報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む家」

2023-06-15 20:38:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日13時30分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区上落合 某戸建て住宅]

 私はアメリカのルイジアナ州ダルヴェイという地域で起きたバイオハザード事件を思い出していた。
 確か、2017年頃の事件だったと思う。
 特異菌に感染した農場主とその家族が、BOW化した。
 しかし、それまでのBOWと違うのは、適合すれば、人の姿を保ち続けられること。
 意識も鮮明で自我もある。
 しかし、人食いをするという所は他の生物兵器ウィルスと変わらない。
 その一家は農場に迷い込んだり、その近辺を訪れた人間を捕えては、殺して料理して食事にしていたという。
 なので、キッチンやダイニングは重要な場所となっている。
 ここもそうだと私は思った。
 しかし、ダイニングの方は何の痕跡も無かった。
 そして、キッチンも……。

 リサ「……何も臭わないよ?」

 私は流しの排水口を開けて、中の臭いをリサに嗅がせた。
 しかし、キッチンからは何の人間の匂いはしないという。
 家の敷地内にあるマンホールからは、血の痕とその臭いにすぐに気づいたリサがだ。
 すると、ここは関係無いのだろうか。
 床下収納に何か隠されていないか確認した。
 ここも床下収納に見せかけて、実は秘密の地下室の入口である可能性もある。
 だが、いくら調べても、何も出てこなかった。

 愛原「くそっ!本当の普通の家だ!」

 敷地内のマンホール、そして独房みたいなゲストルーム、そして意味不明の二重壁。
 この辺を除けば、本当に普通の家である。

 愛原「……あれ?」

 そこで私は、もう1つの疑問に辿り着いた。

 愛原「風呂は?さっき、向こうにトイレはありましたけど、風呂が無い」
 松浦「ああ、それなら2階にあります」
 愛原「2階!?」

 珍しいな。
 普通、2階建ての家なら1階に風呂場があるものではないか?
 私の実家もそうだし、向かいある斉藤家もそうだ。
 ただ、斉藤家の場合、地下室にもシャワールームはあるが。
 これは地下にプールがあるので、その為と、あとは使用人達が使う為だとされる。

 愛原「何だか珍しいですね?」
 松浦「何か、拘りがあったんでしょう。ただ……」
 愛原「ただ?」
 松浦「私も長いこと不動産屋に勤めてますが、2階はちょっと不思議な構造をしているんですよ」

 私に言わせれば、1階もそこそこ変な構造だと思うが、何十年も不動産屋で働いてきた松浦氏の経験上で言えば、1階の構造くらいは、探せばあるのだろう。
 そんな松浦氏が、『さすがに変だ』と言わしめる2階の構造とは何なのだろう?
 まあ、まずは風呂が2階にあること、ではあるが……。

 愛原「……階段は普通だな……」

 まるで実家の階段のようだ。
 踊り場の所でクルッと90度反転するところも、実家の階段と同じ。

 愛原「ん?ここは……」

 階段を上り切った先にドアがあった。

 松浦「ここが風呂です」
 愛原「え?」

 私は変な顔をした。
 確かに、2階の構造はおかしい。
 まさか、開けたら露天風呂になってたりして?

 愛原「……脱衣所は普通だ」

 ドアを開けると、まず脱衣所がある。
 脱衣所に付帯する設備として、洗面台があるのも普通だ。
 で、開けるとは露天風呂が……。

 愛原「……でもないな……」

 開けると、マンションや実家よりも、更に一回りか二回りほど大きな浴室があった。
 浴槽なんか、長身の高橋でも足が伸ばせるくらいに大きい。

 リサ「……何か、血の匂いがする」
 愛原「マジか!?」

 見た目はとてもきれいに清掃されている浴室。
 私は排水口の蓋を開けた。

 愛原「何だこれは!?」

 排水口の蓋は床と同じデザインのものである。
 最近の家やマンション、アパートの風呂の排水口は皆こうだろう。
 床と一体化したデザインになっており、そこに隙間があって、水はそこに流れて行く。
 蓋を開けると、ようやくそこに排水口があるという構造。
 私が驚いたのは、その蓋の裏側に、ベットリと赤い物が付着していたことだ。
 掃除はしたのだろうが、落とし切れなかったといった感じだった。
 リサは早速それに鼻を近づけた。
 尚、松浦氏に正体がばれないよう、パーカーのフードを被って、角や尖った耳は隠している。
 また、白いマスクをしていて、牙が見えないようにもしている。
 臭いを嗅ぐ時だけ、マスクから鼻を出すといった感じだ。

 リサ「……人間の血の匂いだ」
 愛原「マジか!?」

 この風呂で、何かあったのだろうか?
 まさか、ここが人食い現場ではなかろうな?

 愛原「他にも探してみよう」

 私達は風呂場を出て、2階の奥の部屋を調べてみることにした。
 奥に進むと、右側は行き止まり。
 窓があるだけ。
 左に行くと、突き当りに窓があるが、その右側にまたドアがある。
 そのドアを開けると、また廊下があった。

 愛原「何だか、随分ドアの多い家だな……」
 高橋「そうっスね」

 しかも、どのドアにも鍵が付いており、松浦氏はそれで鍵束を持っていたのだった。
 もう1つドアを開けると、ようやくそこにダブルベッドが見えた。
 どうやらここは、夫婦の寝室らしい。

 愛原「……何か急に、解放感が出て来たな」

 そう思うのは、この部屋は窓が多く、今日は天気が良いので、冬の光が差し込んで明るいからだった。
 とはいえ、夜は断熱性が悪いだろう。
 この部屋からは、ベランダに出られるドアがあった。

 愛原「なるほど。ここに洗濯物を干すわけか。……洗濯機はどこだ?」
 松浦「こっちですね」

 隣の洋室であった。
 そこには洗面台と洋服ダンスがあり、それに並んで洗濯機を置くスペースが確保されていた。

 愛原「何だか、風呂場の脱衣所みたいだな……」
 松浦「正解ですよ。こっちを見てください」
 愛原「ん?」

 洋室の右奥には、うちのマンションの風呂にあるのと同じ、すりガラスの折り戸があった。
 開けると、そこにはシャワーがあった。
 浴槽は無く、シャワーのみである。

 愛原「??? 広い風呂があるのに、別にシャワールームがある???どういうことだ???」
 高橋「リサ、この辺り、血の臭いはするか?」
 リサ「……いや、しないね」
 高橋「さっきの風呂場とは偉い違いですね、先生」
 愛原「そ、そうだな」

 試しにシャワールームの排水口の蓋を外してみたが、今度は裏側に血痕が付いているというようなことはなかった。
 ここで私は、1つの推理に辿り着いた。

 愛原「この家に『人食い鬼』が棲んでいたと仮定しよう。アメリカの時みたいに、1人の娘を除いて、全員が『感染者』だった時もそうだったな……」
 高橋「何スか?」
 愛原「多少は感染しつつも、人食いの化け物に成り果てるまでには至らなかったゾイ・ベイカー。彼女は成り果てた他の家族に襲われないよう、家の敷地内で隔離生活を送っていた。この家でも、それが行われていたとしたら?」
 高橋「と、言いますと……?」
 愛原「この家には、かつて3人の家族が住んでいた。しかし、家族の誰かが特異菌とか、他の生物兵器ウィルスに感染するなどして、BOW化してしまった。しかし、他の未感染の家族は、感染者とは隔離生活をしていたんじゃないかな。『家庭内別居』なんて言葉があるけど、あれを更に徹底した、『家庭内隔離』だ。松浦さん、そんな部屋がこの家にはありますか?」

 すると、松浦氏は大きく首を縦に振ったのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「午後から仕事開始」

2023-06-15 15:19:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日13時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区上落合某所 某戸建住宅]

 昼食は蒙古タンメン中本で、タンメンを食べた。
 辛い物が苦手な我那覇絵恋は、辛味の全く無い塩タンメンにした。
 中辛がせいぜいの私は、辛さ控えめの味噌タンメンにした。
 辛いのが大丈夫、または大好きなリサ、高橋、パールは北極ラーメンや北極やさいを注文した。
 高橋は普通に食べ、リサはガバガバと食いやがった。
 8辛の五目味噌タンメンまでしか食べたことの無いパールは、初めて9辛の北極ラーメンを試すことになった。
 リサが真っ先に完食し、その次に私、高橋と絵恋がだいたい同時で、初めての9辛にチャレンジしたパールが1番遅かった。
 昼時で店が混んでいるので、すぐに空けなければならない。
 後で、車を駐車場付きのコンビニに移動させた。
 パールなど、水のペットボトルを飲み干すほどであった。
 リサと絵恋は余裕。

 リサ「久しぶりに味のあるラーメンを食べた」

 とのこと。
 コンビニで食後休憩やトイレ休憩を挟み、それから現場に向かう。
 現場に向かうと、既に1人のスーツ姿の男が待っていた。

 愛原「すいません!東京から来た愛原です!」
 不動産屋「ああ、愛原さんですか。お待ちしておりました。栗原不動産さいたま支店の松浦です」

 男は50代後半ほどの年配の男。

 愛原「それじゃ、パールと絵恋さんはここで」
 絵恋「私もリサさんと調査したいな……」
 高橋「鬼に食い殺されても知らねーぞ」
 リサ「誰かを守りながらの戦いはメンド臭いから、よろしく」
 絵恋「はあ……」

 私達は一旦、車を降りた。
 車の免許なら、パールも持っている。

 愛原「それじゃパール、一旦ここで」
 パール「はい。御嬢様のことは、お任せください。とりま、イオンモールにでも避難してます」
 愛原「うむ。そこなら安全だろう」

 ここから車で5分ないし10分ほど走った所に、イオンモール与野がある。
 助手席に乗っていたパールは運転席に移動し、絵恋は助手席後ろの席に移動した。

 愛原「終わったら連絡するから」
 パール「かしこまりました」

 車はイオンモールの方へ走り去って行った。
 残された私達は、早速、家の調査に取り掛かる。
 既に売りに出されていることから、周りには不動産屋の幟が立てられていた。
 外観は、特に何の違和感も無い。
 ごくごく普通の2階建て一軒家だ。
 窓も多くて、開放的である。

 愛原「特に、外観上は変な物は見当たらないが……」
 高橋「そうっスね」
 愛原「リサは何か感じる?」
 リサ「ここからは何も……」

 取りあえず、敷地内に入ってみる。
 車庫は家の中にある。
 玄関の横にシャッターが付いており、そのシャッターを開けると車庫があるらしい。
 シャッターの大きさからして、3ナンバーのミニバンが1台止められるだろう。
 そして、小さな庭が1つある。
 さすがに野球をやったりとかはできないが、ここに犬小屋を置いて、大きな犬を外飼いすることは可能だろう。
 そこにはマンホールがあった。
 下水道のマンホールだろう。
 しかし、そう見せかけて、実は秘密の地下室があるかもしれない。
 私はマンホールを開けてみた。
 しかし、地下室へ下りる階段も梯子も無い。
 下水道管があるだけだった。
 下水道管は築浅の家の割には、赤黒く汚れていて……。

 リサ「! 血の匂いがする!」
 愛原「なに!?すると、これは血か!?」

 下水道管を赤黒く染め上げているのは、リサに言わせれば人間の血なのだという。

 高橋「先生。やっぱりこの家は……」
 愛原「『鬼の棲む家』か……」
 松浦「そんな……」
 愛原「とにかく、家の中を見せてください」
 松浦「は、はい」

 松浦氏は持っていた鍵で、玄関の鍵を開けた。
 元々は注文住宅として建てられたものを、その住人達から栗原不動産が買い取ったものだ。
 家の中はかなりきれいに清掃されており、元々築浅ということもあってか、ほとんど清掃業者の仕事は無かったくらいだという。

 愛原「……中も普通だ」

 玄関から中に入ると、左手にドアがある。
 そこは車庫に通じるドア。
 開けると、確かに車庫があった。
 もちろん、今は車は止まっていない。
 車庫には、物置部屋も備え付けられていた。
 ここにカー用品とかをしまっておくのだろう。

 愛原「リサ、鬼の気配はするか?」
 リサ「全然。もしも人食いをしていたら、サナエの時みたいに、すっごい体臭がするはずなんだけど……」

 車庫の隣はトイレになっている。
 普通の洋式トイレ。
 ウォシュレットになっている。
 下水道が汚れているということは、このトイレに死体を流したのか?
 その割にはとてもきれいだし、リサも反応しなかった。

 愛原「あれ?テーブルがある」

 リビングとダイニングが続きになっているのは、日本の家ではベタな法則。
 しかし、テーブルや椅子、ソファが置かれていた。

 愛原「前の住人さん達は、これを置いて行かれたのですか?」
 松浦「はい。食器などの小物は持って行かれましたが、家具とかは新しいのを買い揃えるとかで、置いて行かれたんですよ」
 愛原「ふーん……」

 リビングにはドアがあった。
 そこを開けると、何故かベッドが1つあった。
 広さは四畳半くらいの洋室。
 しかし、窓が無い。

 松浦「ここはゲストルームですね。来客などが寝泊まりする客間です」
 愛原「窓が無いから、随分と圧迫感があるな……」

 しかし、何故かリビング側に小さな窓が付いている。
 どうして外窓を付けなかったのだろうか?
 あと、ここは寝室にするより、応接間にした方が良かったのでは?
 この辺で、ちょっと変わった家だなと思った。
 あと、最近の家だとダイニングとキッチンが一体化しているものだと思うが、この家はキッチンが独立型になっていた。
 ドアを開けて、左側に2階に上がる階段。
 右に、キッチンへ行くドアがあった。
 キッチンは広々としていて、窓も3つあり、開放的だ。
 だったら、一体型にしても良いだろうに……。

 愛原「てか、何だこの壁は?」

 せっかく開放的な空間を阻害している物があった。
 それはガスコンロの後ろにある壁。
 それがせり出しており、コンロ付近が圧迫されている感がある。

 愛原「ちょっと図面見せてもらっていいですか?」
 松浦「どうぞ」

 私は図面を見た。

 愛原「やっぱり……」

 この壁の向こうは、リビングがあるはずである。
 本当だったら、こんな壁撤去して、カウンターにでもした方が、料理の受け渡しとかもしやすいだろう。
 何故そうせずに、こんな分厚い壁を作ったのか。
 図面を見たら、余計に首を傾げることとなった。

 愛原「壁が二重になっている!?」

 キッチン側の壁と、リビング側の壁の間に、変な空間があるのだ。
 恐らく、畳2畳分くらい。
 畳2畳を縦に繋ぎ合わせたくらいの。

 愛原「何ですか、これは?」
 松浦「何でも、最初はここに収納スペースを造るつもりだったらしいのです」
 愛原「収納スペース?」
 松浦「はい。確かにリビング側に扉を付ければクローゼットになりますし、キッチン側に扉を付ければ食器棚として使えます。ところが、途中で資金が足りなくなり、断念してしまったとのことなのです。その時は工事が進んでいた為に、間取りを変更することができなくなっていたそうで」
 愛原「ふーん……。そうなんだ」

 とはいえこの空間に、死体でも隠しておけそうな気はする。
 しかし、扉が無いことにはどうしようもない。
 まさか、壊すわけにもいくまい。

 高橋「おい、リサ!勝手に上に行くな!」
 リサ「先生、2階もみてみようよ!」
 愛原「待て待て。もう少し、キッチンを調べてからだ」

 例えば、アメリカのルイジアナ州の片田舎で起きたバイオハザードでは、農場の住人達が人食いの化け物に変化した。
 しかし普段は人間の姿を保ち、自我も持っていた。
 だが、農場にやってきた人間を捕えては、料理して食べていたという。
 日本の山姥もビックリである。
 ここの住人もそうだったとすると、キッチンにこそ何がしかの痕跡があるのではないか。
 私はそう思ったのである。
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“私立探偵 愛原学” 「年末最後の仕事」

2023-06-15 11:31:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。

 愛原「うーん……」

 私は手を伸ばしてアラームを止めた。
 それから、部屋を出る。
 鍵は内側に3つ付いている。
 リサの侵入を防ぐ為だ。
 引っ越し先でも、これくらい付けないとダメなのだろうか。
 外から開けるには、専用の鍵やカードキー、暗証番号が必要になる。

 愛原「おはよう……」

 起きると、既にキッチンには高橋とパールがいた。

 高橋「おはようございます!」
 パール「おはようございます」
 愛原「お前ら、昨夜は随分と『お楽しみ』だったのに元気だな?いや、若いっていいなぁ!」
 高橋「い、いえ、それはその……」
 パール「申し訳ありません。私は『気持ちいい』時と『イク』時は大きな声が出てしまうのです」
 愛原「あー、だろーな」
 高橋「もっと静かにしろっつったろ!」
 パール「嫌だったら、静かにさせたら?」
 高橋「おー、上等だ!今度はギャグボール着けてやんよ!」
 パール「それは楽しみね」
 愛原「朝から何言ってるんだよ……」

 私は呆れてトイレ経由で、洗面所に向かった。
 顔を洗った後で、リサと絵恋も起きて来る。

 リサ「先生、おはよう……」
 愛原「おはよう」
 絵恋「おはようございます」
 愛原「おはよう。2人も、昨夜は『お楽しみ』だったようだな?」
 リサ「うっ……」
 絵恋「うっ……」
 愛原「とはいえ、絵恋さんの声が途中で聞こえなくなったが……」
 リサ「エレンの喘ぎ声がうるさいんで、こいつの口に脱がしたパンツ突っ込んだ」
 愛原「リサも似たようなことするなぁ……。で、俺だけ蚊帳の外か……」
 リサ「!」
 高橋「!」
 愛原「リサと絵恋さんは、シャワーで汗を流せよ?」
 リサ「先生!今夜はわたしが先生の部屋に行くから、鍵開けといて!」
 高橋「先生!今度は俺が熱い夜を提供させて頂きますんで!」
 愛原「アホか!」
 リサ「エレン、早くシャワー浴びよう」
 絵恋「そうね。少し汗臭いわ」

 まあ、17歳の女子高生の汗の匂いは爽やかさも感じられるものだが。

 愛原「ったく。この部屋がヤリ部屋になっちまうよ」
 高橋「俺やパールの知り合いで良ければ、セフレの1人や2人、すぐ紹介できますよ?なあ?」
 パール「そうですね。ぶっちゃけ、メイド仲間のサファイヤやエメラルドも相当マニアックなプレイが好きですから」
 愛原「いらんっちゅーに」

 しばらくして、やっと朝食が始まる。
 朝食は2つ目玉のベーコンエッグにウィンナー、生野菜サラダ、トーストにコーンスープであった。

 愛原「今日は9時半になったら、ここを出発する。高橋、車の用意頼むな?」
 高橋「任せてください」

[同日09時30分 天候:晴 同地区 愛原のマンション]

 マンション裏手の駐車場に行き、そこに止めてある車に乗り込む。
 車はレンタカー会社からリースしているもので、商用ワゴン。
 タクシーにも5ナンバーで使用されている車種。
 どうしてこれなのかというと、他のちゃんとしたミニバンよりも値段が安いということもさることながら、隠密行動の時に商用車の方がどこにいても怪しまれにくいからである。
 例えば住宅街やオフィス街に止まっていれば、宅配業者あるいは何かの工事業者などの車に化けることができる。

 高橋「先生方は後ろに乗ってください」
 愛原「分かった」

 高橋は助手席後ろのスライドドアを開けた。
 私とリサ、絵恋でそこに座る。
 取りあえず、現地までの運転は高橋がした。
 その為、パールは助手席に座る。
 さすがにパールはメイド服から、私服に着替えていた。
 黒い革ジャンの下に、迷彩服を着て、下はジーンズである。
 私服だけを見ると、とてもメイドには見えない。

 高橋「それでは出発します」
 愛原「ああ、頼むよ」
 リサ「直に、『鬼の棲む家』に行くの?」
 愛原「いや、その前に一軒立ち寄る所がある」
 高橋「あえて本店ではなく、支店から攻めるとはさすがです」
 愛原「同じ市内にあるから、そっちの方が無難だろ」
 リサ「何の話?」
 愛原「昼飯を食ってから行こうってことだよ」
 リサ「おー、お昼!何を食べるの?」
 愛原「ラーメン。具体的には、激辛タンメンだよ」
 リサ「おー……」
 愛原「お前、激辛に挑戦したいと言ってただろ?挑戦してもらうぞ」
 リサ「そういうことか。望むところ」
 絵恋「あ、あの……。私は、辛いのは全然ダメなんですけど……」
 愛原「大丈夫。辛くないラーメンもちゃんと売ってるから、絵恋さんはそれを食べるといいよ」
 絵恋「そ、そうですか。ありがとうございます」

 私は前に座っている2人に聞いた。

 愛原「キミ達はどうなんだ?」
 高橋「激辛?全然OKスよ?」
 パール「同じく」
 愛原「リサと同じ物、注文しろよ」
 高橋「9辛っスね。了解っス」
 パール「9辛かぁ……」
 高橋「おっ、どうした?怖気づいたか?」
 パール「今まで8辛までしか食べたことなかったから、9辛は初めてだねぇ……」
 高橋「いい機会じゃねーか」
 パール「そうね」
 高橋「先生は何辛にするんスか?」
 愛原「3辛くらいでいいよ」
 高橋「初心者向きっスねぇ……」
 愛原「うるせーよ。俺もカレーは中辛までがせいぜいなの!」

 その為、リサはカレーを食べる時にタバスコをドバドバかけている。

[同日11時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区仲町 某コインパーキング]

 途中から首都高に乗って、さいたま市を目指す。
 そして、新都心西出口で高速を降り、それからまずは最寄りの駐車場に向かう。
 店には駐車場が無いので、近くのパーキングに車を止めるしかない。
 幸いコインパーキングで空いている所があったので、そこに車を止めた。

 愛原「ここは歩きで。繁華街の中にあるから」
 絵恋「ナンギンですか。夜は歩けないですね」
 パール「確かに、御嬢様にとっては危険です。が、私がついていますので、ご安心ください」
 愛原「今は昼間だから大丈夫だろ」

 私達は車を降りると、多くの人が行き交う中、ラーメン店に向かった。
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