ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0のデータ、民間提供へ 国交省

2018年08月16日 | ITS
ETC2.0は走行履歴を国のサーバーにアップリンクする仕組みになっている。その目的は車両の実際の走行データを様々な政策に活用しようというものだ。もちろんこれは個人情報なので個人は特定されない。これだけ聞けばなるほどと思うだろうが、実際はそうしたデータ収集・分析はすでに民間が先んじている。国として官製データがほしかった、ということだろうか。

ETC2.0についてはこのブログで散々かいているが、ざっくり言えば消費者にメリットなく、データ通信ポスト設置にカネがかかり、しかも消費者にとって高い買い物となるので補助金までつけてるというはっきり言って厄介ものでしかない交通行政施策なのだが、唯一の官にとってのメリットはこの交通情報データなのだ。

ではそのデータは一体何に活用されているのか?これについては具体的にあまり聞かない。唯一、最近鎌倉でETC2.0を活用した交通状況の調査が実施されたが、その成果として「観光地周辺は休日には渋滞する」という大発見がもたらされた模様だ。(笑

ということからか、国交省はこのデータを民間に開放することにした。2018.8.16産経ビズ
おそらくこれは巨額の費用をかけて進めてきた施策なのにそのデータが使われていないのではないか、という批判をかわすためのものだろう。

国交省はETC2.0データを活用した新たなサービス提案の募集を行い、有識者委員会において評価を実施し、実用化にあたっての制度的・技術的課題を検討した上で、実験・実装を進める、としている。
国交省報道発表資料リンク

まあ、巨額の費用(高速道路のポスト設置だけでも250億円)をかけて集めたデータを活用しないのは勿体ないのでこれ自体は批判しないが、問題はETC2.0のデータってあんまり使い勝手が良くないということ。路車間通信だから通信ポストを通過しない限りデータは収集できない。その通信ポストは今の所全国高速道路だけ。高速道路を使わない車のデータはあつまらないし、あまり高速道路に縁がない地域のデータはまるごと抜け落ちる。この弱点を補うためには一般道にもポストを設置する必要があり、一部ではされているが完全に整備するにはかなりの費用がかかる。
訂正。公開されていないが、2015年頃から一般道路に結構な数の読み取り専用路側機が設置されているという情報もある。これについては詳しく調査し別エントリー予定。
走り回る車の移動データを取得するために一番便利なものは誰がどう考えても移動体通信であり、路側ポストではない。

ということで、すでに民間のデータ、それも全国をカバーするデータが存在する中で、限定的にしかデータが収集できないETC2.0の走行データにどれほどの活用余地があるのか、が最大の疑問。
いまから予想しておくと、国交省との出来レース以外には残念ながらろくな公募はないだろう。

ETC2.0は典型的な「やり始めてしまったからやめられない」施策だ。特に250億円かけて整備したポストや、高くて売れないETC2.0車載器の処置等、やめられない事情はよく分かる。
だからといってこのまま進めてもたいした成果はでない。もう潔くドライバーにとって意味なく高価なETC2.0は中止したほうが良いのではないか。