報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「年末の打ち合わせ」

2023-06-20 20:19:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日20時40分 天候:晴 東京都豊島区南池袋 首都高速5号池袋線上り・南池袋PA]

 南池袋パーキングエリアは、片側上り線にしか設置されていない。
 これはかつて、料金所があった頃の名残だ。
 料金所が廃止され、その跡地にパーキングエリアが作られたものである。
 その為、あまり広いパーキングエリアではない。
 中に入ると、最初に普通車の駐車スペースがあった。
 15台駐車できるというが、その殆どが埋まっている。

 高橋「ん?ここか?」

 黒塗りのハイエースから善場主任が降りて来た。
 そして、その隣に駐車していたライトバンが出て行く。
 どうやら、そこに止めろということらしい。
 ライトバンはデイライト関係者の車だったのか。
 高橋はハザードランプを点けて、ハイエースの隣に駐車した。
 そして、私はスライドドアを開けた。

 善場「お疲れ様です。愛原所長」
 愛原「お疲れさまです」
 善場「御足労ありがとうございます。話がありますので、あの現場にいた方のみ、こちらの車にお移りください」
 愛原「まさか、どこかへ移動するるのですか?」
 善場「いえ、外でお話はできませんので、中で話をするだけです」
 愛原「そうですか……」

 あの現場にいたのは私とリサ、高橋だ。

 絵恋「私達は向こうの休憩所にいます」
 パール「そうしましょう」

 現場にいなかった絵恋とパールは対象外なので、ハイエースには乗れない。
 このまま車の中で待機しても良いのだが、降りて待つことにした。
 駐車スペース後ろの歩道を通って、休憩所へと向かっていった。
 私達はハイエースの中へ。
 外は寒かったが、車の中は暖房が効いていて暖かい。
 また、スモークガラスだけでなく、カーテンも全部閉まっていた。
 助手席や運転席後ろのカーテンも閉められている。

 スライドドアが閉まってから、善場主任は私達に向き直って言った。

 善場「改めまして、お疲れさまです。昼間に愛原所長方が見舞われた被害について、この度はお話ししたいと思います」
 愛原「お願いします」
 善場「まず、リサが戦った男の『鬼』について、現場周辺の防犯カメラから解析しました」
 愛原「早いですね」
 善場「民間所有のカメラだと手続きが面倒なのですが、警察が所有しているカメラなら話は別です」
 愛原「なるほど。交差点などに設置されているカメラのことですね?」
 善場「そうです。リサが追い掛けたのは、この男で間違いないですね?」

 善場主任は1枚の画像を見せた。

 リサ「そう!こいつ!」

 リサもまあロリ顔だが、この男の『鬼』とやらも、思ったよりもガキっぽく見えた。
 私はつい、高橋みたいなヤツを想像していたのだが……。
 確かに、人間にしてみれば中高生に見えてしまう。
 鬼としての年齢は、リサと同じくらいということか。
 だから、イケメンではあるが、韓流スターというよりはジャニーズに近いかもしれない。
 で、確かにリサが言ってたように、色黒であった。
 画像がそこまで鮮明ではないのだが、多分赤銅色だろう。
 変化前のリサのように、前頭部の上に1本角が生えていた。
 両耳が長くて尖り、牙が生えていて、両手の爪が長くて鋭い所はリサと同じ。

 愛原「こいつも、普段は人間に化けて暮らしているのだろうか?」
 善場「それは現在調査中ですが、その可能性は大きいです」
 愛原「リサから逃げる時に、たまたま通り掛かったトラックの屋根に便乗して逃げたんですよね?」
 善場「そうです。この画像は、その時に撮影されたものです」
 愛原「そうでしたか。ということは、このトラックについても分かりましたか?」
 善場「はい。栃木県の運送会社のものでした。都内へ配送に向かっていたようです」
 愛原「すると、この男は都内まで乗って行ったと?」
 善場「いえ、違います。このトラックは首都高埼玉大宮線を走行し、美女木ジャンクションから、外環道に入っています」
 愛原「それから?」
 善場「外環道の東方面ですね。それから川口ジャンクションにて、今度は首都高川口線に入っています」
 愛原「で、この男がトラックを降りたのは……?」
 善場「川口パーキングエリアです。トラックは、そこで休憩を取っています」
 愛原「川口かぁ……。微妙だな……」
 善場「しかも川口パーキングエリアは、隣接する公園“イイナパーク”を介して一般道に出ることが可能です。もちろん、車の出入りはできませんが……」

 恐らく鬼の男は、そこでトラックを飛び降り、“イイナパーク”を通って逃走したのではないかと善場主任は見ている。
 この場合、男は埼玉県内に留まっているのか、都内へ向かったのかは不明だ。
 また、この近くには埼玉高速鉄道の新井宿駅もあり、人間に化けられるのなら、そこから地下鉄に乗って移動も可能だ。
 それもまた、予測不能さを呼んでいる。
 下り電車に乗れば終点が浦和美園、つまりさいたま市に戻ることができるし、上り電車に乗れば、東京メトロ南北線と相互乗り入れしていることもあり、そのまま都内へ向かうことも可能だからである。

 愛原「駅の防犯カメラを見せてもらうしかないでしょうね。地下鉄の駅なら、防犯カメラもあるでしょうから」
 善場「私達は警察ではないので、あまり積極的に動くことができないのです」
 愛原「えっ?でも、この画像は……」
 善場「うちの職員に、浦和西警察署に勤務していたことのある者がおり、そのツテで何とかできました。しかし、川口市内などを管轄する警察署にはツテが無いのです」
 愛原「そこは国家機関として……」
 善場「この鬼の男が、バイオテロと関係があることを証明できれば、その権限を使うことができます。しかし現在は、ただの放火殺人未遂の疑いのある者というだけです。今は埼玉県警の管轄です。私達がそう簡単に首を突っ込める状態ではないのです」
 愛原「分かりました。それはしょうがないですね。とはいえ、このままでいいと思えません。リサが今こうして復讐に燃えているのと同様、それは向こうも同じでしょう。鬼というのは、執念深いですから」
 善場「リサ、その男と戦っている時、男は何か言ってましたか?」
 リサ「特に重大なことは言ってなかった。ただ……」
 善場「ただ?」
 リサ「『俺以外にも鬼がいたのか!』って、驚いてた」
 愛原「んん?」
 リサ「『しかも女だ!』って」
 愛原「それはつまり……」
 高橋「本物の鬼ってことっスか?」
 善場「まさか。例えば源頼光の伝説で有名な酒呑童子や茨木童子でさえ、伝説では鬼ですが、その実は人間の山賊であったわけです。実在はしないはずですよ。リサの場合は、たまたま体内のGウィルスや特異菌が、鬼の姿を形成してしまった、偶然の産物です」
 愛原「ということは、その男も、Gウィルスや特異菌を体内に有した者ということですか?」
 善場「あ、有り得ないです。そんなのが国内に入ってきたら、すぐに分かります」
 高橋「こいつ、外国人か?……いや、日本人だよなぁ……」
 善場「とにかく、埼玉県警には私共も捜査協力という形で、何とか情報提供を求めるようにします」
 愛原「私達はどうすれば?」
 善場「リサ、その男に自分のことを話した?」
 リサ「そんなことするわけがない。『お前は誰だ?』とかは聞かれたけど、『アンタなんかに教えるか!』って爪で引っ掻いてやった」

 リサの方が押していたが、鬼の男は火を噴いて、リサを火だるまにした。
 その隙に逃げたというわけだ。

 愛原「じゃあ、俺達が都内に住んでいるかどうかは知らないってわけだ。助かった」

 願わくば、埼玉県内を永遠に探し回っててもらいたいものだ。
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“私立探偵 愛原学” 「埼玉から立ち去る」

2023-06-20 14:47:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日18時30分 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区本町西 イオンモール与野3階サイゼリヤ]

 私達は買ってきた服や靴を、リサの所に持って行った。

 リサ「ありがとう。すぐに着替える」

 リサはそう言って、車の中で服を着た。

 リサ「お待たせ」
 絵恋「きゃーっ!リサさん、元通り!」
 リサ「あー、うん……」

 リサはパーカーのフードを被った。

 リサ「あのクソ野郎、絶対にブッ殺す……!」
 愛原「後で何があったか、聞かせてもらうよ。取りあえず、まずは飯にしよう。ファミレスでいいか?」
 リサ「ステーキがいい」
 愛原「ステーキならあるぞ」

 というわけで、私達はモール内のサイゼに移動した。

 愛原「飯代、大人は出せよ?」
 絵恋「わ、私も自分で出しますから!……大人の女性として
 リサ「エレン、処女喪失したん?」
 高橋「そっちかよw」
 リサ「だって、ディルドで処女膜破ったくらいじゃ、『処女喪失』にはならないって……」
 高橋「まあ、そこは人それぞれだな」
 パール「膜破ったんだから、喪失でいいんとちゃう?」
 高橋「いや、やっぱそこはチ○○じゃねーとダメだろ~」
 愛原「お前ら、何の話してるんだ」
 高橋「あっ……」

 店に入って、テーブルに着く。

 リサ「リブステーキ」
 愛原「あいよ」
 リサ「分厚いヤツ」
 愛原「いや、多分、厚さは一択しかないと思うぞ」
 リサ「えー」

 私が注文票に記入していく。
 みんなの分の注文が終わると……。

 愛原「ほい、高橋。注文してくれや」
 高橋「分かりました」

 高橋が店員に注文票を渡す。

 絵恋「リサさん、ドリンクバー取ってこよう」
 リサ「うん」
 パール「いえいえ。私が取りに行きますので、御嬢様方はこちらでお待ちください」
 高橋「俺は先生のを取ってきます」
 愛原「ああ、ありがとう」

 高橋とパールがドリンクバーへと向かった。

 愛原「それでリサ、男の『鬼』とはどんなヤツだった?」

 リサはチラッと近くのテーブルを見た。
 そこではリサ達と大して歳の変わらぬ……というか、ほぼ同じ年頃のJK達がK-POPアイドルについて盛り上がっている。

 リサ「恐らく、人間の女が見たらイケメン。その男、多分その顔で人間の女を釣って食ってる。そう見えた」
 愛原「マジか……。西洋の吸血鬼みたいだな。イケメンと言えば、うちにも高橋みたいなのがいるけど、それは?」
 リサ「タイプが違う。お兄ちゃんはあくまでも、ホスト系。鬼の方は多分、アイドル系だと思う。ジャニーズとかK-POPとかはあんま知らないけど……。多分、人間に化けるとしたら、そんな感じ」
 絵恋「流行りに流されないリサさんは、素敵ですぅ~
 愛原「そうなのか」
 リサ「で、多分、赤鬼だね」
 愛原「赤鬼?どうして分かる?」
 リサ「全体的に色黒だったから。ほら、赤銅色って言うの?あれ、赤っぽく見えるよね?人間はそんな肌色をした鬼を見て、赤鬼と呼ぶようになったんだよね」
 絵恋「うあー……顔の良さだけを自慢してそうなタイプ……。私、そういうの嫌い」
 愛原「そこはまだ高橋の方がマシか。あいつ、イケメンという自覚すら無いから。で、見た目の歳は?高橋くらい?」
 リサ「いや……。もしかしたら、高校生くらいかも……」
 愛原「ええっ!?」
 リサ「鬼の年齢なんて、分かんないよ。でも、オジさんとかじゃないよ」
 愛原「顔のイラストとか描けない?」
 リサ「わたし、美術だけは苦手で……」
 絵恋「それなら、美術部のコに描いてもらえばいいんじゃない?リサさんところの『四天王』にいるんでしょ?」
 リサ「そうだ、サクラヤがいた!あいつに描いてもらおう」

 リサはすぐに自分のスマホを取り出した。
 それから、注文したものが運ばれてくる。

 リサ「おー、ステーキ!」
 愛原「まあ、とにかく無事で良かった。好きに食べてくれ」
 リサ「いただきまーす」

[同日20時00分 天候:晴 イオモール与野5階・駐車場]

 夕食を終えた後、トイレに行ったりして、それから車に戻った。

 愛原「ん?」

 その時、私のスマホに着信があった。
 出てみると、それは善場主任だった。

 善場「愛原所長、お疲れ様です」
 愛原「お疲れ様です」
 善場「今、どちらにいらっしゃいますか?」
 愛原「さいたま市中央区のイオンモール与野ですが……」
 善場「これから、車で帰宅されるのですね?」
 愛原「はい、そうです。たった今、出るところです」
 善場「帰りは首都高経由ですね?」
 愛原「そのつもりです。何かありましたか?」
 善場「私達も首都高の上にいるんです。途中のパーキングで合流できませんかね?」
 愛原「ちょっとお待ちください」

 私は運転席にいる高橋に声を掛けた。

 愛原「高橋、首都高はどういう経路で行くつもりだ?」
 高橋「そうっすね……。取りあえず、5号線を通って行こうかと」
 愛原「もしもし?5号池袋線を通る予定です」
 善場「かしこまりました。そうなりますと、途中に南池袋のパーキングがあります。そちらで合流をお願いできますか?駐車場所は確保しておきますので」
 愛原「分かりました」

 私は電話を切った。
 そして、車に乗り込む。

 高橋「いいっスか?」
 愛原「ああ、頼む。でさ、ちょっと善場主任が話があるみたいで、南池袋のパーキングで合流したいんだと」
 高橋「南池袋っスか?」
 愛原「ああ。5号池袋線を行くってことは、通るだろ?」
 高橋「そうっスね」
 愛原「何でも、善場主任達も今、首都高を走っているらしい」
 高橋「何かの取り締まりっスかね?」
 愛原「……鬼の取り締まりをしてるのかもな」
 高橋「……それ、ガチバナっすか?」
 愛原「多分。何でも、リサと戦った『鬼』の男は、長距離トラックの荷台に飛び乗って逃げたそうだ。そうだろ、リサ?」
 リサ「うん!」

 リサはさすがにナンバーまでは覚えていなかったが、それがアルミバンのハコ車の10トン大型。
 キャブの色が緑色っぽいところまでは覚えていた。
 国道17号線新大宮バイパスの上り線を走行していったという。

 愛原「どうやら善場主任、そのトラックを特定したらしいぞ」
 高橋「マジっスか?ヤバいっスねぇ……」

 車は立体駐車場を出て、県道の交差点に出た。
 そこを右折すれば、その新大宮バイパスはすぐそこだ。
 しかし……。

 パール「マサ、ここは左に曲がって」
 高橋「あ?何でだよ?」
 パール「そこからバイパスに乗ると、与野から首都高に入れないから」
 高橋「そうなのか?」
 愛原「パールの方が土地勘あるか」
 パール「まあ、そうですね」

 ということで、県道は左折する。
 モールの駐車場を回り込むようにして、また次の信号を左折といった感じにグルッと回って国道に出た。

 パール「で、そこを曲がれば首都高の入口ってわけ」
 高橋「……なるほどな」
 愛原「さっきの話に戻るぞ。もちろん、トラックは無関係だ。たまたま便乗されただけに過ぎない。しかし、『鬼』の方も、ある程度の距離は便乗したことだろう。それだと逃げたことにはならないからな。そのある程度の距離って何だと思う?」
 高橋「うーん……」
 愛原「俺が鬼なら、最初のパーキングエリアに止まった時にするかな。それだと車も止まってるから、飛び降りる危険性も無いし」
 高橋「なるほど。そういうものっスか。もしかして、それが南池袋なんスか?」
 愛原「いや、さすがにそれは違うみたいだ。たまたま、俺達と合流しやすい場所なだけ」
 高橋「何だ、そうっスか」
 愛原「実際どこに止まってたのかは、後で教えてくれるらしいよ」
 高橋「なるほど……」
 愛原「取りあえず、南池袋まで行ってくれ」
 高橋「了解っス」
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“私立探偵 愛原学” 「鬼との戦い」 2

2023-06-20 11:47:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日17時30分 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区本町西 イオンモール与野]

〔ピンポーン♪ 5階です。下に参ります〕

 私と高橋は、エレベーターで立体駐車場に向かった。
 イオンモール与野の立体駐車場は5階建てで、その上に屋上もある。
 しかし、パールが言ってた最上階とは屋上のことではなく、5階のことだったようだ。

 パール「愛原先生、こちらです!」

 メイド服と打って変わって、革ジャンと迷彩服、ジーンズと、およそメイドらしからぬ私服であったが、私に対する言葉遣いは変わらない。
 ナイフは服のどこに隠しているのだろう?
 私達はパールの案内に従って、車に向かった。

 パール「こちらです」

 見覚えのある車に辿り着くと、パールは助手席後ろのスライドドアを開けた。

 我那覇絵恋「愛原先生」
 リサ「先生……」

 リサは確かに全裸なようで、車の中にあった毛布に全身を包んでいた。

 愛原「リサ!よく無事だったな!いやあ、良かった良かった!」
 リサ「先生?」

 私は何だか嬉しくて、リサの両肩を何度もポンポン叩いた。

 パール「愛原先生、感動の再会中、申し訳ございませんが……」
 愛原「おっと!何だ?」
 絵恋「そうよ!リサさんをずっと裸のままにしておくわけにはいかないわ!新しい服を買ってあげないと!」
 パール「幸いここはイオンモールです。調達は簡単です」
 愛原「そ、そうだったな。幸いイオンモールにはユニクロもABCマートもあるし、いっちょ揃えてくるか」
 絵恋「ユニクロですか?もっと高いいい服にしてあげましょうよ」
 愛原「いや、リサが着てた服、全部ユニクロ調達してたヤツで、靴はABCマートで買った記憶があるんだが?」
 リサ「わたしもそこでいいよ。エレンの服は動き難そう」
 絵恋「ガーン!」😨
 愛原「服のサイズだが……」
 絵恋「あ、わたし知ってまーす!」
 愛原「そうか。それじゃ……って、ええ!?」
 リサ「何でオマエ、わたしの服のサイズ知ってるんだよ?」
 絵恋「リサさんのことは何でもお見通しです!」
 高橋「レズガキがキモガキにアップデートしやがったw」
 絵恋「何よ!?」
 高橋「先生、ついでにスーツを新調されるのというのは?」
 愛原「しかし、服のサイズが……」
 高橋「大丈夫です。俺が全部熟知しています」
 絵恋「アンタも人の事言えないじゃいのよ!」

 車にはもちろん、リサが残った。
 あとは護衛として、パールに残ってもらった。

 絵恋「いいこと?リサさんに危害を加えるヤツは、パールのナイフでズダスダに切り刻んでやって!」
 パール「かしこまりました。御嬢様」

 という物騒なやり取りを残して……。

〔下に参ります。ドアが閉まります〕

 私達は再び駐車場から、ショップフロアに下りるエレベーターに乗り込んだ。

 愛原「リサに敗走したんだろ?鬼の執念深さは俺も聞いているが、さすがに今日は仕返しに来ないだろう」
 高橋「普通はそうっスけどね……」
 愛原「お前だったら、ケガが治り次第、仲間引き連れてリベンジに行くってか?」
 高橋「当たり前っス!」

〔ピンポーン♪ 2階です。下に参ります〕

 ドアが開いて、私達はエレベーターを降りた。
 幸い、エレベーターの近くに店があった。

 愛原「リサが今日着ていたものと、なるべく同じ物を買ってあげよう」
 絵恋「えー?それじゃつまらなくないですか?」
 愛原「リサだって、『今日着てたヤツがいい』って言ってたじゃないか」
 絵恋「まあ、そうですけど……」
 愛原「今日着てたのは、パーカーとトレーナーとショートパンツと……」
 絵恋「リサさん、太もも丸出しで寒くないのかしら……」
 高橋「鬼だからな。問題ねぇ」

 そういえば、『鬼』の男に服を燃やされた後も、そんなに寒そうにはしていなかったそうな。

 愛原「あった、これだ。絵恋さん、サイズは?」

 絵恋さんは的確な記憶力でもって、リサの服のサイズをスラスラ答えた。

 高橋「お前、よく知ってるな?」
 絵恋「愛の力です」
 高橋「キモッ!」
 絵恋「あら?お兄さんだって、『愛する』愛原先生のスリーサイズからスーツのサイズまで、全部御存知だとお伺いしましたけど?」
 高橋「当然だ!!」
 愛原「お前らかキメェわ。LとBめ」
 絵恋「ゴメンナサイ」
 高橋「サーセン」
 愛原「因みに、パールのサイズも知ってるんだろ?」
 高橋「えー、あいつは身長167cm、スリーサイズは上から92/60/88っスね」
 絵恋「着痩せするタイプだから気づきにくいけど、結構いい体してるのよね」
 愛原「『主従の垣根を越えて……。~イケないメイドと御嬢様の交感日記~』」
 絵恋「え?何か言いました?」
 愛原「……いや、何でもない。次は下着だな」
 絵恋「リサさんは確か、デニムの下は黒いパンツを穿いてましたわ」
 愛原「あいつはパンツ姿の時は、下にブルマを穿かないんだ」
 絵恋「レギンスも穿かないですよね。私も真似してみようかな……」
 愛原「絵恋さんは普通の人間なんだから、そんなことしたら風邪引くよ」
 高橋「中身は人外っスけどね」

 ダンッ!(思いっきり足を踏みつける音)

 高橋「痛ってーな!」
 絵恋「せっかくだから、もっとかわいい下着を買ってあげましょうよ」
 愛原「そうしたいところだけど、リサはあれでいいらしいから」
 絵恋「そうですかぁ?」

 とにかく、私達はここでリサの服を一式買い揃えた。

 愛原「次は靴だ。ABCマートに行くぞ」
 絵恋「はーい!」

 次は、靴を買いに行った。
 靴のサイズは、私も知っている。
 動きやすいスニーカー系の靴をリサは履いていた。

 高橋「火を吐く鬼なんて、珍しいっスね。どんな血気術っスか?」
 愛原「リサの電撃も大概だが、火の方がタチ悪いな」
 高橋「家が全焼ですもんね」
 愛原「そうそう」

 靴も購入して……。

 愛原「これでクエストクリアかな」
 高橋「高いクエストになりましたね」
 愛原「これも雑損控除として確定申告すれば、税金安くなるから」
 高橋「さすがは先生」
 愛原「あとはリサにこれを着させて、あとは飯食って帰ろう」
 高橋「そうしましょう」
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