ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

2008年度ベストアルバム10選

2008-12-27 04:03:36 | 年間ベストCD10選


”DHARMA FLOWER(花香飄来時)” by Yangjin Lamu


1) DHARMA FLOWER by Yangjin Lamu (Tibet)
2) NAPULITANATA by Eddy Napoli (Italy)
3) ABIDAT R'MA SORBA (Morocco)
4) YIN HTEL KA POE by Poe Ei San (Myanma)
5) ENTA MEEN by Dana (Lebanon)
6) Про лето by Бьянка(Russia)
7) 海風海涌海茫茫 by 張美玲 (Malaysia)
8) SHAKE AWAY/OJO DE CULEBRA by Lila Downs (USA-Mexico)
9) 新疆名歌 by 黒鴨子 (china-Shinjang Uyghur )
10) LAGOS STORI PLENTI -Urban Sounds From Nigeria (Nigeria)

 さて、今年も年末恒例の年間ベスト10を、という事で。選考対象は2007~2008にかけて製作されたアルバムのうちから。制作年代のはっきりしないものは、こちらの都合で勝手に解釈させていただいた。

 1)チベットの女性シンガー・ソングライターが、同じ敬虔なる仏教徒の国のタイへ出かけて、現地の民俗音楽楽団をバックに吹き込んだ仏教ポップスの傑作。まことありがたきは御仏の織りなす人との縁と申すべきか。
 プロモーション・ビデオの中で、南国の陽の下、タイの寺院の黄金の仏像に向かい、深々と頭を垂れて合掌するYangjinの姿が印象的だった。
 彼女の書く、シンプルを通り越してプリミティヴとも言いたい蒼古のイメージ溢れる楽曲が、タイの民族楽器群の神秘な響きと絶妙のハーモニーを奏で、忘れられない一作となった。

 2)南イタリアの民族派シンガーがナポリの大衆音楽100年の歴史に挑んだ快作。と言っても大げさな芸術作品ではなく、あくまでも人懐こい暖かい手触りが魅力だ。ラストの”マリア・マリ”の、まさに気のおけないコーラスの楽しさには、南部イタリアの太陽の輝きを一杯含んだ果実を一かじり、みたいな幸福感がある。

 3)2008年も音楽的に最注目ポイントは、変わらず北アフリカはベルベル人の音楽だった。ここで展開されているのは狩りの際、獲物を追い立てるための音楽として発達したものだそうな。
 その歌声の鋭い響きと力強いリズムの凶暴な爆走には、こんなに生命力に溢れた音楽がまだこの地球に生き残っていたのかと驚かされる。

 4)ともかく奇々怪々なる構造を誇るミャンマーの大衆音楽なのだが、異文化に育った者たる我々に理解可能か否か、なんて逡巡はすっ飛ばして、理屈抜きにその楽しさの中に引きずり込んでくれたポーイーセンの諸作品だった。こいつはその最新作。さて次回はどんなカラフルな夢を見せてくれるか。

 5)レバノンのお色気アイドルポップス。堅苦しい一面もあるアラブポップスの殻を、その軽薄なフットワークで蹴り破ってくれた。

 6)”夏について”by ビヤンカ。”ロシア民謡R&B”がトレードマークの彼女だったが、デビュー作に続くこのアルバムでは、土俗ファンク風ロシア民謡、みたいな独特の境地を開き、そいつは相当に刺激的な代物だったのだ。

 7)弾けるエレキギターの響きと、どすこいパワフルな張美玲の歌声。チャチャチャのリズムに乗ってうねるド演歌のコブシ。
 東南アジアの華人ポップスは相変らず元気だ。その雑食性のいかがわしい響きは、南国の中華街の猥雑なざわめきを伝えて来る。今回はそれに加えて、南の海の潮の香りも。

 8)2008年、一番驚かされたのは、この盤だったかも知れない。どちらかと言えば文芸の薫り高く、メキシコの土俗と今日を生きる己の感性との間で引き裂かれた自我を掘り下げる作業をして来たリラ・ダウンズが、今作、思い切りポップにはじけてみせたのだから。

 9)中国の人気女性コーラスグループが、新疆自治区のウイグル民族の民歌ばかりを取り上げたアルバム。
 ともかくウイグル民族がその内に、かくも可憐な美しいメロディを持っていることに感嘆させられ、そして次には、このような作品集をウイグル人自身の歌声で聞けるアルバムが存在しない事実と、その裏に存在するその理由を思い、複雑な気分に。
 中国政府に死産させられた東トルキスタン共和国の幻の独立記念日には、このアルバムの歌の数々を思い起こそう。

 10)アフリカ一騒々しい都会ではないかと思うナイジェリアの首都ラゴスの、ストリート・ミュージック集。かの喧騒の街の今日を伝える。
 ここで聴かれる、アフリカ風に変形してしまったラップやらヒップホップからはいつか、新しい何かが芽を吹くのだろうか。かってアフリカに先祖がえりをしたアフロ・キューバン系音楽が、新しいアフリカン・ポップスを発生させる種子となったように。


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7 コメント

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こちらこそ感謝です。 (マリーナ号)
2009-01-25 15:29:20
いらっしゃいませ、五合さん。
私のベスト選を参考にしていただき、恐縮やらなんやらで冷や汗ですけど、お楽しみいただけたようで一安心です。
ほんとに世界にはまだまだ面白い音楽が溢れかえってますね。それらすべてを聞いて楽しむのは、まあ、手に入れるのも大変、資料も見つからず、いやそれ以前にオカネの面だけ考えても頭が痛いですけど、おっしゃるとおり、これも楽しみの一つと考えてゆきましょう。
これからもよろしく!
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感謝です (五合)
2009-01-25 00:08:25
ここを見て3、8、10と買ってみましたが、リラ・ダウンズには驚きました。素晴らしいアルバム。好みど真ん中です。
世界にはまだまだ素晴らしい音楽家がいて素晴らしい音楽があるんだなあと何度も聴き返しています。マリーナ号さんの成果の上澄みをかすめ取るような後ろめたさも感じつつですが。

オススメをもっと買いたい/聴きたいのですが、アマゾンじゃ出てこないのも多くて苦戦してます。まあこれも楽しみの内ですね……。また寄らせていただきます!
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へっぽこの世紀? (マリーナ号)
2008-12-30 04:59:56
kisaraさんへ
「へっぽこ」に惹かれます!来年のキイワードは、へっぽこかも知れない(笑)
それにしても、”他民族の音楽を歌ってしまう”ってのは何なんでしょうね?それも、中国人が彼らの征服下にあるウイグルの人々の音楽を取り上げるというのは?微妙なものがあると思うのですが。
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Unknown (kisara)
2008-12-28 12:39:17
レバノンのポップスが堅苦しいと思ったことは一度も無いですけど・・・湾岸の方がよっぽど堅苦しいと思います。
ダナ嬢の曲は変な奇声を発していて笑いました! わたしも来年ブログで取り上げたいと思います。
レバノンの歌手は、「へっぽこなイロモノ」と「実力派」にはっきりと二極化してますよね。イロモノは若手しかいないですけど。 (笑)

ウイグル音楽を歌う中国人歌手が刀郎以外にもいたと言うのをここで初めて知りました。
ちなみに、ウイグル人歌手の音楽は、
Arken http://www.yaogun.com/artist/minzu/arken.htm
Askar http://www.yaogun.com/artist/askar/askar.htm しか聴いたことないです・・・。
女性アイドルでは、Shahrizoda と言うグループがいるそうです。
You Tube に動画があると思うので、興味がありましたら見てみてください。
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来る年も、どうかひとつ! (マリーナ号)
2008-12-28 02:55:25
NAKAさん、どうも~。来年もよろしくお願いいたします。
しかしアレですねえ、考えてみればNAKAさんとか私って、ワールドもののファンの中でも独自の境地といいますか、相当に自分勝手な方向へ行ってますねえ(笑)
なんか経済状況はますます厳しくなって行くようですが、負けずに勝手な事をやって行きましょう。

ころんさん、どうも~。
ころんさんの、ジャンルをディープに掘り下げた人でなければ見つけ得ない世界、気になるのですが、なかなか思うにまかせず、もどかしい限りです。特に”へっぽこ”関係。気になるな~。
まあ、気になる音楽をすべて聴いていったらとてもお金が足りず、そんな時間もない、というあたりで諦めるよりないのでありますが。
来年もよろしく~!
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Unknown (ころん)
2008-12-27 20:05:51
お、今年のベストですか。色々と幅広く聞かれてますね。一枚も持っていませんが、1、4、7あたりは特に気になりますね。

私もマリーナ号さんみたいに幅広く色々と聞きたいですが、東南アジア・ジャンキーであるが故に、なかなかそうもいきません。困ったものであります。
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Unknown (NAKA)
2008-12-27 06:44:35
マリーナ号さん、おはようございます。
最近思っているのですが、マリーナ号さんを筆頭に、音楽ブログをされている方の、年間ベストアルバム(各一曲くらいを入れた)の、編集CDものが欲しいですね。
チベット、マレーシア華人、ウイグル、聴いて見たいです。ロシア、ナポリも。(アフリカやアラブは、ちょっと興味が遠のいちゃってます。来年は手持ち金の都合上、さらに聴く範囲が狭まりそうです。)
リラ・ダウンズ、まだ過去作聴けてませんが、次作も楽しみです。

良いお年をお迎え下さい。
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