいえ
国中からいろいろな作家がいろいろな物語を持ち寄っても
“らしさ”って出るんもんなんですね。 時代もあるのかもしれないけど。
![]() | アイルランド短篇選 岩波書店 このアイテムの詳細を見る |