ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

大阪の夏がはじける

2009-07-28 02:57:01 | その他の日本の音楽

 ”踊れ大阪総おどり”by 月乃家小菊(助演井筒家小石丸)

 NHK総合テレビで深夜、午前3時とかに時々やっている「映像スケッチ」とか言ったかな、映像詩のシリーズが好きだ。同じフィルム作品が何度も放映されるのが普通で、なんだか扱いは本放送が始まる前の埋草みたいなんだが、時の流れからひととき抜け出したみたいな独特の安らぎがあり、そうそうバカにしたものではない。

 このシリーズのうちに”夏の大阪”をテーマにしたものがある。まあ、定番の大阪の風景を映して行くのだが、その画像処理にちょっとした工夫があり、気に入っていた。何と表現したら良いのか、うだるような夏の陽が照りつける通りの上にされた打ち水、その上に立ち上がる仄かな陽炎の中に揺らめき、幻想めいた姿で現われる街の姿。そんなタッチの画像が新鮮だったのだ。

 よくあるコテコテ表現による大阪とはまるで違う、白日夢の中みたいな不確かな街の様子が面白く、また、使われているBGMも夏というには叙情的なものが多くて、画像の淡い印象と相まって、なんだか切ない真夏の一齣となっていた。あれは好きな作品だったな。最近は放映されなくなってしまったが、又見る機会があればと願っている。

 ”踊れ大阪総おどり”は、今年、”OSAKA元気!レコーズ”なるインディーズから出された江州音頭のシングルである。音頭をとる月乃家小菊はこれがデビュー作のようだが、若い女の子らしいフレッシュで愛嬌ある歌唱(もちろん、実力もある)が痛快で、なかなか好ましい出来上がりのダンスミュージックになっている。

 もはやこの種の音頭ものにおける、三味線と和太鼓にエレキギターやベースが合流する形の演奏形態は、異文化混交などと騒ぎ立てるほどもないほど馴染んだものになっているが、ここでも軽快でイマジネーションに溢れるリズムを打ち出し、聴くものの血を騒がせずにはおかない。

 歌い出しの”暮れそで暮れない浪速の空は”の一節は、夏の夕暮れを待ちかねる音頭と盆踊り好きな大阪っ子の、もう櫓が待ちきれなくてウズウズする気持ちが伝わって来るようだ。
 音頭をはらんで息付く現代都会・大阪が、あくまでも明るくポップな都会的音頭によって描き出されて行く。音頭の、この身のこなしの軽さが良い。ポコポコと弾むカラーボールのようにカラフルに。

 うん、気に入ったね。とりあえず、月乃家小菊ファンの名乗りを挙げておく。このノリのそのままで、今度はアルバムを!と大いに期待します。




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