スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

夏の日のえげつない日々「闇金業者」 PART2

2011年08月21日 | 自小説 ノンンフィクション小説

一度借りると、そこからが、闇金システム業者の本領発揮ということだ。
翌日から、どこで知ったのか、いろいろな闇金業者から電話が懸かってくる。ある業者の電話暗号は、神奈川だったり、ある業者は、福岡だったりして、日本全国に存在するように思われる。
しかし、転送機能を使っているのではないかという懸念を持つが、書留の住所は私書箱留になっているものもあれば、実際に地方の闇金業者に送るようになっている。

姉さんは「いよいよここからが本番と言う・・・」。一日五六件懸かってくる闇金業者の電話を一覧表にすること。そしてどこの業者にどれだけ借りて、その返済をどの業者からするのかを・・計画的に、こなしていくことである。一度借りた業差は、返済共にその枠をアップさせてくる。
会社の資金繰りの悪さも、既に闇金業者は知っている。それも此方の姉さんを中心とした、特別チームも知っているのだ。
ただ、闇金業者グループも数グループに分かれている。電話番号だけが一人歩きして、借財の情報を全く持っていないグループもある。そんなグループには、また一からの話をして、融資枠を取ることにする。
「うちわ手形で貸すから・・・」という業者。しかし振込みではなく、直接渡すのがうちのルールでしてと言うと、姉さんは、「少々お持ち下さい・・」と言って、「キタムラちゃん・・セブンさん来るで・・・」と言う。既に事務所の主だった備品は、業者に引き取られているのだが、「そこを何とかして・・体裁をつくらなあかん」と言う。早速どっかの若い衆が、簡単な応接セットを持ってきた。
アイスコーヒのセットも用意され、姉さんもちょっと事務員らしくラフな服装から、昔は綺麗な人だったのだと証明するように、落ち着いたスーツを着た。

案外と思える若い男がやってきた。私は一番奥の机で仕事をしている様にふるまっていた。
「社長・・・セブンさんがお越しです・・」といかにも事務員のような口ぶりで対応している。
「はい・・・今行きます・・」などと少々演技しながら、俄かに若い衆が持ってきた応接セットに、闇金の若い男を案内して、私はその前に座った。
「さっそくですが・・・おたくは手形等かなり出回っていますよね・・」と説明し始めた。
「当所100万の融資枠でしたが、それは出来ませんが、70万なら融通できます・・」と言う。
「100万でっか・・」といかにも大阪弁で場慣れた雰囲気話す。
姉さんは、アイスコーヒーをお盆に載せて、応接セットの低いテーブルに置いた。
ミルクとシロップも忘れず、完璧なこの場の接客である。
アイスコーヒーを置いたあと、私の横に立ち、「社長・・・70万あれば十分、手形の決済は出来ます・・」と言う。「●●からの入金も足したら・・25日の分はOKです」と打ち合わせもないアドリブで話す。「そしたら・・70万で結構です。」と私が言う。
その若い闇金の男は、鞄から70万を取り出し、テーブルの上におく。
私は、自分の振り出しの手形が、またもこうして闇金業者に渡るのを、心細く、この後に何が起こるのかが、全く想像できないまま、姉さんが、事務机のチェッカーで小気味良い電子音を出して、70万の金額を手形に打っている。手形と会社の実印と印鑑の朱肉と、ティッシュを持ってきた。「社長これで・・・印鑑をお願いいたします」と出来る経理事務員を演じる。
私は・・今の景気から、闇金業界のことなどを話しながら・・早くかえってくれと思っていた。
借りた70万は、前に借りた闇金の返済に充てる。金利がついている分、日が経つにつれ、借り入れを多くしなければ、到底この方法は廻らない。だから少しづつ闇金業者のリストも増えていっている。違うグループの闇金業者では、既に断りを入れだしたところも現れだした。

姉さんは・・ことの大きさも、自分の度量と反比例して、まったく意に介さず、「キタムラちゃん、お昼出前取ろか・・・」と言って、いつものうどん定食を奢ってくれる。
銀行が閉まる3持までが勝負であり・・3時を過ぎると、闇金業者からの電話がぴったとなくなる。姉さんはその後、店舗型の手形融通の街金融に行くと言う。
大阪南のとあるビルの7階に行く。
表向きは物販のような体裁を装っているが、紛れも無くそれは街金であった。
私は・・35万の買い物をその街金的な物販会社でしたことで、その支払い代金を手形で払うことにする。そしてその商品を28万で引き取るというようなシステムになっていた。
「どの道・・何処かでこの会社を潰さなあかんから・・・それまで持ちこたえるように、闇金のお金を廻していかなな・・・」と姉さんは言う。
最終的には、パンクするという、その時点でどれくらい借りた現金が、手元に残るかが勝負である。
リストには既に30社くらいの闇金業者のリストと、1ヶ月先までの、超グレーな資金繰りが書かれていた。私は近所の郵便局員にも顔を覚えられるほど・・毎日郵便局に通ったのだ。

つづく

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