報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」 4

2023-06-29 20:57:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日11時16分 天候:晴 栃木県宇都宮市 JR宇都宮駅・在来線ホーム→日光線839M列車先頭車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の5番線の列車は、11時16分発、普通、日光行きです。この列車は、4つドア、3両です〕

 たったの3両である。
 先代の電車は4両編成だったことを考えると、車両減である。
 年末の今はそうでもないが、平日朝のラッシュは大変な混雑になっているという。
 更なる少子高齢化による乗客減を見据えて先に対策を打った形らしいが、今の固定客に嫌われるやり方をしていて、あえて客を逃がすやり方をするのが好きなようである。
 尚、日光方面への観光客輸送は東武鉄道に軍配が上がっている状態である為、JRを利用するのは地元の通勤・通学客、或いは新幹線でアクセスする一部の観光客だけである。

〔まもなく5番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は4つドア、3両です。折り返し、11時22分発、普通、日光行きとなります〕

 列車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
 しばらく待っていると、真新しい3両編成の電車がやってきた。
 フルカラーLEDで、『ワンマン』という表示がされている。
 日光線は4両編成から3両編成に減車された際、投入された新型車両でもってワンマン化された。
 但し、側面のドアは4ドア、車内もオールロングシートと、けしてローカルな雰囲気ではない。
 そこそこの乗客が乗っており、ぞろぞろと降りて来る。
 座席の色と座り心地は、まるで中央快速線のようだった。
 一応、先頭車にはトイレもある。
 先々代(旧国鉄107系)の頃からそうだったが、座席がロングシートしか無いのは伝統か。
 房総方面に投入された同形式の車両にはボックスシートがあるのとは対照的である。

〔ご乗車ありがとうございます。この電車は日光線、日光行き、ワンマンカーです〕

 電車内で発車を待っていると、高橋からLINEが来た。

 高橋「先生、今どこっスか?」
 愛原「今、宇都宮駅だ。これから日光線に乗る。11時22分発の日光行きだ」
 高橋「マジっスか?!俺達、もう日光口パーキングエリアっスよ!」

 日光口パーキングエリアとは、東北自動車道の宇都宮ジャンクションから分岐した有料道路、日光宇都宮道路上にある唯一のパーキングエリアである。
 名前の通り、観光地・日光の入口辺りに存在する。

 愛原「そうなのか。相変わらず、早いな。俺達が乗る電車、日光には12時5分に到着するんだよ」
 高橋「12時5分っスね。了解です。日光駅で待ち合わせでいいっスか?」
 愛原「いいよ、JR日光駅ね」

 という会話で終了した。

[同日11時22分 天候:晴 JR日光線839M列車・先頭車内]

〔お待たせ致しました。まもなく発車致します。閉まるドアに、ご注意ください〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが流れる。
 何やらオリジナルの発車メロディっぽかったが、この時は私は曲名は知らなかった。
 ワンマン運転であるが、宇都宮駅は駅員が扱うタイプなのだろうか?

〔5番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 そして、ドアチャイムを鳴らしながら電車のドアが閉まる。
 ドアチャイムは、首都圏を走る他のJR車両と同じだった。
 一応、始発駅だからか、運転士が直接ホームに顔を出してホームを監視していた。
 ドアが閉まったことを確認すると、運転席に移動してハンドルを操作する。
 すぐに電車が動き出した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、日光線、日光行きワンマンカーです。この先、鶴田、鹿沼、文挾、下野大沢、今市、終点日光に停車致します。次は、鶴田です。……〕

 愛原「高橋達、もう日光にいるらしいぞ」
 リサ「早っ!」
 愛原「今は有料道路のパーキングで休んでいるらしいけどな」
 絵恋「あっちは雪が積もってるのでしょうか?」
 愛原「あー、それは聞いてなかったな。ちょっと聞いてみよう」

 尚、宇都宮市内においてはまだ雪は積もっていない。
 高橋に改めてLINEを送ってみると、次のような答えが返って来た。

 高橋「若干、積もってますよ」

 と。
 なるほど。
 標高が高い町だから、さすがに少しは雪があるのか。
 東武日光線は比較的開けた場所を走るが、JR日光線は鬱蒼とした森の中を走る感じ。
 その中において、一気に標高を稼ぐのだという。
 今の電車なら多少のキツい坂でも軽々と登って行くだろうが、馬力の無いSL時代は大変だっただろう。

 愛原「少し、積もっているらしい」
 リサ「おー、今年初の雪」
 絵恋「私もよ」

 沖縄で雪を見る機会など、全く無いだろう。
 私も微笑ましく思ったが、それに水を差す着信があった。
 善場主任からのメールである。
 善場主任も年末年始休みに入っているはずだが、それを返上しているのだろうか。

 善場「善場です。愛原所長方がこれより出張される日光市の民泊物件ですが、上野医師の実家の住所と一致します。その為、栗原家に対しては、『要調査対象』に指定される見込みです。十分お気を付けください」

 とのことだった。
 どういうこっちゃ?
 私は第2の『鬼の棲む家』……正確には、『鬼の棲んでいた家』に行くはずなのに。
 上野医師の実家の住所って……。
 上野医師って、栃木県出身だったのか。
 上野医師と斉藤玲子とリサの関係ばっかり気にしていたから、そんなの気にしていなかったな。
 私は善場主任に了解の旨返信を送ると、スマホのグーグルマップで例の民泊を調べてみることにした。
 実は先日、グーグルマップのストリートビューで外観だけは見たのだが、まあ、昭和の住宅といった感じの佇まいだった。
 令和の今から見れば、十分古民家だろう。
 私が子供の頃、建て直す前の仙台の実家も、あんな感じだったなぁといった感じで見ていたが……。
 上野医師の生い立ちと年齢からして、確かにその実家が空き家になってしまうのは理解できた。
 それを栗原家の誰かが入手し、改築して民泊として営業していたということになる。
 つまり、栗原家の中に上野医師のことを知っている人間がいるということになる。
 それで、デイライトさんは『要調査対象』に指定しようとしているのだろう。
 指定されると、例え年末年始でも立入調査や聞き取り調査が行われる。
 国家権力の発動なので、これを拒否することはできない。
 何だか……どんどん危険なことを巻き込まれているような……?
 何事も無ければいいのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」 3

2023-06-29 15:55:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日09時18分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔まもなく大宮、大宮。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間に、広く空いている所がありますので、足元にご注意ください〕

 駅弁を食べてお茶でも飲んでいる頃、大宮駅に到着した。
 もちろん、私達はここでは降りない。
 栃木県までしか行かない中距離電車であるが、それでも帰省客が乗り込んで来たりはした。
 新幹線が止まらない所か、或いは新幹線代の節約か。
 満席になるほどではないので、私の空いている隣の通路側には誰も来なかったが。
 停車時間は1分ほどであり、ホームに発車メロディが鳴り響く。

〔「9番線から宇都宮線の普通列車、宇都宮行き、まもなく発車致します」〕
〔9番線の、宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 上り列車も乗客は多かったが、下り列車もそれなりに乗客を増やして、電車は埼玉県のターミナル駅を発車した。

〔この電車は、宇都宮線、普通電車、宇都宮行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、土呂です〕

 大宮駅を出発する頃、高橋からLINEがあった。

 愛原「あいつら、マジか!早ェな!」
 リサ「どうかしたの?」
 愛原「いや、高橋からLINEが来たんだが……。あいつら、もう蓮田サービスエリアに着いたそうだぞ!」
 リサ「ほおほお」

 もっとも、リサはどこだか分かっていないもよう。
 蓮田サービスエリアは埼玉県蓮田市にある東北自動車道のサービスエリアで、東京側の起点から行くと、1番最初に現れるサービスエリアである。
 当然高橋達は、バイクを預けていた篠崎から出発した。
 篠崎には首都高の出入口があるから、そこから首都高に乗り、首都高を経由して東北道へ向かったのだろう。
 街道レーサーだった2人にとっては、首都高は庭のようなものである。
 篠崎から首都高に乗り、そこからバイクを飛ばして、東北道の蓮田サービスエリアで朝食休憩を取っているという。
 自撮りの写真も添付されていたが、どうやらバイクは1台ずつ乗っているようである。
 そういえば、高橋のバイクってどこにしまってあるんだろうと思っていたが、どうやら篠崎であったようだ。
 私は、ようやく電車が大宮駅を出たと返信した。
 そしたら高橋のヤツ、『電車が蓮田駅を出たら、教えてください』とのことだ。
 もちろん、私は了解した。
 ここから蓮田駅なんて、電車で10分ほどだが、朝食はもう食べ終わったのだろうか。
 ある程度、落ち着いたところで、私にLINEしてきたのかもしれない。

 高橋「それにしても、電車は遅いですね」
 愛原「各駅停車の鈍行なんだ、しょうがない」

 という会話で、一旦は終了した。
 尚、東北自動車道は蓮田を出ると、JR宇都宮線とはお別れとなる。
 しばらくは東武伊勢崎線に近い所を走行することになる。

 グリーンアテンダント「軽食、お飲み物でございまーす」
 リサ「む!」

 グリーンアテンダントが車内販売に来た。
 紙のグリーン券の確認や、そもそもグリーン券を持っていない乗客にグリーン券を販売するのも仕事だが、車内販売も業務の1つである。
 リサが目ざとくそれを見つけた。

 愛原「俺も一杯やらせてもらうか」

 尚、車内販売にはビールなどのアルコールの品目もある。
 それが、需要喚起の大きな理由の1つのようである。

 愛原「すいません。氷結1つと、あたりめ1つ……」
 リサ「ポッキーとジュース」
 絵恋「私もください!」
 グリーンアテンダント「はい、ありがとうございます」
 絵恋「り、リサさん……!こ、これでポ……ポッキーゲームなんか……」
 リサ「ん」

 リサはポッキーを口にくわえた。

 絵恋「も、萌えぇぇえぇえぇぇぇぇえっ!!」
 リサ「……まだ何もしてないけど?」
 愛原「こら、静かにしろ」

 電車で移動しているが、特に今のところ何も無いな。

[同日10時34分 天候:晴 栃木県宇都宮市 JR宇都宮駅]

 電車は何事も無く順調に運転を続けた。
 途中でリサや絵恋は、トイレに行ったり、洗面所に行ったり……。
 高橋からは次の連絡は無い(蓮田駅を出た時に連絡はした)が、多分、高速道路を走行しているのだろう。
 冬は二輪は寒いだろうに、若い者はいいねぇ。

〔まもなく終点、宇都宮、宇都宮。お出口は、左側です。新幹線、日光線、烏山線と宇都宮線、矢板、黒磯方面はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔「宇都宮からの乗り越え列車をご案内致します。東北新幹線下り……【中略】日光線下り、11時22分発、普通列車の日光行きは5番線から発車致します。どなた様もお忘れ物の無いよう、もう1度よくお確かめください。今日もJR東日本、宇都宮線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 リクライニングシート車による旅は、ここまで。
 宇都宮から先は、ロングシート車による旅となる。

 愛原「乗り換え時間、少し空いてるから、駅構内でゆっくりしよう」
 リサ「わたしはいいけど、どこが暖房の効いてる所にいた方がいいよ」
 愛原「そうだな」

〔まもなく、止まります。手すりにお掴まりください〕

 網棚から荷物を下ろしたりしていると、私のスマホに着信があった。
 着信音からして、メール方だ。
 重要な連絡の場合、善場主任はLINEではなく、メールを送ってくることがある。
 それかもしれないとスマホを見ると、果たしてそうであった。
 内容は、川口パーキングエリアでトラックを降りた男の鬼のその後の足取りが掴めたという話であった。
 どうやらそいつは、別のトラックに便乗したとのことである。
 もちろん、便乗されたトラックの運転手は知らない。
 それは栃木県の運送会社のトラックで、埼玉で集荷をした後、栃木県に戻る途中だったとのことである。
 そのトラックの行先は、宇都宮。
 つまり、私達がいる今この町である。
 集荷をした後だから、その荷物に紛れ込んで便乗することは可能だったかもしれない。
 その後の足取りは現在調査中とのこと。

〔「ご乗車ありがとうございました。うつのみや~、宇都宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。10番線の列車は、折り返し、10時45分発、上野東京ライン、東海道線直通、普通列車の熱海行きとなります」〕

 リサ「先生、どうしたの?降りるよ」
 愛原「あ、ああ」
 絵恋「リサさん、あそこにエスカレーターがあるから、それで上に行こう」
 リサ「ん」

 私達は列車を降りた。
 宇都宮市はそんなに寒い地域ではないはずだが、心なしか東京より寒いと思った。
 これから日光市という、もっと寒くて雪のある所に行こうというのに……。

 愛原「1度、コンコースに行こう」

 私達はエスカレーターでコンコースに上がった。
 コンコース内にはNewDaysもあるし、待合室もあるから、そこで暖が取れるはずである。
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