好きな絵本のどれもが、娘の成長過程で、一緒に読んできた本ですが、
久しぶりに新しい本に出会いました。
はっぴぃさん 荒井良二作 偕成社
荒井良二さんがリンドグレーン記念文学賞を受賞したことで、書店フェアが
開催されていて、それで最近知ったのです。
明るい黄色に、手書きの黒文字でタイトルがあって、そこにはかわいい鳩の絵があったのに、
見開きは一転して、シルバーメタリックな紙に、戦車や嵐の絵が鉛筆で描かれています。
まずはそこに驚かされ、驚いた気持ちのまま、ページを繰ると‥
はやい あさです
ぼくは はっぴぃさんに あいにいきます
でも はっぴぃさんには
まだ あったことがありません
と突然男の子は言いながら(実際には台詞にはなっていまぜんが)、朝もやが
立ち込めている、いなかみちを歩いていきます。
次のページでは、今度は帽子に花を飾った女の子が、同じように言いながら、
足早に通り過ぎて行きます。遠くに見える山の上の大きな石の上にはっぴぃさんは
ときどき くるのだそうです 山のふもとには倒れかけた電柱や戦車が
描かれています。
どう考えても、平和な風景ではありません。何か一大事が起こっている場所なんです。
二人の子供も、その一大事のためにはっぴっさんに会いにゆくところなのでは?と思いました。
山道に入ったあたりで、男の子と女の子は出会い、どこへ行くのだろう?と
互いに意識します。そのあたりからの、絵の描き方がとてもすごいと思いました。
それは作者の視点なのでしょうか? それとも山へ降り立つという「はっぴっさん」
の視点なのでしょうか?手前に大きく、枝にとまっている緑の鳥が描かれ、その鳥が、
山道を行く二人を見てるんです。
山のてっぺんで雨に降られたときも、雨宿りをする二人を、遠いところから見下ろす
誰かがいて、その誰かのあたりでは(ページの左側)、もう陽が射しているのがわかります。
はっぴぃさん はっぴぃさん
ぼくのねがいを きいてください はっぴぃさん
はっぴぃさん はっぴぃさん
わたしの ねがいを きいてください はっぴぃさん
ふたりは おおきな たいように むかって
たくさん ねがいを いいました
たくさん ねがいを いいました
何を、誰に向かって言っているんだかわからないけど、漠然と心の中で祈っている時があります。
それは、自分や自分の家族が健康であることに対してだったり、優しい言葉が染入った時だったり。
そのなんだかわからない祈りの気持ちが、この本の最後のページで、二人が山を降りて
いくところから伝わってきて、沈みかけた太陽に、この二人が住む場所にも、平和が
訪れますようにと祈りながら本を閉じました。
★おまけ1★
いつか、ずっと昔 江国香織作 荒井良二絵 も大変おすすめです。
★おまけ2★
荒井良二さん受賞記念原画展が7月6日から18日まで、東京・護国寺の講談社Kスクエア
というところで開かれるそうです。ぜひ、出かけてこようと思っています。