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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

続きを教えて

2011-02-09 14:50:10 | 好きな本
卒業してから一度も会ったことがない人とか、喧嘩別れしたままの人とか、
いつかまた会えるよね、と思いながらも、その「いつか」がいつやってくるのか
わからない人とか‥ここまでの人生の間に、「つづき」が知りたい人はたくさんいます。

同じように、1冊の本を読み終え、作者が出した結論や結末はあっても、
それだけじゃあもの足りなくて、もっともっと登場人物の「つづき」が知りたくなり
物語がどこまでもどこまでも続いてくれたらなあと思うこともしばしばです。

題名をみたときに、この本もそういう話なのかと思っていましたが、そうではなく、
童話や物語の中の人物が、自分の話を読んでくれていた子どもの「つづき」が
知りたくてたまらず、本の中から抜け出てくるという話なのでした。

つづきの図書館
     柏葉幸子 作  山本容子 絵

お話全体の主人公は、図書館司書の山神桃さん。児童書には珍しく(?)
40代でバツイチです。

ある時、ひとり暮らしの桃さんのところへ、小学6年まで住んでいた郷里の町から
手紙が届きます。桃さんのお父さんの姉である杏おばさんの具合が悪いという知らせです。

お見舞いだけのつもりで病院を訪ねたのに、おばさんの家に住むことになり
(そこは幼い時の自分の家でもあったのですが)、預けておいた履歴書のおかげで
図書館司書の仕事まで見つかり、桃さんは、引っ越してくることになったのでした。

そんな桃さんの前にー

 「すまんが。」
 と、書架のむこうで声がした。
 「はい。」
 桃さんは声のほうをむいた。姿は書架でみえない。
 「つづきが知りたくてたまらん。」
 えらそうな男の人の声だ。
   (中略)
 「本をさがすんですよね。」
 「いやいや。本をさがしてもらいたいのではない。青田早苗ちゃんの
  つづきが知りたいんじゃ。」

そうして、姿を現したのは、金色の王冠に、白いパンツだけの
「はだかの王様」だったのです。


厄介なことに巻き込まれてしまった桃さんですが、本からやってきた人たちと
暮らすようになり、朗らかにもなってきて、仲良しだった友達とも再会し、
ひとりぼっちではなくなりました。

本からやってきた人(動物)のお話は全部で4つあり、その途中で、桃さんが
誰か大切な人に宛てて書いた手紙が出てきます。
全部読み終わる頃に、その手紙がだれ宛のものであったのか、わかる
しくみになっていて、予想していなかったその展開に、私は最後、涙が
ぼろぼろこぼれました。

桃さんが、子どもたち全般に向ける視線は優しいなあと思って読み進めていましたが
こういうわけがあったんだ、としみじみしましたよ。


この話は、青い鳥文庫のサイトで連載されていたものが、1冊の本となったそうです。
今もサイトでお話は読めますが、この赤い表紙の、山本容子さんの挿絵が
あってこそというか、挿絵が物語をさらにおもしろくしてくれました。



コメント
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