報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼狩りからの依頼」

2023-06-13 16:14:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日17時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 年末年の瀬迫る中、私と高橋は仕事納めの準備をしていた。
 民間もそうなのだが、どちらかというと官公庁相手の仕事をしている私達も、29日から年末休みとなる予定だ。

 愛原「今年も色々あったなぁ……」
 高橋「そうっスね」
 愛原「お前は色々あり過ぎだ」
 高橋「サーセンw」

 しかし、最後の最後に仕事の依頼が入るものである。
 事務所の営業時間は18時までだ。
 つまり、今はその1時間前となる。

 愛原「斉藤早苗も死んじゃったし、日本アンブレラ関係の仕事はだいたいこれで終わりじゃないか?」
 高橋「そうですかね?」
 愛原「あとはリサが暴走しないように大学まで面倒看て、それから善場主任の所のデイライトさんに送り込めば、晴れて契約は満了だ。大金が手に入るぞ」
 高橋「本当に探偵の仕事って色々あるんスね」
 愛原「本来はもっと地味なものだが、霧生市に行ってから一変したな」

 マンガやアニメのように、私立探偵が密室殺人事件を解決することは、現実ではまず無い。
 だが、霧生市ではやむを得ない事情があったにせよ、(偶然に偶然が重なったとはいえ)私が事件を解決するハメになってしまった。
 その霧生市で一泊してから帰京しようと思っていた矢先、バイオハザードに巻き込まれてしまったというわけだ。
 それから、私や高橋の探偵人生は大きく変わるものとなった。

〔5階です。下に参ります〕

 愛原「ん?」

 事務所の外にあるエレベーターが、5階にやってきた。
 即ち、誰かが下から来たということ。
 誰だろう?
 善場主任の場合、いつも必ず事前に連絡をくれる。
 しかし、今は無い。
 すぐに事務所入口のインターホンが鳴った。

 高橋「どちら様っスか?……って、あれ?」

 高橋が応対に出た。
 どうやら、高橋の知り合いらしい。

 栗原蓮華「愛原先生、こんばんは」

 カチャカチャと左足の義足の金属音を鳴らして、蓮華がやってきた。
 蓮華もまた霧生市出身で、祖父母宅に弟妹達といたところ、そこでバイオハザードに巻き込まれてしまい、祖父母はゾンビ化。
 弟妹達も、リサがいた日本アンブレラの研究所から脱走した日本版リサ・トレヴァー『1番』に食い殺されている。
 元々『鬼斬り』を生業とする家系だったが、今の日本版リサ・トレヴァー達が鬼に酷似した姿をしていることから、今では栗原家総出で『退治』の対象となっている。
 つまりは『2番』のリサも対象となっているはずだが、蓮華だけは一定の理解を示してくれている。

 愛原「ん、どうしたんだ?もう外は暗いぞ」

 蓮華自身も左足を『1番』に食いちぎられてしまった。
 本当なら食い殺されるはずだが、自衛隊(当時、まだBSAA日本地区本部は無く、日本国内におけるバイオハザード対応は自衛隊や在日米軍に委託されていた)が駆け付けたことで、殺されずに済んでいる。

 蓮華「実はお仕事の依頼なんです。よろしいでしょうか?」

 蓮華は学校の制服の上にコートとマフラーを着けていた。
 義足をあえて隠さないのは、鬼に対する復讐を忘れない為だという。

 愛原「クライアントなの?」
 蓮華「はい」
 愛原「あっ、じゃあ、応接室へ。高橋、お茶を……」
 高橋「は、ハイ。先生に依頼するたぁ、目が高ェが、しかし依頼料は安くねぇぞ?」
 愛原「こら、高橋」
 蓮華「もちろんです。依頼料は、家から出します」

 蓮華の家は表向き、剣道場を経営しているが、他にも土地をいくつか持っていることもあって、なかなかの金持ちだと聞いたことがある。
 もっと大金持ちだった絵恋の陰に隠れてしまった感はあるが……。
 私は蓮華を応接間に案内した。
 蓮華はマフラーを取り、コートを脱いだ。
 東京中央学園の緑色のダブルのブレザーが目立つ。
 身長は170cmと、私よりも高い。
 ソファに向かい合って座る。

 愛原「それで、今日はどんな依頼でしょうか?」
 蓮華「実はうちの実家、不動産業もやっているんです」
 愛原「蓮華さんの家は、結構あちこちに土地を持っているんだって?」
 蓮華「はい。江戸時代から続く家系なもので、色々やってきたもので……。鬼退治をした際に、鬼から分捕った土地とか……」
 愛原「シュールだなぁ。桃太郎みたいに、金銀財宝じゃないんだ」
 蓮華「まあ、桃太郎ではないですし、鬼の全てが財宝を持っているわけではないので。だいたいが土地とか酒とか人間の女とか、そんなところだったようです」
 愛原「人間と変わらんねw ……あ、いや、失礼。それで、栗原家が持つ不動産を、鬼に脅かされているという話かな?」
 蓮華「いえ。それくらいでしたら、私達で対処します。『鬼狩り』の家系ですから」
 愛原「それもそうか。すると……何だ?」
 蓮華「『鬼が棲む家』を調査してもらいたいのです。私達、実戦的な鬼退治のノウハウはありますし、索敵能力も備わっている自負はありますが、今回ばかりはよく分からなくて……。他の家族は反対していますが、私は、『鬼探しは鬼に探させろ』と思っています」
 愛原「鬼探しか。しかし、何の宛ても無い所を闇雲に探すわけにはいかないが……」
 蓮華「そこで、『鬼の棲む家』なんです」

 そう聞いて、私は山姥が棲むような山奥のポツンと一軒家みたいな所を想像した。

 愛原「そうか。で、どこの山奥にあるの?」
 蓮華「いえ、山奥じゃないです」
 愛原「えっ、違う?」
 蓮華「はい。むしろ、埼玉県さいたま市にありまして……」
 愛原「そんな所に『鬼の棲む家』が!?」
 蓮華「そうなんです」
 愛原「よくBSAAにバレなかったな?」
 蓮華「もしかしたら、リサとは違うタイプなのかもしれません。本当に、『鬼』ではないか。私達はそう思っています」
 愛原「……まあ、分かった。もうちょっと詳しい話を聞かせてくれる?」
 蓮華「はい」
 愛原「まさか、絵恋さんの家だったりしないよな?」
 蓮華「多分、違うと思います」

 私は蓮華から話を聞いた。
 そして、この依頼を受けることにしたのだった。

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