報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「25日の夕方から夜半過ぎにかけて」

2020-08-18 20:02:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日16:20.天候:晴 東京都八丈島 リードパークリゾート八丈島・ゆーゆー牧場]

 プールで一日遊んだ後、私達はホテルの経営母体が運営する牧場にやってきた。
 ホテルとは目と鼻の先にあり、一部の客室やレストランからも見える位置にある。
 そこでは宿泊者限定で、牛の搾乳作業を見学できるという。
 但し、搾乳の体験そのものはできない。
 あくまで、スタッフの搾乳作業を見学するだけである。

 斉藤:「さすが牧場ね。牛がいっぱいいるわ」
 リサ:「研究所であれを改造したクリーチャーを見たことがある」
 愛原:「ホルスタインではなく、あれはジャージーだ。ホルスタインの牧場は何度か行ったことがあるが、ジャージー牛しか育てていない牧場は初めてだな……」

 リサ、近くにいる牛をジーッと見る。

 牛:「モー」
 リサ:「この牛、美味しそう」
 牛:「モ!?」

 牛、リサに捕食されると思ったか、慌てて逃げ出した。

 愛原:「リサ、牛を驚かせちゃダメだよ」
 リサ:「ごめんなさい。美味しそうだと思って」
 愛原:「本当に食べられると思ったんだな……」
 斉藤:「リサさん、食べるのは私だけにしてね」
 リサ:「サイトーだけ食べてたら、私、飢え死にする」

 で、肝心の搾乳見学だが……。

 スタッフA:「どうしたの?今日はお乳の出が悪いわねぇ……」
 スタッフB:「何かに怯えている。一体、どうしたんだろう?」
 牛:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
 リサ:「私、何もしてないよ?」

 しかし牛は野性の勘で、リサの危険性に気づいているようだ。

 スタッフB:「すいません、今日はちょっと牛の具合が悪いみたいで……」
 愛原:「あ、いえ、こちらこそ却って申し訳ない」
 リサ:「牛さん、私に構わずお乳出していいんだよ?」
 牛:「モー!モー!(く、食われるー!鬼に食われるー!)」

 リサのヤツ……。
 牧場と動物園関係は連れて行っちゃダメなヤツだ、きっと。
 リサのことだから、きっとライオンやトラも怯えさせる。

[同日20:00.天候:晴 同ホテル大浴場・湯上り処]

 斉藤:「うう……日焼けがしみるぅ……」
 リサ:「サイトー、日焼け止め塗ったのにね」
 斉藤:「リサさんは全然焼けてないのね?」
 リサ:「焼けたと思うけど、すぐに治った。だからサイトーも今夜中には治ると思う」
 斉藤:「あー、そうか。私にも後遺症が残ってるんだもんね。私はあんまり日焼けには興味無いけど、もし日焼けしたくなったらきっと困るのね」
 リサ:「多分ならないと思う」
 斉藤:「どうして?」
 リサ:「私、サイトーの肌は白い方が好きだから」
 斉藤:「リサさん!私、日焼けしないよう気をつけるね!」
 リサ:「ほらね」

 ……というやり取りが女湯であったことをリサは教えてくれた。
 全く、リサのヤツ、人心掌握術にも長けてるな。
 これもBOWの特徴なのか、それともリサ自身の特技なのか……。
 リサと斉藤さんが再び卓球に興じている中、私は電話連絡をしていた。

 善場:「暴力団関係者につきましては私達ではなく、警視庁が動きます。私達はその暴力団に依頼していた組織を追いますが、警視庁と連携する必要があるので、まずは暴力団関係者の摘発を待って動くことになるでしょう」

 とのこと。
 それが動くのがいつのになるのかは機密関係になるので本来は明かせないが、連休明けにガサ入れに行くであろうというのが善場主任の見解。
 恐らく暴力団の組事務所に、武闘派警察関係者が乗り込むことになるのだろう。
 高橋については……。

 高橋:「俺、羽田空港まで迎えに行きます!」

 とのこと。

 愛原:「いいのか?ヘタに居場所を知らせて、霧崎君にバレたら……」
 高橋:「いえ。どうやら真珠のヤツ、マンションに戻ってるみたいです。俺の後輩に監視させてるんで……」
 愛原:「キミもなかなか人脈が広いな。まあ、揉め事を起こさないって約束するならいいよ」
 高橋:「ありがとうございます!友達の車で迎えに……」
 愛原:「族車みたいなので来られても困るから、羽田からは京急に乗るからな?」
 高橋:「……サーセン」

 取りあえず、東京23区の方は大きな動き無しか。
 因みに大事を取って、高橋は友人の家に避難しているという。
 それがどこかは分からないが、まあ23区内のどこかではあるだろう。

[日時不明 天候:不明 東京都墨田区菊川 愛原のマンション 愛原の部屋]

 愛原:「ん……?」

 私は大きな音で目が覚めた。
 何者かが部屋のドアをドンドンと乱暴に叩いている。
 いや、体当たりか?

 愛原:「何だ何だ?」

 私が部屋の明かりを点けると同時に、ドアがブチ破られた。

 リサ:「ウゥウ……!」
 愛原:「リサ!?」

 そこには第一形態の姿をしたリサがいた。
 だが、明らかに様子がおかしい。
 金色の瞳は赤く鈍く光り、顔は完全に鬼の形相だ。
 そして、呻き声。

 愛原:「リサ、どうしたんだ!?」
 リサ:「ガァァァァッ!!」

 リサが牙の生えた口を大きく開け、長く鋭く尖った爪を立てて私に飛び掛かってきた。
 そこで私は枕元にあったハンドガンを取って、リサに発砲した。
 何故かあったのだ。
 気にしないでくれ。

 リサ:「ガッ……!?アァ……!」

 弾は全部リサに当たり、当たった所から出血してリサは床にうずくまった。

 愛原:「リサ、許してくれ!」

 私は部屋を飛び出すと、高橋の部屋に向かった。
 だが、何故か高橋の部屋のドアが開かない。
 そこで、今度は玄関の外に出ようとした。
 だが、これも開かない!
 一体、どういうことだ!?

 リサ:「アウゥゥ……!!」

 昏倒から覚めたリサが這いつくばるようにして、私の部屋から出て来た。

 愛原:「リサ、一体どうしたんだ!?リサ!しっかりしろ!」

 私の呼び掛けも空しく、リサはまた私に飛び掛かって来る。
 私はまたリサに向けてハンドガンを放った。
 だが、弾切れのせいか、カチッカチッとという音しかしない。

 愛原:「わああああっ!!」

 私はついにリサにむしゃぶりつかれた。
 私が最期に見たのは、美味しそうに私の血を啜り、肉を食らう『鬼』の姿だった。

[7月26日02:00.天候:晴 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島2F客室]

 愛原:「!!!」

 そこで私は目を覚ました。

 リサ:「先生、大丈夫?」

 部屋の明かりが点いて、リサが私の顔を覗き込んで来る。

 愛原:「うわっ、リサ!?」
 リサ:「んん?」

 リサは首を傾げた。
 そのリサ、今は第一形態をしている。

 愛原:「おま、その姿……」
 リサ:「この姿の方が落ち着く。外に出る時は人間の姿に戻るから」
 愛原:「正気なんだな?」
 リサ:「うん」

 リサは大きく頷いた。

 斉藤:「怖い夢でも見たんですか?随分うなされてましたよ?」
 愛原:「そ、そうか。まあ、そうなんだ」

 リサに襲われる夢だと言えなかった。

 愛原:「こう見えても、人の死体が歩く光景を何度も見せられたからな、たまに見るんだ」

 と、誤魔化しておいた。

 リサ:「先生、私のベッドで寝る?」
 愛原:「えっ?!」
 斉藤:「リサさん!?」
 リサ:「バイオハザードが発生しても、私が先生を守るもの」

 その言葉と気持ちは嬉しかった。
 だけどな、リサ。
 やっぱりオマエはBOWなんだよ。
 今は鬼の姿をしても理性や知性をしっかり保てているが、いつそれが飛ぶか分からないのだから……。

 愛原:「あ、いや、いいよ。一度見たら、もうしばらくは見ないから。悪かったな。お騒がせして」

 私はトイレと水分補給で気を取り直すと、再び消灯してベッドに潜り込んだ。
 今度は悪夢を見ることはなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「25日の昼間はプールで遊ぶ」

2020-08-18 15:58:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日07:30.天候:晴 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島]

 朝起きると、外は真夜中の雷が嘘のように快晴だった。
 これで海に入れないというのがもどかしい。
 コロナ禍の影響はここにも出ている。

 愛原:「斉藤さん、肩の様子はどうだ?」
 斉藤:「凄い!もう薄皮が張ってる!」

 斉藤さんはれっきとした人間であるが、ドイツの大学に留学中の兄から人体実験を受けて、Gウィルスに感染していたらしい。
 このGウィルスはウィルスといっても、他人への自然感染力は無いに等しく、このウィルスを持ったBOW(G生物という)から『胚』を体内に埋め込まれることで感染する。
 リサもそれは持っているのだが、Tウィルスとの混合型であり、アメリカのラクーンシティに現れたというG生物のそれとは違うらしい。
 そのGウィルス、今ではワクチンでもって無効化させることはできるものの、後遺症は強く残る。
 その典型たるものが、傷の治癒力の異常な増強である。
 アメリカ合衆国政府エージェントとして働くシェリー・バーキン氏もこの後遺症を残しており、かつて中国で起きたバイオテロに巻き込まれた際、テロリストからの銃撃を受けても軽傷であり、回復薬だけで治癒したという話を聞いている。

 愛原:「そうか」
 斉藤:「私も人間じゃなくなったのかなぁ……」
 愛原:「いや、大丈夫。斉藤さんは、れっきとした人間だよ」
 斉藤:「ほんと!?」
 愛原:「ああ。問題は……リサの持ってる他のウィルスに感染していないかどうかだ」
 リサ:「大丈夫だよ。サイトー、強いから私のウィルスも効かない」
 愛原:「そうなのか」

 聞いたことがある。
 GウィルスはTウィルスよりも強い為、Gウィルスの抗体を持つ者はTウィルスに感染することはないと。
 ということは新型コロナウィルスもイチコロだな、こりゃ。

 リサ:「…………」
 愛原:「ん?」

 斉藤さんに自分のウィルスが効かなくなったことを残念がっていたリサだが、それは本心なのだろうか。
 室内の鏡に映ったリサは、何故か含み笑いをしていた。

 愛原:「朝の準備ができたら、レストランに行こう」
 リサ:「うん。お腹空いた」

 第0形態であっても、育ち盛りの子の食欲は変わらない。

[同日10:00.天候:晴 同ホテル 屋外プール]

 リサ:「サイトー、それが新しい水着!?」
 斉藤:「そう。リサさんに見せられて良かったぁ!」

 斉藤さんは上はスポブラタイプ、下はフリルのスカート付きのパンツという水着だった。
 なるほど。
 最近の女子中学生のプライベートで着る水着はあんな感じなのか。

 愛原:「リサ。帰ったら、リサにも買ってあげるよ」
 リサ:「! おー!」

 リサは嬉しそうに両手を挙げた。
 危うく両手の爪が長く伸びて尖るところだった。

 斉藤:「私も一緒に行く!リサさんに似合う水着、一緒に探しましょうね!」
 リサ:「私、サイトーが着ているのがいい」
 斉藤:「そうなの?実はこれ、通販で買ったんだよね」

 意外や、意外。
 私はつい高級デパートで買ったものとばかり思っていた。

 リサ:「だから、リサさんはお店で買いましょうね」
 斉藤:「ん!」

 これ、あれだ。
 ついでに自分のをもう一着買うパティーンだな。
 因みに私は下は水着だが、上はTシャツに麦わら帽子、そしてサングラスである。
 はいはい、海水浴場にいる地元のオッサンスタイルですよー。
 で、プールに入ってはしゃぐ少女達。
 私はその2人を撮影するのを忘れない。
 ……こら、そこ!盗撮ではないぞ!
 クライアントたる斉藤社長に頼まれたのだ!
 父親が会社の経営で忙しく、娘を旅行に連れて行けないので、その思い出作りをよろしくと頼まれたのだ。
 ホームビデオを撮ること自体、けして不自然ではないはずだ!

 リサ:「先生、ちゃんと撮ってる!?」
 愛原:「ああ、心配すんな!」

 対象者を尾行し、不倫だったら不倫、違法行為だったら違法行為の決定的瞬間をカメラに収め、それをクライアントに提出するのも探偵の重要な業務だ。
 撮影技術なら任せてくれ。

 リサ:「そのビデオカメラ、完全防水でしょ!?プールの中でも撮って!」

 リサはビーチボールを斉藤さんと投げ合い、はしゃいでいるので多少興奮気味だ。
 少し前ならあのテンションで、思わず第一形態に変化してしまうところだが、今は抑えられているようだ。
 段々自分の形態をコントロールできるようになっている。
 実に素晴らしいことだ。

 愛原:「別に、そこまでしなくても……」
 斉藤:「でも先生、ここまで来て先生だけがプールに入らないのもあれですよ。……もしかして先生、泳げないですか?」
 愛原:「いや、そんなことは無いがね。ただ、報告用のビデオなら、わざわざプールに入らなくても……」
 斉藤:「せっかく来たんですから、一緒に入りましょうよ。で、私とリサさんのイチャラブシーンを間近で撮ってくださいな!」

 それだと逆に提出できなくなると思うが……。
 リサに噛み付かれて痛い思いをしただろうに、このコは却ってリサを嫌いになったりはしないんだな。

 リサ:「先生、潜って下から撮影してみて!」
 愛原:「おいおい、それだと顔が分からないだろう?」
 リサ:「だから、私達も潜るの!」

 私はゴーグルを着けて水中に潜った。
 そして、リサと斉藤さんも潜る。
 この2人はゴーグルを持っていないが、ちゃんと水中で目を開けて互いを見つめた。

 リサ:「どう!?ちゃんと水の中で目を開けられてたでしょ!?」
 斉藤:「リサさんの目、水中だとよりキレイね!」
 愛原:「……そろそろ一旦、休憩した方がいいな。水の中って、意外と体力を消耗するんだぞ」
 リサ:「それ、私に言う?」

 リサはニッと笑った。
 第一形態ならその時点で牙が覗くが、第0形態ではそのようなことはない。

 愛原:「そして体力を消耗したBOWが次にどのような行動を取るか、俺は経験したくないのに経験させられた」
 リサ:「アハハッ!」

 リサが私の言葉に笑った。
 もちろん、私の言葉の意味を十二分に理解しているからだ。

 リサ:「分かった、先生。一旦上がろう、サイトー」
 斉藤:「うん」

 プールサイドの方を向くリサ達。

 リサ:「ねえ、先生。先生は何秒間潜れる?」
 愛原:「何秒?うーん……数十秒ってところかぁ?俺もそんな素潜りできるわけじゃないからな」
 リサ:「分かった。数十秒で上がるから、先生は潜って水中から私達がプールサイドに上がるところを撮って」
 愛原:「んん?」
 リサ:「いいシーン、撮らせてあげる」
 愛原:「ふーん……?まあ、分かった」

 私が潜ると、リサは斉藤さんに何やら耳打ちした。
 彼女達はすぐにプールサイドに向かって歩く。
 プール自体はそんなに深くは無く、彼女達は上半身を出したままプールの外に足を付くことができた。
 なので、プールサイドには泳いで行ってもいいし、歩いて行ってもいいのである。
 彼女達は後者を選んだ。
 水の抵抗がある為、早くは歩けない。
 私はリサに言われた通り、彼女達を後ろから撮影した。
 水中なので、彼女達の下半身を映すことになる。
 一体、リサは何を考えているんだ?
 仲睦まじく、2人の少女は手を繋いで歩いた。
 そして、プールサイドの前まで来ると手を放し、特に食い込んでいないにも関わらず、尻に食い込んだ水着を直す仕草をした。
 ん?これがしたかったのか?
 斉藤さんが先に上がったが、リサは上がる直前、私の方を向き、わざと水着の股の部分を一瞬捲った。
 なので一瞬、性器が映ることになる。
 おいおいおい!リサのヤツ、何を考えてるんだ!
 私が水中から顔を出すと、悪戯っぽい顔をして見つめる少女達の顔があった。
 但し、斉藤さんにあっては、ただ単にちょっとイタズラしてみただけといった顔だったが、リサに関してはもっと黒い事をしたという顔であった。

 愛原:「リサ、オマエ……」

 私が上がるのをリサが手を取って手伝ってくれたが、上がった直後、リサが私の耳元で囁いた。

 リサ:「先生、今度は新しい水着でしてあげるね……?」

 リサは相変わらず第0形態のままであったが、目だけは『獲物を狙う人食い鬼の目』のようになっていた。
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“私立探偵 愛原学” 「24日の夜から25日に掛けて」

2020-08-16 22:49:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日21:00.天候:曇 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島B1F大浴場・湯上り処]

 夕食を取った私達は1度コインランドリーに戻り、洗濯物を今度は乾燥機に掛けた。
 その間、今度は大浴場に入ることにする。
 昼間あれだけ温泉巡りをしたのだが、このホテルの大浴場は温泉ではない。
 それでもまあ、部屋のバスルームに入る気にはなれなかった。

 斉藤:「リサさん、行っくよー!」
 リサ:「ん!」

 湯上り処にある卓球台で卓球に興じる少女達。
 見た目は人間同然の第0形態でも、身体能力は人外的なものがある。
 だが、リサはあえて斉藤さんに合わせているらしい。
 私はその様子をデジカメに収める。
 これも報告書への添付用……。

 愛原:「おっと?」

 そこへ私のスマホが震えた。
 手に取って画面を見ると、相手は何と高橋だった。

 愛原:「もしもし?」

 私はスマホ片手に、なるべく人のいない所に移動した。
 もちろん、彼女達の目の届く範囲内でだ。

 高橋:「せ、先生、サーセン……いや、すいませんっした!」
 愛原:「高橋ぃ~?オマエなぁ、今どこにいるんだよ?」
 高橋:「具体的な場所は言えませんが、都内某所です!」
 愛原:「都内だぁ?俺達が今いる八丈島も東京都内なんだがな?」

 その為、私が借りているレンタカーも品川ナンバーである。

 高橋:「伊豆諸島じゃなく、ガチの東京です!」
 愛原:「オマエ、その言い方は伊豆諸島の人達に失礼だぞ」
 高橋:「さ、サーセン!」
 愛原:「聞いたぞ?霧崎さんから逃げ回ってるんだってな?その霧崎さん、オマエを追って八丈島を出たよ」
 高橋:「し、知ってます!俺の仲間から聞きました!」
 愛原:「そのオマエの仲間を装ったヤツに、危うくエラい目に遭わされるところだったよ」
 高橋:「はい!『都狂走』のキムっスね!豚箱から出て来たら、俺がボコしときますんで!」
 愛原:「木村という名字も、在日朝鮮人が通名で使うことが多々あると聞いたがガチだったか」

 もっとも、『高橋』もそうなんだがな。

 愛原:「で、オマエ今何やってるんだ?霧崎さんから逃げ回ってるだけか?」
 高橋:「それは半分っす!もう半分は……。先生を罠にハメやがった組織の下に就いてた、『都狂走』を潰して来ました。まあ、俺1人だとさすがにキツいんで、仲間に手伝ってもらいましたが」
 愛原:「もしかして今、凱旋中か?何か、うるさい車のエンジン音が聞こえるぞ?」
 高橋:「まあ確かに車の中なんスけど、今どこを走ってるかは言えないっス」
 愛原:「都内のどこかか。まあ、いいや。で、その『ヨーイ、ドン!』の暴走族を使ってた組織の名前は?」
 高橋:「いや、どうもさすがに俺達じゃ手に負えなさそうです」
 愛原:「何だ?昔のアンブレラみたいな巨大な組織か?」
 高橋:「……かもしれないッス。取りあえず、奴らを使ってたのはヤーさんだって所までは分かりました」
 愛原:「ヤクザが俺に何の用だ?」
 高橋:「いや、どうも、そのヤーさん達も、別の組織から依頼されて動いたみたいっス。なもんで、そのヤーさんに頼んだ組織が怪しいんです」
 愛原:「話がややこしくなってきたな。まあとにかく、俺達個人のレベルじゃどうしようもないって話だな。分かった分かった。あとは国家に頼むさ。そのヤーさんの名前は?」

 私は高橋から暴力団の名前と、幹部数人の名前を聞いた。
 幹部の名前に聞き覚えは無かったが、暴力団の名前としては指定暴力団の傘下組織だということは分かった。

 高橋:「俺はヤーさんよりパールの方が怖いっス」
 愛原:「組の為なら命をも投げ出すヤクザの方が手ごわいと思うがな?」
 高橋:「そのヤーさんに代わって戦ったのが、『極道の妻達』っスよ!?女の方が怖いっス!そこにいるリサにも要注意ですよ!?」
 愛原:「映画の話だろ、それは。てか、何でそんな古い映画知ってんだ、オマエ……」

 リサの場合、女の子だからというより、BOW(生物兵器)として注意しなければならないのだが。
 ま、とにかく、高橋から近況が聞けて良かった。
 私はすぐに善場主任にメールした。
 しかし、その日のうちに返信が来ることは無かった。

[7月25日02:00.天候:雷 同ホテル2F 愛原達の客室]

 日付が変わったが、どうやらそれですぐに天候が回復するとは限らないらしい。
 雷の音と光で起こされてしまったようだ。
 私は一番窓側に設置されたエキストラベッドで寝ていた。
 窓に近い所だったから、尚更そういうので起こされやすい。
 気を取り直す為、私はトイレに行き、その後で水分補給しようと思い、ベッドから起き上がろうとした。

 斉藤:「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」
 愛原:「!!!」

 突然、入口に近いベッドで寝ていた斉藤さんが断末魔にも似た叫び声を上げた。
 私はびっくりして、手元に置いていたスマホを取り、懐中電灯を点けた。
 それで斉藤さんを照らす。

 愛原:「な、何やってるんだ!?」

 私は信じられないものを見た。
 そして、部屋の電気を点けた。
 斉藤さんのベッドにリサが潜り込み、斉藤さんの右肩に噛み付いていたのだった。
 しかもリサ、『鬼娘』の第一形態の姿になっている。

 愛原:「リサ!何をしてるんだ!!」

 私がリサの肩を掴むと、リサは目を閉じていた。

 リサ:「ふぁ……?」

 そして目を開け、斉藤さんから口を話す。
 斉藤さん右肩からは2つの穴が開き、そこから血が滴り落ちていた。

 愛原:「斉藤さん、しっかりしろ!」

 私は急いでバッグの中から絆創膏を持って来た。
 これで血が止まるといいが……。

 リサ:「……あれ?私……」

 リサは第一形態になった自分の姿を見て、何が何だか分からないという反応をしていた。
 取りあえず私は大きな絆創膏を2枚、斉藤さんの肩に貼った。

 愛原:「オマエ、斉藤さんを食おうとしたのか!?」
 リサ:「えっ?えっ?今の……夢だった……?」
 愛原:「夢じゃない!現実だ!」

 どうやらリサは、夢の中で斉藤さんを食べていたらしい。
 それが夢遊病のようになり、本当に斉藤さんに齧り付いてしまったようである。

 リサ:「サイトー、ゴメン。本当にゴメン」

 リサは事の真相を知って、斉藤さんに謝った。

 斉藤:「びっくりしたけど、今は痛くないからいいよ」
 愛原:「思ったより、血が滲んでないな?」

 いや、絆創膏のパット部分には血が滲んでいる。
 だが、それで済んでいた。
 私はついそれでも間に合わないほど大量に出血したらどうしようかと思っていたのだ。

 斉藤:「私もリサさんの仲間に成りかけました。もしかしたら、その名残なのかもしれません」
 愛原:「どういうこと?」
 斉藤:「何だか、傷の治りが早いんですよ、空手道場でも私だけ。例えば走り込みをした時、転んで擦りむいたことがあったんですけど、道場に帰って来たら治ってたんです。何もしてないのに、ですよ?」
 愛原:「そうなのか。とにかくリサは、今後気を付けること」
 リサ:「はーい……」
 斉藤:「リサさん、食べたくなったらちゃんと私に言ってね?」
 リサ:「分かった」
 愛原:「斉藤さんも自分を生け贄にしない!」

 リサが暴走し、故意に人を襲うようになったらどうしようかと考えたことはあったが、まさか眠りながら人を食いに行くとは……。
 そこは高橋の言う通りなのかもしれないな。
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“私立探偵 愛原学” 「温泉巡り、終了」

2020-08-15 21:41:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日18:00.天候:雨 東京都八丈町 八丈島・三根 リードパークリゾート八丈島]

 本日の島内観光を終えた私達はホテルに帰って来た。
 何か急に空が暗くなったと思ったら、ゲリラ豪雨に巻き込まれてしまった。

 愛原:「急いで戻れ!」
 斉藤:「きゃーっ!」
 リサ:「おーっ!」

 車を駐車場に止めて、急いでホテルの中に入る。

 愛原:「いやー、びっくりしたな、もー!」
 斉藤:「もうちょっとだったのに……」
 リサ:「私は気持ち良かった」
 愛原:「それはそれは……。とにかく、部屋に戻ろう」

 私はフロントに行くと、預けていた鍵を受け取った。
 それで2階の客室へ向かう。

 愛原:「着替えたら夕食を食べに行こう」
 リサ:「はーい」

 部屋に入ると、私は急いで浴衣に着替えた。
 男はどこでも着替えられるからいいな。

 愛原:「よし。じゃ、俺は外で待ってるから着替えてー」
 リサ:「別に、ここにいていいのにw」
 斉藤:「リサさん!?」
 愛原:「おいおい。斉藤さんの前だぞ」

 するとリサ、ジーッと斉藤さんを見つめた。
 顔ではなく、上半身と下半身。

 斉藤:「な、なに?」
 リサ:「ん、それもそうだね。私達も急いで着替えるから、先生ちょっと待ってて」
 愛原:「あ、ああ」

 私が外で待っていると、リサ達は意外ほど早く出て来た。

 リサ:「先生、ちょっといい?」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「明日プールに入るのに、水着は1度洗った方がいいよね?」
 愛原:「あ、それもそうだな」

 水着で入れる温泉に今日は入ったので、私達の水着は濡れている。
 温泉に入ったので、このまま乾かしてまたプールに入るというわけにはいかない。
 斉藤さんは水着を何着か持って来ているようだが、私とリサは一着しか持って来ていない。

 愛原:「確かこのホテル、コインランドリーがあったはずだ。そこを使わせてもらおう。それから夕食だな」
 リサ:「パールがいたら、洗濯してもらえるのにぃ……」
 愛原:「それは言わないでやりなよ。うちの高橋がそもそも悪いんだから」
 リサ:「パールってそういう所があるんですよね。高橋兄さんも怖がってしまいますよ」
 愛原:「あの高橋が怖がるなんてなぁ……」
 リサ:「先生、ついでに服洗っていい?雨で濡れた服」
 愛原:「それもそうだな。この際、汚れ物は全部洗ってしまおう」

 私達は部屋に戻ると、洗濯したい物を脱衣カゴに入れて持って行った。
 コインランドリーは1階にあって、3台あった。

 愛原:「それじゃ俺がこっち使うから、2人はそっち使って」
 斉藤:「はい」
 リサ:「ラジャ」

 幸い洗剤は無料のようだ。

 リサ:「私の水着とサイトーの水着、どっちがどっちって分かる?」
 斉藤:「小学校じゃないから、ゼッケンなんて付けないもんね。でも、ここに名前書いてあるでしょ?ほら、生地の裏」
 リサ:「そうだった。後で書いておく。取りあえず、名前の書いてないのが私の」
 愛原:「2人とも、サイズ同じだっけ?」

 身長は2人とも同じ157cmくらいと、だいたい平均身長くらいだ。
 ただ、体形は斉藤さんは空手有段者だからか、引き締まった感じであり、リサはムッチリしている。

 リサ:「比べてみる?」
 愛原:「いや、いいよ」

 多分、リサの方がワンサイズ上だろう。

 愛原:「コインランドリーだと、だいたい40分くらいか。で、乾燥機が60分と……」
 リサ:「先生、詳しい」
 愛原:「昔、完全に独り暮らしだった頃は、よくコインランドリーの世話になったもんさ」

 私達は洗濯機を作動させると、その足でレストランに向かった。

 リサ:「先生、見て。今度はちゃんと(オーバーパンツ)穿いてるからね?」
 愛原:「分かった分かった」

 リサが浴衣の裾を軽く捲って見せた。
 確かに一分丈の黒いスパッツを穿いていた。

 リサ:「これ、蒸れるんだよね。サイトーが穿いてたヤツがいい」
 斉藤:「あ、あれ、あげようか?」
 リサ:「ていうかむしろ、服脱ぎたい」
 斉藤:「リサさん!?」
 愛原:「リサ、全裸で暴れるのは本当に化け物になった時だけだぞ?」
 リサ:「うーん……」
 愛原:「通常許される変化の範囲、分かってるよな?第一形態までだぞ。まあ、あの島みたいにタイラントとネメシスと逆さ女が跋扈しているような所は別として」
 リサ:「うんうん」
 愛原:「で、鬼でさえ服は着てるからな?」

 私は斉藤さんからタブレットを借りた。
 まずは民話で語られている鬼の絵を見せた。
 それからアニメ関係。

 リサ:「おー、“鬼○の刃”!」
 愛原:「これとか」
 リサ:「おー、“鬼○の冷徹”!」
 愛原:「あと、これな」
 リサ:「桃鉄!サイトー、今度買うよね!?一緒にやろ!」
 斉藤:「も、もちろんよ!」

 桃鉄だけは伏せ字入らんのかい、作者。

 愛原:「リサの第一形態も鬼の姿だ。だから、服はちゃんと着てるように」
 リサ:「分かった。……先生、私の第一形態、『鬼のような姿』なだけで、本当に鬼じゃないよ」
 愛原:「おいおい、リサ。そのセリフ、もし高橋がいたら怒られてたぞ?『先生に口答えをするとは何事だ!』ってさ」
 リサ:「そうだった。ごめんなさい」
 愛原:「いや、いいんだよ。ただ、今後は気をつけないとな」
 リサ:「うん」

 斉藤さん、手持ちのタブレットで、“○滅の刃”の公式サイトにアクセスしたようだ。
 そして、画面とリサを見比べる。

 斉藤:(リサさんを箱に入れて背負って運びたい……)
 リサ:「! サイトー、もしかして今、フザけたこと考えてる?もし、フザけたことだったら……!」

 リサは右手をわきわきさせ、5本指全ての爪を尖らせた。

 斉藤:「な、な、何でもないです!」
 愛原:「リサ、第二形態以降、変化の時に体が大きくなったりするけど、逆に小さくすることはできるのか?」
 リサ:「無理、それはできない。……と思う」
 愛原:「ま、俺も他のBOWでそんなことできるヤツは見たことも聞いたこともない」
 斉藤:(何だぁ、残念)
 リサ:「サイトー、また後で一緒にトイレに行く?」
 斉藤:「ど、どう致しまして!前向きに検討致します!」
 愛原:「政治家みたいなこと言って~……」

 私達はレストランに到着した。
 そして、夕食に舌鼓を打ったのだった。
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“愛原リサの日常” 「リサの心の闇」

2020-08-14 16:08:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日13:40.天候:晴 東京都八丈町中之郷 足湯きらめき付近公衆トイレ]

 愛原と別れてトイレに向かったリサと斉藤。
 トイレの中には誰もいなかった。

 斉藤:「じゃあリサさん、私はこっちに入るから……」
 リサ:「ううん。一緒に入る」
 斉藤:「ええっ!?」

 リサは斉藤を押しやるように、1つの個室に一緒に入った。
 そして、ドアの鍵を掛ける。

 斉藤:「り、リサさん……」
 リサ:「サイトー……」

 リサは斉藤の両肩に手を置くと、抱き寄せる……のではなく、逆に壁に押し付けた。

 斉藤:「な、なに!?」
 リサ:「スカート捲くってみて」
 斉藤:「う、うん」

 斉藤はリサのスカートを……。

 リサ:「私のじゃない。サイトーの」
 斉藤:「わ、私の……?」
 リサ:「早く!」
 斉藤:「り、リサさん……何か怖いよ……」

 斉藤は自分のスカートを捲くった。
 黒のペチパンツを穿いている。

 リサ:「ふーん……。じゃあ、それ脱いで」
 斉藤:「ど、どうして?」
 リサ:「さっき言ったでしょ?私が先生にパンツ見せてるんだから、サイトーも見せてあげないと不公平だって」
 斉藤:「ど、どうして私が……?」
 リサ:「サイトー、自分で言ったこと忘れたの?『リサさんとは一蓮托生!』『地獄の果てまでも付いて行くわ』って。だったら私の言う事、聞いてくれるよね?」

 リサは人間態の第0形態ではあったが、両目の瞳を赤くボウッと光らせていた。
 薄暗い公衆トイレの中では、尚更それが不気味に光って見える。
 もしもこのトイレに幽霊やお化けの類が潜んでいたとしても、リサの前には絶対現れないだろう。
 それほどリサが放つ『気』は強いものだった。

 斉藤:「で、で、でも……あ、愛原先生は『穿け』って……り、リサさん……ほんと……怖いよ……」
 リサ:「私の言う事が聞けないの?」

 リサは斉藤の耳元で冷たく言い放った。

 斉藤:「許して……」

 リサは斉藤のオーバーパンツとその下のショーツを掴んだ。

 斉藤:「ひっ……」
 リサ:「言う事が聞けないってのなら、今ここでサイトーのパンツ破ってノーパンにしてやる」
 斉藤:「許して……許して……」
 リサ:「どうするの?上だけ脱ぐ?それともノーパンになる?……学校でそうしてやろうか?」
 斉藤:「ぬ、脱ぎます……。だから、許して……」

 斉藤は震える手でペチパンツを脱いだ。
 その下はライムグリーンのショーツであった。

 斉藤:「あ……」

 ジョロッ……。

 リサ:「あーあ……」

 斉藤はリサからの恐怖に負けてしまい、ついに失禁してしまった。

 リサ:「ガマンできなかったの?」
 斉藤:「うう……!いやぁあ……!」

 斉藤はついに泣き出した。
 リサは小さく溜め息をついた。

 リサ:「オシッコ漏らしただけか……。サイトー、強いね。本当に恐怖に負けると、ウンコ漏らすから」

 そんなリサ、しゃがみ込むと尿で濡れている斉藤の太ももを舐めた。

 斉藤:「ひぅっ?!り、リサさん、何を……!?」

 リサの思わぬ行動に泣き止んだ斉藤。

 リサ:「これがサイトーの老廃物の味……。なかなかいい味してる。もっと味わわせて……」
 斉藤:「そ、そんな……!舐めちゃイヤぁぁ……!!」
 リサ:「老廃物でこの味なんだから、きっとサイトーの血肉はもっと美味しそう……!」

 リサはサイトーの顔も舐めた。

 リサ:「いま食べたい……!だけど、今はダメ。先生が待ってる」
 斉藤:「は……はっ……はーっ……!」
 リサ:「ゴメンね、サイトー。でも、私はこういうヤツなの。私はBOWリサ・トレヴァー。なるべくなら、私の言う事聞いて。そしたらもう、私もこんなことしなくて済む……」
 斉藤:「…………」
 リサ:「返事はどうしたの?」
 斉藤:「は、はい……!」
 リサ:「取りあえず、パンツは脱いでそこで洗おう。で、代わりにノーパンになる?w……それとも、これ穿いとく?」

 リサは斉藤から奪い取ったオーバーパンツを渡した。

 斉藤:「ぽ、ポーチの中にサニタリーパンツがあるから……」
 リサ:「そう。だったら、これは預かっとく。ホテルに帰ったら返すから。!」

 その時、リサは何かを思いついた。

 リサ:「そうだ。代わりに私が穿いとく」

 リサは斉藤のペチパンツを穿いた。
 身長は大体同じくらいの2人だが、リサの方がウエストが大きく足も太い。
 この体型もまた、リサには欧米人の血が混じっているのはないかと思わせる原因だ。
 なので、もしかしたらリサが穿いたら伸びてしまうかもしれない。

 リサ:「私は外で待ってるから」

 リサはそう言ってトイレの外に出た。

 リサ:「フ……」

 そして口元を不気味に歪めた。

 リサ:(サイトーも堕としてやった。……いや、オシッコしか漏らしていないから、半堕ち……か。さすがは、BOWに成りかかっただけのことはあるねぇ……)

 トイレに残された斉藤は、濡れた足などをトイレットペーパーで拭きながら考えていた。

 斉藤:(本当だ……。噂は本当だったんだ……)

 学校の中で斉藤はリサに関する噂を聞いた。
 実はリサは人を殺したことがあり、そのせいで転校してきたという噂である。
 リサ自身、学校でも人心掌握に長けており、男女共にリサの周りには人が絶えない人気者なのであるが、時折リサに突っかかる者はいた。
 しかし何故かその者は数日後、不登校になっているのである。
 その者が言うには、リサに恐怖を味わわされたということである。
 殺されそうになった、また学校に行くと今度こそ殺される、だから学校に行けないのだと。
 しかし、普段のリサからは想像も付かず、証拠なども無い為、リサには何の咎めも無い。

 リサ:「着替え終わった?」
 斉藤:「う、うん……」
 リサ:「よし、行こう。先生が待ってる」
 斉藤:「う、うん」

 リサは斉藤と手を繋いだ。
 本来それは斉藤にとって御褒美であるはずなのだが、今はそれどころではなかった。

 愛原:「お帰り。……というか、どうしたの?」
 斉藤:「い、いえ……何でもないです」
 リサ:「サイトー、ちょっとお腹の調子が悪いんだって」

 斉藤はリサの的確な説明を聞きながら、2度とこのBOWには逆らうまいと胆に銘じた。
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