報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「クリスマスの藤野行」

2023-06-01 20:23:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日16時10分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1589K電車最後尾]

 藤野に行く準備を整えた私達は、菊川駅に向かった。
 結局、高橋は帰って来なかった。
 何回かあいつのスマホにLINEを送っているのだが、返信どころか既読すら付かない。
 ちゃんと送れているわけだから、けしてブロックされたりとかは無いようだが……。
 冬の早い夕闇が押し迫る中、私達は最寄りの駅へと向かう。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 ホームで電車を待っていると、ホームに強風が吹きこんで来る。
 冗談抜きに、菊川駅は何故だか電車が発着する度に強風が吹く。
 地下鉄の駅なら当たり前だろうと思うところだが、それにしても強過ぎるのである。
 特に改札口に向かう階段やエスカレーター付近は、要注意だ。
 リサ達が穿いているスカートくらいなら、簡単に捲れ上がるほどの……。

 リサ「おっと!」
 絵恋「きゃっ!」
 早苗「んっ?」

 リサの黒くて短いプリーツスカートが捲れ上がり、リサはパッとスカートを押さえた。
 一瞬、スカートの下に穿いている紺色のブルマが見えてしまう。
 絵恋さんはピンク色のスカートを穿いていたが、リサほど短くない為、パンチラは無い。
 それでも気になったか、或いはリサの反応につられたか、スカートを押さえる仕草をした。
 斉藤早苗は、セーラー服をモチーフにした私服を着ている。
 紺色のスカートが捲れ上がるが、2人の少女ほどは気にしていない。
 彼女はリサとは違い、青っぽいブルマを穿いているようだった。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 京王電鉄の車両がやってきた。
 笹塚行きくらいではいちいち言わないが、新宿~笹塚間は京王新線なので、乗り入れ元に帰る所であろう。
 私達は電車に乗り込み、空いているローズピンクの座席に腰かけた。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディが流れた後、電車のドアとホームドアが閉まる。
 そして、車掌が発車合図のフザーを鳴らすと、電車が動き出した。
 トンネル内にインバータのモーター音が響く。

〔次は森下、森下。お出口は、右側です。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 今回、藤野には電車で向かう。
 東京駅から中央線に乗るつもりでいるのだが、さすがに東京駅までタクシーは認められないと思われ、地下鉄で向かうことにした。
 この電車で小川町駅まで向かい、そこから丸ノ内線の淡路町駅から乗り換えるという予定だ。
 小川町駅と淡路町駅は駅名こそ違うが、ほぼ同一と言って良い。
 鉄道会社が違うから違う駅名なのかもしれないが、多分、東京初心者には難しいかもしれないな。
 隣に座るリサは私にベッタリくっつこうとしているが、更にその隣に座る絵恋もまたベッタリしようとしている。
 変な三角関係になりそうだ。
 逆に高橋がいなくて良かったかも……。

[同日16時30分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 東京メトロ東京駅→JR東京駅]

〔東京、東京です。JR線は、お乗り換えです。1番線の電車は、荻窪行きです〕

 小川町駅から淡路町駅に徒歩連絡し、東京メトロ丸ノ内線に乗り換える。
 さすがに丸ノ内線は本数が多い割には編成が短いこともあって、混雑していた。
 乗降客数は隣の大手町駅や銀座駅には及ばないものの、ターミナル直結駅ということもあって、私達のようなJR利用者で賑わっている駅であるようだ。
 電車を降りて、改札口へのエスカレーターに乗る。

 愛原「わざわざバッグごと持って来て、大丈夫?」

 絵恋と早苗は、キャリーバッグごと持って来ていた。

 絵恋「大丈夫です。最悪、年末まで泊まるかもしれないってことで、それならもう持って行くことにしました」
 早苗「同じく」
 愛原「そうか。まあ、それならいいけど……」

 改札口を出ると、私達はJR東京駅に向かった。

 愛原「結局、買ったのか」
 早苗「やっぱり便利ですから」

 早苗だけ唯一、ICカードを持っていなかった。
 沖縄で使えるICカードならあるそうだが、それはこちらでは使えない。
 最初のうちは買う気が無かった早苗も、今日初めてPasmoを買った。
 これをチャージして使っている。

 リサ「先生、こういう交通費も、デイライトさんに請求するんだよね?」
 愛原「そうだよ」
 リサ「領収証とかはいいの?」
 愛原「通勤電車やバスの運賃は、領収証の発行が無い場合がある。その場合は、領収証無しで請求できるんだよ。もちろん、それ専用の請求書はあるんだけどね」
 リサ「ふーん……」

 特急に乗ったりすれば、領収証を発行できるから、それを提出したりするのだが、各駅停車や快速列車などは違うので。

 愛原「1時間以上の旅になるから、今のうちトイレとか行っておくといいよ」
 リサ「特快で?」
 愛原「そう」
 リサ「分かった。行ってくる」

 改札口に入ると、まずはコンコース内のトイレに向かった。

[同日16時55分 天候:晴 JR東京駅・中央快速線ホーム→中央快速線1651T電車10号車内]

 オレンジバーミリオンのラインカラーを身に纏った電車に乗り込む。
 ちょうど先頭車の、運転室後ろの4人席を確保すれば横並びに座れるというものだ。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、16時55分発、中央特快、大月行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、神田に、停車致します〕
〔この電車は、中央線、中央特快、大月行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、三鷹、国分寺、立川と、立川から先の各駅です〕

 山梨県まで行く電車であるが、とても通勤電車の内装では、そんな実感が湧かない。
 まだこの電車にはトイレが無く、グリーン車も組み込まれていない。
 試しに善場主任に、もしまた藤野に行く場合、中央特快にグリーン車が組み込まれていたら乗って良いのか聞いてみたら、『どうぞ』とのことだった。
 まあ、半分冗談で聞いた話なのだが……。

〔「お待たせ致しました。16時55分発、中央快速線、中央特快、大月行き、まもなく発車致します」〕

 もう既に外は夜のように暗い。
 夏場だと、まだまだ全然明るいのだが。

 絵恋「沖縄はまだ明るいですよ」

 とのこと。
 ホームから発車メロディが聞こえてくる。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 中央線は特急列車も発着するからか、ホームドアが無い。
 また、グリーン車を組み込む計画もあるからだろうか、他の通勤線区と比べれば、ホームドアの普及率は低い。
 なので、電車のドアが閉まり切れば、すぐに発車する。

〔この電車は、中央線、中央特快、大月行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

 電車は既に座席が全部埋まり、立ち客も出ているほどだった。
 それでも平日の同じ時間と比べれば、まだ乗客は少ない方なのだろう。
 元々賑わいやすい中央特快だから、というのもある。
 まあ、果たして私達のように、都外まで乗って行く客がどれだけいるのかは不明だが。
 それにしても、高橋からは全く連絡が無い。
 LINEだけでなく、部屋にも書置きは置いてある。
 部屋の鍵は持っているはずなので、締め出されていることはないはずだ。
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“私立探偵 愛原学” 「一夜明けて……」

2023-06-01 15:48:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日8時00分 天候:晴 東京都中央区日本橋久松町 警視庁久松警察署→中央区日本橋浜町 某クリニック]

 ホテルでの実況見分の後、私は最寄りの警察署に行って事情聴取を受けた。
 別に私に何か容疑が掛かっているということではなく、私自身が何者かに襲われたという被害届の提出である。
 ホテルではBSAAの実況見分を受けたし、今日も忙しくなりそうだ。
 それが終わると、私は荷物を持って、クリニックに戻った。
 クリニックに行くと、我那覇絵恋と斉藤早苗が待っていた。

 絵恋「あ、愛原先生」
 愛原「よう、戻って来たぞ。……リサは?」
 絵恋「カンファレンスルームで、善場さんからのヒアリングを受けています。愛原先生を襲った化け物が、寄生虫かもしれないってことで……」
 愛原「あー、やっぱりあれは寄生虫だったのか。しかし、リサはもう寄生虫は宿していないはずだが……」
 絵恋「それについて、色々とお話しを聞かれているところです」
 斉藤早苗「絵恋には魔王様の寄生虫がまだ残っているので、そのせいではないかと思われます」
 愛原「そうなのか?」
 早苗「リサさん、随分と絵恋とフザけてましたからね」
 絵恋「り、リサさんは悪くないわ!私が言う事を聞かなかったのが悪かったのよ!」

 一体、何があったのだろう?

 絵恋「今度からは男子用のトイレでもオシッコするわ!」
 愛原「な、何のプレイだ?」
 早苗「そういうプレイですよ。愛原先生」
 愛原「キミ達ねぇ……」

 寄生虫という気持ち悪い物に襲われたこともあり、私は食欲が無くて朝食も食べていないというのに、このコ達は元気だ。
 そう思っていると、カンファレンスルームからリサと善場主任が出てきた。

 愛原「あっ、善場主任。おはようございます」
 善場「おはようございます。愛原所長、昨夜はお疲れ様でした」
 愛原「いえいえ。想定外でしたが、こんな仕事をしていれば、そういうこともあります」
 善場「さすがは愛原所長ですね」

 善場主任はチラッと斉藤早苗を見た。

 善場「さて、皆さんにはこれから行ってもらいたいところがあります」
 リサ「う……」

 善場主任が宣言するように言い、リサが顔をしかめた。
 どうやらリサは、先に善場主任から聞いているようである。

 愛原「もしかして、藤野とか?」
 善場「そのまさかです」
 愛原「やっぱり……」

 私はガクッと項垂れた。

 善場「特殊な寄生虫とウィルスを調べる必要があるので、このクリニックでは難しいです。よって、藤野に向かってもらいます」
 愛原「善場主任。私は荷物を用意したいので、一旦帰宅しても宜しいですか?」
 善場「それは構いません。今日中に行って頂ければ大丈夫です」
 愛原「分かりました」
 絵恋「……で、リサさんとのクリスマスパーティーは……?」
 善場「残念ながら、諦めてください。今は緊急事態です」
 絵恋「そんなぁ……」

 これは何だか可哀そうだな……。

[同日10時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私は善場主任と少し打ち合わせをして、それから少女3人を連れてマンションに戻った。

 愛原「夕方前に出掛けるから、それまでの間、ゆっくりして」
 リサ「おー」
 絵恋「り、リサさんの部屋にお邪魔しまーす」
 リサ「エレンは歓迎する」
 絵恋「はーい、歓迎されまーす
 早苗「魔王様、私は?」
 絵恋「早苗さんもでしょ?」

 リサはチラッと私を見た。
 何で私を見るんだろう?

 愛原「3人で仲良くやりな」
 リサ「先生の命令は絶対」
 絵恋「愛原先生の命令は絶対ですもんね」
 早苗「魔王様の更に上を行く破壊神?」
 リサ「うむ。わたしのウィルスが効かない、ウィルスクラッシャーという意味では破壊神……」
 愛原「何でやねんw ああ、そうだ、3人とも」
 リサ「なに?」
 愛原「クリスマスパーティー、別に夜じゃなくてもいいんじゃないか?」
 リサ「! それもそうだ」
 愛原「昼はピザでも取ろう。あと、クリスマスケーキを買ってこないとな。ライフに行けば売ってるだろ」
 リサ「わたし、買ってくる!」

 リサは鼻息を荒くして言った。

 絵恋「リサさんは単独行動が許されてないんでしょ?私も一緒に行くわ」
 早苗「じゃあ、私も」
 愛原「うん、それはいいな。ホールケーキ、買って来なよ」

 24日よりも今日の25日の方が安いだろう。

 愛原「俺はピザでも注文しておく」
 リサ「分かった。わたしはLサイズのミートビザで!」
 愛原「分かった分かった」

 Lサイズが2枚のMサイズが1枚ってところか……。
 高橋がいたら、もっと頼まないといけないだろうな。
 それにしても高橋とパール、どこまで行ったのやら……。
 一応、私は高橋のスマホにLINEした。
 クリスマスデートというからには、今日中に帰ってくるかと思うのだが……。

[同日12時00分 天候:晴 同マンション]

 リサ達は近くのスーパーに行って、ケーキを買ってきた。

 愛原「こりゃまた大きいサイズのを買ってきたな……。金、足りた?」
 絵恋「いいえ。ここは私が出させて頂きました」
 愛原「エレンさん?」
 絵恋「リサさんとのクリスマスパーティーだなんて、1年に1度あるか無いかですもの……
 愛原「ま、そりゃそうだろうな」

 ピザも届く。
 まあ、ピザ代は私が出してもいいだろう。

 リサ「先生はビール!?」
 愛原「何言ってるんだよ。これから出かけるってのに……。普通にコーラでいいよ」
 リサ「はーい!こんなこともあろうかと買っておいた」
 愛原「それは気が利くな」

 リサはケーキだけではなく、ジュースも買って来ていた。
 それぞれのグラスにジュースを注ぐ。

 リサ「それじゃ、先生が乾杯の音頭を取って」
 愛原「『乾杯』じゃダメだな。ここは1つ……メリークリスマース!」
 少女3人「メリークリスマース!」

 こうして、25日の昼間にクリスマスパーティーは開催されたのだった。
 高橋抜きで。
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