報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼狩りからの依頼」 2

2023-06-23 20:18:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月29日10時00分 天候:晴 東京都墨田区吾妻橋 栗原家]

 愛原「……というわけでありまして、今はその鬼の男が怪しいわけです」

 私は30分ほど掛けて、昨日までに起きた出来事を党首の栗原重蔵氏と孫娘の蓮華に説明した。

 栗原重蔵「なるほど。次なる我らの対象は、その鬼というわけですな。因みにその鬼の男とやらは、政府からは何と?」
 愛原「いえ、特に何も……。報告はしているのですが、消極的のようです。恐らく、バイオテロとは無関係だからでしょう」

 そうなると、そいつの正体は如何に?ということになる。

 重蔵「なるほど……。鬼の男は火を噴く妖術を使うのですな。これはまた強敵だ……」
 蓮華「リサの電撃くらいなら、何とかなるけどね」

 かつて栗原家では、雷神というか、リサのように電撃を妖術とする鬼と戦った記録が残っているらしく、その対処法が伝えられていた。
 まだ江戸時代くらいの話だというのに、既に避雷針のような鉄の棒を持って封じる方法が書かれているという。
 もしかすると、リサとはまた違うタイプの鬼だったのかもしれない。
 リサの場合は直接電撃を放つが、言い伝えの鬼は、本当に雷のように、上空から雷を落とす攻撃だったのかも。
 それなら、避雷針を使うという方法は効果的だ。
 とはいえ、遠隔攻撃には効くようで、リサが遠くから電撃を放つと、蓮華は刀を地面に突き立て、避雷針代わりに使用していて封じていた。

 蓮華「火を操る鬼であれば、耐火服とか必要になるかな?」
 重蔵「そんなもので役に立つかのう……?」
 愛原「それで、今日は新たに依頼があると聞きましたが?」
 重蔵「うむ。皆さんは、年末年始を栃木県の那須の方で過ごされるとか……」
 愛原「あ、はい。知り合いがホテルをやってまして、格安で泊めてくれるそうで、その話に乗りました」
 重蔵「さようですか。依頼というのは、調査依頼でしてな。愛原さん達が栃木の方にご旅行されるということで、ちょうど良いと思ったのです」
 愛原「栃木の方に何か気になる所でも?」
 重蔵「うむ。実は栃木の方にも、鬼がいたという情報を得ましてな……」

 あれ?それって、上野母娘のことじゃね?
 栗原家にバレてる?
 あ、いや、違うな。
 上野凛が半鬼だということは、蓮華も知っている。
 鬼と人間のハーフだな。
 もちろん、妹の理子もだ。
 母親の利恵はリサのような鬼型のBOWだが、特異菌とGウィルスではなく、別の生物兵器ウィルスのミックスを投与されたことで、別の種類の鬼と化している。
 性的絶頂を迎えると理性が飛んで、相手を食い殺してしまうという性質がある。
 上野姉妹の父親は普通の人間で、長女を作る時は上手いこと妻を抑え込めたようだが、次女を作る時には失敗して食い殺されてしまった。

 重蔵「愛原さん、鬼怒川は御存知ですな?」
 愛原「えっ?ええ。有名な温泉街ですね」
 重蔵「鬼怒川とは、書いて字の如く、『』と書く」
 愛原「そういえば……」
 重蔵「元々は『衣川』と書かれていたようですが、明治時代以降に今の漢字に変わりました。何故か?」
 愛原「い、いえ、分かりません」
 重蔵「簡単に言えば、我ら一族があの山奥に住む……具体的に衣川の源流辺りを根城にしていた鬼共と戦い、多大な犠牲を払った故のことなのですが……」
 愛原「川の名前を変えるほどですか?その割には、そんな言い伝えは聞いたことが無いのですが……」
 重蔵「我々、鬼狩りは政府非公認です。そんな非公認の団体が大活躍したことなど、時の政府は認めなかったのです。恐らく、今もそうでしょう」

 今の自民党政権だったら、利権と繋がることが分かれば、すぐにでも飛び付いてきそうだけどなw

 愛原「それでは、調査場所は鬼怒川の源流辺りですか?」
 重蔵「いえ、そこまで行く必要はありません。蓮華、地図を」
 蓮華「はい」

 蓮華はタブレットを取り出した。
 それでグーグルマップを開く。

 蓮華「因みに私達の御先祖達が戦った鬼怒川の源流は、この辺りです」
 愛原「中禅寺湖よりもっと山奥かよ、凄ェな……。あれ?でも、そうなると……」
 重蔵「はい。日光ですな」
 愛原「やっぱり。日光に、鬼がいるんですか?」

 東照宮など霊験あらたかな場所で、とても鬼などいそうにないが……。

 重蔵「それを調査して来て頂きたいのです。埼玉のように、『鬼が棲む家』が栃木にもあるとの情報を得ました。費用は全てこちらで出させて頂きます。それとは別に、報酬もお支払いします」
 愛原「ありがとうございます」

 こんなこともあろうかと、契約書は持って来ている。

 愛原「高橋、契約書を」
 高橋「あ、ハイ」

 私は隣に座る高橋に、ノートパソコンと小型のプリンターを用意させた。
 電源はバッテリー内蔵である。

 愛原「現場はどんな所なんですか?」
 重蔵「古民家を改築した、民宿になっているとのことです」
 蓮華「お祖父ちゃん、民宿じゃなくて、民泊ね」
 重蔵「ミンパク?そんな、朝鮮人みたいな名前なのか?」
 愛原「民泊というと、確か民宿よりももっと安い値段で泊まれる代わりに、炊事やら何やらは全てセルフサービスの宿泊施設だね?」
 蓮華「そうです。愛原先生は、お泊りになったことがありますか?」
 愛原「いや、無いなぁ……」
 重蔵「それで、いつ着手して下さいますか?」
 愛原「そうですねぇ……。年末に1泊する予定なので……」
 重蔵「ふむふむ。当初の予定は大晦日に板室温泉に1泊し、元旦に帰京される予定だったのですか」
 愛原「そんなところです」
 重蔵「それでは、その足でもう1泊そこでされるのは如何ですかな?」
 愛原「『鬼の棲む家』に一泊するんですか?」
 重蔵「今は住んでいないでしょう。しかし、住んでいた形跡はある。我々は300年以上もの長きに渡って鬼狩りをしてきましたが、あいにくと鬼ならではの索敵能力はありません」
 愛原「つまり、埼玉の時みたいに、うちのリサに調査させるということですか」
 重蔵「鬼狩りが鬼の手を借りるという不思議な話であることは、重々承知しております。もしも、愛原さんが面倒を看ている鬼の娘が本当に人間の味方であるというのなら、是非とも御協力を賜りたいのです」
 愛原「分かりました」

 話をしている間、高橋か契約書を印刷する。
 何だかムシの良い話をしてくるなぁと思ったが、報酬の金額を見て、それは忘れることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「鬼狩りからの依頼」

2023-06-23 14:05:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月29日09時6分 天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス業10系統車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから、栗原家に向かう所である。
 幸い、菊川からなら都営バス1本で行ける。
 しかも、本数も多い。
 私と同行するのは、助手の高橋だけ。
 リサは留守番させ、来年初めに行われる引っ越しの準備をさせている。
 彼女を連れて行くと、鬼狩りを生業としてきた栗原家の面々に斬られてしまう恐れがある為。
 事情を知っている蓮華だけが庇ってくれるのだが、彼女曰く、『血の気の多い従兄達は、私でも止められない』とのこと。

 高橋「先生、バスが来ました」
 愛原「おーう」

 ごく普通のノンステップバスがやってくる。

〔本所吾妻橋経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます〕

 グライドスライドドア式の前扉が開いて、私達はバスに乗り込んだ。
 本数が多いということは利用客も多いということであるからして、席は空いておらず、私と高橋は吊り革に掴まった。
 観光地である東京スカイツリーの真ん前まで行くばすだからか、観光客の姿も多い。
 何しろ、東京の中でも賑わう所を走るバスだからだろう。

〔発車致します。お掴まりください〕

 私達を乗せたバスが走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは本所吾妻橋経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は立川、立川でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗本行寺と常泉寺へおいでの方は、終点、とうきょうスカイツリー駅前でお降りになると便利です。次は、立川でございます〕

 愛原「バスに乗ったことを、蓮華に伝えて……と」
 高橋「クライアントにはマメな連絡っスね。さすがっス」

 高橋は揺れるバスの中、器用にメモを取った。

 愛原「そういうことだよ、高橋君。この仕事は、クライアントとの信頼・信用で成り立っているんだからね」
 高橋「はい!……それにしても、リサを連れて来なくて良かったんスか?」
 愛原「まあ、リサは嫌がるだろうし、蓮華も嫌がるだろう。クライアントの嫌がることをするのはNGだね」
 高橋「りょ、了解っス!」

[同日09時15分 天候:晴 同区吾妻橋 栗原家]

 私達は1つ手前の本所吾妻橋で、バスを降りた。
 都営地下鉄浅草線も通っている。
 裏道が狭いところは、菊川と似ている気がする。

 愛原「えーと……ここだな」

 近所だからか、栗原家は3代前から鬼狩りの力を神道から法華経へと鞍替えしている。
 その為、剣道場にはよくある神棚が、栗原家には無い。
 代わりにあるのが御仏壇。

 栗原蓮華「ようこそ、お越しくださいました!愛原先生!……と、高橋さん」
 高橋「俺はついでかよw」
 愛原「新たな鬼のことについて、話があるんだ」
 蓮華「はい、聞いてます。どうぞ中へ」

 家の中では義足は付けないようだ。
 代わりに、家中そこかしこに手すりが着けられている。
 残った右足で移動する分、杖やそんな手すりに掴まりながら移動するらしい。

 蓮華「愛原先生の御到着でーす!」

 蓮華は奥の間に向かって言った。
 尚、彼女は珍しく私服姿である。
 いつも制服か剣道着姿くらいしか見ないのに……。

 愛原「さすがに年末年始は剣道場は休みか?」
 蓮華「そうでもないんですけど、冬休みの子供達が稽古に来るくらいです。大人は……まあ、休みですね。門下生達が忘年会で、ドンチャン騒ぎしに来るくらいで」
 高橋「コロナはガン無視か」
 蓮華「少しは自粛しろと私から言ってるんですが……」
 愛原「なるほど」

 床の間みたいな和室に通されるかと思いきや、ちゃんとソファのある洋室の応接間に通された。

 祖父「これはこれは……ようこそ、お越しくださいました。どうぞ、こちらにお掛けください」

 奥からは羽織袴姿の70代くらいの老翁が現れた。
 どこかで見た覚えがあると思ったら、確か会津で会っているはずだ。

 愛原「失礼します」
 祖父「蓮華、お茶をお出ししなさい」
 蓮華「はい!」

 蓮華は片足だけで器用に移動した。

 祖父「改めまして……私は栗原重蔵と申します。蓮華の父方の祖父です」
 愛原「愛原学と申します」

 私は名刺を差し出した。

 愛原「こちらは、助手の高橋でして……」
 高橋「名探偵、愛原先学先生の不肖の弟子、高橋正義っス!」
 栗原重蔵「これはこれは……。なかなか元気で若者で……」
 愛原「失礼ですが、蓮華さんの祖父母の方は霧生市でお亡くなりになったと伺っていますが……」
 重蔵「あれは母方の祖父母ですな。あの地獄のような町からの、数少ない生還者だと聞き及んでおります」
 愛原「いやあ、無我夢中で逃げるのに精一杯で……」

 しかし、重蔵氏の目が鋭く光る。

 重蔵「そうでしょうか?その割には、鬼の娘を連れ出すほどの余裕があったとお見受けしますが?」
 愛原「あれは変化でそうなったのです。最初から鬼の姿をしていたわけではありません」
 重蔵「科学的な話は色々とあるでしょうが、当家では、例え元が普通の人間であったとしても、鬼と化した者は容赦せず、必ず斬り伏せることになっております」
 愛原「しかし、うちのリサはまだ1人も人間を食い殺していません。そりゃ、そういう衝動に駆られる時は何度もありますが……」
 重蔵「犠牲者が出てからでは遅いのですよ」
 愛原「それは分かっています。それに、リサに関しては政府からの庇護を受けています。私はその政府機関からの委託を受けて、彼女の監視をしているのです。即ち、皆様がリサを斬ろうものなら、政府機関より警察が派遣されることになるでしょう。その意味、分かりますね?」
 重蔵「十分、分かりますよ。ですので、その鬼については、愛原さん方にお任せします。もっとも、犠牲者が出ようものなら、私共は動させてもらいますが」
 愛原「結構です。しかし、国家権力としては……」
 重蔵「そうですね……。こちらとしては、区議会や都議会に名前を連ねている親族はいるのですが、まだ国会議員としては名前を出していないので、さすがに国家権力には負けてしまいますな」
 愛原「栗原家の方に、区議会議員や都議会議員がいらっしゃるのですか」
 重蔵「はい」
 愛原「それは凄いですね」
 重蔵「まあ、泡沫議員ですよ。何せ、無所属ですから」

 それでも、親族一同は元より、剣道場における人脈、そして日蓮正宗における人脈を使った組織票を形成したものかもしれない。

 蓮華「お茶でございます」
 重蔵「ああ、そこに置いてくれ。そして、蓮華もそこに座りなさい」

 蓮華はお盆ではなく、小さなワゴンに乗せてお茶やお茶菓子を持って来た。
 恐らくお盆だと片足だけで移動する為、バランスが悪くて危険だからだろう。

 蓮華「はい!」

 蓮華は祖父の隣に座った。

 愛原「それでは、本題に入らせて頂きます」

 私は埼玉であった出来事を、資料を交えながら話した。
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