報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休み最後の探偵達」 3

2022-11-30 10:59:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[同日13:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私は咄嗟に電話を取ると、すぐに公一伯父さんのケータイに電話を掛けた。
 だが……。

〔お掛けになった番号は、電源が入っていないか、電波が届かない為、掛かりません〕

 愛原:「くそ!」

 それならと、今度は伯母さんの所に掛けてみることにした。

 伯母:「お電話ありがとうございます。旅館さのやです」
 愛原:「あっ、伯母さん!東京の愛原学です」

 静岡で民宿を営んでいる伯母さんの所に掛けた。

 伯母:「あら、学~。この前はありがとね~」
 愛原:「いえいえ。また連休があったら、お願いしますよ」
 伯母:「ええ、ええ。いつでも来てちょうだいね~」
 愛原:「ところで、公一伯父さん、います?」

 すると伯母さん、声のトーンを少し落として言った。

 伯母:「ああ、あのヤドロクね。まだ夏休み期間中でクソ忙しいってのに、『農業の研究に行って来る』っていう書置きを残して、どこかに旅立って行ったのよ。夜中にコッソリとね。そりゃもう、まるで夜逃げみたいで……」
 愛原:「やっぱりか!クソッ!!」

 私が地団太踏んでいると、部屋のインターホンが鳴った。

 リサ:「はい、愛原です」
 配達員:「郵便です。書留です」
 リサ:「はい、どうぞー」

 リビングにいたリサが応対に当たる。
 てか、体操服にブルマのまま応対しちゃダメだろー。

 伯母:「やっぱりって何!?学は何か知ってるの!?」
 愛原:「いや、どこに行ったかまでは知らないけど、どうも公一伯父さん、何か怪しいみたいで……」
 伯母:「ええっ!?」
 愛原:「と、とにかく、何か分かったら連絡するし、伯母さんも何か分かったら教えてよ」
 伯母:「分かったわ。お願いね」

 私は電話を切った。

 愛原:「おい、リサ!」
 リサ:「はい。先生宛て」

 リサは相変わらず緑色の縁の入った丸首体操服と、緑色のブルマを穿いた状態であった。
 多分、配達員もびっくりしただろうな。

 愛原:「ありがとう。オマエなぁ……」
 リサ:「ん?外に出る時は着替えるよ?」
 愛原:「ああ……まあ、いいや」

 リサが気にしないのではあれば……。

 愛原:「って、これ……!」

 今の郵便局は、普通郵便の土休日配達はしない。
 しかし、書留に関しては引き続き土休日も配達してくれる。
 だから、それ自体は特に怪しい所は無い。
 私が反応したのは、差出人の所であった。
 『静岡県富士宮市【中略】 旅館さのや一従業員』とある。
 一従業員って、明らかに公一伯父さんしかいないじゃないか。
 しかも封筒を触ってみると、内側にプチプチの緩衝材が入っているのが分かる。
 開けてみると、そのプチプチに挟まれる形で、USBメモリーが入っていた。

 愛原:「またUSBメモリーだ」

 私は早速、USBメモリーをPCに差した。
 高橋のと同様、何か動画が保存されているようだった。

〔「めでた♪め~でぇた~の♪祭りの夜♪キミと2人きり♪ハイッ!」〕

 愛原:「な、何だこりゃ!?」

 何故か“さのや”の大広間が映し出され、そこで宴会を楽しむ公一伯父さん達の姿があった。
 他の人達は……地元の町内会の人達か何かか?

 愛原:「あれ?他の動画か?あれ?」

 私は違う動画を開いてしまったのかと思い、もう1度確認する。
 しかし、どうしてもこのメモリーに入っているのは、この宴会動画だけのようだ。
 ん?この宴会動画が何だというのだ?
 ……宴会動画は1時間ほど入っていた。
 だが結局、それだけだった。

 愛原:「……いや、待て待て待て」

 私は伯父さんが意味も無く、こんなことをするとは思えなかった。
 そこで、もう1度、宴会動画を観てみることにした。

 愛原:「……これは……?」

 すると、ふと、たまに公一伯父さんが変なことを言うのが分かった。
 他の宴会参加者と談笑しているのだが、たまに噛み合わないことを言っては、他の参加者がツッコまれている。
 その度に公一伯父さんはおどけて、『酔っ払ったかの?』とか、『ボケがきたわい』とか言って誤魔化しているのだが……。
 それすらも違う?

 愛原:「……ん?」

 その時、伯父さん達が子供の頃の話を始めた。
 最初に振ったのは、伯父さんだが……。
 この団塊世代達が小学生だった頃、地方で木造校舎というのも珍しくはなかっただろう。

〔「東京の方では、鉄筋コンクリートも珍しくは無かったそうじゃよ」「おいおい、愛原さん。今、東京の話はしてないぞ?」〕

 愛原:「東京の……」

〔「中央じゃろ?グラウンドの中央」「おいおい、愛原さん。普通、校庭の演台は校舎の前とかだろ?」〕

 愛原:「中央……」

〔「ワシらの学園では……」「学園って、あれ?愛原さん、私立の小学校だったの?」「おっと!」〕

 愛原:「学園……」

〔「しかし、あれは古い校舎じゃった。木造だもんなー」「昔の田舎の小学校は、皆そうだったよ」〕

 愛原:「古い校舎……旧校舎!」

〔「あそこの地下室が物凄く不気味でな!あれは行きたくなかったのー」「愛原さんの所は、地下室があったのかい?」〕

 愛原:「地下室……」

〔「ワシの古い友人に高橋という者がおってな。そいつが肝試しと称して、地下室に忍び込んだんじゃよ」〕

 愛原:「高橋……」

〔「するとな、そこにおったんじゃよ」「何が?何が?」「お化けか!?」〕

 そこで、宴会の映像は切れた。
 まとめると、こうなる。
 『東京中央学園上野高校の旧校舎の地下室に、高橋はいる』と。
 こ、こうしてはおれん!
 私は善場主任に電話を掛けた。

 善場:「愛原所長、どうかなさいましたか?」
 愛原:「た、大変なんです!」

 私は高橋のUSBメモリーが見つかったことから話した。
 もちろん、ホテルで見つけたのではなく、家で見つけたことにした。

 善場:「『本物の』高橋助手は、東京中央学園上野高校の地下にいるということなのですね?」
 愛原:「そうです!」
 善場:「しかし、地下室というのは、あの壁の向こうの封鎖された教室の地下の防空壕跡と思われますが、BSAAが調べたのに、何も見つからなかったそうですよ」
 愛原:「もしかしたら、他にもあるのかもしれません!」
 善場:「! なるほど。これは思いつきませんでした。こちらでも調査しますが、リサの方が詳しいかもしれませんね」
 愛原:「リサにも聞いてみます!」

 私は電話を切った。

 愛原:「リサ!」
 リサ:「なぁに?」
 愛原:「東京中央学園の旧校舎の地下、あの防空壕跡以外にあるか?」
 リサ:「そんなの知らないよ」

 ……現実は甘くなかった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「夏休... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「夏休... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事