スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

とにかく生きてみようvs小料理屋「臨海」

2011年07月14日 | 自小説 ノンンフィクション小説

とにかく生きてみる。暑さ続きの毎日、深夜バイトの通勤の自転車は、正に汗だくの状態になる。そこから4度~5度の冷蔵庫での仕事である。初めはフレッシュエアーを浴びた体に、芯が一本通るようにシャキーとすれのだが、8時間の冷蔵庫の中の作業は、普段よりも体力を消耗させることが、判った。帰りも暑さの中を40分自転車を漕ぐ。家につく頃には、脱水状態になっている。体温調整機能が、暫くは正常に働かなくなり、食べる元気さえもなくし、ただ眠たくなる。ひたすら眠りたいという衝動がいつも頭をかすめる。

今、私は、人間としての最低の生活を、この深夜バイトを通じて営んでる。もしこの眠たさに、引きずりこまれて、アラームも無視して、起き上がらなければ・・52歳無職、貯金なし・・・借金多しが、たちまち人間としての生活を失うだろうと思う。その臨海線が、アラームの音に反応して、体を起き上がらせることにある。向こうとこっちの違いは、そのアラームに反応する行為ではなく、まともに生きるか、世捨て人として生かされるか・・ぐらいの差を秘めている。

ここか先は、もう帰ることの出来ない世界がある。絶対にしてはいけないという家訓を、無視した、人の保証人。判子をついた瞬間から臨海を越えたことなる。臨海の手前で留まることが出来ないのは、その臨海の先には、心を魅了する何かがあるのだろう。
保証人に版を付く・・・という向こうに、人によく思われること、感謝されること、良くなってもらった暁には、「この人のお陰・・」などと言われたいと思う邪心が、臨海を越えさせたのだろう。
留まること、またその先に立ち入ること、その臨海点が、私にははっきりと見えなかったし、今でも見えていないのだろう。

男と女の問題にも臨海点がある。この女性とHをすれば・・・あとに訪れるものは苦痛と苦労だけ、という話しである。
時にやくざ者の女とHする時がそうなんだろうか・・・
ただ、臨海点を自分ひとりで越えるとなれば・・それは世間でいう、「災難にあった・・」とか「悪い女に引っかかった・・」ということになるが、これ場合を二人で越えるという、非常に演歌的な臨海越えをした場合には、人間は強く進んでいけるものであるのか・・・と考える。それには色々な要素もあるのだが、幸せになろう・・などの甘い将来も見えぬ日々の中、日々ビクつきながら、二人で時を重ねるだけの毎日は、世間と孤立した二人だけの世界に浸り、愛を信じることだけが、その恐怖と孤独に慣れる方法だろう。

犯罪にも臨海点はいつも存在する。
人を殺すとか、殴る、傷つけるとかの勇気がない人間でも、ここにおいてあるものを盗ってしまう衝動がある。スパーの万引きなども「病気・・」や「好奇心・・」という理由で片付けられることもああるだろうが、やってはいけない世界への臨海点を越えてしまう事には、その事情がどうであれ、その先には厳しい社会的な制裁が待っている。


臨海点を越えることは・・・確信でも過失でも、もう戻ることが困難だと言うことだ。
だから人はその手前で、グート我慢したり、さらに気力を振り絞り、その先へ行かないように行かないように頑張るのだろう。
私の場合、ただ深夜作業が辛い>だから行きたくない>無断欠勤>パート首>
という図式をわかっていて、このまま仕事に往かなければ、今後人間としては生きて生けないという観念が存在している。その観念が、まだ燃えカスのようにある、子供らに対する責任感とで、なんとか越えずに済んでいる。

この臨海点に、心落ち着け、暖かい笑顔にふれれる場所があればいいと思う。
小料理屋「臨海」・・・・・・・・今から臨海を越える人や、ここで引き返す人が集まり、静かに飲める場所があればいい。無口なマスターと、色白の笑顔の素敵な女将さんと・・ちょっとしたオカズがあり、酒のあてにしても、白ご飯に味噌汁でも構わないのだ。
そして看板はださず、臨海を越えるかどうかを躊躇した人間だけが行ける店・・
そこには、越えろとも、引き返せ・・などの答えはない・・
でも何時間でも営業しているわけでない、看板の時間が着たら・・臨海越えをするか・・・かえるかをその時に決めなければならない。
臨海を越えればもう二度とこの味を口にすることは出来ないしこの女将の笑顔も見られない。


私は今晩も自転車を漕いで、バイトに向かう。
そしてその道脇に、小料理「臨海」という仄かな明るさの看板を見つける。
「仕事が終わったら・・よらせてもらうから・・」と呟いて、バイトに向かう。









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