報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「いざさらば 八丈島に 別れ告げ 機上の旅も 風情あるかな」

2020-08-20 19:46:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日16:30.天候:晴 東京都八丈町 某レンタカーショップ→八丈島空港]

 八丈島の旅もまもなく終わる。
 私達は借りたレンタカーを返しに、レンタカーショップへ向かった。
 レンタカーを返却する時には必ずガソリンを満タンに入れなければならないが、幸い私が借りた所はガソリンスタンドが併設されている。
 それはまた別料金。
 まあ幸いポイントカードがあるので、それでポイントを貯めることができるか。
 だいぶ貯まったな。
 今度どこかで使おうかな。

 店員:「それでは空港までお送りします」
 愛原:「あ、どうもすいません」

 送迎サービスがあり、私達はショップのワンボックスに乗り込んで空港に向かった。

 斉藤:「先生。父が、『明日の15時くらいでいいか?』だそうです」

 私のすぐ後ろに座っている斉藤さんが、スマホ片手に言った。

 愛原:「15時ね。了解。それでよろしくお願いしますと伝えてくれる?」
 斉藤:「分かりました」

 空港までは、だいたい5~6分程度で到着する。

 店員:「ありがとうございました」
 愛原:「どうもお世話さまでした」
 店員:「お気をつけて」

 空港ターミナルの入口で降ろしてもらう。
 その足で空港内に入った。

 愛原:「先にお土産から見て行こうか」
 リサ:「お土産……」
 斉藤:「クラスの皆に持って行くの、何がいいかしら?」
 愛原:「斉藤さん、律儀だねぇ。でも、学校に持って行っていいの?」
 斉藤:「うちは別に構いませんよ」

 学校への持ち込み品については、本当に学校ごとによって違う。
 この辺はまだ東京中央学園は自由らしい。

 愛原:「俺は高橋と高野君に買って行ってあげよう。ボスにはもう送ったし」

 お騒がせの高橋君にも買って行ってあげるとは、私も律儀だな。
 しかし、空港の売店だから無難な物しか置いていないだろうと思ったが、意外と色々な物があった。
 高橋には適当でいいが、高野君には何がいいか、ついつい迷ってしまう。
 何とか決めた時には、離陸30分前になっていた。
 急いで保安検査場に向かう。

 愛原:「コロナ禍のせいか、あまり人がいないな。いつもなら、きっと俺達みたいな帰り客で賑わってただろうに……」
 斉藤:「こういうのも報告書に書くんですか?」
 愛原:「そういうことになるな」

 コロナ禍の今だからこそ、私達の行動範囲はハッキリしておかなければならない。
 セキュリティエリアの中に入ると、待合ロビーがあり、そこに小さいながらも売店もあるし、トイレも自販機もあった。
 あとは搭乗開始まで、ここで待っていればいい。

 愛原:「高橋からのメール、来ねぇな……」

 私は高橋に予定通りの最終便に乗り、それで帰る旨のメールを送っていた。
 この飛行機が羽田空港のどこに到着するのかもしっかり確認し、その旨も書いている。
 にも関わらず、こいつは返信してこない。
 私からのメールは1分以内に返信してくるヤツなのに……って、また何かあったんじゃないだろうな?
 私は電話してみることにした。
 だが、『お掛けになった電話番号は、お客様の都合により、お繋ぎできません』というメッセージが流れて来た。
 メッセージの内容からするに、どうやら私からの番号をまだ着信拒否にしているようだ。
 しょうがない奴だ。
 トイレの横に公衆電話が1台あるので、それで高橋の携帯に掛けてみた。
 すると、今度は繋がった。
 だが、何回コールしても出ない。
 全くもう……。
 電話を切ってロビーに戻ると、私の携帯が震えた。
 画面を見ると、高橋からのメール。

 高橋:『返信遅れて申し訳ありません!さっきの件、了解です!どうかお気をつけて!』

 とのこと。
 何だよ、ちゃんと返信できるじゃないか。
 帰ったら、説教だな。

[同日17:30.天候:晴 全日空1896便機内]

 予定通り、私達は機上の人となった。
 飛行機はボーイング737-800という、あまり大きくない機体だった。
 中央に通路があり、その両脇にプレミアムシートは2列シート、エコノミークラスは3列シートが置かれている。
 優先搭乗権のあるプレミアムクラスの旅客が先に乗り込めることになっているが、後から私達が乗り込むと、その席には誰も座っていなかった。
 私達は後ろの席に向かう。
 エコノミークラスは、中・近距離高速バスの4列シート並みの広さだ。
 しかし少女達にとっては、お互いに密着しやすいからいいらしい。
 濃厚接触はダメだぞ。

 愛原:「マスクを外していいのは飲み食いしてる時だけな?」
 リサ:「私は大丈夫なのにぃ……」
 愛原:「見た目が人間だからしょうがないだろう。だからといって、第一形態になるのもダメだぞ」
 リサ:「はーい……」

 私は指定された座席の通路側に座ると、前の座席のシートポケットから、ヘッドホンを取り出した。

 リサ:「何それ!?」
 愛原:「これでオーディオが聴けるんだよ」

 もっとも、機内放送が最優先なので、それが入ると容赦なく音楽が途中でも切られてしまい、その放送がガンガン入って来る。

 リサ:「おー!」
 愛原:「俺は音楽でも聴いてるよ」

 リサは空港で買ったお菓子を開けようとした。

 愛原:「それ、お土産じゃないの?」
 リサ:「うん。自分用」
 愛原:「もう食べるのかよ!」

 私は飽きれた。
 本当にリサの食欲には……うん?
 そこで私は、ふとあることに気づいた。

 斉藤:「リサさん、離陸中は飲食できないのよ」
 リサ:「そうなの!?」

 飛行機が動き出したのが分かった。

 愛原:「その代わり、離陸して安定飛行になったら、ジュースをくれるから」
 リサ:「おー、ジュース!」

 離陸の準備に入っている中、機内のモニターでは安全上の注意喚起のビデオが放映される。

 愛原:「なあ、リサ。もしかして腹減ってるか?」
 リサ:「うーん……小腹減った」
 愛原:「もしかしてさ、よほど腹が空いたら暴れるってことある?」
 リサ:「!」

 リサは目を大きく開いて私を見た。

 リサ:「……あると思う」

 そう答えた。
 何でも霧生市でバイオハザードが発生した時、研究所内も混乱したことで、リサ達に対して食事の提供がストップしてしまったという。
 リサが閉じ込められていた檻はタイラントが破壊してくれたが、気がつくとリサは実験用として飼われていたカラスを数羽襲って食べていたらしい。
 食べれそうな物を見つけた時、記憶が飛んでいる。
 つまりこの時、リサは暴走していたということになる。

 リサ:「お腹が空かなければ、多分私は大丈夫」

 幸いなことに、リサの場合は普通の人間の食事でOKである。
 人肉や血液でないとダメということはない。
 それだけ気をつけていれば、私が見た夢のように、第一形態で暴走することもないのではないか。
 そう思った。

 愛原:「そうか。まあ、お腹が空いたら言ってくれ」
 リサ:「今は小腹空いてる」
 愛原:「安定飛行になったら食べていいからな!?それまではガマンしてくれ!」
 リサ:「うん。頑張る」

 今ここで暴走されたら、機内が大変なことになるぞ!
 確か、“バイオハザード6”にそういうシーンがあったな!
 そうこうしているうちに、飛行機は一気に加速し、そして八丈島空港を離陸した。

 リサ:「さようなら。タイラント君

 リサは窓の外に向かってボソッと呟いた。
 今、リサのヤツ、複数形で言わなかったか?
 私達が遭遇したタイラントは1体だけだったはずだが……?
 どういう意味か知りたいような知りたくないような……。

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