報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 5

2018-11-23 09:55:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日13:00.天候:晴 豪華客船“正信号”船内図書館・蔵書室]

 私はリサがある場所に見入っているのに気がついた。
 話し掛けようとすると、先に高橋が話し掛けて来た。

 高橋:「先生、これ何でしょうね?」

 それは床に落ちていた鍵。
 拾い上げてみると、それは何だか見覚えがあった。

 善場:「それは客室の鍵ですね」

 とのこと。
 それは重要ではない。
 何故ならBSAA隊員達は既にマスターキーを手に入れている為、客室の鍵なら基本的に全て開けられるからだ。
 実際、この船における顕正号では私達が泊まっていた部屋の鍵が開いていたのも、彼らがマスターキーで開けたからである。

 高野:「先生がお持ちのと同じカードキーもありますね」

 机の上にはカードキーが置いてあり、それは今まで黄色い金庫やこの部屋のドアを開ける時に必要なものと酷似していた。

 善場:「これはこちらでお預かりします」

 もし私が持っているのと同じカードキーなのだとしたら、もう私の出る幕は無いということだ。
 しかし、リサが見つめていたのは違った。

 愛原:「リサ、どうした?」
 リサ:「何だか、私に似てる……」

 それは壁に掛けられた肖像画。
 リサは自分に似ていると言ったが、パッと見、私はそう見えなかった。
 年恰好は似ているだろうが。
 黒髪の美少女がモナ・リザ風に座って微笑を浮かべている絵。
 髪はセミロングがウェーブが掛かっている。

 善場:「これはリサ・トレヴァーですよ!」

 善場さんが驚いたように言った。

 愛原:「ええっ!?」
 善場:「昔、オリジナルの『リサ・トレヴァー』がアメリカのアンブレラの施設にいた頃、これをステンドグラスにしたものが発見されました。まさか、そのオリジナルの絵画がここにあったなんて……」

 善場さんの話によると、アンブレラに捕まる前、まだ普通の少女だった頃を描いたものであるとのことだ。
 こんないたいけな少女を捕まえて実験に使うとは、何たる非道!
 しかし、私が他に気になった絵もあった。

 愛原:「他にも少女を描いた絵がありますが、あれは何でしょう?」
 善場:「ナタリア・コルダとエヴリン……!」
 愛原:「こちらも化け物か何かの化身ですか?」
 善場:「いえ。ナタリア・コルダ……今はBSAA北米支部のバリー・バートン顧問に引き取られているので、ナタリア・バートンでしょうか。こちらは特に心配ありません。ただ、エヴリンは……」

 善場さんが言い終わらぬうちに、また電話が掛かって来た。

 善場:「すいません」
 愛原:「いえ……」

 善場さんが電話に出ている間、リサが言った。

 リサ:「エヴリンは家族が欲しくて暴走したコだよ」
 愛原:「えっ?」
 高橋:「正確には最初からラスボスとして作られた、人型クリーチャーですよ」
 愛原:「そうなのか。詳しいな」
 高橋:「ゲームに出てきましたから」
 愛原:「ゲームって……」

 もはや何が何だか分からん。

 善場:「失礼しました。上司命令で、愛原さん達は速やかにここを離れるようにとのことです。御協力ありがとうございました」
 愛原:「一体何が?」
 善場:「安全の為です。この船には、まだ他にもBOWが潜んでいる恐れがあります」
 高橋:「一応、こっちには『BOW発見機』があるけどな」

 高橋はリサを見て言った。

 善場:「そういう問題ではありません」
 愛原:「そりゃそうだ。さすがに霧生市のバイオハザードの再来は勘弁さ。さっきのウーズみたいな新種のクリーチャーがやってこられたら、さすがにかなわんよ」
 高橋:「はあ……」
 高野:「『1匹出たら30匹』って言うしね」

 と、高野君は高野君で某害虫みたいなことを言う。

 善場:「それでは引き上げましょう」

 私達は船の外へと向かった。

 愛原:「それにしても、オリジナルのリサ・トレヴァーの肖像画がどうしてあの部屋にあったんだろうな?」
 高野:「アンブレラと何らかの関わりのある船なんでしょうね」
 善場:「現在、アンブレラは『悪の製薬会社』ではなく、『民間軍事会社』として再スタートしています」
 愛原:「存在してんの!?」
 善場:「はい。但し、日本に支部はございません。国民感情もありますので」
 高橋:「民間軍事会社かよ。そりゃまた何でだ?」
 善場:「生き残りの有志が、『製薬企業時代に犯した罪を償う為、バイオテロに立ち向かう』という目的で設立したそうです」
 高野:「自分達の蒔いた種を、自分達で摘みに行くってことか」
 善場:「アンブレラが開発したウィルスやBOW、或いはそれらの製造方法が世界各地のテロ組織に渡ってしまったので、その罪滅ぼしの為ということです」
 高橋:「その割にゲームん中じゃ、クリスにケツ拭かせてたけどな」
 リサ:「私もやったー」
 高橋:「お前、そこまで行ったのかよ!?」

 BOW、BOWを倒すゲームに興じるの図を想像して、私は吹いてしまった。

 善場:「今回ご協力頂きました件について、後ほど報酬の話をさせて頂きます」
 愛原:「了解しました」

 まあ、口止め料も含まれているだろうな、その中に。
 ゲームや映画だと外に出られず、そこでまた何か非常事態でも発生して、それに対処させられるような展開が予想されるところだが、実際はそんなことは無かった。

[同日13:30.天候:曇 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]

 船を降りると、私達はすぐに迎えの車に乗り込んだ。

 愛原:「このまま事務所まで送ってくれるんですか?」
 善場:「そうですねぇ……。それもいいんですけど、どこか寄りたい所があればそこで降ろしますよ?」
 高野:「それじゃ、桜木町駅付近で降ろしてもらうのはどうかしら?」
 愛原:「えっ?」
 高野:「せっかく横浜まで来たんだし、少し遊んでから帰りましょうよ。なかなか滅多に来ない所じゃないですか」
 愛原:「まあ、そうだな。もうお昼時も過ぎたし、どこかでランチでもしたい」
 善場:「了解しました。それなら、ランドマークタワーの前にしましょうか。テナントで、色々とお店も入っていることですし」
 愛原:「すいません。じゃあ、そこでお願いします」

 私達を乗せた車は桜木町の横浜ランドマークタワーへと出発した。
 立入禁止のゲートを過ぎると、マスコミ達が一斉に車に向かってシャッターを切ってくる。

 愛原:「マスコミが……」
 善場:「船内での取材が中止されたので、唯一民間人で調査が許された愛原さん達をせめて……ということみたいですね」
 愛原:「後でうちの事務所とかに来るかなぁ……?」
 高橋:「俺がこれで追い払いますよ?」

 

 愛原:「やめなさい。別の意味で取材される」
 善場:「愛原さん達への銃の所持許可は、もう少し先になりそうです。取りあえず高橋さんのそれは黙認ということで。ですので、あまり他人に見せびらかしませんように」
 愛原:「ええ、ええ。分かってますよ。高橋には私からよく言っておきますので」
 高野:「バカだねぇ……」
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“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 4

2018-11-21 19:32:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日12:30.天候:晴 豪華客船“正信”号、客室上階]

 黄色い金庫には、顕正号と正信号を牛耳っていたテロ組織のロゴマークが取り付けられている。
 それは今にも飛び掛からんとする大型犬を模した物であると思われ、それに同じ色且つ同じロゴマークが印刷されたカードを当てると、犬の目の部分が光ってロックが外れる。

 愛原:「リサ、今度は開けても大丈夫そうかい?」
 リサ:「うん、大丈夫そう」

 私の質問にリサは頷いた。
 さっきのことといい、リサはBOWなだけに、他のクリーチャーの気配をいち早く感じ取る能力もあるのだろう。

 善場:「OKです」

 善場さんがBSAA隊長に合図をすると、今度は隊長が隊員達に合図をした。
 それでも万が一に備え、銃を構えるのは忘れない。
 隊員が一気に扉を開けると、中には……鍵が入っていた。

 

 愛原:「随分と大きくて古めかしい鍵だな?」

 BSAAの隊員は鍵を取り出す。

 愛原:「どこの鍵でしょうか?」

 しかし善場さんは私の質問には答えず、隊長と英語でやり取りをしている。

 高野:「この人達、事前情報は掴んでいて、顕正号には銀色の鍵があったでしょうというような話をしています」

 高野君が代わりに通訳してくれていた。

 愛原:「銀の鍵か」

 ここで見つけたのは少し色褪せてはいるものの、金色の鍵である。
 純金というわけではなく、単なる金メッキであろう。

 善場:「皆さん、御協力ありがとうございました。愛原さん達に対する御協力はこれで十分です。まもなく探索時間終了となりますので、そろそろ引き上げましょう」

 善場さんが挨拶していると……。

 隊長:「Hey,wait.」

 隊長がそれを遮った。
 そして、また英語で何かを言う。

 高野:「このカードキーで、まだ開けられそうなドアがあるそうです」
 愛原:「ドア?金庫じゃなくて?」

 高野君も英語で隊長に話し掛ける。

 高橋:「チッ。俺も、もう少し英語を真面目に勉強すれば良かったなぁ……」

 私と同じく外国語の苦手な高橋は舌打ちをした。

 善場:「愛原さん、そのカードキーで開けられそうなドアがあるそうです。もう少しお付き合い願えますか?」
 愛原:「いいですよ。今日1日、どうせヒマですし」
 高野:「場所はどこですか?」

 取りあえず3ヶ所ほど。
 近い所から行くことにした。
 まずは客室下階にある船内図書館。

 高橋:「ここもゾンビがやたらいましたよ。本棚倒して、3匹ほど下敷きにしてやりましたね」
 愛原:「オマエらしいな……」
 高野:「そこのダクトからリッカーが飛び出して来た時には、ビックリしましたわ」
 愛原:「うへー!危なくて、迂闊にダクトの下歩けないなー!」

 鍵が掛かっているというのは、蔵書室の方だった。

 隊長:「This.」

 なるほど。
 確かにドアノブの上には、あの金庫と同じ狂犬のロゴマークが取り付けられている。

 リサ:「怪物が!」

 だがその時、リサがドアの向こうを指さした。

 リサ:「怪物がいるよ!」
 愛原:「マジか!?」

 善場さんがすぐに英語でBSAA隊員達にそれを伝える。
 すると隊長は隊員に閃光手榴弾を用意させた。

 善場:「突入の準備ができましたので、ロックを解除して欲しいということです」
 愛原:「わ、分かりました!」
 善場:「ロックを解除したら、すぐにドアから離れろとのことです」
 愛原:「了解です!」

 私はカードキーを当ててロックを解除した。
 隊員の1人が少しだけドアを開けると、すぐにポイッと閃光手榴弾を投げ込んだ。
 爆発音がして、ドアの隙間からでも分かるほどの閃光が室内を包んだようだ。
 そして!

 隊長:「Go!Go!Go!」

 隊長が隊員達に突入を命じた。
 すぐに銃を構えた隊員達が室内に突入する。
 と!

 愛原:「うわっ、やっぱり何かいたか!?」

 すぐに中から銃声が聞こえた。
 アサルトライフルの音だとすぐに分かったのは、私も霧生市の惨禍を潜り抜けたからか。

 隊員A:「Clear!」
 隊長:「OK!」

 隊長も中に入っていった。
 私達は……素人扱いなので、まだ入室が許可されていない。
 部屋の外で見張りをしている隊員が英語で何かを言った。

 高野:「クリーチャーの類だとすると、室内がウィルスで汚染されている恐れがあるそうです。今それを確認しているので、少し待てということですね」
 愛原:「なるほど」

 BSAA隊員達の着ている軍服やフルフェイスのヘルメットには、そういった汚染された空気内であっても一定時間は活動できるよう、高性能のフィルターが取り付けられているのだそうだ。
 因みにもしリサの発言が間違いで、実は中にいたのは普通の人間だった場合はどうするのかという疑問もあるだろう。
 だからこそBSAA隊員達は本物の手榴弾ではなく、閃光手榴弾を使用したものと思われる。
 爆発音と眩い光が放たれるが、実は殺傷能力は無い。
 中に人質がいるかもしれないが、同時にテロリストもいる場合、作戦の1つとして行われることもあると聞いたことがある。
 人質も巻き込んではしまうが、殺傷能力は無いので。

 隊長:「All clear.Come in.」
 善場:「OK.大丈夫だそうです。入りましょう」
 愛原:「はい」

 私達が中に入ると、床には血だまりができていた。
 そして、そこにはハンターが3体ほど転がっていた。
 霧生市のバイオハザードでも現れた奴だ。
 2足歩行の爬虫類の化け物という表現で分かるかな?
 大きさは大人のゴリラほどだ。
 高橋なんて、『緑のゴリラ』とか『緑のジャイアン』とか呼んでたな。

 愛原:「ハンターがいたとは……」
 善場:「やはり、バイオテロ組織が接収していた船だということは間違い無いようですね」

 善場さんは自分のスマホを出した。
 どうやら上司に現況を報告して、マスコミの内部取材を中止させるつもりらしい。

 高野:「ハンターがいたせいか、メチャクチャに荒らされてますね」
 愛原:「全くだ。これじゃ、何かを探すどころじゃないか」

 するとその時、リサが何かを見つけた。
 それは何だと思う?

 1:誰かの死体
 2:壁に掛けられた人物画
 3:床に落ちていた別の鍵
 4:机の上のカードキー
 5:本棚の下のマシンガン
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“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 3

2018-11-20 19:14:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日12:00.天候:晴 豪華客船“正信”号 客室下階廊下]

 エレベーターが客室下階フロアに到着する。

 高橋:「あの時と同じだ。あの時も、この廊下はゾンビパラダイスでしたよ」
 愛原:「そうなのか」

 もし例え今現れても、ここには武装したBSAAの兵士が5人もいる。
 恐れるに足らんとは思うがな。

 リサ:「キレイなお屋敷みたい……」
 高橋:「俺にとってはトラウマだ。危うく、連続殺人犯にさせられるところだったんだからよ」
 愛原:「あの時か」

 高橋と私が最初に出会ったのも、こういう洋館みたいな所だった。
 そこで連続殺人事件が発生し、前科数犯で少年刑務所を出所したばかりの高橋が疑われたのである。
 それをものの見事に解決し、高橋の疑いを晴らしたことで、彼は私の押し掛け弟子となった。

 BSAA隊長:「Here.」
 愛原:「ん?」

 それは廊下に掛けられた1枚の絵画。
 先ほどの会議室内の物と同じ船の絵が描かれているが、こちらの方が大きい。

 隊長:「Hey.」
 隊員A:「Yes,sir.」
 隊員B:「Yes,sir.」

 隊長の合図で2人の隊員が絵画を外した。
 するとその下にも、会議室内にあった黄色い金庫があった。

 高橋:「うわっ、ここにもあったのかよ!?」
 高野:「こんなの分かるわけ無いよね」

 分かったところでゾンビパラダイス状態なのと、沈没寸前の状態ではゆっくり探している場合ではないだろう。
 こういうことに慣れたBSAA隊員でないと分からないわけだ。

 善場:「それでは当ててみます」

 善場さんは金庫にカードキーを当てた。
 すると、やはり読取機はそれを読み取って、ロックを解除した。

 愛原:「今度は何が入ってるかな?」
 高橋:「ロケランなんか入ってたら大儲けっスね」
 愛原:「んなわけねーだろ!w」

 隊員の1人が早速開けようとした時だった。

 リサ:「! 開けちゃダメ!!」

 リサが突然叫んだ。
 だが、時既に遅し。
 隊員は金庫のドアを開けてしまった。

 愛原:「わぁっ!?」

 金庫の中からクリーチャーが飛び出してきた。
 それは真っ白の体をしており、まるで水死体のように全身がふやけていた。

 隊長:「これはウーズか!?
 隊員C:「危ないから下がって!

 私には見たことも無い化け物であったが、このBSAA隊員達は知っているようだ。
 私達が急いで下がると、隊長が『ウーズ』と呼んだ化け物に一斉射撃を行う隊員達。
 どうやらザコ敵の一種らしく、最期にはドロドロに崩れて血だまりを作り、その中に一部の骨だけを残した。

 愛原:「ウーズって何ですか?」

 私の疑問を善場さんが通訳してくれた。
 隊長の説明によると、2005年頃に起きたバイオテロで現れたゾンビの一種らしい。
 ゾンビ化するのは人間などの哺乳類であるが、どんなゾンビになるかは感染したウィルスの種類によって異なる。
 私達が霧生市で相手にしたのは、初期の“Tウィルス”というもの。
 それに対してこのウーズというゾンビは、“Tアビス”というTウィルスを改造したものに感染した人間の成れの果てだという。
 前者のゾンビが生きた人間の肉を求めて彷徨い歩くのに対し、こちらのウーズは生きた人間の血液を求めて彷徨うのだそうだ。
 しかも体の柔らかさを生かしてダクトなどを自由に出入りし、どんな小さな隙間からでも侵入できるのがこのウーズの特徴。
 固く施錠された部屋であっても、ドアの隙間やダクトから侵入して獲物を追い詰めて行くのだという。

 善場:「2005年、地中海で起きた“クイーン・ゼノビア”事件では、このウーズがBSAAの隊員達を苦しめました」
 愛原:「そうだったのか……」
 高橋:「とんでもねぇミミックが潜んでいたもんだ。こりゃ、迂闊に金庫も開けられねぇよ」
 善場:「確かに愛原さん達が相手にしたTゾンビよりも手強い相手ですが、よく訓練されたBSAAの人達の手に掛かれば何の心配もありませんよ」

 そういう善場さんもさすがにびっくりしたのか、少し汗をかいているように見えた。

 善場:「とにかく、愛原さん達の部屋に行きましょう。愛原さん達の部屋はどこでしたか?」
 高野:「上のフロアですね」
 善場:「さっきのエレベーターで行きましょう」

 私達はエレベーターに向かった。
 その間、BSAAの隊員達は無線で今の戦いのやり取りをしていた。
 『αチームよりHQ、船内でウーズと遭遇した』とか『鎮圧に成功』とか報告しているのだろう。
 エレベーターに乗り込むと、善場さんが言った。

 善場:「実は午後から報道陣を中に入れて取材させる予定だったんです。ですが、こんな罠が仕掛けられてるとなると、中止せざるを得ないですね」
 愛原:「バイオテロ組織から押収した船でしょう?1番いいのは、顕正号みたいに沈没させることだと思いますよ」
 善場:「そうですね」

 客室上階に着いた。

 高野:「船長の居室はこの奥にあったみたいで、船長室にあったクレセントをはめ込んでショットガンを手に入れることができたんですよ」
 愛原:「そうなのか。さっき見た時は無かったな」

 或いはこのBSAA隊員達が先に探索していたわけだから、その時にこの人達が取ったか。

 高橋:「あったぞ。この部屋だ。311号室」
 愛原:「あ、うん。確かこんな感じのドアだった」

 しかしこのドアの鍵は普通の鍵だ。
 一体、どうやって開けるのだろう?

 隊員D:「No problem.」

 隊員が取り出したのはキーピック。
 それを鍵穴に入れてガチャガチャとやる。
 すると、カチッと開いた。

 愛原:「マジかよ」

 私が呆れていると、まるで敵のアジトに突入するかのように隊員達が部屋の中に入って行った。
 そして、『Clear!』という声が聞こえてきた。

 善場:「どうやら中は安全のようです」
 愛原:「はい」

 私達は部屋の中に入った。

 高橋:「あー、あの時と同じだ」
 高野:「本当に同じ造りですね」
 愛原:「そうなのか」

 やっぱり思い出せないなぁ……。
 いや、確かにこんな部屋だったと言われればそんな気もするのだが。

 善場:「あった!この金庫です!」

 善場さんは室内の金庫を指さした。
 確かにそれは、会議室や客室下階の廊下にあったものと同じ装飾が施されていた。

 善場:「早く開けてください」
 愛原:「は、はい」

 私は早速カードキーを当ててロックを外した。
 しかしさっきのこともある。
 開けるのはBSAAの軍人さん達にお任せすることにした。

 隊長:「OK.Open!」

 隊長の合図で隊員の1人が金庫を開けた。
 中には何が入っていたと思う?

 1:ウーズが現れた。
 2:鍵が入っていた。
 3:死体が入っていた。
 4:カードが入っていた。
 5:手紙が入っていた。
 6:何も無かった。
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“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」 2

2018-11-20 10:16:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日11:00.天候:曇 神奈川県横浜市中区横浜港大さん橋 正信号船橋]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は沈没した豪華客船“顕正”号とは同型の姉妹船である“正信”号を探索していた。
 高野君達曰く、『言われないと分からないくらい、そっくりな造り』とのこと。
 こうして今歩いている間、正信号は静かなものだったが、顕正号はゾンビパラダイスだったわけだ。
 これだけの大型客船なのだから、船内にはエレベーターがある。
 それで客室フロアから船橋フロアまで上がった。

 高野:「船橋に出たわ!」
 高橋:「あの時と同じセリフ言いやがって」

 さすがは豪華客船の船橋。
 船員のロッカールームにはずらりとロッカーが並び、それを過ぎると操舵室に出た。

 高橋:「先生、ここまでの記憶は?」
 愛原:「いや、無いな……」

 私は首を傾げた。
 顕正号の船橋エリアには、早いうちに訪れていたという。
 私が倒れて意識を失う前の話だ。
 だからここでは、私も元気に船橋を訪れていたはずなのだが……。

 高野:「私達が到着した時、既に船橋は蛻の殻でした。この操舵室も、操縦の為の機器が全て壊されていたのです」

 と、高野君は説明した。
 もちろん、正信号の方は無事である。
 後ろにいるBSAAの軍人さん達が、自力で航行してきたわけだからね。

 愛原:「船員達がいなかったって、一体どうしたんだ?航海士達は?」
 高橋:「要はそいつらがテロリスト達だったというわけですよ。まんまと騙されたというわけです」
 愛原:「んん?船長も?」
 高野:「船長は……」

 私達は今度は船長室に移動した。
 豪華客船の船長室は、まるでどこかの大企業の役員室並みに豪勢な造りになっている。

 高橋:「この椅子に座って死んでました。ゾンビ化するまでもなく」
 愛原:「なるほど……」

 表向きは船員達の暴動ということになっていたか。

 善場:「皆さん、そろそろいいでしょうか?」
 愛原:「はい?」
 善場:「そろそろ客室の方に移動しましょう。愛原さん達が顕正号で宿泊していた部屋に行きませんと」
 愛原:「おっ、そうでした」

 それがそもそもの目的で来たのだ。

 BSAA隊長:「Hey.Ms.Toshiba.」

 その時、BSAA隊長が善場さんに話し掛けた。

 善場:「Huh?」

 隊長と善場さんが英語でやり取りをしている。
 そして……。

 善場:「あ、すいません。その前に、せっかくこの船橋エリアに来たのですから、もう一部屋探索したい部屋があるそうです」
 愛原:「え?」

 私達はBSAA隊長に付いて行った。
 それは船長室前の廊下を進んだ先にある部屋。

 高橋:「この廊下に船員のゾンビが1人いたもんで、俺がボコしてやりました」
 愛原:「ボコす?銃は?」
 高橋:「この時はまだ無かったんですよ。取りあえず足掛けて転ばせた後、そこにある消火器で頭叩き割ってやりました」
 愛原:「やるなぁ……」
 高橋:「『流血の惨を見る事、必至であります!』」
 愛原:「……だな」

 顕正号ではボッチの船員ゾンビが徘徊していたという廊下を進み、奥の部屋のドアを開けた。
 因みに船員全員がテロリストというわけではなく、一部に裏切り者がいて、そういうテロ組織と内通していた者がいたということ。
 その部屋は会議室になっていた。
 正信号では机と椅子とホワイトボードくらいしか無いが、顕正号は色々な物があって散らかっていたという。

 高橋:「ここで俺はようやくハンドガンを手に入れることができました」
 愛原:「あったんだ!」
 高橋:「因みに船橋エリアの鍵もここにありましたよ。これで船長室のドアの鍵を開けたりしたんです」
 愛原:「へえ……。この会議室の中にはゾンビとかいたかい?」
 高橋:「いなかったですね。さっきも言った通り、そこの廊下に1匹いただけです」
 高野:「あ、でも、さっきのロッカールームも後から行ったら、ダクトの金網ブチ破ってリッカーが出てきましたけどね」
 愛原:「そうか。リッカーいたなぁ……」

 大山寺の大本堂でそいつらと、そいつらのボスである逆さ女……もとい、サスペンデッドと無双したのを思い出した。
 私達がそんなことを話していると、隊長は会議室内に掛かっている絵画を外した。
 その絵画の裏には、黄色の金庫が出てきた。

 高野:「あっ、そうだ!顕正号にもあったわ、それ!」
 高橋:「何か違和感あったんだけど、顕正号じゃ絵なんか掛かってなかったな」
 善場:「そうですか。ここにもあったんですね」

 善場さんは私が先日渡したカードキーを金庫の前に翳した。
 すると、ピーッという音と共に、ガチャとロックの外れる音がした。
 開けてみると、中にはコルトパイソンが入っていた。

 高橋:「マジかよ、ここにあったのかよ!くそっ!」
 愛原:「顕正号では何が入ってた?」
 高野:「それどころじゃなかったんですよ。先生は倒れてましたし、後で気づいた時には船は沈没し掛かってましたし……」
 愛原:「これは顕正号と生き写しの船だろ?てことは、向こうにもコルトパイソンが入っていたのかもな」
 高橋:「だからですよ。最初のうちに手に入っていたら、先生も倒れずに済んだかもしれないのに!」

 しかし、最初から強い武器が手に入らないのが“バイオハザード”というものだからな。
 この日本で、早めのうちにハンドガンが手に入っただけでもマシというものだぞ。

 善場:「隊長、他にもこういう金庫があるんですか?」

 と、善場さんは英語で聞いたらしい。
 すると隊長は……。

 隊長:「That’s right.Follow me.」

 『その通りだ。ついてきてくれ』という意味で言ったのは何となく分かった。
 まあ、欧米人は身振り手振りも大きいからな……。
 私達は船橋エリアを後にし、客室エリアへと向かうエレベーターに乗り込んだ。
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“私立探偵 愛原学” 「正信号を探索せよ」

2018-11-18 20:18:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日10:15.天候:曇 神奈川県横浜市中区 横浜港大さん橋]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は横浜港までやってきた。
 今年の元日に、船旅を楽しんでいた私達を突然襲ったバイオテロ。
 船内は化け物の巣窟となり、最後には自爆装置の作動で爆発・炎上、そして沈没した。
 ところがその船には同型の姉妹船が存在しており、こちらは廃船寸前とはいえ、未だ洋上に浮かんでいたという。
 こちらもとあるバイオテロ組織が隠し持っていたらしいが、BSAAの介入により殲滅し、その船は押収された。
 そしてBSAAの船内捜索により、その安全が確保されると、日本に曳航されることとなった。
 曳航といっても、実際は自力航行である。
 今日の10時には横浜港の大さん橋に着岸するとのことで、私達は現場に向かった次第である。

 善場:「皆さん、見えて来ましたよ」

 大さん橋と言えば、多くの豪華客船が日本に寄港しようとする時、必ずと言って良いほどその接岸先になる港である。
 私達が昨年の大晦日に顕正号に乗り込んだ時も、あの大さん橋からだった。

 愛原:「おおっ!」
 高橋:「正しくあれは!?」
 高野:「顕正号ですね」

 船内の記憶が殆ど欠落している私だが、船の外観については覚えているぞ。
 うん、確かあんな感じだった。
 顕正号が戦艦大和なら、正信号は戦艦武蔵とはよく言ったものだ。

 リサ:「大きい……」

 リサが感嘆の声を上げた。
 さすがは豪華客船だ。
 大和も武蔵も巨大艦船だったことで有名であり、この顕正号……もとい、正信号も同じであった。

 愛原:「もう乗れるんですか?」
 善場:「ちょっと待ってください。今、BSAAが船橋から出てきます。BSAAの隊員達と一緒に中に入ることになってますので」

 因みに私達は、善場さんの車でやってきた。
 実際は政府の公用車なのだろうが。
 シルバーのアルファードなのだが、善場さんは助手席に座っているだけであり、運転席には善場さんの部下の男性職員が座っていた。

 警察官:「失礼します」
 善場:「今日、調査予定の善場です」

 バリケードで封鎖されている所までやってくると、警察官がやってきた。
 そこで善場が自分の身分証やら、書類やらを提示している。
 一瞬そこで警察官が、『ナイチョウ』と口走ったのを聞いて、私はやはり善場さん達は法務省とは別の省庁に所属しているのではないかと確信した。
 警察官はすぐに口を噤んだが、私の耳は誤魔化せない。
 『ナイチョウ』とは内調。
 つまり、内閣情報調査室ではないか。
 略称はCIRO(サイロ)、日本版CIAを目指して設立されたと聞いている。
 善場さんが公安調査庁の職員にしては、ちょっとなぁと思っていたが、内閣調査室の職員ならエージェントと称されても合点が行く。
 てか、そんな所が民間の探偵事務所に依頼していいのだろうか?
 もちろん、これ以上は政治的領域だから私達が首を突っ込んで良い話ではないだろう。
 しばらくしてゲートが開けられ、車は奥に進んだ。

 高橋:「先生、思い出せますか?あの船そっくりですよ」

 高橋は手持ちのマグナム44を弄りながら言った。
 今回だけは特別に所持が許可されたものである。
 別にBSAAが既に調査した後なわけだから、今さら正信号にもゾンビがいるとは思えないのだが。

 愛原:「いや……。実際に中に入ってみないと分からないだろうな」

 そして車は、タラップの前で止まった。
 すると船内から、フルフェイスのヘルメットを被った軍服姿の者達が5人ほど降りて来た。
 顔が分からないので、日本人なのかどうかは分からない。
 極東支部日本地区本部が存在することから、そこに所属していれば日本人なのだろうが。

 善場:「さあ、早速乗りましょう」

 善場さんは真っ先に車を降りた。
 そして、自分の身分証を高く掲げた。

 善場:「日本政府の善場と申します!今回、特別に船内調査を許可された者です!」

 と、英語で喋ったことから、多分そこにいる特殊部隊員達は日本人ではないのだろう。
 実際、ヘルメットを取った1人の兵士は白人男性だった。
 善場とにこやかに握手をしながら、英語で何か言っている。
 善場さんの英語はゆっくりだったので、何となく意味は分かったのだが、兵士の方は完全にネイティブなので、逆に聞き取りにくい。

 愛原:「高橋、何て喋ってるんだ?」
 高橋:「分かりませんねぇ。全く、ここに日本なんだから日本語で喋れってんだ」

 日本人の9割方の意見(ソース無し)。

 高野:「取りあえず、船内の方は異常無しみたいなことを喋ってますね」
 愛原:「高野君、分かるのか?」
 高野:「一応、これでもTOEICは取ってますので」
 愛原:「おおっ、さすがだ」
 リサ:「私も分かるー。んーとね、テロ組織が色々と船内を改造していたところは、顕正号と変わらないって言ってるよ」
 愛原:「ええっ、マジで!?」

 日本人離れした顔立ちだなと思っていたが、実はやはりハーフか何かなのか?

 善場:「お待たせしました。それでは彼らが船内を案内してくれますので、付いて行きましょう」
 愛原:「よ、よろしくお願いします」
 BSAA隊長:「オーッ、ヨロシクー!」

 ヘルメットを取った白人の隊長は、にこやかな笑顔で私と握手した。
 これで銃とか持って無ければ、爽やかな好青年なのになぁ……。
 あ、いや、年齢は私と大して変わらないだろうが……。

 高橋:「まだ10ヶ月しか経って無いのに、まるで昨日のことのようです」
 高野:「ホントにねぇ……」

 タラップを上がって船内に入る。
 廃船寸前の状態だったせいか、船内はあちこち老朽化している。
 しかしそれさえ無ければ、往時はVIPやセレブ客で賑わっていたことを偲ばせる何かが節々に現れていた。
 ただの廊下にも天井からぶら下げられているシャンデリアとか……。

 高橋:「そこからゾンビが2体ほど、ドアをドンドン叩いていたんですよ」

 高橋はとある木製の客室のドアを指さした。
 もちろん、今は静かなものである。

 愛原:「ダメだ。全然思い出せない……」
 高野:「慌てなくても大丈夫ですよ。でも確かに、同型の姉妹船というだけあって、ほぼ顕正号と同じ造りですね」
 善場:「ですよね」
 愛原:「それで、この船内のどこを探索するのです?」

 できれば全部見てみたいところだが、さすがにそこは時間が許さないだろう。

 善場:「それは……」

 1:船橋エリア(操舵室や船長室)
 2:カジノ(VIPルーム含む)
 3:プロムナード(レストラン街や免税店街)
 4:大ホール(各エリアに通じるホテルの吹き抜けロビーみたいな所)
 5:顕正号で愛原達が宿泊していた部屋
 6:船内プール
 7:それ以外
コメント (2)
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