報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼狩りからの依頼」

2023-06-13 16:14:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日17時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 年末年の瀬迫る中、私と高橋は仕事納めの準備をしていた。
 民間もそうなのだが、どちらかというと官公庁相手の仕事をしている私達も、29日から年末休みとなる予定だ。

 愛原「今年も色々あったなぁ……」
 高橋「そうっスね」
 愛原「お前は色々あり過ぎだ」
 高橋「サーセンw」

 しかし、最後の最後に仕事の依頼が入るものである。
 事務所の営業時間は18時までだ。
 つまり、今はその1時間前となる。

 愛原「斉藤早苗も死んじゃったし、日本アンブレラ関係の仕事はだいたいこれで終わりじゃないか?」
 高橋「そうですかね?」
 愛原「あとはリサが暴走しないように大学まで面倒看て、それから善場主任の所のデイライトさんに送り込めば、晴れて契約は満了だ。大金が手に入るぞ」
 高橋「本当に探偵の仕事って色々あるんスね」
 愛原「本来はもっと地味なものだが、霧生市に行ってから一変したな」

 マンガやアニメのように、私立探偵が密室殺人事件を解決することは、現実ではまず無い。
 だが、霧生市ではやむを得ない事情があったにせよ、(偶然に偶然が重なったとはいえ)私が事件を解決するハメになってしまった。
 その霧生市で一泊してから帰京しようと思っていた矢先、バイオハザードに巻き込まれてしまったというわけだ。
 それから、私や高橋の探偵人生は大きく変わるものとなった。

〔5階です。下に参ります〕

 愛原「ん?」

 事務所の外にあるエレベーターが、5階にやってきた。
 即ち、誰かが下から来たということ。
 誰だろう?
 善場主任の場合、いつも必ず事前に連絡をくれる。
 しかし、今は無い。
 すぐに事務所入口のインターホンが鳴った。

 高橋「どちら様っスか?……って、あれ?」

 高橋が応対に出た。
 どうやら、高橋の知り合いらしい。

 栗原蓮華「愛原先生、こんばんは」

 カチャカチャと左足の義足の金属音を鳴らして、蓮華がやってきた。
 蓮華もまた霧生市出身で、祖父母宅に弟妹達といたところ、そこでバイオハザードに巻き込まれてしまい、祖父母はゾンビ化。
 弟妹達も、リサがいた日本アンブレラの研究所から脱走した日本版リサ・トレヴァー『1番』に食い殺されている。
 元々『鬼斬り』を生業とする家系だったが、今の日本版リサ・トレヴァー達が鬼に酷似した姿をしていることから、今では栗原家総出で『退治』の対象となっている。
 つまりは『2番』のリサも対象となっているはずだが、蓮華だけは一定の理解を示してくれている。

 愛原「ん、どうしたんだ?もう外は暗いぞ」

 蓮華自身も左足を『1番』に食いちぎられてしまった。
 本当なら食い殺されるはずだが、自衛隊(当時、まだBSAA日本地区本部は無く、日本国内におけるバイオハザード対応は自衛隊や在日米軍に委託されていた)が駆け付けたことで、殺されずに済んでいる。

 蓮華「実はお仕事の依頼なんです。よろしいでしょうか?」

 蓮華は学校の制服の上にコートとマフラーを着けていた。
 義足をあえて隠さないのは、鬼に対する復讐を忘れない為だという。

 愛原「クライアントなの?」
 蓮華「はい」
 愛原「あっ、じゃあ、応接室へ。高橋、お茶を……」
 高橋「は、ハイ。先生に依頼するたぁ、目が高ェが、しかし依頼料は安くねぇぞ?」
 愛原「こら、高橋」
 蓮華「もちろんです。依頼料は、家から出します」

 蓮華の家は表向き、剣道場を経営しているが、他にも土地をいくつか持っていることもあって、なかなかの金持ちだと聞いたことがある。
 もっと大金持ちだった絵恋の陰に隠れてしまった感はあるが……。
 私は蓮華を応接間に案内した。
 蓮華はマフラーを取り、コートを脱いだ。
 東京中央学園の緑色のダブルのブレザーが目立つ。
 身長は170cmと、私よりも高い。
 ソファに向かい合って座る。

 愛原「それで、今日はどんな依頼でしょうか?」
 蓮華「実はうちの実家、不動産業もやっているんです」
 愛原「蓮華さんの家は、結構あちこちに土地を持っているんだって?」
 蓮華「はい。江戸時代から続く家系なもので、色々やってきたもので……。鬼退治をした際に、鬼から分捕った土地とか……」
 愛原「シュールだなぁ。桃太郎みたいに、金銀財宝じゃないんだ」
 蓮華「まあ、桃太郎ではないですし、鬼の全てが財宝を持っているわけではないので。だいたいが土地とか酒とか人間の女とか、そんなところだったようです」
 愛原「人間と変わらんねw ……あ、いや、失礼。それで、栗原家が持つ不動産を、鬼に脅かされているという話かな?」
 蓮華「いえ。それくらいでしたら、私達で対処します。『鬼狩り』の家系ですから」
 愛原「それもそうか。すると……何だ?」
 蓮華「『鬼が棲む家』を調査してもらいたいのです。私達、実戦的な鬼退治のノウハウはありますし、索敵能力も備わっている自負はありますが、今回ばかりはよく分からなくて……。他の家族は反対していますが、私は、『鬼探しは鬼に探させろ』と思っています」
 愛原「鬼探しか。しかし、何の宛ても無い所を闇雲に探すわけにはいかないが……」
 蓮華「そこで、『鬼の棲む家』なんです」

 そう聞いて、私は山姥が棲むような山奥のポツンと一軒家みたいな所を想像した。

 愛原「そうか。で、どこの山奥にあるの?」
 蓮華「いえ、山奥じゃないです」
 愛原「えっ、違う?」
 蓮華「はい。むしろ、埼玉県さいたま市にありまして……」
 愛原「そんな所に『鬼の棲む家』が!?」
 蓮華「そうなんです」
 愛原「よくBSAAにバレなかったな?」
 蓮華「もしかしたら、リサとは違うタイプなのかもしれません。本当に、『鬼』ではないか。私達はそう思っています」
 愛原「……まあ、分かった。もうちょっと詳しい話を聞かせてくれる?」
 蓮華「はい」
 愛原「まさか、絵恋さんの家だったりしないよな?」
 蓮華「多分、違うと思います」

 私は蓮華から話を聞いた。
 そして、この依頼を受けることにしたのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「菊川到着後の行動」

2023-06-11 20:59:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日10時9分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→愛原のマンション]

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達を乗せた都営地下鉄の電車は、無事に菊川駅に到着した。

 愛原「やっと帰って来たな」
 リサ「先生。家に帰るまでが仕事だよ」
 愛原「ははっ!そうだったな」

 私達は改札階へ上がるエスカレーターへと向かった。
 その間に、短い発車メロディがホームに流れる。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 ホームドアと車両のドアが閉まった。
 外国の地下鉄ならそのまますぐに発車するところだが(そもそも外国の地下鉄って、案外ホームドアの普及率が低い)、都営地下鉄新宿線では車掌がその後で発車合図のブザーを運転席に鳴らしてからなので、発車まで数秒のブランクがある。
 ワンマン運転だとこのプロセスが無いので、早めに発車する。
 まだホームドアが無かった頃の都営大江戸線など、車両のドアが閉まったら、外国の地下鉄並みにすぐに発車したものだ。
 今はホームドアの閉扉確認をしてから発車するので、少しブランクがある。
 で、この菊川駅には、スカートを穿いている女性にはやや困ったことがある。

 リサ「フム」

 既に何度も利用しているリサは知っているのでスカートの裾を押さえているが、久しぶりに乗る絵恋は、スカートが強風でふわっと捲り上がった。
 幸いリサほど短いスカートではないので、中が見えるほどではなかったが。

 絵恋「きゃっ!……おんどりゃ!このスケベ電車、待たんかこらーっ!」
 リサ「え、エレン……?」
 愛原「だ、ダメだよ、絵恋さん。元とはいえ、御嬢様がそんな言葉遣いしたら……」
 絵恋「……あらぁ?愛原先生ったら、何の話ですかぁ?」

 絵恋は何事も無かったかのように、また御嬢様言葉に戻った。

 愛原「い、いや……何でもない」

 特に変な構造をしているわけではないのだが、他の地下鉄駅と比べても、菊川駅はどうも電車入線・発車時の風が強いような気がする。
 駅自体の構造よりは、トンネルの構造に問題があるのだろうか?
 とにかくエスカレーターを上がって、改札口を出る。

 愛原「先に荷物置いてからの方がいいな」
 リサ「そうする。私も着替えとか洗濯しないと……」
 愛原「高橋を一旦帰そうか。洗濯してもらって……」
 絵恋「わ、私がやります!」
 愛原「絵恋さんはお客さんなんだから、気を使わなくていいんだよ?」
 絵恋「いいえ!1週間ほどお世話になるんですから、それくらい当然です!」

 ここでリサは、ピンと来たという。

 リサ(自分の服とか下着とかを、男の兄ちゃんに洗われたくないんだな……)

 私は自分のスマホで、高橋のスマホに電話した。

 愛原「あー、もしもし。高橋か?いま事務所?あー、やっぱりお前達の方が早かったか。実はさ、俺達、いま菊川駅に着いたんだよ。でさ、ちょっと一旦、マンションに帰って荷物置いてくるから。……そう。で、何泊かしたもんだから、洗濯物が溜まっててさ。ちょっと、洗濯手伝ってくれないか?……ええっ!?」

 私は高橋が信じられない言葉を聞いた。

 リサ「何だって?」
 愛原「既にパールがマンションで留守番してるってよ」
 絵恋「ファッ!?」

 というわけで、マンションに帰ると……。

 パール「お帰りなさいませ、御嬢様方」

 メイド服に着替えているパールが、相変わらず氷のような瞳で微笑を浮かべながら出迎えた。
 メイド服は斉藤家で着ていたものよりも、もう少し扇情的なもの。
 恐らく昼間のメイドカフェか、或いは夜のメイドコス風俗店の制服だろう。
 斉藤家で着ていたメイド服と比べて、袖はノースリーブだし、スカートもロングスカートのように見えて、チャイナドレスのように深いスリットが入っている。

 パール「ただいま、お掃除を行っております」
 愛原「い、いいよ!別に、俺はキミをメイドとして雇ったわけじゃないし……!」
 パール「絵恋お嬢様がこちらのお宅で快適にお過ごし頂けるよう、メイドとしての勤めを行ってございます」
 愛原「えぇえ……」
 絵恋「で、でもちょうど良かったわ!パール、私の服を洗濯してくれない?リサさんのも」
 パール「かしこまりました。御嬢様」
 愛原「俺の洗濯物も溜まってるんだが……」
 パール「愛原先生とマサの洗濯物は、御嬢様方の洗濯が終わった後、させて頂きます」
 愛原「そ、そう」
 パール「まずは汚れ物をお出しください」
 愛原「わ、分かった」
 リサ「先生、わたしのくすねた使用済みパンツ返して?」
 絵恋「ええーっ!?」
 愛原「くすねてねーよ!!」
 リサ「あ、ゴメン。間違えた。エレン、お前が犯人だった」
 絵恋「ごめんなさーい!」
 パール「御嬢様のお荷物の中から、リサ様のショーツが出てきました」
 愛原「こんな、何の色気も無いナイキのパンツ盗んでも、しょうがないだろう?」
 絵恋「り、リサさんの使用済み下着が欲しくて……」
 リサ「これはスポブラとセットなんだから、パンツだけ取られても困るんだが?」
 絵恋「ごめんなさーい……」
 リサ「罰として愛原先生に、使用済みブルマを進呈すること!」
 絵恋「ヒイッ!それだけはーっ!」
 愛原「さりげなく俺を巻き込むんじゃねーよ!」
 パール「先生のお宅の留守番は、私にお任せください」
 愛原「そ、そうか?まあ、絵恋さんもここにいるわけだからな……」
 絵恋「そうです」
 愛原「じゃあリサ。俺は事務所に行くから、絵恋さんと仲良く遊べよ」
 リサ「遊ぶ前に……」
 愛原「ん?」
 リサ「冬休みの宿題、一気に片付ける」
 絵恋「さすがはリサさん!」
 愛原「そ、そうか。まあ、勉強熱心なのはいいことだ。とにかく、夕方には帰るから」
 パール「愛原先生」
 愛原「何だ?」
 パール「御夕食は何に致しましょう?」
 愛原「ええっ!?……えーと、確か……高橋のヤツ、今日はすき焼きにするとか言ってたぞ?食材の買い出し、昼過ぎに行くと言ってた」
 パール「かしこまりました。それでは、マサと心を込めてお作り致します」
 リサ「メイドさんメイドさん!」
 パール「何でございますか?」
 リサ「肉は特盛でね?!」

 リサはよだれを垂らしそうになりながら言った。

 パール「かしこまりました」

 これはきっと、夕食も賑やかになることだろう。
 ていうかパールのヤツ、居候する気か?
 いや……いっそのこと、引っ越しの手伝いをさせるのも手かな。
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“私立探偵 愛原学” 「帰りの旅」

2023-06-10 20:19:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日08時56分 天候:晴 東京都八王子市明神町 京王電鉄京王八王子駅→京王線7010電車1号車内]

 高橋とパールは予定通り、先にホテルをチェックアウトして行った。
 預けたバイクを取りに行く手間があるからだという。
 それでも2人のことだ。
 乗り換えが1回ある私達よりも先に到着するだろう。
 もし高橋が先に着くようなら、先に事務所を開けておくように伝えてある。

 リサ「何回かぶり」
 愛原「そうだな」

 朝ラッシュのピークが過ぎたばかりだからか、まだ駅構内はわさわさしている。
 そんな中、全席指定の“京王ライナー”は特別というわけだ。
 10両編成4ドアの電車だが、駅に停車中は各車両1つのドアしか開いていない。
 4/3閉とか言うんだっけ。
 私達は空いているドアから乗り込んだ。
 通勤電車として使用される場合、座席は横向きに設定されているが、“京王ライナー”の時は2人席が進行方向を向いている。
 また、停車中にオーケストラのBGMが車内に流れている。
 曲はオリジナルのものだ。
 で、私達の席は連結器横の3人席。
 ただの3人席ではなく、ちゃんと新幹線の3人席みたいな感じで1人ずつの席が並んでいる。
 もちろん、リクライニングはしないが。
 大きな荷物を持つ絵恋は、座席の横にそれを置いた。

〔ご案内致します。この電車は、全車指定席“京王ライナー”、新宿行きです。予め、座席指定券をお買い求めの上、指定された席をご利用ください。明大前以外の途中駅では、お降りになることができませんので、ご注意ください〕

 愛原「もう少しで発車だな」
 リサ「お兄ちゃん達より早く着けるかな?」
 愛原「いやあ、無理だろ。車ならともかく、バイクだからな。俺達は乗り換えもあるから、向こうの方が早いと思うよ」
 リサ「なるほど」

〔「お待たせ致しました。8時56分発、“京王ライナー”10号、新宿行き、まもなく発車致します」〕

 接近メロディーはオリジナルのものを使用していたが、発車ベルは普通の発車ベルである。
 それが鳴り終わると、すぐにドアが閉まった。
 最後尾に乗っているので、車掌が運転士に向けて合図するブザーの音が僅かに聞こえてくる。
 そして、エアーの抜ける音がして、電車はゆっくりと地下ホームを発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。京王をご利用くださいまして、ありがとうございます。“京王ライナー”、新宿行きです。明大前以外の停車駅では、お降りになれませんので、ご注意ください。……〕

 停車駅の案内をしないのは、全車指定席で、乗客は全員自分の降りる駅を知っているからというテイだからだろう。
 もちろん、私達も終点まで乗る。
 ホテルでもそうだが、“京王ライナー”でもWi-Fiのサービスがあり、リサのようなパケット通信量を気にしないといけない場合は重宝するようである。

 愛原「それにしても、斉藤早苗がいなくなって、引っ越しの手伝いがなぁ……」
 リサ「『魔王軍』召喚しようか?」
 愛原「女の子達に力仕事をさせるのは……」
 絵恋「要は体力に自信があるコを呼べばいいんですよね」
 リサ「まず、ここに1人いる」
 絵恋「え!?」
 リサ「だってエレン、空手有段者じゃない」
 絵恋「ま、まあ、そうだけど……」
 リサ「腕力にも自信があるでしょ?」
 絵恋「ま、まあね」
 リサ「それなら、力仕事よろしく」
 愛原「ガチの力仕事は、高橋やその仲間達に任せるよ」
 リサ「そうだった。で、帰ったら早速やるの?」
 愛原「事務所は仕事納めしてから、引っ越しの準備をしようと思ってるよ。まずは事務所の引っ越しから先だから」
 リサ「なるほど」
 愛原「その後で家の引っ越しね。だから、今のうちに準備をしておくんだ。要らない物は捨てる。要らなくはないんだけど、今すぐ使うものではない物は、先に段ボールに詰めておくとか」
 リサ「なるほど。分かった」
 絵恋「リサさんの荷物を纏めるのなら、私も手伝うね」
 リサ「うん、ありがとう」

 高橋のヤツ、もしかして、自分の荷物纏めをパールに手伝わせる気じゃないだろうな?
 まあ、人手は大いに越したことはないが……。

[同日09時40分 天候:晴 東京都新宿区西新宿 京王電鉄新宿駅→都営地下鉄新宿駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく新宿、新宿、終点です。都営新宿線、大江戸線、JR線、小田急線、丸ノ内線はお乗り換えです。出口は、左側です。京王をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私達を乗せた電車は、無事に京王新宿駅に到着した。
 始発駅が地下なら、終着駅も地下ホームである。
 笹塚駅に止まるようなら、そこで都営新宿線に乗り換えても良かったのだが、“京王ライナー”は止まらない。
 まあ、確実に座って都心に行けるのだから、それは大きい。
 電車は1番線に到着した。
 ぞろぞろと乗客が降りて行く。
 私達もそれに続いた。
 そして、エスカレーターに乗り、京王新線のホームに向かう。
 それは都営新宿線のホームとイコールである。
 今のところ、まだ高橋からのLINEは無い。
 車と違って、バイクだと走行中は一切スマホに触れられないからだろう。

 愛原「ん?」

 その時、高橋からLINEが来た。
 もう事務所に到着したのかと思いきや、今は首都高速4号線(新宿線)の代々木パーキングで休憩中だという。
 そこなら私達も休憩したことがある。
 急カーブの途中にあるパーキングで、入るのは楽だが、出るのは結構タイミングを見計らうのが難しい所とされる。
 元々は料金所か何かの跡地を活用したものだと聞いたことがある。
 どうやら高橋とパールは、ここで休憩しているようだ。
 案外、到着は同時くらいになるのかもしれないな。
 高橋達も、わざとそうやって時間を調整しているのかもしれない。

 リサ「そこのカツカレー、美味しかったんだよね」
 愛原「また車で行く機会があれば、立ち寄ってもらうさ」
 リサ「おー!」

 私達は京王新宿駅から、都営地下鉄新宿駅へと移動した。
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“愛原リサの日常” 「八王子の朝」

2023-06-10 14:58:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日07時00分 天候:晴 東京都八王子市明神町 R&Bホテル八王子]

 リサ「うう……」

 リサは悪夢に魘されて目が覚めた。
 と、同時にベッド脇に仕掛けられたタイマーがアラームを鳴らす。

 絵恋「うーん……」

 絵恋が目を覚まして、アラームを止めた。

 絵恋「リサさん、おはよう……」
 リサ「はぁっ!……はぁ……はぁ……」

 リサは第1形態に戻っており、汗をかいていた。

 絵恋「どうしたの、リサさん?大丈夫?」
 リサ「ああ……大丈夫……。変な夢見た……」
 絵恋「そうなの?どんな夢?」
 リサ「地獄に堕ちた白井やサナエに、『早くオマエもこっちに来い』って引きずり込まれる夢……」
 絵恋「まあ、怖い!やっぱり悪い人は地獄に堕ちるのね!」
 リサ「わたしもそっちに行くんだろうか……」
 絵恋「リサさんは人を食べたり殺したりしてないから大丈夫よ!」
 リサ「どうかな……」

 地獄の底から恨みの声を上げていたのは、白井と早苗だけではなかった。
 東京中央学園ブルマ復活運動の最中、最も反対派であった当時の生徒会長(女子)を自殺に追いやったことで、そこからも恨み節を受けた。

 リサ「ん?」

 その時、リサはふと思った。

 リサ(生徒会長は別に悪人ではないのに、どうして地獄に???)
 絵恋「リサさん、先にシャワー浴びたら?汗流さないと風邪轢いちゃうよ?」
 リサ「鬼は風邪など引かないんだけど……。まあ、ベタベタして気持ち悪いからそうする」
 絵恋「その方がいいよ。私は後ででいいから」
 リサ「うん、分かった。ありがとう」

 リサはこの場で、ホテル備え付けのナイトウェアを脱いだ。

 絵恋「も、萌えぇぇぇぇっ!」
 リサ「なに、悶絶してんだよ」

 ついでに換えの下着を用意する。

 絵恋「はぁぁぁっ!リサさんの汗の匂い……
 リサ「オ○ニーなら、わたしがシャワーから出る前に済ませておきなよ?」

 リサはそう言うと、バスルームに入った。

 リサ「それにしても……」

 リサは汗で濡れたスポプラとショーツを脱いだ。
 換えの下着は、普通の4/3カップの白ブラと黒いアウトゴムの付いた白いショーツである。
 シャワーで汗を流す間、考え事をする。

 リサ(もしも白井がサナエだったとして、もうサナエは死んだんだから、わたしが寝てる間にラスボス戦終了してない?それとも、『あれは偽者でしたw』とか、エキストラボスが発生するなんて展開でもある?)

[同日7時45分 天候:晴 同ホテル・朝食会場]

 リサ「パンのいい匂い……」

 朝食会場に行くと、焼き立てパンの香ばしい匂いがした。
 それはいいのだが……。

 リサ「……あれ?おかずは?」
 愛原「ああ。ここのホテルは、パンとゆで卵が食べ放題、ドリンクとスープが飲み放題だ」
 リサ「マジか……」

 リサはトレイに全種類のパンと、ゆで卵を数個、そしてスープを全種類コンプするモードに入った。

 愛原「他の客の分まで、食い尽くすなよ?」
 リサ「分かってる」

 焼き立てなのでまだ温かいのと、カリカリとした触感があったりする。
 リサはゆで卵については、殻ごと食べ……るわけでもなく、さすがにそれは殻を向いて食べる。

 愛原「相変わらず、凄ェ食いっぷりだなぁ……」
 高橋「マジっスねぇ……」
 愛原「今日の夜からは、食材を大量に用意しておいた方がいいな」
 高橋「うっス」
 パール「御嬢様には何をお持ち致しましょうか?」
 絵恋「い、いいのよ。もうあなたは、斉藤家のメイドじゃないんだから……」
 パール「御主人様との契約は、まだ切れておりません」
 絵恋「そ、そうだったわ」
 愛原「どういうことだ?」
 絵恋「私の父、うちのメイド達とは年俸制で契約してるんです」
 愛原「そうなのか。てことは、1年契約だな」
 絵恋「基本的には年単位の契約なんですが、パールの場合、10年契約なんです」
 愛原「そ、そうなのか?で、あと契約は何年残ってるんだ?」
 パール「あと5年になります」
 絵恋「ちょうど私が、大学を卒業する頃ですね。大学生になって、私が1人暮らしをしても、私の面倒が看れるようにって……」
 愛原「随分先を見据えている割には、斉藤社長も短絡的なことをしたな……」

 愛原は首を傾げた。
 本当に斉藤社長は悪人なのか?と。
 日本アンブレラに手を貸していたことがバレて、警察から追われる身となり、現在はロシアに逃亡しているが……。
 最終的には中東辺りに逃走すると見られている。

 愛原「その斉藤社長は、国外逃亡中だぞ?報酬は?」
 パール「既に前金で払って頂いております」
 愛原「そうなの!?」

 10年分の報酬を前金で!?

 パール「少年院を出た後で、私も色々とお金が必要だったので、御主人様には感謝しております」

 パールの場合は殺人罪。
 敵対組織の暴走族幹部を殺した罪。
 但し、当時未成年であった為、少年法が適用されて死刑を免れている。
 さすがに色々と金を使って、足りなくなったか、今は生活費稼ぎの為に昼間はS系メイドカフェ、夜はメイドSM風俗店で働いているというわけだ。
 住居については明らかにされていないが、風俗店の寮に住んでいるとされる。

 愛原「そ、そう……」
 高橋「先生は電車で帰られるんでしたね?」
 愛原「そうだ。まさかオマエ達が来るとは思わなかったから、ライナー券は用意してないよ?」
 パール「大丈夫です。私とマサは、バイクで行きますので」
 愛原「そ、そうか」
 リサ(メイドさんは、お兄ちゃんをバイクで送るだけだよね???)

 ベリーショートに切った髪を金髪に染めているのは相変わらず。
 そこは同じく金髪に染めている高橋と何ら変わりない。
 耳に数個ものピアスを着けている様は、とてもメイドとは思えない。
 だが、それが客に喜ばれる店があるのだから驚きだ。

 絵恋「リサさん、もっとパン持って来ましょうか?」
 リサ「うん。また、全種類持ってきて」
 絵恋「はーい!」
 パール「では私は、御嬢様のパンをお持ちします」
 リサ「先生はメイド服に興味ある?」
 愛原「いやあ、そんなに無いな……」
 リサ「やっぱり学校の制服と体操服、スク水が鉄板?」
 愛原「そうだな。……って、おい!」
 リサ「うははは!分かったよ。エレンにも着させるね」

 楽しい朝食会であったようだ。
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“愛原リサの日常” 「八王子に到着」

2023-06-10 11:20:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月26日21時10分 天候:晴 東京都八王子市明神町 R&Bホテル八王子]

 リサを乗せた車は、無事にホテルの前の通りに到着した。

 善場「着きましたよ」
 リサ「おー」

 リサと善場は車を降りた。
 善場の部下は、車の中で待っているようだ。
 駐車違反になってしまうからだろう。
 ハザードランプを点けて止まっている。
 リサは荷物を手に、善場と共にホテルの中に入った。
 フロントは2階にある為、エスカレーターで2階に上がる。

 愛原「おー、リサ!よく無事だったな!」

 ロビーでは、愛原と我那覇絵恋が待ち受けていた。

 リサ「先生!ごめんなさい!」

 リサは愛原に抱き着いた。

 絵恋「ちょ、ちょっと!リサさん!?私には!?ねぇ、私には!?」
 リサ「ん!エレン、心配かけた」

 リサは愛原から離れると、絵恋にも抱き着いた。

 絵恋「も、萌えぇぇぇっ!!」
 善場「感動の再会を果たしたところで、リサのチェックインをしましょうか」
 愛原「そうですね」
 リサ「先生と一緒の部屋!?」
 愛原「なワケないだろ。オマエは絵恋と一緒に」
 絵恋「リサさーん!一緒に熱い夜を過ごしましょーね
 リサ「ん……よろしく。お兄ちゃんは?メイドさんと一緒に来たはずだけど?」
 愛原「ああ、あいつな。ダブルの部屋に入って行ったよ」
 絵恋「パールも何だかんだ言って、幸せにやってるのね」
 善場「あの2人、バイクて来たはずですが、そのバイクはどちらに?駐車方法如何によっては、八王子警察署に……」
 愛原「高橋のヤツ、八王子にも知り合いがいるので、バイクはそちらに預けたそうです」
 善場「そうでしたか。そこは抜かりないようですね」
 愛原「そのようです。あれはパールのバイクなんですか?」
 善場「ん?高橋助手のではないと?」
 愛原「あいつ、車やバイクの免許は持っていても、肝心の乗り物が無いんですよ。あいつはいつも、借り物です」
 善場「そうですか。ということは、もしかすると、盗難車の可能性もあるわけですね。やはり、八王子警察署に……」
 エレン「善場さん、何か怖い……」
 絵恋「何か最近ね……」

 リサはカードキーを受け取り、愛原達とエレベーターに乗り込んだ。
 善場とは、ここでお別れとなる。

 愛原「このホテルも朝食サービスをやっているから、それを食べてから帰ろう」
 リサ「おー!何時から?」
 愛原「6時半から9時半までらしい。で、明日は京王八王子から京王線で帰るから」
 リサ「ふむふむ」
 愛原「8時56分発の京王ライナーで帰るから」
 リサ「すると、起きるのは7時ぐらい?」
 愛原「そんな所だろうな」

 エレベーターを降りて、客室に向かう。

 リサ「ねぇ、先生」
 愛原「何だ?」
 リサ「わたしが寝ている間に、何が起こったのか教えて」
 絵恋「私が教えてあげるわよぉ!私もその場にいたんだから」
 リサ「そ、そうか。……あ」
 愛原「どうした?」
 リサ「お菓子やらジュースやら、まだ何にも買ってない」
 愛原「オマエなぁ……。1階にコンビニがあるから行ってこい」
 リサ「はーい」
 絵恋「先に荷物を置いたら、一緒に行きましょう」
 リサ「うん」

 リサは客室の中に入った。

 リサ「……うん。まあ、普通のホテルだ」

 リサは窓側のベッドに荷物を置いた。

 リサ「それじゃ、買ってこよう」
 絵恋「私もお供しまーす!」

[同日22時00分 天候:晴 同ホテル]

 ここのコンビニでも、“鬼ころし”は売られていた。
 リサは性懲りも無く食指が動かされたが、さすがに自制した。
 それからホテルに戻って、リサは自分が眠っている間のことを聞いた。
 元々善場は、斉藤早苗を疑っていたらしく、鬼斬りの刀を持つ一族である栗原家の1人、蓮華を呼んでいたという。
 そして、B棟の体育館で対決した。
 最初は正体を現さず、逃げ回るだけの早苗だったが、逃げ回る度にかいた汗が人食いの臭いを放った為、蓮華には正体が露見する。
 ついに首を刎ねられてしまったが、他のリサ・トレヴァーと違うのは、それだけでは死なず、首が繋がってしまう。
 だが、これで完全に正体が露見したことで、変化。
 B棟の体育館を破壊するほど巨大化した。
 絵恋や愛原は避難を余儀無くされたが、外で待機していた栗原一族の鬼狩り隊が乱入。
 そこにBSAAも駆け付けるなどの乱闘状態になったという。

 絵恋「善場さんは、『首を刎ねられたくなかったら、白井の事について教えろ』って言ってたけど、早苗さんは何も答えなかったね」
 リサ「そうか。善場さんは、サナエと白井が同じ人だと思ったわけだ」
 絵恋「あんなかわいい子が!?」
 リサ「エレン。サナエは、“トイレの花子さん”だと思ってる。白井は早苗を生き返らせて、自分がその体を乗っ取んだと思う。それがどうして、エレンに付いて東京に来たのかは不明だけどね」
 絵恋「私も散々、善場さんから、沖縄にいた時の早苗さんの様子について聞かれたわ。あのコは突然、東京から転校してきたのよ。そして、すぐに私の所に来たの。私が『魔王軍』に勧誘したら、素直に入ってくれてね……」
 リサ「そこがむしろ怪しい。もしもサナエが白井だったとしたら、わたしの情報を知る為に、1番よく知ってるエレンに近づいたかもしれない」
 絵恋「それも善場さんに言われたわ。だけどね、『魔王軍』の掟として、ブルマを穿かないといけないでしょ?」
 リサ「……う、うん……そうだね」

 沖縄に関してはリサの関知するところではないのだが、絵恋が東京中央にいた時に、さんざんっぱら『愛原先生の為に』ブルマ着用を奨励してしまった手前、否定はできなかった。

 絵恋「それからなのよ。あのコが変わったのは」
 リサ「何がどう変わった?」
 絵恋「それまでは、物静かなコだったのに、それから今の性格になったの」
 リサ「それは一体、どういうことだ?」
 絵恋「ブルマを穿いて、吹っ切れたんじゃないの?」
 リサ「何故に???」
 絵恋「さあ……」

 リサは“トイレの花子さん”と話をしていた時のことを思い出した。
 “トイレの花子さん”こと、斉藤早苗が本当に生きていた頃は1970年代半ば。
 その頃のブルマは、まだちょうちんタイプが主流だった。
 教育資料館として活用されていた旧校舎では、教室の一部を学園史展示室として開放されており、そこでは歴代の制服や体操服などが展示されていた。

 リサ(“花子さん”、『こっちのピッタリしている方が動きやすくていいのに』とか言ってた……。それと関係あるんだろうか?)
 絵恋「リサさん、お風呂入らない?」
 リサ「そうだな。入ろう」
 絵恋「じゃあ、お湯入れてくるね!一緒に入りましょう」
 リサ「ちょっと待て」

 ビジネスホテルの狭い浴槽に2人は狭いだろうとリサは固辞したが、絵恋が泣き出してしまった。

 絵恋「リサさんと一緒じゃなきゃイヤーっ!!」
 リサ「さすがに明日は家に泊まるだろう?まだ家の風呂の方が洗い場がある分広いんだから、明日にしようよ」

 尚、リサが宥めすかしている間に、すぐにお湯は溜まったという。
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