まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『善き女の愛』夏に読むべきだったか…?

2015-02-28 23:15:30 | カナダの作家
THE LOVE OF A GOOD WOMAN 
1998年 アリス・マンロー

前々から、アリス・マンローが書く小説は、普通の人たちが登場して
日常的なエピソードを描いていながら、なんだかスリリングだったり
鳥肌たつ感があるなぁ…と思っていましたが、この一冊でその感が深まりました。

別にホラー映画的に恐ろしい情景を描いているわけではなく
むしろ淡々と文章を綴っているのに、読み進むにつれてドキドキしていきます。

この作品集は短篇集となっていますが、そのうち二篇は四部構成になっていますし
それ以外の物語もけっこう長めで各々読み応えがありました。

だから、好きな何編かを選び出してあらすじを書くというのがかなり難しいので
何に、というか誰にどうドキドキさせられたか…というのを書きますね。

とりあえず表題から

『善き女の愛(The Love of a Good Woman)』
在宅看護婦のイーニドが看護している、かつての同級生ルパートの妻で
27歳の若さで徐々に死に近づきつつあるミセス・クイン。
彼女は死の直前に、ルパートの恐ろしい行動を話しだす。

最初は、病人とはいえ軌道を逸しているミセス・クインの言動にゾッとさせられたのですが
徐々に自らを危険に追いやるようなイーニドの考えの方が恐ろしく思えてきました。
いったい何がそうさせるのかと思ってね… 他の恨みをそこで晴らしてるみたいな…

あとは印象に残った話しをいくつか…

『コルテス島(Cortes Island)』
20歳の花嫁だったわたしは、夫のチェスとバンクーバーの地下室に住んでいた。
ある日、上の階に住む、部屋の持ち主の母親ミセス・ゴーリーから
病気のせいで体が動かないミスター・ゴーリーの世話をたのまれた。

誰が怖いって、主人公の部屋の階上に住むミセス・ゴーリーでしょ!!
ただのおせっかいやきかと思いきや、悪魔ですよ、こんな人が近所にいたら。
と、思いながら読んでおりましたら、ミスター・ゴーリーのいきなりの告白めいた行動に
ビックリしたね…ものすごく変な余韻が残る物語でした。

『腐るほど金持ち(Rich as Stink)』
カリンが父親の家から一年ぶりに母ローズマリーの家を訪ねると
ローズマリーはすでにデリクと別れていた。
カリンがデリクの妻アンを訪ねると、やはりデリクはアンのもとへ戻っていた。

父親と新しい母のもとで暮らしながら、母親とその愛人、そしてその妻の
微妙かつ奇妙な関係を、ものすごく冷静に受け止めてる10歳の娘ってどうよ?
けれどもやはり最後には受け止められなくなったのか、ひどい意地悪を思いつきます。
そしてそれが恐ろしい結末に… 大人が悪い! 大人が!!

『母の夢(My Mother's Dream)』
わたしが生まれる前に父ジョージが戦死し、音楽学校の学生だった母ジルは
ジョージの母と未婚の姉二人が暮らす家に連れて行かれ、身をよせることになった。
わたしは生まれ出るとジルを拒み、家の中で立場が弱かった伯母イオナだけになついた。
ある日、祖母と二人の伯母は、ジルとわたしだけを残して一泊の予定で出かけて行った。

さらっと書きましたが、父親の実家にはそれなりの事情が潜んでいて
中でもイオナが一家の一番の不安材料かと思われます。
そんな伯母にしか気を許すまいとした新生児 “ わたし ” の気骨に驚くね!
赤ちゃんがみんなこんなふうに何かを意識して行動しているんだとしたら恐ろしいわ。

こんなあらすじの書きっぷりからはけっっっして読み取れないでしょうが
一話一話、どこにでもいそうな人が、「無い!」とは言えなそうなことを繰り広げてるのに
なぜかゾッとする一瞬が潜んでいます。
読みながらじわじわと背中を這い上がる怯えみたいなものを感じていました。

それで、どうしてそんなふうに感じたのかとつらつら自己分析をしてみました。
どうやら「え! あの人が?」っていう人たちのエピソードだったからというのが
大きな要因のような気がします。 何言ってるのかよくわかんないですよね?
自分でも書いててよくわかんない…

そうですねぇ…
よく事件とかで犯人が捕まった後に、テレビで近所の人とか知り合いに話しを聞くでしょ?
そこで「やると思ってましたよ」なんて言われるタイプではなくて
「まさかあの方がねぇぇ」って言われるタイプの人たちがいるでしょ?
そういう人々に潜む暗部、犯罪だけにあてはまることではなくいろいろとね… そんなものを
あからさまにではなくて、遠回しに、じわじわと浮き彫りにしていってるみたいなところが
うすら寒かった原因なんじゃないかと… 例を挙げてもよくわかんないですね… すみません。

だからといって、ミステリーとかホラーのカテゴリーには入らない独特さ
まさにマンロー・ワールド! が堪能できた一冊でした。

マンロー・ワールドにどっぷりつかってみたい方はどうぞ
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
SHINeeの新曲『Your Number』のMVはとてもステキだけど、SMTOWN@coexartiumの宣伝よね? って
お友達と盛り上がりましたけど…そうよね? 
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『旅のスケッチ』若さみなぎらない短篇集

2015-02-26 22:08:47 | その他の国の作家
SKISSER FRAN UTLANDET 
トーベ・ヤンソン

1月にまたもや職場異動がありました。
前回は紀伊国屋書店でしたが、今回はそばに有隣堂があります。
しかし、有隣堂は海外文学が少なく、岩波文庫も少なく
新潮クレストコーナーも無い…ということで、あまりのぞいてないのですが
こないだ初めて一冊購入。

『トーベ・ヤンソン短篇集』『黒と白』に続くトーベ・ヤンソンの短篇集です。

表紙もちょっぴりコミカルですが、内容も前に読んだ二冊よりぐっと明るい雰囲気でした。

前読の二冊は1970年~80年代、ヤンソンが50代後半~60代にかけて書いているものを
まとめたものでしたが、『旅のスケッチ』は1930年代、ヤンソンが若い頃に書かれたものが
8篇がおさめられています。

舞台はパリ、ドレスデン、セルムランド、ヘルシンキ、ヴェローナ、カプリで
ヤンソンが留学したり、旅行をした時の印象や経験が描かれているのだと思います。

いくつかご紹介しますね。

『鬚(Skagget)/1938年』
舞台はパリ、春のある日、パリを訪れた18歳のクリスティナは、セーヌ川岸で
カンバスに向かっているひとりの青年画家に目を留めます。
彼は鬚を生やしていて、クリスティナは、前々から鬚を生やした男性に憧れていました。
クリスティナの恋が始まり、一週間後、彼のアトリエを訪ねることになりました。

急に熱が冷めた女性と、その女性を責めたあげく別れを切り出す男性の話しなんですけど
最後が平和ですごくおかしいの。
お互いのことを知らずに一気に燃え上がった恋って、やはり持続するのは難しいのかしらね?
ヤンソンも行く先々でこんな想いを味わったのでしょうか?

『手紙(Brevet)/1936年』
昼間は寝ていて夜起き出すという暮らしをしているフォーベル氏は、ある夜駅に向かい
無力感に襲われて、架空の姪の所在をたずねます。
するとロッテという女性が到着して旅行者救護施設の寮にいると聞かされました。
数日後、彼女のことが気になっていたフォーベル氏は寮を訪ねます。

ヤンソンが22歳ぐらいの時の作品ですが、お若いのにもう老境の人の哀しみを描いてます。
若いロッテはそんなことはおかまいなしに天真爛漫にふるまってます。
こういうの、普通は年配の男性作家が書きそうな内容なんだけどね… とにかく驚いた。

『サン・ゼーノ・マッジョーッレ、ひとつ星
        (San Zeno Maggiore,1Stajarna)/1940年』
暑さで死んだような午後のヴェローナで、女性が壁に向かって空壜を投げているのを見て
こらえきれず笑い出してしまいました。
彼女に謝罪し少し話しをすると、彼女は教会を案内すると言って私を連れ回しました。
ヨランダと名乗るその女性は、その後自分の家に来て泊まれとしつこく誘ってきました。

どうなるの? どうなるの? と何度も思わされました。
夜の街にくり出すところなんか、作中の “ わたし ” ならずともドキドキよ~
いったいヨランダの正体はなんなのよ? って感じで。
でも本当は、かなり悲哀に充ち満ちた作品じゃないかと思うんですけどね。

やはり若い頃の作品だけあって、男女の恋模様なんかがちょこちょこ描かれたいたり
ちょっとおどけた感じのユーモアも盛り込まれています。
少し読み手を意識しすぎてるような気がしないでもありませんが、やはりトーベ・ヤンソン!
後年の悲哀たっぷりぶりを彷彿とさせる内容や展開がすでに垣間見えています。

各物語にヤンソンの挿絵が入っています。
まさかのキス・シーンや、お茶目な絵もあって楽しめます。

けれども、ドイツの影、戦争の影がしのび寄っていたこの時代
画家を目指していたヤンソンは、暗めの色彩で描いた絵も多かったらしく
それが後のムーミンのグレーっぽい絵面に影響したのかしら?

また、フィンランドはナチスドイツの影響下に入っていった時代でもあったらしく
書きたいことが書けず、それならば、と、以前訪れた旅先のエピソードを
少し愉快に描いてみせたのかもしれません。

そんなことを考えると、少し若さが感じられて、いつにないユーモアがあるこの短篇集も
なんだか意味深げに思えてきたりして…
ただ私は、後年の作風の方が好きですが…

ムーミン以外の、ヤンソンの魅力を知りたい方へ
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
わりとギリギリで行けることになった22日の代々木のINFINITE。 公式ペンラがGetできなそうよ! ってことで
作ったよ、ウチワ… お友達の分もあわせて5個… ウヒョン、ホヤ、ごめんね。 久しぶりに徹夜しちゃったよ
 メンバーカラー合ってる?



キレッキレのダンスとパワフルなステージをご自宅で!
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