まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『巡礼者たち』頭の中がルート66

2012-08-28 22:57:30 | アメリカの作家
PILGRIMS 
1997年 エリザベス・ギルバート

読んでいる時には「女性が書いているわりには男っぽいなぁ」と思っていましたが
読後はやはり女性らしい物語の数々だったと感じています。

舞台が、アメリカの、どちらかというと田舎、あるいはハイウェイ沿いに思える話が多くて
つい、テンガロンハットとかブーツの男性が屯する酒場とか
二の腕逞しい大型トレーラーの運転手が座って大きなホットドッグをほおばるカフェを
勝手に想像しながら読んでいたのが、男らしく思えた要因かもしれません。

表題『巡礼者たち』は農場主に雇われた19歳の少女とその家の息子の
仲間意識なのか恋なのか…という微妙な心情を描いた秀作ですが
それはおいといて、好きだったお話しをいくつか紹介します。

『トール・フォークス(Tall Falks)』
エレンの店トール・フォークスと、別居中の夫トミーの店ラディ・ナット・ハウスは
道をはさんで営業していて、常連たちが行き来し、お互いに繁盛していました。
しかしトミーの店は潰れ、トップレスバーがオープンしました。
エレンが甥と偵察に行くと、常連たちが皆そのバーに勢揃いしていました。

たぶん小さな町なんだと思うんですが、以前従業員だった女性も向かいに移り
常連も向かいに取られ…なんてことが続けばエレンの店も将来どうなるか…
物語の中ではエレンは落ち着いていますが、ちょっとした言動に焦りが見える気がします。
しかし、トップレスだからって長年通った店に背を向けるとは…男の人って…

『デニー・ブラウンの知らなかったこと
      (The Many Things That Denny Brown Did Not Know)』
15歳のデニー・ブラウンの両親は看護士でした。
その夏、デニーはなぜかかつていじめられていたラッセルと親しくなり
ラッセルの姉ポーレットとこっそり恋人同士になりました。
ある日ポーレットが水疱瘡にかかり、デニーは父親譲りの看護をします。

いじめを克服して友人になる少年たち、父親の仕事を見直す息子…
テーマから見ればいい話なんですけど、道徳番組的な展開はなく
主人公が夏のけだるさに流されているうちに大人になりました、という感じです。
“ 人生の岐路 ” と言いますが、気付かぬ内に岐路を越えていたってこともありますよね。

『最高の妻(The Finest Wife)』
惚れっぽくて恋愛を繰り返したローズは一番好きな男性と結婚し43年後に死別しました。
70歳近くなっていたローズは幼稚園バスの運転手になりました。
ある日、子どもたちが表れないかわりに老人たちが次々バスに乗って来ます。
彼らは皆ローズのかつての恋人でした。

小説では、恋愛遍歴の多い女性はなにかと不幸なラストを迎えることが多いのですが
この物語のラストはすごくハッピーに思えました。 こんな最後を迎えたい…
私はまわりがなんと言おうと、本人が「幸せだ」と思える人生が送れればいいと思うのよね。
ブログで女性の歴史を書いてますが、後の世で悪女だとかおばかさんだとか言われようと
生きているうちに幸せな思いをした人はそれでいいと思うのですよ。

そうですねぇ…
作者が特定のパーソナリティーに肩入れしていないような気がします。
確かに面白い短篇集には様々な人物やシチュエーションが登場するものですが
エリザベス・ギルバートの場合は徹底しているような気がします。

扱っているテーマには、社会的な問題や世間をにぎわす話題はほとんんどありません。
主人公のまわりで起きていることだけを、ほぼ時系列で書いています。

執着心がないのか、公平なのか、利己的なのか、平和主義なのか…
とにかく、雑念無く話の世界に入り込むことができました。

時系列だし文章は読み易いのですが、だからといって簡単な物語ではありません。
主人公の気持がはっきりしないまま話が進行し、成り行きっぽくラストを迎え
そのラストもすっきりしない…というスタイルで
ちゃんとした起承転結が存在しないと嫌な人には向かないかもしれません。

好き嫌いはあるかもね… 私は今のところ好きと嫌いのど真ん中にいる状態です。
コメント (2)
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『タイム・マシン 他九篇』空想小説で読む未来への警告(おおげさ…)

2012-08-23 22:53:17 | イギリス・アイルランドの作家
THE TIME MACHINE   
1896年 ハーバート・ジョージ・ウエルズ

お久しぶりです。
パソコンがある部屋にはエアコンが無いので、すっかりブログも滞りがち…
と言い訳してみました

夏休みは旦那を説き伏せ韓国へ行ってまいりました。 やっほー
でも韓国で楽しい思いをした方も、旅の様子をブログにアップしてる方も多いと思うので
この話しはおいといていつものブログに戻ります。

ウェルズといえば『透明人間』『宇宙戦争』など映画化された小説も多くて有名ですね。
巨大な虫や地球外生命体などには興味の無い私ですが、お名前は存じ上げております。
SFの生みの親みたいな方なのでしょうかね?
なぜか本棚に『モロー博士の島』とこの本があったので読んでみました。

そうですね… 私がまったく共感できない10篇が収められた短篇集ですが
1800年代、SFの概念がほとんど無い状態でこのような物語が書けるということ、
その想像力にひたすら尊敬の念を覚えているところです。

『タイム・マシン(Time Machine)/1895年』
客の前で時間の中を移動する実験用の小さなマシンを消してみせたタイムトラベラーを
再度訪れると、彼は疲れ果て、汚れた姿で表れました。
彼は80万2千年後の世界で、人類の英知の行く末を見て来たと語りました。
そこには、優雅に着飾って一日中無意味に遊び暮らす白痴のような人々がいたと言います。

これはむかーし映画で観たことがあってうっすら内容を覚えてました。
怖いわ~、遊び暮らしているからって羨ましがってはいけません。
優雅な人々の実の正体は、というか役割は… ブルブル… やはり人は頭と体を使わねばね!
何もかもコンピューターや機械に任せていると、いつかこんな世界になるような気がします。

『奇跡を起こした男(The Man Who Could Work Miracles)/1899年』
フォザリンゲイは、ある夜、自分の好きなように物を動かしたり
出したり消したりする力があることに気がつきました。
しつこいウィンチ警部を念力でアメリカに送ってしまったフォザリンゲイは恐ろしくなり
メイディング牧師に相談しますが、牧師はその力が利用できると有頂天になります。

牧師は商売っけを出したり私欲のために力を利用しようとわけではなく
善行のためにフォザリンゲイの力を借りようとしたのね、いい人なんですよ。
なんだけど、けっこう無茶なこと言う牧師さんなのよね。
宇宙の敵や謎の生命体などは(映画の中では)打ち負かしている人間ですが
果たして自然の摂理に打ち勝つことはできるんでしょうか?

『ザ・スター(The Star)/1899年』
海王星の軌道に異常があると発表されたのは1月1日でした。
1月3日には世界中の人々が白い巨星を目にしました。
そして、その星は日に日に大きくなっていきます。

ちょっとネタばらしをしちゃうと、海王星と地球の衝突はなんとか免れました。
なんだけどその後地球上の各地で天災が相次ぐのね… 日本は火山の噴火が止まりません。
日本が火山列島だってことをご存知だったんですね?
ちょっぴりリアルなことが書かれてあるところがかえって恐ろしい…

SF全般に疎い私でさえタイムマシンとか透明人間とかでかい蜘蛛とか知ってるわけです。
まさに代名詞的な物語をたくさん残していらっしゃる作家だけあって
面白いと言えば面白い… という一冊でした。

人々がそれぞれの未来人や宇宙人を想像&創造する… SFにはそういう面白さがありますね。
写真や映像による情報が少ない時代の少年や好奇心旺盛な人々は
きっとこれらの物語をおおいに楽しまれたことでしょう。

しかし、ただ面白い、楽しい、と言っているわけにはいかない…
なんとなくですが、SFには未来への警告が多く含まれているような気がします。
ウェルズの小説は、奇想天外な登場人物や舞台や物体を通して
立ち止まらず未来へ突っ走ることの恐ろしさを教えてくれているようです。

日進月歩もよいが、いつかは科学も化学もITも飽和が訪れるはず…
その時人類はどんな風になっているのでしょうね?

ところで!
最近、私のブログ内で『若草物語』『チップス先生さようなら』『月曜物語』などの
キーワード検索が増えてるんですけど…
(まさかいないと思うけど)良い子の皆さん、夏休みの宿題で参照しちゃダメですよ。
先生に「感想文をなめんなよ!」と怒られること請け合いです。
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フランス王ルイ・フィリプ1世王女 マリー

2012-08-02 22:17:56 | フランス王妃・王女
“ 美人薄命 ” な王女
ルイ・フィリプ1世王女 マリー・ドルレアン
ビュルテンベルク公アレクサンドル妃


1813~1839

ルイ・フィリプ1世とマリー・アマーリエの次女マリーは
父親であるルイ・フィリプの意向で堅実に育てられました。
芸術的な才能があったようで、彫刻や絵画に勤しんでいました。

1830年、7月革命の後ルイ・フィリプが王に即位してマリーは王女になりました。

マリーが21歳の時、王妃マリー・アマーリエは甥の両シチリア王フェルディナンド2世に
弟のレオポルドとマリーの結婚をもちかけました。
      
ヨーロッパでは、カトリックとプロテスタントの問題もあり
権力の弱体化や名家の衰退と、新興の資産家
所謂ブルジョワジーの台頭とかで
王家同士の縁談がなかなかに難しくなっていたわけですね。

一応王制復古で落ち着いたように見えるフランスの王女との縁談はありがたい…
さらに大枚22万フランを費やして往年の贅沢な暮らしを保っている
オルレアン家の財力はものすごーく魅力的でした。
てなわけで、フェルディナンド2世は縁談に同意します。

しかし、ルイ・フィリプは決して市民に大歓迎で迎えられた王ではなかったのですね。
7月革命でクーデターを起こした側の、共和制の国にしたいという意向に反して
議会でブルジョワ議員たちに選ばれた王です。
昔ながらの王党派ではなく、立憲主義を目指す自由派に押されて王になっています。
ですので、王座は安泰というわけでなく、各地でちょこちょこ暴動が起きています。

マリーとレオポルドの結婚が決められた年にも暴動は起きました。

フェルディナンド2世は、フランス王家の財産が、またまた革命で無くなる前に…と
焦りまして、一刻も早くマリーをイタリアに送るよう要求しました。

持ちかけたのはフランス側でしたが、ルイ・フィリプは「無分別すぎ!」と怒り
この縁談は破談になります。

24歳の時、ビュルテンベルク公子アレクサンドルと結婚しました。
アレクサンドルの家系は傍系でたいした家柄ではなかったのですけれども
下記の家系図を見ていただくとおわかり頂けますように
英国王家、ベルギー王家と繋がりがあります。
    
省略したけど、ポルトガル王フェルナンド2世や
ロシア皇帝アレクサンドル1世やニコライ1世とも繋がりがあるという
「◯◯の親戚」でかなりポイントが稼げる花婿候補でした。

姉のルイーズが、2年前にベルギー王レオポルド1世と結婚していまして
そこから持ち上がった縁談のようです。

結婚から4年後、結核が悪化して療養のためピサに向かいました。

けれども体調は回復しなかったようです。
弟のヌムール公ルイは、両親の指示で付き添うためにマリーの後を追いましたが
到着した時にはマリーは瀕死の状態でした。
それでも間に合ってよかった… 家族に看取られ25歳で亡くなりました。

美術が好きで自らも絵画を描いていたというマリーの作品は
ドルトレヒト美術館(オランダ)に残っているそうです。

肖像画を載せるにあたり画像検索して何枚か肖像画を見ましたが、どれもお美しい…
けっこうリアルですし、本当に綺麗な方だったのではないかと思われます。
ただ、お美しいわりにはエピソードが少ないですね。
若くして亡くなっているからでしょうか?

落ち着いた雰囲気を漂わせていて “ フランス王家 ” という言葉から連想される
華美で浮ついたイメージとはかけ離れています。
お母様のマリー・アマーリエの肖像画と見比べると、同時代? って思っちゃうわ。

そんなわけで、現代にの女性と言っても違和感の無い肖像画をもう1枚載せときます。

              

(参考文献 柴田三千雄氏『フランス史10講』 Wikipedia英語版)
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