報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む家」 3

2023-06-18 21:03:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日14時30分 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 某戸建て住宅]

 私は物置の天井にある点検口を開けた。
 そこから天井裏に入ると、壁にはある物があった。

 愛原「梯子がある!?」

 それは上に続いていた。
 上というと2階だ。
 この上は何の部屋があったっけ?

 愛原「松浦さん、この上って何がありましたっけ?」

 私はこの家を管理している不動産屋の松浦氏に質問した。

 松浦「えー、この位置ですと、だいたい夫婦の寝室辺りですかね……」
 愛原「ちょっと図面を貸してもらえませんか?」
 松浦「はい」

 私は松浦氏から図面を借りた。
 そして、1階の図面と2階の図面を重ね合わせてみる。
 確かに、この上は夫婦の寝室のようだ……が、よくよく見ると、『子供部屋』の角にも重なっているように見えた。
 子供部屋の角にあるのは……棚?

 愛原「ちょっと!もう1度、『子供部屋』に行くぞ!」
 高橋「はい!」

 私達は急いで2階の『子供部屋』に向かった。
 そして、その部屋の角にある棚の所に行く。

 愛原「高橋、ちょっとこの棚、退かすぞ!そっち持て!」
 高橋「うっス!」

 棚は本棚か何かに使われていたのだろうか。
 私と高橋でそれを退かすと、何と!
 跳ね上げ扉があった。
 それを跳ね上げると、果たして下に降りる梯子があった。

 リサ「この梯子、血の臭いがする」

 というか、よく見ると、血の痕が付いているようだ。
 さすがにここは分からないと思ったか、清掃しなかったようである。
 懐中電灯で下を照らすと、開けっ放しにしておいた物置の点検口が見えた。

 高橋「何の為にこんな抜け穴が?非常脱出用っスかね?」
 愛原「んなわけあるか。ここから『鬼』が食い残した死体を投げ込むんだよ。そして投げ込まれた死体は、物置の中に自動的に一時保管されるシステムってわけだ」
 高橋「よく、こんな凝った造りを……」
 愛原「ああ。となると……」

 私は部屋のもう一隅を見た。
 そこにも同じような本棚が置かれている。

 愛原「あの下にも何かあるんじゃないのか?」
 高橋「見てみましょう」

 その本棚を退けると、やっぱり跳ね上げ扉があった。

 愛原「この下はどこに通じてる?」
 松浦「え、ええと……」

 松浦氏も少し混乱気味だった。
 不動産屋でも知らない、秘密の通路が出て来たから当然だろう。

 松浦「ゲストルームかキッチンですかね……」
 愛原「いや、違うな……。これは……」

 私は、あっと気づいた。

 愛原「ここじゃないのか?」

 それはキッチンの裏にある、謎の空間。
 最初は収納スペースとして設計された所だと思われた空間。

 愛原「確かに、収納スペースだったのかもしれんが、もしかしたら、死体を隠す為の場所だったりしてな?」
 高橋「ま、まさか……」
 愛原「開けてみるか?」
 高橋「あ、開けましょう……か」

 私は跳ね上げ扉を開けた。

 愛原「うっ!?」
 高橋「げっ!?」
 松浦「わっ!」
 リサ「ウウウ……!」

 物置側に通じる方は、僅かな臭いしかしなかったが、こちらは明らかにとんでもない腐臭がした。

 愛原「おい、この下に何かあるぞ、きっと!」
 高橋「まじっスか!」

 私は息を止めながら、跳ね上げ扉の下をライトで照らした。
 死体らしき物は見当たらなかったが、それでも壁にはベットリと赤黒い染みがいくつもできているのが分かった。

 愛原「これはさすがにマズいだろ!警察案件だ!松浦さん、警察に連絡を!」
 松浦「わ、分かりました!」

 松浦氏は自分のスマホを片手に、部屋の外に出て行った。

 高橋「先生。この下の収納スペースって、横長なんスよね?」
 愛原「ああ。畳2畳分くらいだな。それを縦に合わせた感じの……」
 高橋「向こう側って、どこに通じてるんでしょ?」
 愛原「そうだな……って、ちょっとここは気分が悪い。早いとこ外に……」
 リサ「ねぇ、先生。何か変な臭いがするよ」
 愛原「今度は何だ?」
 リサ「何かが焼ける臭い……」
 愛原「は?」

 その時、松浦氏が慌てて戻って来た。

 松浦「た、大変です!」
 愛原「どうしました!?」
 松浦「火事です!1階が火の海です!」
 愛原「はあ!?」

 私達は部屋の外に出た。
 すると、焦げ臭いというか、もう白い煙が充満していた。
 完全に隔離された『子供部屋』にいたのと、血やら獣やら腐臭やらの強い臭いに鼻をやられて、焦げ臭ささに気が付かなかったのだ。
 私は廊下の窓を開けた。

 愛原「おい、ウソだろ!」

 1階の周りが全て火に包まれている。
 まるで、家の周囲に万遍なくガソリンを撒いて、そこに火を点けたかのようだ。
 玄関も車庫の出口もキッチンの勝手口も火に包まれている。
 もう逃げ場は無い。

 愛原「消火器は!?消火器は無いの!?」
 松浦「確か、キッチンに……」
 愛原「その1階が火の海なんじゃないか!」
 リサ「あーっ!」

 その時、リサが窓の外に何かを見た。

 リサ「鬼だ!待て、この野郎!」

 リサは窓の外に飛び出した。
 自分も『鬼』だから、人外的な跳躍力で外に飛び出すことは可能だった。

 高橋「お前だけ逃げんな!」
 愛原「おい、高橋!こっちから逃げられそうだぞ!」

 私は物置に通じる抜け穴を見た。
 こちらからは、意外と煙が来ていない。
 車庫だからか、防火体制がこの家の中で1番しっかりしているのかもしれない。
 そういえば、玄関ホールからのドアも鉄扉になっていたような気がする。

 愛原「イチかバチかだ。こっちへ避難しよう」
 高橋「は、はい!」

 私達は物置に通じる抜け穴を通って、車庫に避難することにした。

 愛原「あっ!」

 そして、いい物を見つけた。

 愛原「消火器と水ホースだ!」

 物置の中に消火器が。
 そして、車庫の中に水道とホースがあった。
 これは洗車用のものだろう。

 愛原「高橋!シャッターを開けろ!」
 高橋「スイッチボックス!鍵が掛かってますよ!?」
 愛原「松浦さん!」
 松浦「はいはい!」

 松浦さんは持っていた鍵束の中から、シャッターボックスの鍵を取り出し、それで蓋を開けた。
 そして、高橋がボタンを押す。
 ギギギという音がして、シャッターが少しずつ開いて行く。
 が、下から70センチほどの所で止まってしまった。
 恐らく、火災の熱でシャッターレールまたはシャッターそのものが歪んでしまったか、停電でもしてしまったのだろう。
 やはり、外から放火されたようで、開いたシャッターの隙間から、炎が蛇の舌のような動きで屋内に進入してこようとする。
 私はその炎に消火器を噴き付けた。

 愛原「よし、今だ!」

 炎の猛攻が怯んだ隙に、私達は家の外に避難した。
 そして、敷地外まで出たところで、家を振り返ると……。

 高橋「先生、2階にも火が……」
 愛原「ああ!間一髪だな……」

 周りからは近所の住人達が集まり、そして遠くからパトカーや消防車のサイレンが響いていた。
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“私立探偵 愛原学” 「鬼の棲む家」 2

2023-06-18 18:27:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月28日14時00分 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区上落合 某戸建て住宅]

 愛原「本当に隔離部屋があるんですか?」
 松浦「それが、本当にあるんですよ。こちらです」

 それは夫婦の寝室に面したドアだった。
 開けると、また通路があって、奥にドアがある。

 愛原「ん?」

 もう1つのドアを開けると……。

 愛原「何だこれは?」

 見た目は8帖くらいのフローリングの洋室。
 シングルベッドが置いてあって、棚が2つ置かれている。
 引っ越す前は他にも物はあったのだろうが、今はそれだけの殺風景な部屋だ。
 しかも、窓が無い。
 なるほど。
 確かに、隔離部屋である。

 リサ「……この匂い……」

 リサがマスクの上から鼻を押さえている。
 そりゃそうだ。
 人間の私ですら、何となく気づいたのだ。
 見た目には痕跡など無いが、他の部屋とは明らかに何がしかの臭いがする。

 リサ「人間の血の匂いと、それを沢山食べた鬼の体臭が染み付いてる……この部屋……」
 愛原「どことなく、獣の臭いがすると思った。ここに鬼が棲んでいたんだな」
 リサ「恐らく。というか、間違いない」
 愛原「そっちのドアは何だ?」

 部屋の中には、もう1つドアがあった。
 それを開けると、トイレがあった。
 1階のトイレと同様、それは洋式だった。
 特に、変わりはない。

 高橋「このトイレ、この部屋から出入りできないっスね」
 愛原「そうだな。ということは、このトイレはこの部屋備え付けってことですか?」
 松浦「そういうことですね」

 トイレの横には洗面所もある。
 高橋がこんなことを言った。

 高橋「まるでムショの独居房みたいっスね」
 愛原「……あ」
 高橋「それでもムショの方は、まだ窓がありますからね。まあ、トイレは仕切りがあるだけっスけど」

 因みにトイレにも窓が無い。

 愛原「この部屋に出入りするには、2枚のドアを通り抜けなければならない。そして、部屋には一切窓が無い。正に、誰かを閉じ込めておくための部屋だな」
 高橋「もしかして、ここに“獲物”を閉じ込めていたんじゃないスかね?で、鬼が入って来て、“獲物”を食い殺す」
 愛原「なるほど。……松浦さん、この部屋は何に使われていたんですか?」
 松浦「それが、『子供部屋』なんです」
 愛原「子供部屋!?」
 松浦「はい」
 愛原「ゲストルームじゃなく?」
 松浦「はい。ゲストルームは、あくまでも1階のリビングの隣の部屋です」
 高橋「そういえば先生、下のゲストルームも窓がありませんでしたね?」
 愛原「そ、そうだな。ちょ、ちょっと一旦外に出よう。何だか気持ち悪い」
 高橋「そうですね」

 私達は一旦、『子供部屋』を出て、夫婦の寝室に戻った。

 愛原「ふう……」

 夫婦の寝室は臭いも殆ど無く、窓が多いということもあって、解放感があった。

 愛原「そっちの部屋とは偉い違いだな」
 高橋「そうっスね。結局その部屋、何なんでしょう?」
 愛原「そこがゲストルームなんだとしたら納得できるんだけど、ただ、それでも少しおかしいんだよな」
 高橋「え?」
 愛原「そこの『子供部屋』に入るのにも、夫婦の寝室を通らないとダメだろう?」
 高橋「そうですね」
 愛原「ということは、ゲストルームとしては使えないよ、やっぱり。となると、やっぱり『子供部屋』なんじゃないかと思う」
 高橋「何なんスかね?つまり、子供を閉じ込めていたってことっスか?」
 愛原「そう。そしてきっと、その子供が『鬼』だったんだと思う。そこの部屋に“獲物”を連れ込んで……って、ダメだな」
 高橋「ダメですか?」
 愛原「だったら、何でこんなメンド臭い導線になってるんだ?」

 私は再び階段まで戻った。

 愛原「こうやって2階に上がって、廊下をグルッと大回りして、夫婦の寝室に入ってから、ようやく子供部屋だで?“獲物”を連れ込むのに、こんなメンド臭いことするか?」
 高橋「確かに……」
 愛原「それに、子供部屋とかには窓が一切無いのに、廊下にはある。しかも、カーテンが付いていない。外から丸見えの状態で、“獲物”を連れ込んだりして、ややもしたら外から目撃されるかもしれないのに、そういうリスクを取るかね?だったら、階段を上って右に曲がり、その突き当りにドアを付ければいいだろう。まあ、両側の突き当りにも窓はあるけどね」
 高橋「そう考えるとこの家、案外窓多いっスね」
 愛原「そうなんだ。そうなんだよ。まるで、『外から見てください』と言わんばかりに……」
 リサ「『この家に鬼なんていませんよォ』ってことかな」
 愛原「心理トリックか……」

 血の臭いがしたのは、子供部屋と浴室と、家の外のマンホールだった。
 これが意味するものとは?

 リサ「あ、あとちょっと……人間の血の臭いがした所が……」
 愛原「なに?どこだ?」
 リサ「こっち来て」

 リサは階段を下りて1階に行き、それから車庫に向かった。

 リサ「ここから微かに臭いがしたの」

 それは車庫に備え付けられた物置。
 私はそれを開けた。
 恐らくタイヤとかもしまっていただろうから、そういった道具の臭いが微かに残っている。
 しかし、リサはその中から人間の血の臭いを嗅ぎ取ったようである。

 高橋「何でこんな所に?」
 愛原「いくら人食い鬼だからって、人肉や贓物を全部食べるわけではないだろう。仮に食べたとしても、骨までは食べないはずだ。それらを捨てに行く必要がある。だけど、いきなり車に積んで運び出すということができない場合、一時仮置きの場として、この物置の中に死体を入れてたんじゃないかな?」

 それに対して、リサはウンウンと頷いた。

 リサ「さすがにわたしも、骨まで食べたいとは思わない」

 とのこと。

 高橋「なるほど……。因みに、あの切れ目は何なんスかね?」
 愛原「切れ目?」

 物置の天井に、点検口の蓋のようなものがあった。

 愛原「あれは点検口の蓋じゃないのか?」
 高橋「何の為にですか?」
 愛原「何の為って……配管とか配線とかを点検する為の物だよ」
 高橋「そう、ですか」
 愛原「気になるなら、開けて確認してみるか?」

 私は車から持って来た脚立を立てた。
 まさか、ここで使うことになるとは。
 私は脚立に乗り、点検口を開けてみた。

 愛原「ん!?何だこりゃ!?」

 私は天井裏で、ある物を見つけた。
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