ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

中国でiPhoneが不調な理由 上海での実感

2016年08月31日 | モバイル・ウエアラブル
iPhoneの売上げが不調、特に中国での失速が大きいという記事を最近よく目にする。
中国経済の失速が原因だとするような記事も目にするが、それは全くの的外れだとおもう。

中国は広い。沿岸部と内陸部は違う国だと思ったほうが良い。そしてiPhoneが売れているのは沿岸部。
全体のシェアではアンドロイドにはかなわないが、沿岸部だけのシェアをとればAppleのシェアはかなり高い。

沿岸部の中国人がiPhoneを買う理由は見栄。iPhoneはすでに大いに普及しているので、持っていても見栄が張れるということではない。逆に、いっぱしの人間なら安っぽいアンドロイド携帯なんか恥ずかしいだろ、という感じ。

最近売上げが落ちている理由はただ一つ。見た目が違う新製品がでないから。
上海の地下鉄で観察するとわかるが、4を使っている人はいない。5ですら少ない。周りを見渡せばみな6系。
旧モデルは中古となり内陸部へ流れていく。

このような状況でSEなんかが売れるわけもなく、見た目がおなじだから6から6sに買い替える人も少ない。
もし7の見た目が6と変わらないのであれば、今後もかなり苦戦するだろう。
見た目が変わらないならバックパネルに大きく「7」と刻印するべきだ(笑

もう一つの理由はローカルメーカーの進歩。
私が赴任した2012年当時、華為のスマホを買おうとは全く思わなかった。しかし今は違う。華為は性能も品質もiPhoneに全くひけをとらない。
6plusと同じような画面サイズで性能・品質もよく価格が半額ならこれは考える。華為以外にもOPPO、酷派、楽視といったメーカーがかなりいいものを出している。小米は低価格品に振って「学生用」のイメージがついてしまい、よく壊れるという風評もたって失速しているが、これらのメーカーの進化の速さには驚かさせる。

ローカルスマホは安いから売れている、というのは全くの誤解で、良いから売れている。
そもそもローカルブランドの携帯は中国消費者の間で「安物」「貧乏人用」イメージがあったのだが、最近はそれも変わってきている。華為等上位メーカーの上位機種であれば持っていて恥ずかしいということもない。

一般に消費者は成熟してくるにつれて見栄商品から実利商品にシフトする。まだまだiPhoneブランド信仰が強い中国だが、今後変わっていくだろう。

高速道路大口割引継続、ETC2.0限定の闇

2016年08月31日 | ITS
高速道路の各種割引はリーマンショック以降、政権交代や大震災があり複雑に推移してきたが基本的にはすべて近いうちにその期限を迎える。
これらには経済対策という名分があったものの、実態としてETCの普及に効果があったことは間違いない。ETC普及という意味ではその役割を終えたわけだが、だからといって割引が常態化している中、すぐやめるわけにはいかないし経済状況も決して好転はしていない。

一方で250億円だかを使って路側機を1600基も整備したETC2.0の普及はさっぱりだ。
よし、割引は継続するけど対象をETC2.0だけにして普及促進しよう、というアイデアが出てくることは子供でも分かる。

しかし、一般の乗用車ユーザーがわざわざお金を払って今でも使えるETCを2.0に買い替えるわけがないし、そうでなければ割り引かないと言い張れば批判が殺到し、逆に2.0の失敗-無駄使いをさらけ出すことになってしまう。だからETC割引はなんだかんだと継続することになるだろう。

そこで目を付けられたのが大口ユーザー。物流円滑化などの大義名分がある。

大口割引はその内容が複雑なので詳しくは言及しないが、2014に経済対策としてETC装着車の最大割引が50%となり、それの期限が今年4月に来たのだが「ETC2.0 装着車に限り最大50%を2017年4月まで継続、通常ETCは最大40%」にすることを決めた。
しかしこれについても当然ながら運輸業界からの反発があり、経過措置として通常ETCでも今年16年の9月末までは割引継続としている。(多分、9月末になっても実施は無理だろう)

国交省や道路会社のWEBサイトを見ても、なぜ2.0に対して割引優遇をするかの説明がない。あっさりと「物流コストの安定化や物流の円滑化のため」という形容詞がついているがその実態は全く不明。これが事実なら物流業者は喜んでETC2.0に買い替えているだろう。しかも今年の4月から大口ユーザー対象(45万台)の買い替え10000円助成キャンペーンもしている。

これでも抵抗されるということは、いかにETC2.0が運送業者にとって「必要ない」ものであるかということだろう。

ETC2.0を装着することで従来より正確なリアルタイム渋滞情報を入手できる、というのがうたい文句だが、VICSやGoogleマップの情報で十分なのだろう。また物流管理サービスにも使えるといって推進しているようだが、社会実験が始まったばかり。これとて通信を使ったシステムが既に沢山存在しており、ETC2.0でなければできないことは一つもない。

それでも国交省がETC2.0の普及促進をあきらめない理由はなんなのだろうか?
国として交通のビッグデータを取りたいというのが一つあるだろうが、そんなものはもう世の中にいくらでもある。
ドカンとぶち上げたITS政策のなかで残ったのはこれだけ。これがぽしゃったら何も残らない。だらだら続けている限り失敗の烙印が押されることはない、ということなのだろうか。

しかしETC2.0はこの先続けてもこれまでの投資に見合う社会的効果が出るとはとても思えない。
潔く失敗を認め、お金をかけて無理やり普及を進めるのはもうやめにしたらどうか。
投資はサンクコストと割り切ってきっぱり清算したほうが良い。